永住者・定住者の方が刑事事件になったとき|退去強制と永住許可の取消しの関係を弁護士が整理
2026/10/04
永住者・定住者の方が刑事事件になったときは、別表第二の在留資格であるため、窃盗などによる執行猶予付きの拘禁刑は退去強制事由に当たらないが、薬物関係の有罪判決や1年を超える実刑は該当し得るので、刑の種類と罪名を分けて確認できる弁護人に相談することが望ましい。
- 永住者・定住者は別表第二の在留資格で、在留中に行える活動に制限がない(制限は別表第一の在留資格に適用される)
- 退去強制事由に当たるかどうかは、入管法24条各号の該当性で判断され、4号の2(窃盗・傷害など)は別表第一の在留資格の方に限られる
- 薬物関係の有罪判決(4号チ)と、1年を超える実刑(4号リ)は、永住者・定住者にも適用される
- 現行の入管法22条の4には、刑事処分を理由とする永住者の取消し事由はないが、2027年4月1日施行予定の改正で、永住者に関する取消し事由が加わる
- 特別永住者は、入管特例法22条により、退去強制の事由が別に限定されている
永住者・定住者の方は、別表第一の在留資格の方と何が違うのか?
永住者・定住者は別表第二の在留資格であり、在留中の活動に制限がなく、退去強制事由のうち4号の2が適用されない点が大きな違いである。
別表第二の永住者は法務大臣が永住を認める者、定住者は法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者とされている。別表第一の在留資格と異なり、入管法19条の活動の範囲の規制は別表第一の在留資格の方に向けられたものであり、在留中の就労などに資格上の制限はない。定住者は在留期間が指定されるため、更新の手続が必要になる。
刑事処分によって、退去強制事由に当たるのはどのような場合か?
永住者・定住者では、薬物関係の有罪判決(4号チ)と、1年を超える実刑(4号リ)が中心になり、執行猶予付きの拘禁刑は、薬物関係を除き該当しない。
入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格をもつ者を対象としており、永住者・定住者には適用されない。4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とするが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者などは除かれている。4号チは、薬物関係の罪で有罪の判決を受けた者であり、刑の種類や執行猶予の有無を区別しない。
| 刑事処分の結果 | 永住者・定住者 | 特別永住者 |
|---|---|---|
| 罰金 | 退去強制事由に当たらない | 当たらない |
| 執行猶予付き拘禁刑(窃盗・傷害など) | 当たらない(4号の2は別表第一の方のみ) | 当たらない |
| 1年を超える実刑 | 当たる(24条4号リ) | 入管特例法22条の列挙に当たらない限り、退去強制の対象とならない |
| 薬物関係の罪で有罪(執行猶予・罰金を含む) | 当たる(24条4号チ) | 入管特例法22条の列挙に当たらない限り、退去強制の対象とならない |
永住許可は、刑事処分で取り消されることがあるのか?(入管法22条の4)
現行の入管法22条の4には、刑事処分そのものを理由とする永住者の取消し事由は挙げられていないが、令和6年法律第60号による改正で、永住者に関する取消し事由が加わる予定である。
現行の22条の4第1項が挙げる事由は、偽りその他不正の手段による許可の取得、住居地の届出に関するもの、別表第一の在留資格の方に限る活動の不実施などである。永住者について、拘禁刑や罰金を理由とする取消しは、現行の条文には挙げられていない。
一方、令和6年法律第60号による改正後の条文は、e-Gov法令検索で施行予定として確認でき、施行予定日は2027年4月1日である。その内容は、永住者が入管法に規定する義務を遵守せず、又は故意に公租公課の支払をしないこと(8号)、永住者が4号の2に挙げられた罪により拘禁刑に処せられたこと(9号)を、取消し事由に加えるものである。施行後の適用関係の細目は、確認できた範囲を超えるため記載しない。取り消す前には、本人の意見を聴く手続がある(同条2項)。
定住者の方は、更新や永住申請で、刑事処分がどう扱われるのか?
