子どもが日本の学校に通う家族の在留特別許可|家族滞在の子と教育歴の評価を弁護士が解説
2026/10/11
子どもが日本の学校で学んでいることは在留特別許可の判断で積極的に評価される事情ですが、それだけで刑事処分の重さや配偶者の在留資格の弱さを埋めることは難しく、教育歴の立証と配偶者の在留上の地位の引上げを並行して進めるのが現実的な対応です。
「技術・人文知識・国際業務」の夫と「家族滞在」の妻、日本の小中学校に通う子ども。こうした家族の一人が逮捕されたとき、子どもの学校生活がどこまで考慮されるのかを、ガイドラインと公表事例から整理します。
本記事の要点
- ガイドラインは、家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性を積極要素として考慮すると明記しています(第2の2)。
- 日本の初等中等教育機関で相当期間教育を受け、本国での教育が困難な子を監護養育していることは、一定の条件の下で特に考慮する積極要素になります(第2の2(3)イ)。
- 母国語による教育を行う学校は、ここでいう初等中等教育機関から除かれています。
- 配偶者が別表第一の在留資格で本人に刑事処分がある公表事例8件はすべて不許可で、子の存在だけで結論は動いていません。
- 判決確定までの時間を使い、子の教育歴の資料を整えつつ、配偶者の永住許可や帰化を進めることが大切です。
ガイドラインは、子どもの存在をどう評価していますか。
家族とともに生活をするという子の利益を守る必要性は、積極要素として考慮されます。令和6年の改定で、この点が明確にされました。
「家族関係は、在留特別許可をするかどうかの判断において、重要な要素となり得るものであり、中でも、家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性は、積極要素として考慮されます。」(ガイドライン第2の2)
入管庁は改定の趣旨として、子の利益の保護の必要性を積極的に評価すること、学校や自治会などの地域社会との関係も積極的に評価することを挙げています。入管法50条5項も、考慮事情として「家族関係」を明記しています。
日本の学校に通う子がいる場合の「特に考慮する積極要素」とは何ですか。
日本の小中学校などで相当期間教育を受けている実子を、同居して監護養育している親で、地域社会に相当程度溶け込んでいる場合です。配偶者が日本人や永住者でなくても使える類型である点が重要です。
「当該外国人が、本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けており、かつ、本国で初等中等教育を受けることが困難な事情等が認められる実子と同居しており、かつ、当該実子を監護及び養育している場合であって、地域社会で一定の役割を果たすなど相当程度に地域社会に溶け込んでいる者であること」(ガイドライン第2の2(3)イ)
| 要件 | 確認される内容 | 主な資料 |
|---|---|---|
| 本邦の初等中等教育機関 | 日本の小学校・中学校・高校など。母国語による教育を行う学校は除く | 在学証明書、卒業証明書 |
| 相当期間の教育 | 日本の学校で学んできた期間の長さ | 通知表、在籍の記録 |
| 本国での教育が困難な事情 | 母語の読み書き、学習の継続の難しさなど | 学校の意見書、学習状況の資料 |
| 同居・監護養育 | 親が子と暮らし、日常の世話をしていること | 住民票、学校との連絡の記録 |
| 地域社会への溶け込み | 親自身が地域で役割を果たしていること | 自治会、PTAなどの活動の資料 |
注意したいのは、ガイドラインが初等中等教育機関について「母国語による教育を行っている教育機関を除く」としていることです。中華学校などに通っている場合は、この類型には当たりません。
子どもが家族滞在のとき、親の刑事事件は子の在留にどう影響しますか。
家族滞在は、別表第一の在留資格を持つ親の扶養を受ける子に与えられる在留資格です。扶養している親が退去強制の対象になれば、子の在留の前提そのものが揺らぎます。
また、家族滞在も別表第一の在留資格です。家族滞在の親が窃盗・詐欺・傷害など一定の罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予付きでも退去強制事由に当たります(入管法24条4号の2)。罰金のみであれば同号には当たりません。どちらの親が事件を起こしたかによって、家族全体に及ぶ影響の出方が変わるため、最初に整理しておく必要があります。こうした家族構成の典型例は中国人夫婦(技術・人文知識・国際業務と家族滞在)の場合で取り上げています。
公表事例では、子どもがいることで結論は変わっていますか。
配偶者が別表第一の在留資格で本人に刑事処分がある事案では、子がいても許可された例は見当たりません。子の存在が強く働くのは、配偶者や子自身が別表第二の在留資格を持つ場合や、子に特別な事情がある場合です。
| 公表事例 | 家族の状況 | 本人の刑事処分 | 結論 |
|---|---|---|---|
