オーバーステイの配偶者がいるとき|出頭申告か摘発かで在留特別許可はどう変わるか
2026/10/11
配偶者がオーバーステイ(不法残留)になっているなら、摘発や逮捕を待たず、準備を整えたうえで自ら入管に出頭することが、在留特別許可を得るうえで最も有利に働きやすい選択です。在留特別許可に係るガイドラインは自ら出頭したことを積極要素に挙げ、公表事例でも、出頭申告の事案と摘発・逮捕の事案とでは結論の分かれ方がはっきり違います。
ただし、出頭すれば許可されるというものではなく、夫婦の在留資格、婚姻の状況、過去の入管歴によって見込みは変わります。
本記事の要点
- ガイドライン第2の9は、不法滞在を申告するため自ら地方出入国在留管理官署に出頭したことを積極要素として挙げています。
- 不法滞在期間は消極要素として評価され、その終期は入管庁が不法滞在の事実を認知した時点とされているため、出頭は期間の伸長を自ら止める行為になります。
- 警察に逮捕された事案では、不法残留そのものについて有罪判決を受けている公表事例が並び、配偶者が別表第一の在留資格であれば刑事処分は大きな障害になります。
- 内縁にとどまっている場合は、出頭の前に婚姻届を出しておくことが原則です。逮捕後・収容中に成立した婚姻は、公表事例ではほぼ例外なく不許可です。
オーバーステイの配偶者は、自分から出頭した方がよいのですか。
在留を希望するのであれば、準備を整えたうえで自ら出頭することを強くおすすめします。出頭申告は、ガイドラインがはっきりと積極要素に挙げている数少ない事情の一つです。
「当該外国人が、不法滞在を申告するため、自ら地方出入国在留管理官署に出頭したこと、入管法別表第一の一の表又は二の表に掲げる在留資格のいずれかの資格該当性を有し、在留特別許可とされた場合に当該在留資格に基づく活動を行うと認められることは、積極要素として考慮されます。」(在留特別許可に係るガイドライン第2の9)
発覚の仕方は本人には選べませんが、自分から出頭するかどうかは選べます。
出頭申告と摘発・逮捕では、結論にどのような違いが出ていますか。
公表事例では、出頭申告で刑事処分のない事案に許可例が集まる一方、職員探知や摘発を端緒とする事案は、配偶者が永住者でも不許可になった例があります。発覚のきっかけは、それだけで結論を左右し得る事情です。
| 公表事例 | 発覚の端緒 | 本人の刑事処分 | 配偶者 | 結論 |
|---|---|---|---|---|
| 令和7年分(2025年)・配偶者が日本人の場合・許可第1〜第3事例 | 出頭申告 | なし | 日本人 | 許可(日本人の配偶者等) |
| 令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第2事例 | 出頭申告 | なし | 定住者 | 許可(定住者) |
| 令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第1事例 | 警察逮捕 | 入管法違反(不法残留) 懲役(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)1年・執行猶予3年 | 永住者 | 許可(永住者の配偶者等) |
| 令和4年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第1事例 | 職員探知 | なし | 永住者 | 不許可 |
| 令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第3事例 | 出頭申告 | なし | 定住者 | 不許可(出国命令歴あり) |
逮捕されてから許可された例もありますが、不法残留について有罪判決を受けたうえでの判断です。出頭していれば負わずに済んだかもしれない刑事処分を背負うことになります。
オーバーステイの期間は、どのように評価されますか。
不法に滞在する期間が長いことは消極要素として評価されます(ガイドライン第2の5)。その期間の終わりは、入管庁が不法滞在を知った時点です。
「この場合、在留特別許可の許否判断において考慮する不法滞在期間の終期は、出入国在留管理庁が不法滞在の事実を認知した時点となります。」(同(注3))
出頭を先延ばしにするほど、消極要素は一日ずつ重くなります。出頭申告は、この期間の伸長を自分の意思で止める行為でもあります。
配偶者(あなた)の在留資格によって、出頭後の見込みは変わりますか。
大きく変わります。出頭する本人ではなく、その夫や妻であるあなたがどの在留資格で日本にいるかが、ガイドライン上の評価の出発点を決めます。
ガイドラインが婚姻を「特に考慮する積極要素」とするのは、配偶者が日本人・特別永住者である場合(第2の2(1)ウ)と、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者という別表第二の在留資格である場合(第2の2(2)ウ)です。配偶者が「技術・人文知識・国際業務」など別表第一の在留資格であれば、この列挙には入りません。