定住者の更新は、法務大臣が相当の理由があるときに限り許可され、罰金や執行猶予付き判決でも素行が不利に考慮されることがある。
定住者は在留期間が指定されているため、更新が必要である(入管法21条)。出入国在留管理庁の更新許可のガイドラインは、素行や納税義務の履行などを考慮要素としている。退去強制事由に当たらない刑事処分でも、更新の審査では考慮される可能性がある。
永住許可の申請については、法務省出入国在留管理庁の「永住許可に関するガイドライン」(令和8年10月1日改定)に、過去に拘禁刑や罰金刑を受けた者を原則として消極評価とする旨の記載がある。将来の永住申請を考える方は、刑事処分の内容を踏まえて見通しを確認しておく必要がある。
特別永住者は、永住者とどう違うのか?
特別永住者の退去強制は、入管特例法22条が定める事由に該当する場合に限られ、入管法24条の事由がそのまま適用されるわけではない。
入管特例法22条1項は、特別永住者について、入管法24条による退去強制を、内乱・外患に関する罪や国交に関する罪により一定の刑に処せられた場合、無期又は7年を超える拘禁刑に処せられ法務大臣が日本国の重大な利益を害したと認定した場合などに限っている。薬物関係の罪や窃盗などを理由とする退去強制は、この列挙に当たらない限り行われない。また、入管法22条の4は別表第一又は別表第二の在留資格をもつ者を対象としており、特別永住者はこれと別の地位にある。
退去強制事由に当たる場合、永住者でも在留を続けられるのか?
退去強制の手続の中で、法務大臣が在留特別許可を与えるかどうかが判断され、永住許可を受けていることは、許可の事由として条文に挙げられている。
入管法50条1項1号は、永住許可を受けているときを、在留特別許可の事由の一つとして挙げている。判断にあたっては、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間、人道上の配慮の必要性などが考慮される(同条5項)。無期又は1年を超える拘禁刑(全部の執行猶予などを除く)に処せられた者には、人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情を求める但書がある。許可されるかどうかは、個別の事情による。在留特別許可とはで説明している。
弁護士に相談するとき、何を確認し、当事務所はどう対応するのか?
在留資格の種類(永住者、定住者、特別永住者)を最初に確認し、刑の種類と罪名を分けて見通しを説明できるかどうかが、確認の出発点になる。
- 在留資格が永住者・定住者・特別永住者のいずれかを、最初に確認しているか
- 刑の種類(罰金、執行猶予付き、実刑)と罪名ごとに、退去強制事由の該当性を説明できるか
- 最初の接見の時期と、通訳の手配
- 起訴前から、判決後の在留手続まで、どのように関与するか
松村大介弁護士が刑事事件と入管事件の両方を担当し、最初の接見で、在留資格を失うリスクを本人に正確に理解してもらうことを重視している。中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からの相談を受けている。取調べへの弁護人の立会いは、積極的に求める方針であり、現状ほとんど認められないものの、取調べの前に警察官と協議することはある。連絡は微信ID matsumura1119でも受け付けている。これまでの解決事例は外国人・中国人の刑事事件 解決事例の罪名別一覧にまとめている。
よくある質問
永住者が罰金刑になった場合、永住許可は取り消されますか?
現行の入管法22条の4には、罰金を理由とする永住者の取消し事由は挙げられていない。罰金は退去強制事由にも当たらない。ただし、定住者などの更新や将来の永住申請では、素行として考慮される可能性がある。
定住者が執行猶予付きの判決を受けた場合は、どうなりますか?
執行猶予付きの拘禁刑は、入管法24条4号の2が別表第一の在留資格の方に限られるため、定住者には適用されない。4号リも、全部の執行猶予を受けた者を除いている。ただし、薬物関係の罪の有罪判決は、執行猶予付きでも4号チに当たる。更新の審査では、素行が考慮される。
永住者でも、薬物事件で有罪になると退去強制の対象になりますか?
入管法24条4号チは、薬物関係の罪で有罪の判決を受けた者を、刑の種類や執行猶予の有無を問わず対象としており、永住者にも適用される。退去強制の手続の中で、在留特別許可を求める余地はあるが、許可されるとは限らない。
特別永住者は、窃盗や薬物事件で有罪になっても退去強制になりませんか?
特別永住者の退去強制は、入管特例法22条が定める事由に当たる場合に限られる。窃盗や薬物関係の罪は、その列挙に挙げられていない。個別の罪名と刑によって異なるため、条文に沿った確認が必要である。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案には当てはまらないことがある。条文は2026年10月4日時点の内容を確認している。個別の事案については、弁護士に直接ご相談いただきたい。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119