| 令和2年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第2事例 | 配偶者「留学」、子「家族滞在」 | 窃盗 懲役2年 | 不許可 |
| 令和2年分・同・不許可第4事例 | 配偶者「技術・人文知識・国際業務」、子「家族滞在」 | 入管法違反 懲役2年2月・執行猶予3年 | 不許可 |
| 令和6年分(6月9日まで)・同・不許可第1事例 | 配偶者「技術・人文知識・国際業務」、未成年の子1人 | なし | 不許可 |
| 令和6年分(6月10日以降)・同・許可第3事例 | 配偶者及び子「定住者」 | 道路交通法違反 懲役1年2月・執行猶予3年 | 許可(定住者) |
懲役は当時の刑名で、現行法の拘禁刑に相当します。令和5年分(2023年)には、配偶者が「教育」の在留資格で、子に疾病があることが考慮されて許可された事例もあります。子がいるという事実だけでなく、その子が日本でどのような生活を送り、どのような支えを必要としているかが問われていると読むべきです。
刑事処分があっても、教育歴や子の事情が効いた例はありますか。
あります。いずれも実刑判決を受けながら、入管法50条1項ただし書の「特別の事情」が認められた事例です。
- 令和7年分(2025年)・その他の場合・ただし書該当許可第1事例:窃盗により懲役1年6月の実刑判決。特記事項は「日系人として本邦で出生し、本邦の教育機関で教育を受けたもの。」で、「定住者(1年)」が付与されています。
- 令和6年分(6月10日以降)・その他の場合・ただし書該当許可第1事例:盗品等有償譲受け等により懲役1年6月・罰金20万円の実刑判決。未成年の子の在留資格は「永住者」で、「定住者(1年)」が付与されています。
日本での教育歴や子の事情が、刑事処分がある場合にも積極的に働き得ることを示しています。もっとも、どちらも量刑は1年6月にとどまり、配偶者が別表第一の事案ではありません。
子どもの学校生活は、どのような資料で示せばよいですか。
在学の事実、学んできた期間、日本での生活への定着、本国で学ぶことの難しさを、学校や地域の第三者の資料で示します。ガイドラインは申立ての内容だけでなく、具体的な根拠や客観的な状況を見るとしているからです(第3)。
- 在学証明書、これまでの通知表、出席の状況が分かる資料
- 担任や校長による、学校での様子や日本語での学習状況についての書面
- 母語の読み書きの状況など、本国で教育を続けることが難しい事情
- 親が自治会やPTAなどで果たしている役割の資料
子どもが日本で生まれた場合の論点は日本で生まれた子と在留特別許可で詳しく扱っています。
刑事事件の段階から、家族として何を進めるべきですか。
子の教育歴の資料を集めることと並行して、配偶者の在留上の地位を引き上げる準備を始めてください。刑事判決を理由とする退去強制事由は判決の確定で生じるため、それまでの期間を使うことができます。
ガイドラインが婚姻を特に考慮する積極要素とするのは、配偶者が日本人・特別永住者か、永住者・定住者など別表第二の在留資格である場合です(第2の2(1)ウ・(2)ウ)。配偶者が永住許可を受ければ、子の教育歴に加えて婚姻も積極要素として主張できるようになります。永住許可は原則10年の在留が目安で、審査にも時間がかかる傾向にあるため、早く動くほど選択肢が広がります。理由は配偶者の永住申請を急ぐべき理由をご覧ください。
当事務所には、有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間に家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。全体像は在留特別許可と配偶者の在留資格で整理しています。
よくある質問
Q1. 子どもが日本の学校に通っていれば、在留特別許可は認められますか。
それだけで認められるわけではありません。ガイドラインは子の利益を積極要素としつつ、積極要素と消極要素を総合的に考慮するとしています(第3)。
Q2. 中華学校やインターナショナルスクールに通っている場合も評価されますか。
ガイドライン第2の2(3)の類型では、初等中等教育機関から「母国語による教育を行っている教育機関」が除かれています。この類型には当たらない可能性が高いですが、子の利益や地域社会との関係として別に主張する余地はあります。
Q3. 子どもが小さく、まだ学校に通っていない場合はどうなりますか。
初等中等教育機関での教育歴を前提とする第2の2(3)の類型には当たりません。その場合は、家族とともに生活する子の利益(第2の2)や、配偶者の在留資格に基づく積極要素を中心に組み立てることになります。
Q4. 親が退去強制になったら、家族滞在の子どもも日本にいられなくなりますか。
家族滞在は扶養する親の在留資格を前提とする在留資格なので、扶養者が退去強制になれば子の在留にも影響が及びます。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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