配偶者の陳述書・嘆願書の書き方|在留特別許可で伝わる事実と将来の監督を弁護士が解説
2026/10/11
在留特別許可の審査で配偶者の陳述書が力を持つのは、反省や愛情の言葉が並んでいるときではなく、夫婦の生活を裏付ける具体的な事実と、これからの監督の方法が書かれているときです。
刑事事件をきっかけに退去強制の手続に入った方の家族から、「何を書けばよいのか」という相談をよく受けます。入管法とガイドライン、公表事例を踏まえて、書き方を整理します。
本記事の要点
- 在留特別許可の判断では「家族関係」が法律上の考慮事情であり、配偶者の陳述書はその中心となる資料です(入管法50条5項)。
- ガイドラインは申立ての内容だけでなく具体的な根拠や客観的な状況も見るため、陳述書は事実で書き、裏付け資料を添えるのが基本です。
- 公表事例には「婚姻・同居の実態に疑義がもたれたもの」「配偶者に婚姻継続の意思なし」と付記された不許可例があり、婚姻の実態と配偶者の意思ははっきり見られています。
- 将来の監督は、住む場所、働き方、家計の管理、再発を防ぐ具体的な方法として書くと説得力が出ます。
- 事実と異なる記載や誇張は、ガイドライン上の消極要素になり得るため、書かないことが何より大切です。
配偶者の陳述書は、在留特別許可の審査で何のために使われますか。
家族関係という法律上の考慮事情を、具体的に伝えるために使われます。
入管法50条5項は、在留特別許可の判断で考慮する事情として、在留を希望する理由や素行と並べて「家族関係」を明記しています。ガイドラインは、配偶者が日本人・特別永住者又は永住者・定住者など別表第二の在留資格で在留している場合の婚姻について、「夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること」を求めています(第2の2(1)ウ・(2)ウ)。陳述書は、この「共同生活」「相互の協力扶助」「安定と成熟」を、日々の事実で示すための書面です。配偶者の在留資格がなぜ重要かは、在留特別許可と配偶者の在留資格で詳しく説明しています。
陳述書と嘆願書は、どう違いますか。
陳述書は配偶者が自分の見聞きした事実を述べる書面、嘆願書は勤務先や知人など第三者が本人への支援や在留の希望を述べる書面です。役割が違うので、両方を用意するのが通常です。
| 書面 | 書く人 | 中心となる内容 |
|---|---|---|
| 配偶者の陳述書 | 配偶者本人 | 出会いから現在までの生活、家計、子の監護、事件後の変化、今後の監督 |
| 子や親族の陳述書 | 同居の家族 | 家庭での本人の役割、本人がいなくなった場合の生活への影響 |
| 勤務先の嘆願書 | 雇用主・上司 | 勤務態度、在留が認められた場合の雇用の予定と支援の内容 |
| 地域・知人の嘆願書 | 自治会、学校関係者、友人など | 地域での本人と家族の関わり、具体的な交流の内容 |
ガイドラインは、素行の項目で「当該外国人に対する将来の雇用主等の第三者による支援の内容が十分なものであること」を積極要素として挙げています(第2の3)。嘆願書も、署名の数より、誰がどのように支えるのかという中身が問われます。
「事実で書く」とは、具体的にどういうことですか。
いつ、どこで、何をしたかを、後から確かめられる形で書くことです。ガイドラインが申立ての内容だけでなく根拠や客観的な状況も見るとしている以上、評価の言葉より事実の方がはるかに伝わります。
「個々の事案ごとに当該外国人の申立て内容だけでなく、具体的な根拠の有無や客観的な状況も考慮した結果、各考慮事情に認められる積極要素及び消極要素を総合的に勘案し」(ガイドライン第3)
| 避けたい書き方 | 伝わる書き方 |
|---|---|
| 夫はとても優しい人です。 | 私が夜勤の日は、夫が保育園の送迎と夕食を担当してきました。 |
| 私たちは深く愛し合っています。 | 2019年4月から現在の住所で同居し、家賃と光熱費は二人の口座から折半で支払っています。 |
| 夫がいないと生活できません。 | 世帯収入の6割は夫の給与で、私の収入だけでは家賃と子の学費を賄えません(給与明細を添付)。 |
右側の例の数字や日付は、ご家庭ごとの事実に置き換えます。住民票、賃貸借契約書、通帳、写真、連絡の記録など、記載を裏付ける資料を添えると、陳述書の一文一文が根拠を持ちます。資料の集め方は婚姻の実体をどう立証するかもご覧ください。
公表事例では、婚姻の実態や配偶者の意思はどう扱われていますか。
はっきり見られています。入管庁の公表事例には、婚姻の実態や配偶者の意思に問題があるとして不許可となった事例が、特記事項付きで並んでいます。
- 平成29年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第3事例:特記事項は「婚姻・同居の実態に疑義がもたれたもの。」
- 平成28年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第3事例:特記事項は「逮捕後に婚姻が成立したもの。」
