配偶者が日本人で本人に刑事処分があるとき|在留特別許可を分ける婚姻の実体と別居
2026/10/11
配偶者が日本人でも、本人に刑事処分があれば在留特別許可は多くの場合不許可で、結論を分けているのは刑の重さとともに、同居しているか、配偶者に婚姻を続ける意思があるかという婚姻の実体です。令和7年分(2025年)の公表事例では、窃盗で懲役1年2月(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)の実刑判決を受けた人が、在日約33年・婚姻約33年4月という事情のもとで許可された一方、傷害で懲役5年の実刑判決を受けた人は「配偶者に婚姻継続の意思なし」とされて不許可でした。
本記事の要点
- 日本人との婚姻はガイドライン第2の2(1)ウの「特に考慮する積極要素」ですが、婚姻が安定かつ成熟していることが前提です。
- 当事務所の集計では、平成26年分から令和7年分の公表事例のうち配偶者が日本人で本人に刑事処分がある47件中、許可は8件でした。
- 別居している事案、婚姻の実態に疑義がある事案、配偶者に婚姻継続の意思がない事案は、婚姻が長くても不許可とされています。
- 逮捕や勾留の後に成立した婚姻は、公表事例上ほぼ例外なく不許可です。
- 刑事事件の段階から、退去強制事由を避ける弁護と、婚姻の実体を示す記録づくりを並行して進めることが大切です。
配偶者が日本人なら、刑事処分があっても在留特別許可を受けられますか。
受けられる可能性はありますが、公表事例を見る限り、不許可の方がはるかに多いのが実情です。罰金のみの事案でも不許可例があります。
当事務所が、平成26年分から令和7年分までの公表事例のうち刑事処分のある153件を原典で照合し、配偶者が日本人の類型を処分の内容ごとに整理すると、次のとおりです。
| 本人の刑事処分 | 許可 | 不許可 |
|---|---|---|
| 罰金のみ | 3件 | 4件 |
| 執行猶予付きの判決 | 3件 | 19件 |
| 実刑判決 | 2件(いずれも50条1項ただし書) | 16件 |
| 合計 | 8件 | 39件 |
(出典:出入国在留管理庁「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」平成26年分〜令和7年分。当事務所集計。)
配偶者が日本人であることは大きな積極要素ですが、それだけで刑事処分の重さを打ち消せるわけではありません。犯罪の種類ごとの傾向は【犯罪別】在留特別許可の許可・不許可事例153件の分析で整理しています。
ガイドラインは、日本人との婚姻をどのように評価していますか。
「特に考慮する積極要素」に挙げていますが、法律上の婚姻であるだけでなく、共同生活と相互扶助を伴う安定した婚姻であることを求めています。
「当該外国人が、日本人又は特別永住者と法的に婚姻している場合(退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること」(在留特別許可に係るガイドライン第2の2(1)ウ)
ポイントは、相当期間の共同生活、相互の協力と扶助、婚姻の安定と成熟の3つです。偽装の婚姻や形式的な婚姻届は除かれます。刑事事件で身柄を拘束されると同居が途切れるため、それ以前からの生活の実態をどう示すかが問われます。この要件の読み方は婚姻が「安定かつ成熟」とはで解説しています。
令和7年分の公表事例では、どこで結論が分かれましたか。
長年の婚姻と比較的短い刑期がそろった事案は許可され、重い実刑、婚姻継続の意思の欠如、退去強制歴が重なった事案は不許可でした。
| 令和7年分・配偶者が日本人の場合 | 主な事情 | 刑事処分 | 結論 |
|---|---|---|---|
| ただし書該当許可第1事例 | 在日約33年1月、婚姻約33年4月、成年の子1人 | 窃盗で懲役1年2月の実刑 | 許可(日本人の配偶者等・1年) |
| 不許可第1事例 | 在日約18年1月、婚姻約25年9月、退去強制歴と在留特別許可歴あり | 覚醒剤取締法違反で懲役1年6月・執行猶予3年 | 不許可 |
| 不許可第2事例 | 在日約5年5月、子なし | 入管法違反(不法就労助長)で懲役1年・執行猶予4年 | 不許可 |
| 不許可第3事例 | 婚姻約10月、未成年の子1人、配偶者に婚姻継続の意思なし | 傷害で懲役5年の実刑 | 不許可 |
執行猶予の不許可第1事例は、婚姻約25年9月という長い婚姻がありながら、薬物事件に加えて退去強制歴があったことが響いたと考えられます。不法就労助長は、ガイドラインが「特に考慮する消極要素」として挙げる類型です(第2の3(1)イ)。
別居や婚姻継続の意思は、どう影響しますか。
大きく影響します。別居や婚姻の実態への疑義が記載された事案は、婚姻期間が長く処分が軽くても不許可とされています(以下いずれも配偶者が日本人の場合)。
