配偶者が監理人になるとき|監理措置で収容を避けるための責任と準備を弁護士が解説
2026/10/11
配偶者が監理人を引き受け、本人が監理措置に付されれば、退去強制の手続中も収容されずに家族と暮らしながら、在留特別許可の申請に臨むことができます。その代わり、監理人には本人の生活を把握し、条件を守らせる責任が生じます。
監理措置中の過ごし方は、在留特別許可の判断にも影響します。引き受ける前に、制度の仕組みと責任の重さを知っておいてください。
本記事の要点
- 監理措置は、逃亡や証拠隠滅のおそれの程度、収容による不利益の程度などを考慮して、収容に代えて監理人の監理に付す措置です(入管法44条の2第1項)。
- 収容された本人が自ら請求できないときは、同居する配偶者が代わって監理措置を請求できます(同条5項)。
- 監理措置には住居や行動範囲の制限、出頭義務などの条件が付き、300万円を超えない範囲で保証金が求められることがあります(同条1項・2項・6項)。
- 監理措置中の逃亡や条件違反は、在留特別許可の判断で消極要素として考慮されます(ガイドライン第2の3)。
- 監理措置決定を受けた人は、在留特別許可の申請ができます(入管法50条2項)。
監理措置とは何ですか。配偶者が監理人になるとはどういうことですか。
監理措置とは、退去強制の手続の対象となった人を収容せず、監理人の監理の下で手続を進める措置です。配偶者が監理人になるとは、その監理を引き受け、本人の生活を見守る立場に立つことをいいます。
「容疑者が逃亡し、又は証拠を隠滅するおそれの程度、収容により容疑者が受ける不利益の程度その他の事情を考慮し、容疑者を収容しないでこの章に規定する退去強制の手続を行うことが相当と認めるときは、容疑者を監理措置(次条に規定する監理人による監理に付する措置をいう。以下この節において同じ。)に付する旨の決定をするものとする。」(入管法44条の2第1項)
令和5年改正法(令和6年6月10日施行)で、条文の見出しのとおり「収容に代わる監理措置」として設けられた制度です。制度の基本は監理措置とはで説明しています。
監理措置に付すかどうかは、どのように決まりますか。
主任審査官が、監理措置に付すか収容するかを審査して決めます(入管法39条2項)。すでに収容されている人も、監理措置に付すよう請求することができます。
主任審査官は、逃亡や証拠隠滅のおそれの程度と、収容によって本人が受ける不利益の程度などを比べて判断します(同法44条の2第1項・6項)。収容された本人は自ら請求できますが(同条4項)、本人が16歳未満の場合や、病気などで自ら請求できない場合には、同居する配偶者が第1順位で本人に代わって請求できます(同条5項)。
配偶者が監理人を引き受ける意思を示し、住む場所と生活の見通しを具体的に示せることは、逃亡のおそれが低いことを裏付ける事情になります。請求が認められないときは、理由を付した書面で通知されます(同条9項)。
監理措置には、どんな条件が付きますか。
住居や行動範囲の制限、呼出しに応じて出頭する義務など、逃亡と証拠隠滅を防ぐための条件が付きます。保証金の納付が条件とされることもあります。
| 内容 | 条文上の定め | 監理人として気を付けること |
|---|---|---|
| 住居及び行動範囲の制限 | 入管法44条の2第1項後段 | 決められた住居で生活し、範囲外に出る必要があるときは事前に手続を確認する |
| 呼出しに対する出頭の義務 | 同上 | 呼出しの日時を家族で共有し、忘れずに出頭させる |
| その他必要と認める条件 | 同上 | 決定通知書の謄本で条件を一つずつ確認する |
| 保証金 | 同条2項・6項(300万円を超えない範囲内で法務省令で定める額) | 納付の期限と金額を確認し、準備しておく |
監理措置決定をするとき、主任審査官は本人に監理措置決定通知書を、監理人にその謄本を交付します(同条7項)。監理人になった配偶者は、謄本に書かれた条件を正確に把握しておく必要があります。
監理人になった配偶者には、どんな責任がありますか。
本人の生活の状況を把握し、監理措置の条件を守るよう必要な指導や監督をすること、一定の事項を入管に届け出ることなどの責任があります(入管法44条の3)。形だけの引受けでは務まりません。
- 本人がどこで、どのように暮らしているかを日頃から把握する
- 出頭の呼出しや住居の制限など、条件を守るよう声をかけ、見守る
