舟渡国際法律事務所

ヘロイン事犯と在留資格|麻向法64条の2・64条の3が他の麻薬と区別される理由

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ヘロイン事犯と在留資格|麻向法64条の2・64条の3が他の麻薬と区別される理由

ヘロイン事犯と在留資格|麻向法64条の2・64条の3が他の麻薬と区別される理由

2026/08/13

ヘロイン(ジアセチルモルヒネ)に関する事件は、麻薬及び向精神薬取締法のなかでも、他の麻薬とは別の条文で、より重い法定刑をもって規律されています。そして、外国人の方にとって決定的に重要なのは、この重さとは別のところに、もう一つの帰結が用意されているという点です。すなわち、刑の重さがどうであれ、有罪の判決を受けたという事実そのものが、出入国管理及び難民認定法上の退去強制事由を生じさせます。ここでは、ヘロイン事犯の条文構造を整理したうえで、在留にどのような影響が及ぶのか、そして刑事手続の段階で何を組み立てておくべきかを、順を追ってご説明いたします。

本記事の要点

  • ヘロイン等は麻向法64条・64条の2・64条の3という独立の条文で、他の麻薬より重く規律されています。
  • 入管法24条4号チは「有罪の判決を受けた者」とのみ定めており、刑種・刑期の限定も、執行猶予による除外もありません。
  • 1年を超える実刑となった場合には、24条4号リおよび50条1項但書の加重が重なって作動します。
  • 刑に処せられた事実は、入管法5条1項5号により、期間の定めのない上陸拒否事由として残り続けます。
  • 刑事・退去強制手続・在留特別許可の三段階を一体で設計することが、実務上の要点となります。

ヘロインはなぜ他の麻薬と別の条文で扱われているのですか

法定刑が段階的に重く設定されているためです。麻薬及び向精神薬取締法は、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)等について、その他の麻薬とは別個の条文を用意しています。

具体的には、ヘロイン等の輸入・輸出・製造は同法64条1項により1年以上の有期拘禁刑とされ、営利の目的があるときは無期若しくは3年以上の拘禁刑、情状により1000万円以下の罰金が併科されます。所持・譲渡し等は64条の2により10年以下の拘禁刑、営利目的の場合は1年以上の有期拘禁刑に500万円以下の罰金が併科されます。施用・受施用は64条の3により10年以下の拘禁刑です。

これに対し、コカインやMDMAなど、その他の麻薬の所持・譲渡等は同法66条により7年以下の拘禁刑、輸入・輸出・製造は65条1項により1年以上10年以下の拘禁刑とされています。同じ「麻薬」という語で括られていても、条文上の扱いには明確な差が設けられているわけです。

刑の重さと在留は別の話である

在留に関していえば、法定刑の重さは決定的な要素ではありません。入管法24条4号チは、麻薬及び向精神薬取締法をはじめとする薬物関係法令に違反して「有罪の判決を受けた者」と規定しているにとどまり、刑種にも刑期にも触れていないからです。

したがって、ヘロイン事犯であれ、その他の麻薬の事犯であれ、判決で有罪とされた時点で、退去強制事由の側では同じ入口に立たされます。執行猶予が付されたかどうかも、この条文の適用を左右しません。同号は在留資格の種類も問いませんので、別表第一の就労資格の方も、別表第二の永住者・定住者・日本人の配偶者等の方も、等しく対象となります。

実刑が1年を超えると、何が重なって作動するのですか

24条4号リと、在留特別許可に関する50条1項但書が、それぞれ別の局面で加わってまいります。

24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としつつ、全部執行猶予の言渡しを受けた者等を除外しています。もっとも、同号は「ニからチまでに掲げる者のほか」と書き起こされていますので、薬物事犯はそもそも4号チの守備範囲にあり、この除外の恩恵は及びません。

より実務的な意味を持つのは50条1項但書です。同但書は、無期若しくは1年を超える拘禁刑に処せられた者(全部執行猶予等を除く)については、在留特別許可を「人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情」があるときに限る、という加重要件を課しています。4号チそれ自体は但書の列挙に含まれておりませんので、1年を超える実刑を避けられるかどうかが、その後の手続の枠組みを大きく分けることになります。

送還されたあと、日本に戻る道はどうなりますか

薬物の刑に処せられた事実は、入管法5条1項5号により、期間の定めのない上陸拒否事由として残ります。

同項9号は、退去強制歴に応じて1年・5年・10年という期間を定めています。ところが5号には、この種の年限が置かれていません。そのため、9号の期間が経過しても、5号の該当性は消えないという構造になっています。5号は「刑に処せられたこと」で足りるとしており、罰金でも該当し、日本以外の国の法令違反も含みます。

この場合、以後の入国は、入管法12条1項の上陸特別許可を得る以外に道がありません。日本にご家族を残して出国する事案では、この点が最も重い現実として残りますので、刑事手続の段階から視野に入れておく必要がございます。

三重の防御線という組み立て方

当事務所では、外国人の薬物事件を、次の三つの局面に分けて設計しております。

重大類型ほど、第一の防御線に投入できる時間は限られます。だからこそ、逮捕直後から入管手続を見越した記録の残し方を選ぶ必要がございます。刑事手続で故意や所持の認識を争った経過、押収手続の問題点、家族関係や生活実態を裏づける資料は、いずれも後の手続で主張の土台となるものです。

  • 第一の防御:刑事事件における不起訴処分の獲得(構成要件該当性・故意・違法収集証拠の検討)
  • 第二の防御:退去強制手続における退去強制事由該当性の争い
  • 第三の防御:在留特別許可(50条5項の考慮要素の構築と、公表事例に基づく平等原則の主張)

当事務所の体制について

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)では、松村大介弁護士が、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。事務員や若手弁護士による代行は行わない方針です。

中国語につきましては、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しております。捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続の全般で利用していただくことができます。中国語以外の言語(英語・ベトナム語・韓国語等)については、事案に応じて通訳人を手配いたします。

これまでにお受けした事案から

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底的な分析と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した事案がございます(A-1)。裁判員裁判対象事件や、報道された重大事件にも多数対応してまいりました。

国際刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績もございます(E-1)。重い法定刑が予定された類型では、量刑の枠内での交渉に終始せず、事実そのものを争えるかを最初に見極めることが要点となります。

ヘロイン事犯は、法定刑の重さに目を奪われがちですが、在留という観点では、有罪判決を受けたという一点が同じ重みを持ちます。だからこそ、刑事手続の入口から、退去強制手続と在留特別許可までを一続きの流れとして設計する必要がございます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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