交通事件と在留特別許可|過失運転致死傷・道路交通法違反と配偶者の在留資格
2026/10/11
過失運転致死傷や道路交通法違反は、それだけでは退去強制事由になりにくい一方、オーバーステイなど別の理由で退去強制の手続に入ったときには消極要素として働き、そこで配偶者の在留資格が結論を分けます。令和6年分(2024年)の公表事例では、道路交通法違反で執行猶予付き判決を受けた人は配偶者が定住者で許可され、過失運転致死で執行猶予付き判決を受けた人は配偶者が「技術・人文知識・国際業務」で不許可でした。
本記事の要点
- 入管法24条4号の2が対象とする交通関係の罪は、自動車運転死傷処罰法2条(危険運転致死傷)と6条1項に限られ、過失運転致死傷と道路交通法違反は含まれません。
- ただし、在留資格を問わず、1年を超える実刑であれば4号リに当たります。
- 不法残留などで退去強制の手続に入った場合、交通事件の有罪判決は素行の消極要素として考慮されます。
- 公表事例で交通事件を含む7件のうち、許可は配偶者と子が定住者だった1件だけでした。
交通事件は、退去強制事由に当たりますか。
過失運転致死傷と道路交通法違反は、4号の2の対象ではありません。危険運転致死傷などは対象になり、どの罪でも1年を超える実刑なら4号リに当たります。
4号の2が列挙する交通関係の罪は、次の部分だけです。
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪」(入管法24条4号の2から抜粋)
| 罪名 | 4号の2(別表第一の人) | 4号リ(在留資格を問わない) |
|---|---|---|
| 危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条)、同法6条1項の罪 | 拘禁刑なら執行猶予付きでも該当 | 1年を超える実刑なら該当 |
| 過失運転致死傷(同法5条) | 該当しない | 1年を超える実刑なら該当 |
| 道路交通法違反(無免許運転、酒気帯び運転など) | 該当しない | 1年を超える実刑なら該当 |
条文の「処せられた」は判決の確定を指すものとして運用されています。
交通事件が在留特別許可で問題になるのは、どのような場合ですか。
多くは、不法残留など別の退去強制事由で手続に入り、その際に交通事件の前科が消極要素として評価される場合です。
ガイドラインは、素行が善良でない場合の消極要素として、次の事情を挙げています。
「入管法第50条第1項ただし書に該当する以外の刑罰法令違反に及んだことがあること」(在留特別許可に係るガイドライン第2の3)
退去強制事由に当たらない交通事件でも、在留特別許可の判断では不利に働きます。また、在留資格を持っている人にとっては、在留期間の更新でも素行として考慮されます。更新への影響は刑事処分と在留期間の更新をご覧ください。
公表事例では、配偶者の在留資格で結論が分かれていますか。
分かれています。令和6年分(6月10日以降)の配偶者が正規在留外国人の場合には、ともに出頭申告・不法残留の事案で、交通事件の執行猶予付き判決を受けた2件が、許可と不許可に分かれました。
| 項目 | 許可第3事例 | 不許可第2事例 |
|---|---|---|
| 刑事処分 | 道路交通法違反 懲役1年2月(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)・執行猶予3年 | 過失運転致死 禁固3年(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)・執行猶予4年 |
| 在日期間・婚姻期間 | 在日約6年9月・婚姻約6年7月 | 在日約12年1月・婚姻約12年4月 |
| 子 | 未成年の子1人 | 未成年の子2人 |
| 配偶者の在留資格 | 定住者(子も定住者) | 技術・人文知識・国際業務 |
| 結論 | 許可(定住者・1年) | 不許可 |
不許可の事例の方が在日期間も婚姻期間も長く、子も多いのに、結論は逆でした。もちろん、人が亡くなった事故と道路交通法違反とでは事実の重さが違い、それも判断に影響したはずです。それでも、配偶者が定住者であればガイドラインの「特に考慮する積極要素」に当たり、「技術・人文知識・国際業務」であれば当たらないという差は、結論を左右する大きな要因だったと考えられます。詳しくは配偶者が定住者のときの在留特別許可で取り上げています。
ほかの交通事件の公表事例は、どうなっていますか。
