接近禁止命令とは|DV防止法の保護命令の種類・要件・手続とストーカー規制法との違い
2026/09/10
接近禁止命令とは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に基づき、地方裁判所が、被害者の申立てにより、配偶者等に対し、1年間、被害者の身辺につきまとい、または被害者の住居や勤務先など通常所在する場所の付近をはいかいすることを禁止する保護命令をいう。(配偶者暴力防止法10条1項)
- 命令を出すのは警察ではなく地方裁判所である
- 期間は1年、退去等命令のみ原則2か月である
- 電話やSNSを止めるには別の命令が必要である
- 違反すると2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
- 在留資格の有無にかかわらず申立てができる
接近禁止命令は何を禁止するのか
被害者の身辺につきまとうことと、通常いる場所の付近をはいかいすることの2つである。対象は住居に限られず、勤務先や日常的に立ち寄る場所も含まれる。禁止されるのは物理的な接近であり、電話やメールを止めるには電話等禁止命令を併せて申し立てる。
保護命令にはどのような種類があるのか
対象者と行為の種類に応じて6つの類型がある。令和6年4月1日施行の改正で、期間が6か月から1年に伸ばされ、子に対する電話等禁止命令が新設された。禁止行為にもSNSによる送信や位置情報の無断取得が加わった。
| 種類 | 禁止される行為 | 期間 |
|---|---|---|
| 接近禁止命令 | 身辺へのつきまとい、通常所在する場所の付近のはいかい | 1年 |
| 電話等禁止命令 | 面会の要求、監視の告知、粗野な言動、無言電話や連続した電話、夜間の電話やメール、汚物の送付、名誉を害する告知、性的羞恥心を害する行為、位置情報の無断取得 | 1年 |
| 子への接近禁止命令 | 同居する未成年の子へのつきまといなど | 1年 |
| 子への電話等禁止命令 | 子に対する面会の要求、電話やメールなど | 1年 |
| 親族等への接近禁止命令 | 親族など支援者へのつきまといなど | 1年 |
| 退去等命令 | 共に生活の本拠とする住居からの退去とその付近のはいかい | 原則2か月 |
夜間とは午後10時から午前6時までをいう。子や親族等に関する命令は、接近禁止命令があることを前提とし、子が15歳以上のときはその同意を要する。
どのような場合に命令が出されるのか
配偶者からの暴力または脅迫を受けた被害者が、更に重大な危害を受けるおそれが大きいと認められる場合である。前提となる被害は、身体に対する暴力のほか、生命や身体に対する加害の告知による脅迫である。令和6年4月1日施行の改正で、自由、名誉または財産に対する加害の告知による脅迫も対象に加わり、精神的な被害の重大性も踏まえて判断する枠組みに改められた。
配偶者には事実上婚姻関係と同様の事情にある者が含まれ、離婚後も、婚姻中に暴力を受け引き続き暴力を受けるおそれがあれば申立てができる。生活の本拠を共にする交際相手にも準用される。
だれが、どこに申し立てるのか
被害者本人が地方裁判所に申し立てる。管轄は、相手方または申立人の住所や居所の所在地、暴力や脅迫が行われた地の地方裁判所である。手数料は収入印紙1,000円と郵便切手である。
申立書には、暴力や脅迫の状況、更に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる事情、配偶者暴力相談支援センターまたは警察に相談した事実を記載する。相談していない場合は、記載が真実であることを公証人の面前で宣誓した供述書を添える。診断書、写真、録音、相談記録は早めに保全したい。
裁判所は、原則として相手方が立ち会うことのできる審尋を経て判断する。申立書の写しが送達されるため、避難先の住所を知られない配慮が重要になる。
命令に違反するとどうなるのか
刑事罰の対象となり、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金に処せられる。保護命令は民事の裁判手続で発せられるが、実効性は刑罰で担保されている。違反されたときは、命令の謄本を示して速やかに警察に相談したい。
ストーカー規制法の禁止命令等とどう違うのか
命令を出す機関が異なる点が最も大きい。保護命令は被害者の申立てにより地方裁判所が発し、禁止命令等は都道府県公安委員会が発する行政上の命令である。同居していない交際相手や一方的に好意を寄せる者による被害は、ストーカー規制法で対応する。
| 項目 | 保護命令 | 禁止命令等 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 配偶者暴力防止法 | ストーカー規制法 |
| 発する機関 | 地方裁判所 | 都道府県公安委員会 |
| 手続の始まり | 被害者の申立て | 被害者の申出または職権 |
| 対象となる関係 | 配偶者、元配偶者、生活の本拠を共にする交際相手 | 好意の感情やその不充足による怨恨の感情を充足する目的でつきまとい等をする者 |
| 期間 | 1年(退去等命令は原則2か月) | 1年(更新することができる) |
| 違反した場合 | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 | 違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、その他の違反は6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
外国人の場合、在留資格にどのような影響があるのか
申し立てる側は、在留資格の有無にかかわらず申立てができ、配偶者暴力相談支援センターへの相談も同様である。日本人の配偶者等の在留資格の方が暴力を受けて別居や離婚に至った場合には、在留資格の変更や在留特別許可の場面で被害の実情が考慮される。在留特別許可は、令和5年改正により考慮事情が入管法50条5項に明示された。
命令を受ける側は、保護命令が発せられたこと自体は退去強制事由ではない。もっとも、違反して1年を超える拘禁刑の実刑を受ければ退去強制事由に当たり(入管法24条4号リ)、同号のただし書により刑の全部の執行猶予を受けた者は除かれるが、在留期間の更新では素行が考慮される。
よくある質問
接近禁止命令はどのくらいの期間で出ますか。
事案によりますが、おおむね1週間から2週間程度が目安です。裁判所は原則として相手方が立ち会うことのできる審尋を経て判断するため、その期日の設定に日数を要します。差し迫った危険があるときは、あわせて警察や配偶者暴力相談支援センターにご相談ください。
同棲していない恋人にも接近禁止命令を出せますか。
配偶者暴力防止法の保護命令は、配偶者や元配偶者のほか、生活の本拠を共にする交際相手を対象としています。同居していない交際相手による被害は、原則としてストーカー規制法の禁止命令等や民事の仮処分などで対応することになります。関係の実情によって使える制度が変わります。
申立てをすると相手に住所を知られてしまいますか。
相手方には申立書の写しが送達されますが、避難先の住所を秘匿するための配慮が実務上行われています。申立ての際に、住所を記載しない取扱いや、書類の一部を閲覧の対象から外すことを求めることができます。申立ての前に取扱いをご確認ください。支援センターの助言も得ておくと安心です。
期間が過ぎた後も危険が続く場合はどうすればよいですか。
改めて申し立てることができます。前の命令が出された後の事情の変化や、危険が続いていることを示す資料を整えて、再度の申立てを行います。命令の期間が満了する前に準備を始め、空白の期間が生じないようにすることが大切です。必要に応じて弁護士にご相談ください。
命令に違反されたら、まず何をすべきですか。
命令の謄本を示して、速やかに警察に相談してください。違反は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象となる犯罪です。あわせて、接触があった日時、場所、態様を記録し、着信の履歴やメッセージの画像を保存しておいてください。記録は再度の申立ての資料にもなります。
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最終更新日:2026年9月10日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
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