配偶者が定住者のときの在留特別許可|実刑でも許可された公表事例と不許可の分かれ目
2026/10/11
配偶者が定住者であれば、その婚姻は在留特別許可のガイドラインで「特に考慮する積極要素」に当たり、本人に刑事処分がある事案でも許可の可能性は残ります。令和7年分(2025年)の公表事例では、窃盗で懲役1年2月(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)の実刑判決を受けた人が、配偶者が定住者で未成年の子3人と暮らしていた事案で、入管法50条1項ただし書の「特別の事情」を認められて許可されています。一方、出国命令歴がある事案や覚醒剤事件の前科が重なる事案は、配偶者が定住者でも不許可です。
本記事の要点
- 定住者は入管法別表第二の在留資格なので、定住者との婚姻はガイドライン第2の2(2)ウの「特に考慮する積極要素」に当たります。
- 配偶者が定住者の公表事例には、道路交通法違反の執行猶予判決や、窃盗による1年を超える実刑判決があっても許可された例があります。
- 他方、出国命令歴がある事案や、覚醒剤事件で前科・在留特別許可歴が重なる事案は、配偶者が定住者でも不許可とされています。
- 刑事事件の段階から、退去強制事由を生じさせない弁護と、婚姻の安定・成熟を示す記録づくりを並行して進めることが重要です。
配偶者が定住者だと、在留特別許可ではどう評価されますか。
定住者との婚姻は、ガイドライン上「特に考慮する積極要素」に当たります。ただし、婚姻が安定かつ成熟していることが前提です。
在留特別許可に係るガイドライン(令和6年3月改定・同年6月10日運用開始)は、入管法別表第二の在留資格(永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者)で在留する人との婚姻について、次のように定めています。
「当該外国人が、入管法別表第二に掲げる在留資格で在留している者と法的に婚姻している場合(退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること」(ガイドライン第2の2(2)ウ)
配偶者が「技術・人文知識・国際業務」や「留学」など別表第一の在留資格であれば、この要素には当たりません。配偶者が定住者であることは、評価の出発点で大きな差になります。この違いについては、柱となる記事在留特別許可は配偶者の在留資格で決まるで詳しく説明しています。
もっとも、積極要素と消極要素を総合して判断される点は変わりません(ガイドライン第3)。
配偶者が定住者で許可された公表事例には、どのようなものがありますか。
刑事処分のない事案だけでなく、執行猶予判決や1年を超える実刑判決を受けた事案でも許可例があります。いずれも婚姻期間が長く、未成年の子と暮らしている点が共通しています。
| 公表事例 | 主な事情 | 刑事処分 | 結論 |
|---|---|---|---|
| 令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第2事例 | 出頭申告・不法残留、婚姻約7年6月、未成年の子4人 | なし | 許可(定住者・1年) |
| 令和6年分(6月10日以降)・同・許可第3事例 | 出頭申告・不法残留、婚姻約6年7月、未成年の子1人(配偶者・子とも定住者) | 道路交通法違反で懲役1年2月・執行猶予3年 | 許可(定住者・1年) |
| 令和7年分・同・ただし書該当許可第1事例 | 警察逮捕、在日約34年2月、婚姻約8年11月、未成年の子3人 | 窃盗で懲役1年2月の実刑 | 許可(定住者・1年) |
(出典:出入国在留管理庁「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」各年分。刑名は当時の表記です。)
付与された在留資格は、いずれも「定住者(1年)」でした。
1年を超える実刑判決を受けても、許可されることがあるのですか。
あります。1年を超える実刑判決を受けた人は、入管法50条1項ただし書により「特別の事情」がなければ許可されませんが、配偶者が定住者の事案でこれが認められた例があります。
「本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る。」(入管法50条1項ただし書)
令和7年分でただし書により許可された3件は、いずれも窃盗の実刑事案で、うち1件が配偶者が定住者の事案でした。ただし、改正法施行後の公表事例でただし書により許可された事案の刑期は、1年2月から1年6月の範囲にとどまっています。日本人の実子を監護養育していても2年6月の実刑で不許可とされた例があり(令和7年分・その他・不許可第2事例)、刑期が長いほど難しくなります(1年を超える実刑と在留特別許可)。
配偶者が定住者でも不許可になるのは、どのような場合ですか。