実際、令和6年分(6月10日以降)・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第2事例は、配偶者が「技術・人文知識・国際業務」で出頭申告・刑事処分なしの事案ですが、婚姻期間が約15年3月に及んでいました。これに対し、令和6年分(6月9日まで)・同類型・不許可第1事例は、同じく配偶者が「技術・人文知識・国際業務」で出頭申告・刑事処分なしでありながら、婚姻約1年・違反約1年1月で不許可です。あなたが別表第一の在留資格であれば、婚姻の実質の示し方をより慎重に組み立てる必要があります。
出頭する前に、何を準備しておくべきですか。
婚姻を法律上のものにしておくこと、婚姻の実質を示す資料をそろえること、過去の入管歴を正確に把握することの三つです。準備が整い次第、早く出頭するのが原則です。
- 内縁にとどまっているなら、婚姻届を出して法律上の婚姻にしておく。公表事例では、逮捕後や収容中に成立した婚姻は、ほぼ例外なく不許可とされています。詳しくは内縁とは(在留特別許可での評価)をご覧ください。
- 同居の事実、家計を共にしていること、子の監護養育の状況を示す資料(住民票、賃貸借契約書、送金記録、写真など)を集めておく。
- 過去の退去強制歴・出国命令歴や、在留諸申請での申告内容を確認する。いずれもガイドライン上の消極要素です(第2の3、第2の9)。
- 収容に代わる監理措置を求める場合に備え、監理人を引き受ける人と住居を決めておく(入管法44条の2)。
出頭した後は、どのような手続で進みますか。
違反調査を経て、収容されるか監理措置に付され、その段階で在留特別許可を申請できるようになります。申請には期限があります。
主任審査官は、監理措置に付すか収容するかを審査します(入管法39条2項)。収容令書により収容されたか、監理措置決定を受けた後でなければ、在留特別許可の申請はできません(同法50条2項)。違反審査で退去強制対象者と認定され、その認定に服した場合は、次の期限に注意が必要です。
「第三項の認定に服した日から三日以内に第五十条第一項の規定による許可の申請をしなかつたとき。」(入管法47条5項2号)
この場合、主任審査官は速やかに退去強制令書を発付しなければならず、発付後は申請自体ができなくなります(同法50条3項)。手続の全体像は監理措置とはや在留特別許可と配偶者の在留資格でも説明しています。
出頭をためらっている間に、何が起きるおそれがありますか。
摘発や逮捕で発覚し、不法残留について刑事処分を受けるおそれがあります。あなたが別表第一の在留資格であれば、これが決定的な不利益になりかねません。
平成26年分から令和7年分までの公表事例を当事務所が原典で精査したところ、配偶者が別表第一の在留資格で、本人に刑事処分(執行猶予を含みます)がある事例は8件あり、すべて不許可でした。
すでに逮捕されてしまった場合でも、諦める必要はありません。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。もっとも、結果は個別の事情によって異なり、許可を約束できるものではありません。出頭するかどうか迷っている段階で、早めにご相談ください。
よくある質問
Q1. 出頭すれば、在留特別許可は必ず出ますか。
出るとは限りません。出頭申告は積極要素ですが、配偶者の在留資格、婚姻期間、不法残留期間、出国命令歴などを総合して判断されます(入管法50条5項、ガイドライン第3)。公表事例にも、出頭申告でありながら不許可となった例があります。
Q2. 出頭すると、すぐに収容されてしまいますか。
主任審査官が監理措置に付すか収容するかを審査します(入管法39条2項)。逃亡のおそれの程度や収容による不利益の程度などを考慮して、収容しないで監理措置に付されることもあります(同法44条の2第1項)。監理人と住居を事前に決めておくことが大切です。
Q3. まだ内縁ですが、出頭の後に結婚すればよいですか。
出頭の前に婚姻届を出しておくのが原則です。公表事例では、逮捕後や収容中に婚姻が成立した事案はほぼ例外なく不許可とされています。内縁期間は、法律婚に移行した後に婚姻期間の短さを補う事情として評価された例があります。
Q4. 以前に出国命令で帰国したことがありますが、影響しますか。
影響します。ガイドライン第2の3は、過去に出国命令手続をとられたことを消極要素に挙げています。令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第3事例は、出頭申告・刑事処分なし・配偶者が定住者でありながら、出国命令歴があり不許可とされました。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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