偽装結婚とは|成立する犯罪と刑罰、在留資格の取消し、本当の結婚なのに疑われたときの対応
2026/10/11
最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
偽装結婚とは、夫婦として共同生活を送る意思がないのに、在留資格を得るなどの目的で婚姻の届出をすることをいいます。「偽装婚」と呼ばれることもあり、「偽造結婚」と言われることもありますが、法律上の用語ではありません。刑事上は、虚偽の婚姻届によって戸籍に不実の記録をさせる電磁的公正証書原本不実記録罪などが問題となり、入管法上は在留資格の取消しや退去強制の対象となります。
この記事の要点
- 最高裁は、婚姻をする意思とは「真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思」をいうとしており、他の目的のための便法にすぎない婚姻は効力を生じないとしています(最判昭和44年10月31日)。
- 虚偽の婚姻届を出すと、電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪が成立し、法定刑はいずれも5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(刑法157条1項・158条1項)。
- 偽装結婚によって在留資格を得た場合は在留資格の取消しの対象となり、取り消されると退去強制事由に当たることがあります(入管法22条の4第1項、24条2号の2)。
- 偽りその他不正の手段により上陸の許可等や在留に関する許可を受けることは、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はその併科の対象です(同法70条1項2号の2)。
- 本当の結婚であっても、交際期間の短さや同居の有無などから偽装を疑われることがあり、婚姻の実態を示す資料の準備が重要です。
偽装結婚と本当の結婚は、何によって区別されるのですか
婚姻の届出をする意思だけでなく、社会通念上夫婦と認められる関係を作る意思があるかどうかで区別されます。
民法742条1号は、「人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき」は婚姻を無効としています。最高裁昭和44年10月31日第二小法廷判決(民集23巻10号1894頁)は、この婚姻をする意思がないときとは、「当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものと解すべき」であるとし、届出について意思の合致があっても、「それが、単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないもの」であって、真に夫婦関係の設定を欲する効果意思がなかった場合には、婚姻は効力を生じないと判示しました。
在留資格を得ることが結婚の動機の一つであっても、それだけで偽装結婚になるわけではありません。夫婦として共に生活する意思と、その実態があるかどうかが問われます。
偽装結婚では、どのような犯罪が成立しますか
主に、電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪と、入管法の不正な手段による許可取得の罪が問題になります。
戸籍は電磁的記録として管理されているため、虚偽の婚姻届を市区町村に提出して戸籍に婚姻の記録をさせると、刑法157条1項の「権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた」罪に当たり、その記録を公正証書の原本としての用に供したことについて同法158条1項の罪が成立します。未遂も処罰されます(同法157条3項・158条2項)。
さらに、偽装結婚を基に「日本人の配偶者等」などの在留資格を得た外国人は、入管法70条1項2号の2(偽りその他不正の手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、又は在留資格の変更・在留期間の更新などの許可を受けた者)に当たり得ます。日本人の配偶者や、報酬を得て相手を紹介した仲介者も、共犯として処罰の対象になります。
| 関与の形 | 主に問題となる罪 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 婚姻届を出した外国人・日本人 | 電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪(刑法157条1項・158条1項) | 5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 偽装結婚で在留資格を得た外国人 | 不正な手段による許可の取得(入管法70条1項2号の2) | 3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はその併科 |
| 仲介者・紹介者 | 上記の罪の共犯(共同正犯・幇助犯など) | 各罪の法定刑による(幇助犯は減軽) |
在留資格には、どのような影響がありますか
在留資格の取消しや退去強制の対象となり、日本に在留し続けることは極めて難しくなります。
法務大臣は、偽りその他不正の手段により上陸許可や在留に関する許可を受けたことが判明したときは、在留資格を取り消すことができます(入管法22条の4第1項1号・2号)。不実の記載のある文書を提出して許可を受けた場合も取消しの対象です(同項3号)。同項1号又は2号により在留資格を取り消された人は、退去強制事由に当たります(同法24条2号の2)。また、日本人の配偶者等の在留資格を持つ人が、配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留している場合も、正当な理由がない限り取消しの対象となります(同法22条の4第1項7号)。
