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不利益変更禁止とは|被告人だけの控訴で刑が重くならない仕組みと在留への影響を弁護士が解説

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不利益変更禁止とは|被告人だけの控訴で刑が重くならない仕組みと在留への影響を弁護士が解説

不利益変更禁止とは|被告人だけの控訴で刑が重くならない仕組みと在留への影響を弁護士が解説

2026/10/11

不利益変更禁止とは、被告人が控訴をし、又は被告人のために控訴をした事件では、控訴審が原判決の刑より重い刑を言い渡すことができないという原則をいいます(刑事訴訟法402条)。この原則は上告審にも準用されます(同法414条)。外国人の被告人にとっては、「控訴したら刑が重くなり、在留がさらに危うくなるのではないか」という不安を取り除き、判決が確定するまでの時間を落ち着いて使うための土台になる規定です。

本記事の要点

  • 被告人側だけが控訴した事件では、控訴審は原判決より重い刑を言い渡すことができません(刑事訴訟法402条)。
  • 同じ原則は上告審にも準用されます(同法414条)。
  • 検察官も控訴した場合はこの制限が働かず、刑が重くなる可能性があります。
  • 執行猶予付きの判決や罰金の判決が、被告人側だけの控訴によって実刑や拘禁刑に変わることはないため、在留上より不利な刑に転じるおそれはありません。
  • 上訴をしている間は判決が確定しないため、刑事判決を理由とする退去強制事由の発生も先に延びます。

不利益変更禁止とは何ですか。

被告人側だけが控訴した事件で、控訴審が一審より重い刑を言い渡すことを禁じる原則です。根拠は刑事訴訟法402条で、条文は次のとおりです。

「被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。」(刑事訴訟法402条)

控訴は、判決に不服がある被告人に認められた正当な権利です(同法351条)。ところが、控訴した結果かえって刑が重くなるのであれば、被告人は控訴をためらってしまいます。402条は、被告人が安心して上訴の権利を使えるようにするための規定です。

条文の「被告人のため控訴をした事件」には、弁護人が被告人のために控訴した場合も含まれます。

どのような場合に不利益変更禁止が働きますか。

働くのは、控訴したのが被告人側だけの場合です。検察官も控訴していれば、控訴審は一審より重い刑を言い渡すことができます。

控訴した者控訴審が一審より重い刑にできるか在留の面から見た意味
被告人側のみできない(刑事訴訟法402条)一審の刑が上限になる。確定までの時間が延びる
検察官のみできる実刑や刑期の延長により、入管法上の扱いが変わるおそれがある
被告人側と検察官の双方できる同上。検察官の控訴理由を踏まえた反論が必要
どちらも控訴しない(控訴審なし)控訴期間14日の経過で判決が確定する

控訴の提起期間は、被告人側も検察官も14日です(刑事訴訟法373条)。被告人が控訴した後に、検察官が期間内に独自に控訴することもあり得ます。控訴の判断では、検察官控訴の可能性も見ておく必要があります。

「重い刑」とはどのようなものですか。

刑の種類、刑期や罰金額、執行猶予の有無などを全体として比べ、被告人にとって不利になるかどうかで判断されます。単純に数字だけを比べるのではありません。

  • 拘禁刑の刑期を長くすること、罰金の額を増やすことは、重い刑への変更に当たります。
  • 罰金の判決を拘禁刑に変えることも、重い刑への変更に当たります。
  • 執行猶予付きの判決を実刑に変えることは、刑期が短くなる場合でも、一般に重い刑への変更と考えられています。

なお、402条が禁じているのは「重い刑」の言渡しです。控訴審が一審の判断を見直すこと自体は妨げられません。しかし、どのような判断になっても、言い渡される刑が一審を上回ることはありません。外国人の被告人にとって重要なのは、まさにこの「刑の上限が固定される」という点です。

上告審でも同じ原則が適用されますか。

適用されます。刑事訴訟法414条が、控訴審の規定を上告審に準用しているためです。

「前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。」(刑事訴訟法414条)

上告の提起期間も、この準用によって控訴と同じく14日となります。被告人側だけが上告した事件では、上告審でも原判決より重い刑を言い渡されることはありません。もっとも、上告できる理由は控訴に比べて限られているため、上告するかどうかは、争点を見極めたうえで弁護人と相談して決めることになります。

外国人の被告人にとって、なぜ重要なのですか。

入管法の退去強制事由の多くは、どのような刑に処せられたかによって決まります。被告人側だけの控訴であれば、在留上より不利な刑に変わることはなく、しかも確定までの時間が延びるからです。