当事務所が平成26年分から令和7年分の公表事例を原典で精査したところ、交通事件を含む事例は7件で、許可は上記の1件だけでした。配偶者が日本人や永住者でも、ほかの消極事情が重なった事案は不許可です。
令和3年分・配偶者が日本人の場合・不許可第2事例は、道路交通法違反で懲役8月の実刑、無免許危険運転致傷等の前科があり、婚姻約2月でした。令和4年分・配偶者が日本人の場合・不許可第1事例は、出頭申告でしたが、無免許過失運転致傷で執行猶予付き判決を受け、退去強制歴がありました。令和4年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第4事例は、配偶者が永住者でしたが、入管法違反と無免許運転で懲役2年・執行猶予3年の判決、婚姻約1年10月、子なしでした。無免許運転の繰り返しや前科は、特に重く見られています。
配偶者が「技術・人文知識・国際業務」のとき、何ができますか。
判決確定までの時間を使い、配偶者の永住許可や帰化を目指すことです。配偶者が別表第一の在留資格で、本人に刑事処分(執行猶予付き判決を含みます)がある公表事例は8件あり、すべて不許可でした。
永住許可はガイドライン上、原則として引き続き10年以上の在留(うち5年以上は就労資格又は居住資格)が目安とされ、帰化も2026年4月1日から運用上、原則10年以上の在留が求められています。配偶者の在留歴に応じて、早く到達できる方を選びます。審査は長期化する傾向にあるため、刑事事件の初期から準備を始めるべきです。詳しくは配偶者が「技術・人文知識・国際業務」のときの在留特別許可をご覧ください。
判決が確定するまでに、ほかに何をすべきですか。
量刑をできるだけ軽くし、確定までの時間を確保することです。過失運転致死傷では、被害者側との示談や賠償、運転をやめる誓約などが量刑の事情になります。
一審判決に事実や量刑で争う点があれば、控訴・上告は被告人の正当な権利であり、被告人だけが控訴した場合は原判決より重い刑になりません(刑事訴訟法402条)。結果として確定までの時間が延びます。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間に家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。全体の考え方は在留特別許可と配偶者の在留資格にまとめています。
交通事件で逮捕・起訴されたら、いつ弁護士に相談すべきですか。
できるだけ早く、遅くとも起訴の前後です。交通事件は軽く考えられがちですが、在留の面では見落とせない影響があります。
- 罪名が4号の2の対象(危険運転致死傷など)か、対象外(過失運転致死傷・道路交通法違反)かを確認する
- 実刑の見込みがあれば、1年を超えるかどうかを意識して量刑の事情を集める
- 在留期間の更新を切らさず、不法残留を生じさせない
- 配偶者の在留資格を確認し、永住許可・帰化の準備を始める
どの段階でも、打てる手は残っています。諦めずにご相談ください。
よくある質問
Q1. 「技術・人文知識・国際業務」の人が過失運転致傷で執行猶予付きの判決を受けたら、退去強制になりますか。
過失運転致傷は入管法24条4号の2に列挙されていないため、同号には当たりません。執行猶予付きであれば4号リにも当たりません。ただし、在留期間の更新では素行として考慮されます。
Q2. 危険運転致傷の場合はどうですか。
危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条)は4号の2の対象です。別表第一の在留資格の人は、拘禁刑に処せられれば執行猶予付きでも退去強制事由に当たります。
Q3. 無免許運転で罰金になりました。在留に影響しますか。
道路交通法違反の罰金だけでは退去強制事由には当たりません。ただし、在留期間の更新や永住許可の審査では考慮され、退去強制の手続に入った場合には素行の消極要素になります。公表事例でも、無免許運転の前科は重く見られています。
Q4. オーバーステイ中に交通事故を起こしました。配偶者は定住者です。
令和6年分の公表事例には、出頭申告・不法残留で道路交通法違反の執行猶予付き判決を受け、配偶者と子が定住者の事案で許可された例があります。もっとも事案ごとに事情は異なるため、刑事事件と入管手続の両面から早めに見通しを立てることが大切です。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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