婚姻が「安定かつ成熟」とは|在留特別許可で評価される婚姻の条件と立証資料を弁護士が解説
2026/10/11
婚姻が「安定かつ成熟」しているとは、在留特別許可に係るガイドラインが、日本人・特別永住者又は入管法別表第二の在留資格者との婚姻を特に考慮する積極要素とするための条件で、法的な婚姻のもとで、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、夫婦の間に子がいるなど、婚姻が実質を伴って続いている状態をいいます(入管法50条5項、ガイドライン第2の2(1)ウ・(2)ウ)。配偶者の在留資格が整っていても、この実質を示せなければ、婚姻は十分に評価されません。
本記事の要点
- ガイドラインは、相当期間の共同生活、相互の協力扶助、夫婦の間の子の3つを挙げており、子の存在は「など」で示された例示です。
- この条件が働くのは、配偶者が日本人・特別永住者、又は永住者・定住者など別表第二の在留資格の場合です。
- 刑事処分のある公表事例153件では、婚姻・同居の実態に疑義が持たれた事案、逮捕後や勾留中に婚姻した事案、配偶者に婚姻継続の意思がない事案は、いずれも不許可でした。
- 同居、家計、子の養育、婚姻を続ける意思を示す資料は、刑事事件の段階から集めておくべきです。
「安定かつ成熟」とは何を意味しますか。
婚姻届が出ているだけでなく、夫婦としての生活が一定期間続き、互いに支え合っていることを意味します。ガイドラインの文言は次のとおりです。
「当該外国人が、日本人又は特別永住者と法的に婚姻している場合(退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること」(在留特別許可に係るガイドライン第2の2(1)ウ)
前提は法律上の婚姻で、内縁はこの文言に含まれません。また、偽装婚姻や形式的な婚姻届は最初から除かれています。そのうえで、共同生活の期間、協力扶助の実態、子の存在などから、婚姻が安定し成熟しているかが見られます。偽装結婚との区別については偽装結婚とはも参考になります。
どの配偶者との婚姻に適用されますか。
配偶者が日本人・特別永住者の場合(第2の2(1)ウ)と、別表第二の在留資格で在留している場合(第2の2(2)ウ)です。別表第一の在留資格の配偶者との婚姻は、ここに挙げられていません。
| 配偶者の在留上の地位 | ガイドライン上の位置づけ | 公表事例で許可された在留資格の例 |
|---|---|---|
| 日本人・特別永住者 | 特に考慮する積極要素(第2の2(1)ウ) | 日本人の配偶者等 |
| 永住者・定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等 | 特に考慮する積極要素(第2の2(2)ウ) | 永住者の配偶者等、定住者 |
| 技術・人文知識・国際業務など別表第一 | 列挙されていない | 家族滞在(刑事処分のない3件のみ) |
配偶者が別表第一の在留資格で、本人に刑事処分(執行猶予を含みます)がある公表事例は8件あり、すべて不許可でした。婚姻がどれほど安定していても、配偶者の地位によって評価の出発点が変わります。この点は在留特別許可は配偶者の在留資格で分かれるで詳しく説明しています。
「相当期間」の共同生活とは、どのくらいですか。
ガイドラインに具体的な年数はありません。婚姻期間は他の事情と合わせて総合的に評価されており、短いから直ちに不許可、長いから直ちに許可というものではありません。
令和6年分(2024年・6月10日以降)・配偶者が日本人の場合・許可第2事例は、婚姻約2月、在日約20年10月で、不法残留により懲役2年6月・執行猶予4年(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)の判決を受けていましたが、許可されています。反対に、令和5年分(2023年)・配偶者が日本人の場合・不許可第5事例は、婚姻約30年3月でありながら「婚姻・同居の実態が認められなかったもの」として不許可でした。期間の長さよりも、実際に夫婦として暮らしているかが問われていることがわかります。
なお、法律婚の前に内縁期間がある場合、婚姻期間の短さを補う事情として評価された公表事例もあります(平成27年分・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第2事例。婚姻約5月、内縁期間約3年7月)。詳しくは内縁とは(在留特別許可での評価)をご覧ください。
