技能実習・特定技能の方が刑事事件になったとき|在留資格と勤務先への影響を弁護士が整理
2026/10/04
技能実習・特定技能の方が刑事事件になったときは、いずれも別表第一の在留資格であり、勤務先との関係が在留の前提にもなるため、刑事処分の見通しと勤務先・支援機関との関係を同時に確認できる弁護人に、早く相談することが望ましい。
- 技能実習・特定技能は別表第一の在留資格で、窃盗・傷害・詐欺などの罪で拘禁刑(執行猶予付きを含む)に処せられると、退去強制事由に当たる(入管法24条4号の2)
- 罰金は退去強制事由には当たらないが、更新や変更の審査で素行が考慮される
- 逮捕・勾留だけで在留資格は失われないが、在留資格に応じた活動を3か月以上行わない状態が続くと、取消しの問題が生じる
- アルバイトなどの資格外活動は、それ自体が罪(入管法73条)になり、拘禁刑に処せられると退去強制事由に当たる
- 勤務先、監理団体、登録支援機関との連絡は、本人の意向を確認しながら、弁護人が窓口になって把握する
技能実習・特定技能の方が逮捕されると、在留資格はどうなるのか?
逮捕・勾留だけで在留資格が直ちに失われることはないが、別表第一の在留資格であるため、刑事処分の結果が退去強制事由に結びつきやすい。
技能実習と特定技能は、いずれも入管法別表第一の二の表に掲げられている。技能実習は、認定を受けた技能実習計画に基づく活動を、特定技能は、法務大臣が指定する機関との雇用に関する契約に基づく活動を、それぞれ在留資格の内容としている。受入れ先との関係が、在留の前提になっている点に特徴がある。別表第二(永住者・日本人の配偶者等など)と比べて、刑事処分の影響を強く受ける。
刑事処分は、退去強制と更新・変更に、どう影響するのか?
退去強制事由に当たるかどうかは刑の種類と罪名で決まり、更新・変更が許可されるかどうかは、法務大臣が個別に判断する。
| 刑事処分の結果 | 退去強制事由 | 更新・変更の審査 |
|---|---|---|
| 罰金 | 該当しない | 素行として不利に考慮されることがある |
| 執行猶予付き拘禁刑(窃盗・傷害・詐欺・住居侵入・文書偽造など、4号の2に挙がる罪) | 該当する(24条4号の2) | 在留特別許可も含めて検討する |
| 執行猶予付き拘禁刑(4号の2に挙がらない罪) | 直ちには該当しない | 更新・変更が認められない可能性があり、個別に判断される |
| 1年を超える実刑 | 該当する(24条4号リ) | 退去強制の手続の中で、在留特別許可を検討する |
| 薬物関係の罪で有罪 | 該当する(24条4号チ) | 退去強制の手続の中で、在留特別許可を検討する |
| 資格外活動の罪(73条)で拘禁刑 | 該当する(24条4号ヘ) | 罰金にとどまるときは、4号ヘには当たらない |
更新・変更は、法務大臣が相当の理由があるときに限り許可する(入管法20条3項・21条3項)。出入国在留管理庁の更新許可のガイドラインは、素行や納税義務の履行などを考慮要素としている。
勤務先・監理団体・登録支援機関との関係は、どうなるのか?
逮捕後は、受入れ先との契約や支援の継続について、本人の意向を確認しながら、弁護人が窓口になって状況を把握する。
技能実習のうち団体監理型は、監理団体が関与する(別表第一に「団体監理型技能実習」が定められている)。特定技能は、特定技能所属機関が外国人への支援を行う義務を負い、その実施を契約により他の者に委託することができる(入管法19条の22)。支援業務の全部の実施を受託する者は、登録支援機関として登録を受けることができる(同法19条の23第1項)。
勤務先から解雇や契約終了を告げられたときも、本人が勾留中であれば、弁護人が契約の扱いを確認し、不起訴や釈放の見込みを踏まえて対応を決める。関係者に連絡するときは、本人の同意と守秘に配慮する。
勤務先を失ったとき、在留資格該当性はどう考えるのか?
