退去強制対象者とは|入管法45条の定義と在留特別許可の前提を弁護士が解説
2026/10/11
退去強制対象者とは、入管法24条各号のいずれかに該当し、かつ、出国命令対象者に該当しない外国人をいいます(入管法45条1項括弧書)。在留特別許可は、この退去強制対象者に当たる外国人について、なお日本での在留を認めるかどうかを判断する制度です(50条1項)。刑事事件をきっかけに手続に入る人にとっては、24条のどの号に当たるかが、その後の見通しを大きく左右します。
本記事の要点
- 退去強制対象者かどうかは、24条各号に該当することと、出国命令対象者に該当しないことの二つで決まります(45条1項)。
- 刑事事件に関係する主な号は24条4号の2・4号チ・4号リで、執行猶予や罰金の扱いが号ごとに異なります。
- 刑事判決を理由とする号は、判決の確定によって該当するものとして運用されています。
- 1年を超える実刑などは50条1項ただし書に当たり、特別の事情がなければ在留特別許可はされません。
- 退去強制対象者に当たっても在留特別許可の余地はあり、配偶者の在留資格はその判断の重要な要素です。
退去強制対象者とは、法律上どのように定められていますか。
入管法45条1項の括弧書が定義しています。24条各号のいずれかに該当すること、出国命令対象者に該当しないこと、この二つを満たす外国人が退去強制対象者です。
「容疑者が退去強制対象者(第二十四条各号のいずれかに該当し、かつ、出国命令対象者に該当しない外国人をいう。以下同じ。)に該当するかどうかを速やかに審査しなければならない。」(入管法45条1項)
この審査を行うのは入国審査官で、退去強制対象者に該当すると認定したときは、理由を付した書面で本人に知らせなければなりません(47条3項)。審査と認定の流れは違反審査と認定とはで取り上げています。
24条各号のうち、刑事事件に関係するのはどの号ですか。
刑事処分に直接結びつく主な号は、4号の2、4号チ、4号リの三つです。どの号に当たるかで、執行猶予や罰金の扱いが変わります。
| 号 | 対象 | 執行猶予・罰金の扱い | 50条1項ただし書 |
|---|---|---|---|
| 24条4号の2 | 別表第一の在留資格の人が、刑法の窃盗・詐欺・傷害などの章の罪、暴力行為等処罰法、盗犯等防止法、自動車運転死傷処罰法2条・6条1項の罪などで拘禁刑に処せられた場合 | 全部執行猶予でも該当。罰金のみなら該当しない | 1年を超える実刑なら該当 |
| 24条4号チ | 麻薬・大麻・覚醒剤などの薬物関係法令に違反して有罪の判決を受けた場合(在留資格を問わない) | 罰金・執行猶予でも該当 | 1年を超える実刑なら該当 |
| 24条4号リ | 無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合 | 全部執行猶予、一部執行猶予で実刑部分が1年以下のものは除外 | 該当 |
このほか、不法就労助長に当たる行為を行った者(24条3号の4)や、在留カードの偽変造等に関わった者(同条3号の5)のように、条文上、刑の言渡しを要件としていない号もあります。オーバーステイ(不法残留)も同様で、判決を待たずにその事実自体が退去強制事由になります。各号の全体像は退去強制事由とはをご覧ください。
「処せられた」とは、いつの時点を指しますか。
24条4号の2・4号リの「処せられた」、4号チの「有罪の判決を受けた」は、判決の確定を指すものとして運用されています。第1審で有罪判決を受けても、上訴している間は、これらの号に基づく手続は本格的には動きません。
控訴の提起期間は14日で(刑事訴訟法373条)、上告にもこの規定が準用されます(同法414条)。上訴は被告人の正当な権利であり、事実や量刑に争う点があれば、より良い判決を求めることができます。被告人だけが控訴した事件では、原判決より重い刑を言い渡すことはできません(同法402条)。その結果として確定までの時間が延びることは、在留の面から見て大きな意味を持ちます。
出国命令対象者に当たる場合は、どうなりますか。
出国命令対象者に当たる人は退去強制対象者から除かれ、退去強制令書ではなく出国命令によって出国する手続に移ります。審査の結果、出国命令対象者に該当すると認定されたときは主任審査官に知らされ、出国命令を受けたときは放免されます(入管法47条2項)。
出国命令は、主に不法残留の人が自ら出頭した場合などを想定した制度で、刑事事件で判決を受けて手続に入る人が対象となる場面は限られます。要件は出国命令とはで確認できます。
退去強制対象者に当たると、在留特別許可はどう判断されますか。
退去強制対象者に当たることは、在留特別許可の前提です。在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実などを考慮して判断されます(入管法50条5項)。
