在留特別許可の公表事例とは|入管庁が毎年出す許可・不許可事例の読み方を弁護士が解説
2026/10/11
在留特別許可の公表事例とは、出入国在留管理庁が「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」として毎年公表している、許可・不許可の具体例の一覧をいいます(判断の根拠は入管法50条1項・5項)。
令和7年分(2025年)は令和8年7月に公表され、令和5年改正法(令和6年6月10日施行)の下で初めての通年分となりました。発覚のきっかけ、在日期間、婚姻期間、子の有無、刑事処分、配偶者の在留資格まで記載されており、ガイドラインの文言だけでは見えない実際の線引きを知るための、最も具体的な手がかりです。
本記事の要点
- 公表事例は、配偶者が日本人の場合、配偶者が正規在留外国人の場合、子と共に不法滞在の場合、その他の4類型に分けて、許可例と不許可例を並べています。
- 令和6年6月10日以降の分からは、入管法50条1項ただし書に当たりながら「特別の事情」により許可された事例が別に区分されています。
- 令和7年分は、通常の許可事例10件、不許可事例10件、ただし書該当の許可事例3件で構成されています。
- 平成26年分から令和7年分までのうち刑事処分のある153件を当事務所が原典で照合したところ、通常の許可15件、ただし書許可6件、不許可132件でした。
- 当事務所は、公表事例を一種の裁量基準として読み、合理的な理由なくそこから外れた処分は平等原則・比例原則の観点から争う立場をとっています。
在留特別許可の公表事例とは何ですか。
入管庁が毎年、在留特別許可をした事案としなかった事案を類型ごとに選び、事案の概要を表にして公表しているものです。令和7年分は、入管庁のウェブサイトにPDFで掲載されています。
在留特別許可をするかどうかは、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などを総合して判断されます(入管法50条5項)。ガイドラインは、その総合判断の考え方を次のように示しています。
「各考慮事情に認められる積極要素及び消極要素を総合的に勘案し、積極要素として考慮すべき事情が消極要素として考慮すべき事情を明らかに上回る場合には、在留特別許可をする方向で検討することとなります。」(在留特別許可に係るガイドライン第3)
この「総合的に勘案」が実際にどこで線を引いているのかは、条文やガイドラインだけでは分かりません。公表事例は、その答えに最も近い公式の資料です。
公表事例はどのような類型に分かれていますか。
本人の家族関係に応じて4つの類型に分かれ、それぞれに許可事例と不許可事例が並んでいます。令和6年6月10日以降の分からは、これに入管法50条1項ただし書該当の許可事例が加わりました。
| 類型 | 主な内容 | 令和7年分の件数 |
|---|---|---|
| 配偶者が日本人の場合 | 日本人と婚姻している外国人 | 許可3件・不許可3件・ただし書許可1件 |
| 配偶者が正規在留外国人の場合 | 永住者、定住者、「技術・人文知識・国際業務」など在留資格を持つ外国人と婚姻している外国人 | 許可3件・不許可3件・ただし書許可1件 |
| 子と共に不法滞在の場合 | 親子で不法に滞在している家族 | 許可1件・不許可1件・ただし書該当なし |
| その他 | 日本人の実子の監護養育、日本での出生・成育、長期の定着など | 許可3件・不許可3件・ただし書許可1件 |
配偶者の在留資格で類型が分かれていること自体が、家族関係、とりわけ配偶者の地位が判断の中心にあることを示しています。
各事例にはどのような情報が書かれていますか。
判断に関わる主な事情が一行ずつ記載されています。どの欄が結論を分けたのかを比べるのが、読み方の基本です。
- 発覚のきっかけ(出頭申告、警察逮捕、摘発、職員探知、関係機関からの通報)
- 違反の態様(不法残留、不法入国、刑罰法令違反、不法就労助長、薬物法令違反など)
- 在日期間、不法滞在期間、婚姻期間、子の人数と年齢
- 刑事処分(罪名と刑。罰金、執行猶予、実刑の別)
- 特記事項(配偶者の在留資格、退去強制歴、在留特別許可歴、出国命令歴など)
- 許可された在留資格と在留期間
刑事処分の欄の「懲役」「禁錮」は原文の表記です(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)。
「ただし書該当」の事例とは何ですか。
無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた人など、入管法50条1項ただし書に当たる人について、「特別の事情」があるとして在留特別許可がされた事例です。ただし書は、こうした人について次のように定めています。
「本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る。」(入管法50条1項ただし書)