- 令和6年分(6月10日以降)・不許可第2事例:在日約33年8月、婚姻約34年2月、不法就労助長で罰金20万円の略式命令にとどまるが、配偶者とは別居。不許可。
- 令和6年分(6月10日以降)・不許可第1事例:傷害・道路交通法違反で懲役2年2月の実刑、前科2件、配偶者及び子とは別居。不許可。
- 令和5年分・不許可第5事例:不法就労助長で罰金30万円の略式命令、婚姻約30年3月だが、婚姻・同居の実態が認められなかったもの。不許可。
罰金で済んだ事案や30年を超える婚姻でも、同居の実体を欠けば積極要素として働きません。逆に言えば、日本人配偶者との同居と協力関係を示せるかどうかが、この類型の生命線です。夫婦関係が揺らいでいる場合の考え方は別居・離婚の危機があるとき在特はどうなるかをご覧ください。
逮捕された後に結婚した場合は、どう評価されますか。
公表事例では、逮捕や勾留の後に成立した婚姻は、ほぼ例外なく不許可となっています。
配偶者が日本人の場合の平成26年分・不許可第3事例(勾留中に婚姻が成立)、平成28年分・不許可第4事例(逮捕後に婚姻が成立)、令和2年分・不許可第3事例(偽装結婚が判明して逮捕された後、別の日本人と婚姻)は、いずれも不許可でした。ガイドラインが「退去強制を免れるために」した婚姻を除外していることとも整合します。交際が長く、結婚の予定がある場合は、事件とは関係なく、同居や家計の共同といった生活の実体を先に積み重ねていることが重要です。
本人の在留資格や罪名によって、退去強制事由は変わりますか。
変わります。本人が日本人の配偶者等の在留資格で在留しているなら、執行猶予付きの判決で直ちに退去強制事由になるとは限りませんが、薬物事件と1年を超える実刑は別です。
入管法24条4号の2は別表第一の在留資格の人が対象なので、別表第二の日本人の配偶者等には適用されません。しかし、薬物関係の法令違反で有罪の判決を受けた場合(24条4号チ。罰金・執行猶予でも該当)、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合(24条4号リ)は在留資格を問いません。オーバーステイの人は、不法残留そのものが退去強制事由です。条文の「処せられた」「有罪の判決を受けた」は、判決の確定を指すものとして運用されています。
刑事事件の段階から、何をしておくべきですか。
退去強制事由を生じさせない、あるいは軽くする刑事弁護と、日本人配偶者との婚姻の実体を記録として残すことです。
刑事弁護では、不起訴や罰金、実刑を避けること、実刑であっても1年以下にとどめることが、4号リや50条1項ただし書の適用を左右します。控訴の提起期間は14日で(刑事訴訟法373条)、上告にも準用されます(同法414条)。被告人だけが控訴した事件では原判決より重い刑は言い渡せません(同法402条)。上訴は被告人の正当な権利で、結果として確定までの時間が延びます。
その間に、配偶者による面会や手紙のやり取り、家計の負担、子の監護の状況、配偶者自身の陳述を記録として残しておきます。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。結果をお約束することはできませんが、逮捕直後からご相談いただければ、打てる手は増えます。
よくある質問
Q1. 日本人と結婚していれば、執行猶予判決なら在留できますか。
公表事例では、配偶者が日本人で執行猶予付き判決を受けた事案の多くが不許可です(当事務所集計で許可3件・不許可19件)。罪名、前科、退去強制歴、同居の有無などで結論が分かれます。
Q2. 夫(妻)の逮捕をきっかけに離婚を考えています。在留特別許可に影響しますか。
影響します。令和7年分の不許可第3事例には「配偶者に婚姻継続の意思なし」と記載されています。夫婦の問題は当事者が決めることですが、在留の見通しも含めて弁護士と確認してから判断することをお勧めします。
Q3. 長年連れ添っていれば、実刑判決でも許可されますか。
令和7年分には、婚姻約33年4月で窃盗の懲役1年2月の実刑を受けた人が入管法50条1項ただし書により許可された例があります。ただし、婚姻約34年でも別居していた事案は罰金で不許可となっており、期間の長さだけでは決まりません。
Q4. 在留特別許可の申請は、いつできますか。
収容令書により収容されたか、監理措置決定を受けた後です(入管法50条2項)。退去強制令書の発付後は申請できず(同条3項)、入国審査官の認定に服した場合は3日以内に申請しないと退去強制令書が発付されます(同法47条5項2号)。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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