「法務大臣は、外国人が退去強制対象者に該当する場合であつても、次の各号のいずれかに該当するときは、当該外国人からの申請により又は職権で、法務省令で定めるところにより、当該外国人の在留を特別に許可することができる。」(入管法50条1項)
ただし、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた人(全部執行猶予、一部執行猶予で実刑部分が1年以下の人を除きます)などは、50条1項ただし書により、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がなければ許可されません。たとえば24条4号の2に当たっても執行猶予付きであれば、ただし書には当たらず、通常の総合判断に服します。
配偶者の在留資格は、ここでどのような意味を持ちますか。
退去強制対象者であることは同じでも、配偶者の在留資格によって、婚姻の評価の出発点が違います。在留特別許可に係るガイドラインが婚姻を特に考慮する積極要素とするのは、配偶者が日本人・特別永住者か、別表第二の在留資格(永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者)で在留している場合です(第2の2(1)ウ・(2)ウ)。
公表事例でも差ははっきりしています。令和7年分(2025年)・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第1事例では、入管法違反(不法残留)により懲役1年執行猶予3年(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)の判決を受けた人が、配偶者が永住者であることから「永住者の配偶者等(1年)」で許可されています。一方、配偶者が別表第一の在留資格で、本人に刑事処分(執行猶予を含みます)がある公表事例は平成26年分から令和7年分までに8件あり、すべて不許可でした。
退去強制対象者になる前に、何ができますか。
まず、退去強制事由そのものを生じさせない弁護活動です。別表第一の在留資格の人なら、不起訴や罰金にとどまれば24条4号の2には当たりません(薬物事件は罰金でも4号チに当たります)。
次に、判決確定までの時間を使い、配偶者の在留上の地位を引き上げることです。配偶者が帰化して日本人になるか、少なくとも永住許可を受けておけば、退去強制対象者として手続に入った時点で、婚姻がガイドラインの特に考慮する積極要素に当たります。帰化・永住とも審査期間は長期化する傾向にあるため、逮捕直後から準備を始めることが大切です。当事務所には、有罪判決を受けた方について、確定までに家族の状況を整えて在留特別許可を得た実績があります。考え方の全体は在留特別許可と配偶者の在留資格をご覧ください。
よくある質問
Q1. 執行猶予付きの判決なら、退去強制対象者にはなりませんか。
在留資格と罪名によります。別表第一の在留資格の人が24条4号の2の罪で拘禁刑に処せられれば、執行猶予付きでも該当します。薬物事件は罰金でも4号チに当たります。
Q2. 退去強制対象者に当たると、すぐに送還されますか。
いいえ。収容令書により収容されるか監理措置決定を受けた後、在留特別許可を申請でき(入管法50条2項)、違反審査、口頭審理などの手続を経て判断されます。ただし、認定に服した日から3日以内に申請しないと退去強制令書が発付されます(47条5項2号)。
Q3. 1年を超える実刑判決を受けたら、在留特別許可は無理ですか。
50条1項ただし書により、特別の事情がなければ許可されません。ただ、令和7年分の公表事例では、窃盗による1年2月から1年6月の実刑で、ただし書による許可が3件あります。量刑と家族の事情を踏まえた検討が必要です。
Q4. 配偶者が「技術・人文知識・国際業務」の場合、何をすべきですか。
婚姻はガイドラインの特に考慮する積極要素に挙げられていないため、判決確定までに配偶者の永住許可や帰化を検討する価値があります。帰化・永住それぞれの要件を満たすかを早めに確認してください。
シリーズの関連記事
- 【柱記事】在留特別許可は配偶者の在留資格で分かれる
- シリーズ総索引(全記事一覧)
- 在留特別許可に係るガイドラインとは|構成と配偶者の位置づけ、「明らかに上回る」の意味
- 特に考慮する積極要素とは|在留特別許可ガイドラインの列挙と配偶者の在留資格
- 特に考慮する消極要素とは|不法就労助長・偽造在留カード・売春と在留特別許可を弁護士が解説
本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
中文版(简体):退去强制对象者是什么|入管法第45条的定义与在留特别许可的前提