他の外国人に不正に許可を受けさせる目的で虚偽の文書を作成し、若しくは行使し、又はこれを手伝った外国人も、退去強制事由に当たります(同法24条3号)。在留資格の取消しの手続では意見の聴取が行われ、本人や代理人は意見を述べ、証拠を提出することができます(同法22条の4第2項・4項)。
結婚して間もない、同居していないと、偽装結婚を疑われるのですか
それだけで偽装結婚とされるわけではありませんが、配偶者としての在留資格の審査では交際の経緯や同居の実態などが確認され、疑問があると調査の対象になることがあります。
配偶者としての在留資格の審査では、交際期間や知り合った経緯、会話に使う言語、親族との交流、同居の有無、生活費の分担、婚姻に際しての金銭の授受などが確認されます。仕事の都合で別居している、言葉が十分に通じない、年齢差が大きいといった事情があっても、それぞれに合理的な理由があり、夫婦としての関係が実際にあれば、偽装結婚には当たりません。
本当の結婚なのに疑われた場合は、どうすればよいですか
交際から結婚、現在の生活までの経緯を、客観的な資料で具体的に説明することが重要です。
交際中のメッセージのやり取りや写真、互いの家族との交流の記録、渡航の記録、結婚式の資料、同居している住居の賃貸借契約書や公共料金の領収書、生活費の負担を示す資料などが、婚姻の実態を示す資料になります。入管から事情を聞かれる場合や、警察から呼出しを受けた場合には、説明が食い違わないよう、事前に弁護士と事実関係を整理しておくことが重要です。
刑事事件として捜査を受けている場合には、取調べで「在留資格のために結婚した」という趣旨の供述調書が作成されると、後に婚姻の実態を主張することが難しくなります。通訳を介した取調べでは特に、調書の表現を慎重に確認する必要があります(「供述調書とは」参照)。
偽装結婚に関わってしまった場合は、どうすればよいですか
刑事責任と在留資格の両面から、早い段階で弁護士に相談し、方針を決めることが重要です。
報酬を受け取って名義を貸した、頼まれて婚姻届に署名したなど、関与の経緯はさまざまです。仲介者の存在、報酬の有無と金額、同居の実態の有無などによって、刑事処分の見通しや在留への影響は大きく変わります。偽装結婚で得た在留資格が取り消された場合でも、その後に真実の婚姻関係が形成されていたときなどには、在留特別許可の判断で考慮されることがあります。詳しくは「偽装結婚でも在留特別許可は認められるのか」で解説しています。
弁護士に相談すべき場面
- 配偶者としての在留資格の審査で、入管から婚姻の実態について詳しい説明を求められたとき。
- 偽装結婚の疑いで、警察から事情聴取の呼出しを受けたとき。
- 家族が電磁的公正証書原本不実記録などの疑いで逮捕されたとき。
- 在留資格の取消しのための意見聴取通知書を受け取ったとき。
- 知人に頼まれて婚姻届に署名してしまい、どうすればよいか分からないとき。
当事務所では中国語での相談に対応しており、中国語の通訳を完備し、中国律師(中国の弁護士資格者)も在籍しています。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績、入管事件では在留特別許可の獲得実績があります。行政事件では違法な行政処分の撤回を得た例があり、取り扱った事件の一部は法律学の学術誌で取り上げられています。弁護の考え方は「松村大介弁護士の弁護方針」(note)にまとめています。
よくある質問
「偽造結婚」と「偽装結婚」は同じ意味ですか。
一般には「偽装結婚」又は「偽装婚」と呼ばれ、「偽造結婚」と言われることもありますが、指している内容は同じです。いずれも法律上の用語ではなく、刑事上は電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪(刑法157条1項・158条1項)などが、入管法上は在留資格の取消しなどが問題となります。
日本人の側も処罰されますか。
処罰の対象になります。虚偽の婚姻届を一緒に提出した日本人の配偶者は、電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪の共同正犯となり得ます。報酬を受け取っていた場合などは、量刑でも不利に考慮されます。
偽装結婚の罪の時効は、どのくらいですか。
電磁的公正証書原本不実記録罪・同供用罪の法定刑は長期5年の拘禁刑ですから、公訴時効は5年です(刑事訴訟法250条2項5号)。ただし、在留資格の取消しは刑事の時効とは別に判断されるため、時効が完成していても在留資格の問題が残る点に注意が必要です。
偽装結婚の後、本当に夫婦として暮らすようになりました。それでも問題になりますか。
届出の時点で夫婦関係を設定する意思がなかった場合、その時点での虚偽の届出として、刑事責任や在留資格の取消しが問題となる可能性は残ります。もっとも、その後に夫婦としての実態が形成されていることは、刑事処分や在留特別許可の判断で考慮され得る事情です。経緯を整理したうえで、早めにご相談ください。
偽装結婚を持ちかけられました。断れば問題になりませんか。
婚姻届の提出に至っていなければ、電磁的公正証書原本不実記録罪は成立しません。ただし、未遂も処罰されるため、提出しようとした段階で問題となり得ます(刑法157条3項)。報酬を示して名義を貸すよう誘われた場合は、関与しないことが大切です。既に金銭を受け取ってしまった場合などは、早めに弁護士に相談してください。
根拠条文・出典
- 民法742条、刑法157条・158条、刑事訴訟法250条2項(e-Gov法令検索の現行条文で確認。2026年10月11日)
- 出入国管理及び難民認定法22条の4、24条2号の2・3号、70条1項2号の2(同上)
- 最判昭和44年10月31日民集23巻10号1894頁(裁判所ウェブサイト掲載の判決文で確認)
関連する解説
- 偽装結婚で逮捕されたら
- 偽装結婚でも在留特別許可は認められるのか
- 在留資格取消しとは
- 退去強制事由とは
- 供述調書とは
- 日本人の配偶者等の在留資格をもつ方が刑事事件になったとき
- 在留特別許可とは
- 外国人の刑事事件(特集)
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