令和7年分のただし書許可3件は、いずれも窃盗による実刑判決の事案で、刑は懲役1年2月が2件、懲役1年6月が1件でした。背景は、日本人配偶者との婚姻約33年4月、定住者の配偶者と未成年の子3人、日系人として日本で生まれ教育を受けたこと、と、いずれも強い事情を伴っています。「特別の事情」の考え方は人道上の配慮とはで詳しく取り上げています。
公表事例から、配偶者の在留資格による違いは読み取れますか。
読み取れます。配偶者が永住者・定住者・日本人であれば刑事処分があっても許可された例がある一方、配偶者が別表第一の在留資格で本人に刑事処分がある事例は、平成26年分から令和7年分まですべて不許可です。
たとえば令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第1事例は、入管法違反(不法残留)により懲役1年、執行猶予3年の判決を受けた人で、配偶者は「永住者」、結論は「永住者の配偶者等(1年)」での許可でした。同じ類型の不許可第1事例は、偽造在留カード行使により懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けた人で、配偶者は「技術・人文知識・国際業務」、夫婦の子は本国で祖父母と生活していました。罪名が違うため単純には比べられませんが、全体の傾向とは一致しています。
この点は、シリーズの柱である在留特別許可と配偶者の在留資格で詳しく整理しています。
公表事例はどのように使えばよいですか。
自分の事案に近い事例を探し、許可例との共通点と不許可例との違いを具体的に示す材料として使います。当事務所は、公表事例を一種の裁量基準として読む立場をとっています。
入管庁自身が境目を示した事例である以上、似た事情の事案で合理的な理由なく異なる結論を出すことは、平等原則・比例原則の観点から問題になり得ます。
他方で、表の一行だけで結論を説明することはできず、記載されていない事情が判断を左右していることもあります。また、公表事例は行政庁の判断の積み重ねであり、裁判所の判断とは別のものです。当事務所が集約した事例は在留特別許可の公表事例データベースでご覧いただけます。
刑事事件を抱えている人は、公表事例から何を学べますか。
罪名や刑だけでなく、配偶者の在留資格が結論を大きく左右するという事実です。そして、配偶者の地位は判決確定までの時間を使って変えられる可能性があります。
刑事判決を理由とする退去強制事由は、判決の確定によって生じるものとして運用されています。捜査段階から上訴審まで適切に対応すれば、確定までに一定の時間が生まれることがあり、その間に配偶者の永住許可や帰化を進めておけば、公表事例上の位置づけが変わります。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。もっとも、結果は個別の事情によって異なり、許可をお約束できるものではありません。
よくある質問
Q1. 公表事例はどこで見ることができますか。
出入国在留管理庁のウェブサイトで、「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」として年ごとにPDFで公表されています。令和7年分は令和8年7月に公表されました。表組みのPDFは行と列を読み違えやすいため、原典の確認が欠かせません。
Q2. 自分と似た許可事例があれば、許可されますか。
許可されるとは限りません。似た許可事例は有力な主張材料になりますが、ガイドライン第3のとおり、結論は個別の事情を総合して判断されます。
Q3. 執行猶予付き判決でも許可された事例はありますか。
あります。令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第1事例は、懲役1年、執行猶予3年の判決を受けた人で、配偶者が「永住者」でした。ただし、配偶者が別表第一の在留資格で本人に刑事処分がある公表事例は、執行猶予付き判決を含めすべて不許可です。
Q4. 実刑判決を受けた人の許可事例はありますか。
あります。令和6年6月10日以降の分から入管法50条1項ただし書該当の許可事例が区分され、令和7年分では窃盗による懲役1年2月又は1年6月の実刑の事案3件が許可されています。いずれも日本人や定住者の配偶者がいる、日本で生まれ育ったなどの強い事情を伴っています。
Q5. 公表事例と違う結論が出た場合、争うことはできますか。
不許可処分に対しては取消訴訟が考えられ、似た公表事例との違いに合理的な理由があるかが重要な争点になります。詳しくは退去強制の取消訴訟をご覧ください。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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