出国命令による出国歴がある場合、覚醒剤事件などで前科や在留特別許可歴が重なっている場合は、配偶者が定住者でも不許可とされています。
| 公表事例 | 主な事情 | 刑事処分 | 結論 |
|---|---|---|---|
| 令和7年分・同・不許可第3事例 | 出頭申告・不法残留、婚姻約1年4月、子なし、出国命令歴あり | なし | 不許可 |
| 令和2年分・同・不許可第1事例 | 警察逮捕・不法残留、婚姻約6月、子なし、出国命令による出国歴あり | 入管法違反で懲役1年・執行猶予3年 | 不許可 |
| 令和5年分・同・不許可第4事例 | 本人・配偶者とも定住者、未成年の子5人、前科1件、在留特別許可歴あり | 覚醒剤取締法違反で懲役1年6月・執行猶予3年 | 不許可 |
| 令和6年分(6月10日以降)・同・不許可第4事例 | 在日約25年9月、婚姻約9年9月、前科3件、在留特別許可歴あり | 覚醒剤取締法違反で懲役1年6月の実刑 | 不許可 |
令和7年分の不許可第3事例は、出頭申告で刑事処分もなく、配偶者は定住者でしたが、婚姻期間が短く、出国命令歴がありました。ガイドラインは、素行の消極要素として「過去に退去強制手続又は出国命令手続をとられたことがあること」を挙げています(第2の3)。出国命令の仕組みは出国命令とはをご覧ください。
刑事事件の段階で、何をしておくべきですか。
退去強制事由を生じさせない、あるいは軽くするための刑事弁護と、婚姻の安定・成熟を示す記録づくりを同時に進めることです。
第一に、不起訴や罰金、執行猶予を目指す弁護活動です。本人が家族滞在など別表第一の在留資格なら、所定の罪で拘禁刑に処せられると執行猶予付きでも退去強制事由になりますが(入管法24条4号の2)、罰金にとどまれば当たりません。実刑でも1年以下なら24条4号リや50条1項ただし書の対象外です。薬物事件は罰金でも当たります(同条4号チ)。
第二に、判決の確定までの時間の使い方です。控訴の提起期間は14日で(刑事訴訟法373条)、上告にも準用されます(同法414条)。被告人だけが控訴した事件では原判決より重い刑は言い渡せません(同法402条)。上訴は被告人の正当な権利であり、結果として確定までの時間が延びることになります。
第三に、家族側の準備です。配偶者の定住者の在留期間更新を切らさないこと、要件を満たすのであれば永住許可も検討すること(永住許可に関するガイドラインには定住者の在留期間に関する特例があります)、同居・家計の共同・子の監護養育の記録を残すことです。詳しくは配偶者が定住者から永住者になるまでで扱っています。
弁護士に相談するのは、いつがよいですか。
逮捕された直後、遅くとも起訴される前が望ましい時期です。在留特別許可の見通しは、入管の手続に入る前の刑事事件の段階で大きく変わります。
当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。配偶者が定住者の事案は、主張の組み立て次第で道が開ける類型です。もっとも、結論は個別の事情によって異なり、許可をお約束できるものではありません。
よくある質問
Q1. 配偶者が定住者なら、執行猶予判決でも在留特別許可を受けられますか。
令和6年分(6月10日以降)の許可第3事例のように、道路交通法違反の執行猶予判決を受けながら許可された例はあります。ただし、許否は積極要素と消極要素の総合判断で、覚醒剤事件で前科が重なる事案などは執行猶予でも不許可とされています。
Q2. 以前、出国命令で帰国したことがあります。不利になりますか。
ガイドライン第2の3は、過去に出国命令手続をとられたことを素行の消極要素に挙げています。令和7年分の不許可第3事例は、出頭申告・刑事処分なし・配偶者が定住者という事案でも、出国命令歴があって不許可でした。それを補う事情を早い段階から整える必要があります。
Q3. 1年を超える実刑判決を受けた場合、もう在留は認められませんか。
入管法50条1項ただし書により、人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がなければ許可されません。それでも令和7年分には、配偶者が定住者で窃盗の実刑を受けた人が許可された例があります。刑期が長くなるほど難しくなるため、刑事裁判での量刑が重要です。
Q4. 配偶者は定住者のままでよいのでしょうか。永住許可を目指すべきですか。
定住者のままでも、その婚姻はガイドライン第2の2(2)ウの積極要素に当たります。ただ、定住者は更新が必要な在留資格です。配偶者の在留を安定させる意味で、永住の要件を満たすなら申請を検討する価値はあります。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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