- 条件に反する行動や所在の変化があったときは、入管への届出が必要になる場合がある
- 監理を続けられない事情が生じたときは、早めに弁護士に相談する
配偶者にとっては、夫(妻)を見守る立場と、入管に対して責任を負う立場を同時に持つことになります。迷う場面があれば、一人で判断せず、弁護士と相談しながら対応してください。
監理措置中に条件に違反すると、在留特別許可にどう影響しますか。
在留特別許可の判断で、消極要素として考慮されます。監理措置中の過ごし方そのものが、本人の素行として評価されるということです。
「仮放免又は監理措置中に逃亡又は条件に違反したこと」(ガイドライン第2の3。素行が善良でない場合の例として挙げられているもの)
反対に、条件を守り、決められた住居で家族とともに落ち着いて暮らしてきた事実は、配偶者の陳述書などで具体的に示すことができます。監理人としての日々の記録は、そのまま在留特別許可の申請資料にもなります。陳述書の書き方は配偶者の陳述書・嘆願書の書き方をご覧ください。
監理措置中に、在留特別許可を申請できますか。
できます。在留特別許可の申請は、収容令書により収容された人だけでなく、監理措置決定を受けた人もすることができます(入管法50条2項)。
監理措置に付されている間の在留は、罰則(同法70条)の適用上、不法に在留することに該当しないものとみなされます(同法44条の2第10項)。また、在留特別許可がされた場合、被監理者でない人は直ちに放免されますが、被監理者についてはこの放免の規定から除かれています(同法50条9項)。認定に服した場合は、その日から3日以内に申請しないと退去強制令書が発付されるため(同法47条5項2号)、申請の時期を逃さないよう、監理人である配偶者も日程を把握しておくことが大切です。
監理人を引き受ける前に、配偶者が準備しておくことは何ですか。
住む場所、生活費、条件を守るための家族の体制を整えておくことです。あわせて、配偶者自身の在留資格の手続を切らさないことも欠かせません。
- 本人と同居する住居の確保(賃貸借契約の名義や同居の可否の確認を含む)
- 保証金の準備と、手続中の生活費の見通し
- 出頭の呼出しや申請の期限を家族で共有する仕組み
- 配偶者自身の在留期間の更新、永住許可や帰化の申請状況の確認
刑事事件をきっかけとする場合、本人が入管の手続に入るのは、多くは判決の確定後です。実刑判決の場合は刑務所から入管へ移ることになるため、その時点での監理措置を見据えた準備が必要です(刑務所から監理措置へ)。判決確定までの期間に配偶者の永住許可や帰化を進めておけば、在留特別許可の判断でも婚姻がガイドラインの「特に考慮する積極要素」に当たります。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、確定までの期間に家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。
よくある質問
Q1. 監理人は配偶者でなければなりませんか。
配偶者に限られるわけではなく、支援者などが監理人になることもあります。ただ、本人と同居して生活を最もよく知る配偶者は、監理人の有力な候補です。誰が引き受けるかは、本人の生活の状況に応じて弁護士と検討してください。
Q2. 保証金は必ず必要ですか。
必ずではありません。主任審査官が逃亡や証拠隠滅を防ぐために必要と認めるときに、300万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の納付を条件とすることができる、とされています(入管法44条の2第2項・6項)。
Q3. 本人が条件に違反しそうなとき、監理人はどうすればよいですか。
まず本人に条件を守るよう働きかけ、早めに弁護士に相談してください。条件違反は在留特別許可の消極要素になるほか(ガイドライン第2の3)、監理人として入管への届出が必要になる場合もあります。
Q4. 退去強制令書が出た後も、監理措置はありますか。
あります。退去強制令書の発付を受けた人を直ちに送還できないときは、主任審査官が改めて監理措置に付すか収容するかを審査します(入管法52条8項)。取消訴訟を起こす場合の家族の生活にも関わるため、引き続き監理人の役割が問題になります。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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