たとえば、刑事処分に関係する主な退去強制事由には次のものがあります。

  • 入管法24条4号の2:「技術・人文知識・国際業務」「留学」など別表第一の在留資格の人が、窃盗・詐欺・傷害など一定の罪で拘禁刑に処せられた場合(執行猶予付きでも該当し、罰金なら該当しません)
  • 入管法24条4号リ:無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合(刑の全部の執行猶予は除かれます)
  • 入管法24条4号チ:薬物関係の法令違反で有罪の判決を受けた場合

一審が罰金であれば、被告人側だけの控訴で拘禁刑になることはないので、4号の2に新たに当たることはありません。一審が執行猶予付きであれば、実刑に変わることはないので、4号リや、在留特別許可を原則として認めない入管法50条1項ただし書に新たに当たることもありません。詳しくは入管法24条4号の2とは、入管法24条4号リとはをご覧ください。

そして、条文の「処せられた」「有罪の判決を受けた」は、判決の確定を指すものとして運用されています。上訴をしている間は判決が確定しないため、刑事判決を理由とする退去強制の手続も始まりません。この期間を使って、配偶者の永住許可申請や帰化申請を進め、在留特別許可で評価される家族の状況を整えておくことができます。考え方の全体は在留特別許可と配偶者の在留資格で説明しています。

控訴するかどうかは、どう判断すればよいですか。

判決の言渡しから14日以内に、事実認定や量刑に争うべき点があるか、検察官が控訴する可能性があるか、在留の見通しにどう影響するかを総合して判断します。

控訴は、より良い判決を求める正当な権利です。事実や量刑に争う点があるなら、控訴によってその判断を求めることができ、結果として判決確定までの時間も延びます。被告人側だけの控訴であれば、刑が重くなる心配はありません。

一方で、上訴は放棄したり取り下げたりすることもでき(刑事訴訟法359条)、いったん放棄・取下げをすると、その事件について改めて上訴することはできません(同法361条)。放棄や取下げは判決の確定時期を早めることにもなるため、在留への影響を確認しないまま決めることは避けるべきです。

当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って配偶者の在留上の地位を整え、在留特別許可を得た実績があります。もちろん結果は事案ごとに異なりますが、控訴の判断は刑事と在留の両面から行うことが大切です。控訴の手続そのものは刑事事件の控訴もあわせてご覧ください。

不利益変更禁止があっても、注意すべき点はありますか。

あります。検察官控訴の可能性、控訴期間の管理、そして本人の在留期間の管理です。

第1に、前述のとおり、検察官も控訴すればこの原則は働きません。第2に、控訴期間は14日と短く、期間を過ぎれば判決は確定します。判決の言渡しを受けたら、すぐに弁護人と方針を決める必要があります。第3に、刑事裁判が長引いている間に本人の在留期間が満了すると、判決とは別に不法残留の問題が生じます。在留期間の更新申請を切らさないことが、控訴によって生まれた時間を生かす前提になります。

不利益変更禁止は刑の上限を固定する規定にすぎず、在留特別許可を保証するものではありません。上訴の期間を何に使うかが結果を左右します。

よくある質問

Q1. 被告人だけが控訴した場合、控訴審で刑が重くなることはありますか。

ありません。刑事訴訟法402条により、被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件では、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできません。弁護人が被告人のために控訴した場合も同じです。

Q2. 検察官も控訴した場合はどうなりますか。

不利益変更禁止は働かず、控訴審が一審より重い刑を言い渡す可能性があります。検察官の控訴期間も14日です(刑事訴訟法373条)。検察官の控訴理由に対して、しっかり反論を準備することが必要です。

Q3. 執行猶予付きの判決に対して控訴すると、実刑になるおそれはありますか。

被告人側だけの控訴であれば、実刑に変わることはありません。執行猶予を外して実刑にすることは、一般に重い刑への変更と考えられているためです。在留の面では、入管法24条4号リや50条1項ただし書に新たに当たる心配がないことを意味します。

Q4. 上告の場合にも不利益変更禁止は適用されますか。

適用されます。刑事訴訟法414条が控訴審の規定を上告審に準用しているためです。上告期間も同じく14日です。

Q5. 控訴を取り下げると、在留にはどのような影響がありますか。

取下げによって判決が確定し、刑事判決を理由とする退去強制事由がその時点で生じることになります。取り下げた後は同じ事件で改めて上訴することはできません(刑事訴訟法361条)。在留への影響を確認したうえで判断してください。

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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。

最終更新日:2026年10月11日

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
外国人の刑事弁護、入管手続(退去強制・在留特別許可・監理措置)、行政訴訟を主たる注力分野とする。中国律師が在籍。
弁護方針:松村大介弁護士の弁護方針|法律に命を吹き込む
代表電話:050-7587-4639 微信ID:matsumura1119

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

中文版(简体):不利益变更禁止是什么|只有被告人上诉时刑罚不会加重的规则及其对在留的影响

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