- 令和3年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第2事例:配偶者は永住者ですが、特記事項は「配偶者に婚姻継続の意思なし。」
- 令和7年分(2025年)・配偶者が日本人の場合・不許可第3事例:特記事項は「配偶者に婚姻継続の意思なし。」
配偶者が永住者や日本人でも、配偶者に婚姻を続ける意思がなければ、家族関係は積極要素として働きません。逆に、共に暮らす意思を具体的な生活の計画とともに示すことには、それ自体に意味があります。令和7年分・配偶者が日本人の場合には、窃盗による懲役1年2月(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)の実刑判決を受けながら、婚姻約33年4月の事案で入管法50条1項ただし書により許可された事例もあります。
将来の監督は、どう書けばよいですか。
「二度とさせません」という決意ではなく、誰が、どこで、どのように本人の生活を支え、見守るのかを書きます。事件の原因に即した方法ほど説得力が増します。
- 住む場所:同居を続ける住所、家族構成、本人の生活の拠点
- 働き方:在留が認められた場合の勤務先や仕事の予定、勤務先の支援の内容
- 家計の管理:本人の金銭の使い方を誰がどう把握するか(財産犯や金銭トラブルが原因の場合)
- 交友関係:事件に関わった人との関係を断つ方法
監理措置に付される場合には、配偶者が監理人として本人の生活を把握する立場になることもあります。その場合の責任については配偶者が監理人になるときで整理しています。陳述書に書いた監督の方法は、実際に続けられるものでなければなりません。
陳述書に書いてはいけないことはありますか。
事実と異なること、確かめていないことは書かないでください。誇張した一文が、全体の信用を損ないます。
ガイドラインは、消極要素の一つとして、当該外国人が「退去強制手続又は在留諸申請等において、虚偽の内容の申告を行ったこと」を挙げています(第2の9)。配偶者の陳述書が客観的な資料と食い違えば、本人に不利に評価されるおそれがあります。
- 同居を始めた時期や婚姻の経緯を、住民票や届出の記録と食い違う形で書かない
- 刑事事件で認定された事実と矛盾する弁解を、配偶者の立場から書き加えない
- 「必ず更生します」など、裏付けのない約束だけで締めくくらない
母語で下書きをし、弁護士と日本語の書面に仕上げる方法もあります。
刑事事件の段階から、何を準備しておくべきですか。
刑事事件の段階から、陳述書の材料となる事実と資料を集め始めてください。刑事判決を理由とする退去強制事由は判決の確定によって生じるため、それまでの期間に家族の状況を整え、記録を残すことができます。
刑事裁判で配偶者が情状証人として話す内容と入管に出す陳述書は、筋が通っている必要があります。あわせて、判決確定までの時間を使って配偶者の永住許可や帰化を進めておくことも検討に値します。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間に家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。申請時に提出する書類の全体像は在留特別許可申請で配偶者が準備する書類をご覧ください。
よくある質問
Q1. 陳述書は日本語で書かなければなりませんか。
提出する書面は日本語で用意するのが基本です。母語で下書きをし、弁護士と内容を確かめながら日本語に仕上げれば、配偶者自身が説明できる書面になります。
Q2. 嘆願書は、たくさん集めた方が有利ですか。
数よりも中身が大切です。ガイドラインは将来の雇用主等の第三者による支援の内容が十分であることを積極要素としています(第2の3)。支え方が具体的に書かれた数通の方が、定型文の多数の署名より伝わります。
Q3. 夫婦関係がうまくいっていない時期があったことは書くべきですか。
事実を隠して書くことは避けるべきです。別居の時期などがあれば、その経緯と現在の生活の状況を、資料と食い違わない形で説明することを弁護士と検討してください。虚偽の申告は消極要素とされています(ガイドライン第2の9)。
Q4. 配偶者が別表第一の在留資格でも、陳述書は意味がありますか。
意味はあります。ただし、配偶者が別表第一の在留資格で本人に刑事処分がある公表事例は8件あり、すべて不許可でした。陳述書を整えることに加えて、判決確定までに配偶者の永住許可や帰化を進めることを検討してください。
Q5. 陳述書はいつ書けばよいですか。
在留特別許可の申請は、収容令書による収容又は監理措置決定の後にすることになりますが(入管法50条2項)、材料の準備は刑事事件の段階から始めるのが望ましいといえます。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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