判決はいつ確定し、在留にどう響くのか|上訴中の在留資格と、家族の帰化・永住申請との関係
2026/09/18
刑事事件の判決が言い渡されても、その日に刑が確定するわけではありません。控訴や上告をすれば、確定は上級の裁判所の判断が出るまで先に延びます。外国人の方にとって、判決がいつ確定するかは、退去強制事由がいつ生じるか、在留特別許可の審査をどのような家族関係のもとで受けるかに関わります。2026年9月に当事務所が在留特別許可を得た事例では、上告審の判断が出て判決が確定した約6週間後に配偶者の帰化が完了し、審査は日本人の配偶者の類型で行われました。
本記事の要点
- 第一審判決に対する控訴の申立期間は、判決宣告の翌日から14日です(刑事訴訟法373条)。控訴しなければ、この期間の経過で判決が確定します。
- 入管法24条4号の2や4号リは「拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由としており、判決の確定によって該当することになります。
- 上訴している間は判決が確定していないため、これらの退去強制事由はまだ生じていません。
- 執行猶予の期間は、判決が確定した日から数えます(刑法25条1項)。
- 配偶者の帰化や永住申請が進んでいる場合、家族の手続の進み具合を刑事弁護人と共有しておくことが大切です。
判決が確定するまで
第一審の判決に不服がある場合、判決宣告の翌日から14日以内に控訴を申し立てることができます(刑事訴訟法373条)。控訴審の判決に対しては、同じく14日以内に上告を申し立てることができます(同法414条による準用)。最高裁判所が上告を棄却する決定をした場合は、これに対する異議申立ての期間(3日)が過ぎたときに確定します。控訴も上告もしなければ、第一審判決は宣告から約2週間で確定します。
判決書の謄本の末尾に記載された日付は、謄本を作成した日であって、確定した日ではありません。在留特別許可の申請書や在留期間の更新申請で確定日を記載するときは、上訴の経過を確認して正確な日付を書く必要があります。
確定と退去強制事由
入管法24条4号の2は、就労資格や留学などの別表第一の在留資格で在留する方が、窃盗、詐欺、傷害、文書偽造等の罪で「拘禁刑に処せられた」場合を退去強制事由としています。4号リも「1年を超える拘禁刑に処せられた者」を対象としています。刑事手続では、有罪の判決は確定して初めて執行できるものになります。上訴している間は判決が確定していないため、これらの退去強制事由はまだ生じていません。在留資格も、在留期限までは従前のとおり存続します。
在留期限が上訴の途中で来る場合は、期限内に更新を申請すれば、結論が出るまで(期限から最長2か月)は引き続き在留できます(入管法21条4項、20条6項)。もっとも、刑事事件の係属中の更新は、素行の審査で慎重に扱われます。更新の申請書に刑事事件の状況を正確に記載することが前提です。
当事務所の事例と時期の重なり
2026年9月に在留特別許可を得たベトナム国籍の男性は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で在留していました。2025年5月、有印私文書偽造・同行使の罪で懲役1年6月(現行法の拘禁刑に相当)、執行猶予3年の判決を受けました。判決宣告の際、控訴を申し立てるべき裁判所の告知が通訳されなかったことなどを理由に控訴し、控訴審の判決に対しても、裁判を受ける権利の侵害を理由に上告しました。上告は2026年2月に棄却され、判決が確定しました。
同じ頃、ベトナム出身の妻の帰化手続が進んでいました。帰化を許可相当とする判断は2025年4月に出ており、ベトナム国籍の離脱を待っている状態でした。2026年3月、判決確定から約6週間後に帰化が完了し、妻は日本国籍を取得しました。その9日後に男性の在留期限が過ぎ、男性は自ら入管に出頭して在留特別許可を申請しました。
仮に控訴をせず、2025年5月末に判決が確定していれば、その時点で退去強制事由が生じ、妻がまだ外国籍だった時期に審査を受けることになっていた可能性があります。公表事例では、配偶者が就労資格などの別表第一の在留資格で、本人に刑事処分がある事例は、確認できた8件すべてが不許可でした。配偶者が外国籍のままであれば、その在留資格によっては、この厳しい類型で判断されるおそれがありました。確定の時期と家族の手続の完了が重なったことが、審査の類型を変え、許可につながりました。ご本人の同意を得て紹介しています。
上訴を考えるときの注意
上訴は、判決や手続に誤りがあると考える場合に、法律が認めた権利として行うものです。本件でも、判決宣告時の通訳の問題を正面から争うものでした。在留の時期を調整することだけを目的に上訴を勧めるものではありません。上訴には費用がかかり、勾留されている場合は身柄の拘束が続くこともあります。執行猶予の期間も確定日から数えるため、猶予期間が終わる時期はその分遅くなります。
そのうえで、外国人の方の事件では、判決の内容だけでなく、確定の時期が入管手続にどう響くかも考えて方針を立てる必要があります。特に、次のような事情がある場合は、刑事弁護人に必ず伝えてください。
- 配偶者や親が帰化申請中、又は永住許可申請中である
- 家族が在留資格の変更(例:就労資格から永住者)を予定している
- 本人の在留期限が近い
- 日本国籍の子の出生や認知の手続が進んでいる
家族の在留上の地位が変われば、在留特別許可の審査で当てはまる類型が変わります。日本人の配偶者であれば、ガイドラインで「特に考慮する積極要素」として扱われる家族関係が、就労資格の方の配偶者であることでは、同じようには扱われないからです。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が第一審から上訴審、入管手続まで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士による代行は行いません。刑事手続の各段階で、入管手続への影響を一体的に検討します。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、他の言語は事案に応じて通訳を手配します。在留資格の更新・変更は、提携の行政書士と連携して対応します。
入管手続の事例として、上記の事例のほか、観光目的で来日し不法滞在で逮捕・起訴された方について、刑事裁判の段階から入管手続を意識した被告人質問・証人尋問を行い、婚姻と認知の手続も当局との交渉で実現して、1回の審査で在留特別許可を得た事例があります。
結語
判決の言渡しは、外国人の方にとって手続の終わりではなく、入管手続の始まりに近いものです。判決がいつ確定し、そのとき家族がどのような在留上の地位にあるのか。刑事事件の段階から、この点まで見通して方針を立てることが大切です。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士/第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)/舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)/中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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