退去強制令書の取消訴訟とは|提訴期限・争点・執行停止との関係を弁護士が解説
2026/10/05
最終更新日:2026年10月5日
退去強制令書の取消訴訟とは、入管が発付した退去強制令書の処分を違法であるとして、裁判所にその取消しを求める訴訟(行政事件訴訟法3条2項の処分の取消しの訴え)です。
この記事の要点
- 出訴期間は、処分があったことを知った日から6か月です(行政事件訴訟法14条1項)。処分の日から1年を過ぎると、正当な理由がない限り提訴できません(同条2項)。
- 提訴しただけでは、収容も送還も止まりません(執行不停止の原則、同法25条1項)。止めるには、執行停止の申立てを併せて行います。
- 主な争点は、退去強制事由に当たるか、在留特別許可をしなかった判断が裁量権の逸脱・濫用でないか、手続に違法がないか、の3点です。
- 提訴の前に、入管での口頭審理の請求や異議の申出(入管法48条・49条)の手続を経ているのが通常です。
退去強制令書の取消訴訟では、何を争うのですか。
争う対象は、入管の主任審査官が発付した退去強制令書の処分です。入管法上の退去強制事由(同法24条)への該当性と、法務大臣等が在留特別許可(同法50条)を与えなかった判断の適否が中心になります。後者は広い裁量が認められる分野ですが、裁量にも限界があり、考慮すべき事情を考慮していない場合や、判断が社会通念に照らして著しく妥当性を欠く場合は違法となります。
提訴すれば、送還は止まりますか。
止まりません。行政事件訴訟法25条1項は、処分取消訴訟を提起しても処分の効力・執行・手続の続行は妨げられないと定めています。送還や収容を止めるには、同条2項の執行停止を申し立てる必要があり、その認否は裁判所の判断です。提訴の時期と執行停止の申立て時期は、事前に設計しておくことが重要です。
在留特別許可との関係はどうなりますか。
退去強制令書が発付された後は、在留特別許可の申請はできません(入管法50条3項)。令和6年6月10日施行の改正で、50条5項に在留特別許可の考慮事情が法定されました。取消訴訟では、これらの事情を具体的に主張・立証して、不許可の判断を争います。
退去強制令書の取消訴訟の基本事項
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 訴訟の種類 | 処分の取消しの訴え(行政事件訴訟法3条2項) |
| 被告 | 国 |
| 出訴期間 | 知った日から6か月、処分の日から1年(14条) |
| 送還・収容の停止 | 提訴だけでは停止されない。執行停止を別途申立て(25条) |
| 主な争点 | 退去強制事由の該当性、在留特別許可の不許可判断、手続の違法 |
よくある質問(FAQ)
提訴の期限はいつまでですか。
処分があったことを知った日から6か月です。処分の日から1年という制限もあります。期限を過ぎると、原則として取消訴訟はできません。
提訴すれば収容は解かれますか。
解かれません。収容を解く方法は、仮放免や監理措置の請求など、別の手続です。
家族だけでも相談できますか。
相談できます。ただし、委任には本人の意思確認が必要です。収容中は接見で確認します。
在留特別許可の申請と取消訴訟は、どちらを選ぶのですか。
退去強制令書の発付後は在留特別許可の申請ができないため、争う方法は取消訴訟になります。発付前の段階にあるかどうかで、取れる手段が変わります。
根拠条文と一次資料
執筆:松村大介(弁護士・第一東京弁護士会所属・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所/微信ID:matsumura1119
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については事実関係を踏まえた検討が必要です。
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