夫婦の間に子がいないと、認められないのですか。
認められないわけではありません。ガイドラインの「夫婦の間に子がいるなど」は例示で、子の存在は成熟を示す事情の1つです。
令和7年分(2025年)・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第1事例は、子なし、婚姻約3年8月、配偶者は永住者で、不法残留により懲役1年・執行猶予3年の判決を受けた事案ですが、「永住者の配偶者等(1年)」が許可されました。子がいない夫婦は、同居や家計の共同、病気や仕事の場面で支え合ってきた事実など、他の事情を具体的に示すことが大切になります。
どのような場合に婚姻の実質が否定されますか。
同居の実態がない場合、逮捕後や収容中に急いで婚姻した場合、配偶者に婚姻を続ける意思がない場合などです。刑事処分のある公表事例153件の特記事項を当事務所で確認したところ、次のとおりでした。
| 特記事項の内容 | 件数 | 結果 |
|---|---|---|
| 婚姻・同居の実態に疑義が持たれた、又は認められなかった | 7件 | すべて不許可 |
| 逮捕後又は勾留中に婚姻が成立した | 4件 | すべて不許可 |
| 配偶者に婚姻継続の意思がない | 2件 | すべて不許可 |
たとえば令和7年分・配偶者が日本人の場合・不許可第3事例は、婚姻約10月、未成年の子1人がいましたが、傷害で実刑判決を受け、配偶者に婚姻継続の意思がないとされた事案です。配偶者との別居が特記された不許可例もあり、刑事事件をきっかけに夫婦関係が揺らぐと、その影響は在留特別許可の判断にそのまま及びます。
婚姻の安定・成熟は、どのような資料で示しますか。
ガイドラインの3つの要素ごとに、客観的な資料をそろえるのが基本です。陳述書だけでなく、第三者が作成した記録を重ねると説得力が増します。
- 共同生活:住民票(同一世帯・続柄)、賃貸借契約書、公共料金の名義と住所
- 協力扶助:生活費の負担や送金の記録、病気・出産・失業の時期に支え合った経過
- 子:出生や在学の記録、子の養育への関わり
- 継続の意思:配偶者本人の陳述書、刑事裁判で配偶者が情状証人として述べた内容
- 婚姻前の経緯:交際や内縁の開始時期、同居の開始時期
具体的な集め方は婚姻の実体をどう立証するかで取り上げています。
刑事事件の間に、何を整えておくべきですか。
婚姻の実質を途切れさせないことと、配偶者の在留上の地位を引き上げることです。刑事判決を理由とする退去強制事由は判決の確定で生じるため、それまでの時間が準備の期間になります。
勾留中の面会や手紙、保釈後の同居など、夫婦の関係が続いていることを示す記録は、その時点でしか残せません。また、配偶者が別表第一の在留資格であれば、永住許可や帰化を早めに検討し、ガイドラインの(1)ウ又は(2)ウに乗る状態を目指します。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。結果は事案によりますが、諦めずに早めにご相談ください。
よくある質問
Q1. 婚姻期間が1年未満だと、評価されませんか。
ガイドラインに年数の基準はなく、婚姻約2月でも許可された公表事例があります。ただし期間が短いほど、同居や協力扶助の実態を具体的に示す必要が高まります。内縁期間があれば、その立証も役立ちます。
Q2. 逮捕された後に婚姻届を出しても意味がありますか。
婚姻届を出すこと自体はできますが、刑事処分のある公表事例では、逮捕後や勾留中に婚姻が成立した4件はいずれも不許可でした。逮捕前からの交際・同居の経緯を客観的に示せるかが重要になります。
Q3. 配偶者が別表第一の在留資格の場合、この要素は使えませんか。
ガイドライン第2の2の(1)ウ・(2)ウには当たりません。ただ、入管法50条5項は家族関係を配偶者の在留資格で限定していないため、婚姻の安定性をその他の積極要素として主張する余地はあります。並行して配偶者の永住許可や帰化を検討するのが現実的です。
Q4. 刑事事件の後、夫婦が別居しています。不利になりますか。
別居が特記された不許可例があり、注意が必要です。仕事や住居の事情でやむを得ず別居している場合は、その理由と、生活費の負担や連絡の継続など夫婦関係が続いている事実を資料で示すことが大切です。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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