在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行わないでいると、正当な理由がない限り取消しの対象になるため、働けない期間とその理由を意識する必要がある。
別表第一の在留資格をもつ者が、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行わないで在留しているときは、正当な理由がある場合を除き、在留資格を取り消すことができる(入管法22条の4第1項6号)。取り消す前には、本人の意見を聴く手続がある(同条2項)。
特定技能の方が勤務先を変える場合は、在留資格の変更の許可を受ける(20条1項。特定技能については、法務大臣が指定する機関又は特定産業分野の変更を含む)。技能実習の実習先の変更については、技能実習法などの定めによるため、本記事では詳細に触れない。釈放や不起訴の見通しを踏まえ、次の受入れ先を探す時期を弁護人と相談することになる。
アルバイトなど資格外活動で摘発されたときは、どうなるのか?
許可を受けずに本来の活動以外の報酬を受ける活動を行うと、入管法73条の罪に問われ、拘禁刑に処せられた場合は、24条4号ヘにより退去強制事由に当たる。
別表第一の在留資格をもつ者は、許可を受けた場合を除き、在留資格に属しない収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動を行ってはならない(入管法19条1項・2項)。違反した者は、1年以下の拘禁刑若しくは罰金に処せられ、又はこれらが併科される(73条1号)。4号ヘは、73条の罪により拘禁刑に処せられた者を対象としており、執行猶予が付く場合を除くとはされていない。罰金にとどまるときは、4号ヘには当たらない。
資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる場合は、別の事由(24条4号イ)にもなり得る。在留資格に応じた活動を行わず、他の活動を行っているとして、取消しの対象にもなり得る(22条の4第1項5号)。不法就労のページで説明している。
技能実習から育成就労への制度移行は、今回の事件に関係するのか?
育成就労の在留資格を設ける改正は公布されており、法令検索上の施行予定日は2027年4月1日であるが、現時点の事件は現行法で判断する。
令和6年法律第60号(出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律)により、別表第一に育成就労の項が置かれることが、e-Gov法令検索の施行予定の条文から確認できる。施行後に、現在の技能実習の在留資格をもつ方がどのように扱われるかという経過措置については、確認できた範囲を超えるため、本記事では記載しない。
弁護士に相談するとき、何を確認すればよいか?
次の点は、依頼を考える側が、相談の場で確認することができる。
- 刑事処分の見通しと、退去強制事由・更新・変更の見通しを、分けて説明できるか
- 最初の接見がいつ可能か、通訳をどう手配するか
- 在留カード、在留期限、勤務先、監理団体や登録支援機関の名称を、最初に確認しているか
- 勤務先や支援機関との連絡を、本人の意向に沿って進める方法を説明しているか
- 起訴前から、判決後の在留手続まで、どのように関与するか
松村大介弁護士が刑事事件と入管事件の両方を担当し、最初の接見で、在留資格を失うリスクを本人に正確に理解してもらうことを重視している。中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からの相談を受けている。取調べへの弁護人の立会いは、積極的に求める方針であり、現状ほとんど認められないものの、取調べの前に警察官と協議することはある。連絡は微信ID matsumura1119でも受け付けている。これまでの解決事例は外国人・中国人の刑事事件 解決事例の罪名別一覧にまとめている。
よくある質問
技能実習生が逮捕され、勤務先から解雇された場合、日本にいられませんか?
解雇だけで、在留資格が直ちに失われることはない。ただし、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行わないでいると、正当な理由がある場合を除き、取消しの対象になる(入管法22条の4第1項6号)。勾留による場合の事情は、弁護人が経過を整理する。
特定技能の方が罰金刑になった場合は、どうなりますか?
罰金は退去強制事由には当たらない。ただし、更新や変更の審査では素行が考慮されるため、罰金の内容や事情によって結果が異なる。在留期限が近い場合は、申請の時期も含めて早めに確認してほしい。
資格外のアルバイトで逮捕された場合は、どうなりますか?
許可を受けない資格外活動は入管法73条の罪にあたり、拘禁刑に処せられると24条4号ヘにより退去強制事由に当たる。罰金にとどまれば4号ヘには当たらないが、更新や変更の審査で素行が考慮される。
執行猶予付きの判決を受けた場合、日本に残れますか?
窃盗、傷害、詐欺など、入管法24条4号の2に挙げられた罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても、別表第一の在留資格では退去強制事由に当たる。在留特別許可を求める道はあるが、許可されるとは限らない。そのため、起訴される前の段階で不起訴を目指せる事情を検討することが重要になる。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案には当てはまらないことがある。条文は2026年10月4日時点の内容を確認している。個別の事案については、弁護士に直接ご相談いただきたい。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119