配偶者が留学生のときの在留特別許可|家族滞在の許可例と窃盗の不許可例から考える
2026/10/11
配偶者が「留学」の在留資格で在学中の場合、本人に刑事処分があれば、公表事例上は在留特別許可を得た例が見当たらず、刑事事件の段階で退去強制事由そのものを生じさせない弁護が何より重要になります。留学は入管法別表第一の在留資格で、その配偶者との婚姻はガイドラインの「特に考慮する積極要素」に当たらないうえ、配偶者が数年のうちに永住許可や帰化に届くことも通常は難しいからです。刑事処分のない事案では、配偶者が留学生で子がいなくても「家族滞在」が付与された例があります。
本記事の要点
- 留学は別表第一の在留資格で、その配偶者との婚姻はガイドライン第2の2の「特に考慮する積極要素」に挙げられていません。
- 令和4年分には、刑事処分がなく、出頭申告・不法残留約5月・子なしの事案で、配偶者が留学生のまま家族滞在が付与された許可例があります。
- 令和2年分には、配偶者が留学生で、本人が窃盗により懲役2年の判決を受けた事案の不許可例があります。
- 本人が家族滞在なら、窃盗・詐欺・傷害などで拘禁刑に処せられると執行猶予付きでも退去強制事由になるため、不起訴や罰金を目指す弁護が最優先です。
- 配偶者が永住許可に届くには、就職して就労資格に変わってから少なくとも5年の就労資格での在留が目安になります。
配偶者が留学生だと、在留特別許可ではどう評価されますか。
ガイドライン上、留学生の配偶者との婚姻は「特に考慮する積極要素」には当たりません。婚姻は家族関係として考慮されますが、出発点は日本人や永住者・定住者の配偶者と比べて不利です。
ガイドラインが婚姻を「特に考慮する積極要素」に挙げるのは、配偶者が日本人・特別永住者である場合(第2の2(1)ウ)と、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者という別表第二の在留資格で在留している場合(第2の2(2)ウ)だけです。留学、技術・人文知識・国際業務、経営・管理などの別表第一の在留資格は含まれません。全体像は在留特別許可は配偶者の在留資格で決まるをご覧ください。
配偶者が留学生の事案で、許可された公表事例はありますか。
あります。ただし、刑事処分のない事案です。本人に刑事処分がある事案では、配偶者が留学生の許可例は見当たりません。
| 公表事例 | 主な事情 | 刑事処分 | 結論 |
|---|---|---|---|
| 令和4年分・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第4事例 | 出頭申告・不法残留、在日約3年5月、違反約5月、婚姻約1年6月、夫婦間の子なし | なし | 許可(家族滞在・1年4月) |
| 令和2年分・同・不許可第2事例 | 警察逮捕・不法残留及び刑罰法令違反、在日約7年8月、婚姻約5年、未成年の子1人(家族滞在) | 窃盗により懲役2年の判決 | 不許可 |
(出典:出入国在留管理庁「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」令和2年分・令和4年分。懲役は当時の刑名で、現行法の拘禁刑に相当します。)
令和4年分の許可例は、配偶者が別表第一の事案で夫婦間に子がないまま許可された唯一の公表事例です。自ら出頭し、不法残留が約5月と短く、刑事処分もないという条件がそろっていました。付与された家族滞在の性質は家族滞在とは(在留特別許可で付与される場合)で解説しています。
本人に刑事処分がある場合は、どう判断されていますか。
配偶者が別表第一の在留資格で本人に刑事処分(執行猶予を含みます)がある公表事例は8件あり、すべて不許可です。配偶者が留学生の事案は、その中の令和2年分の1件です。
令和2年分の不許可第2事例では、婚姻約5年で未成年の子もいましたが、窃盗で懲役2年の判決を受けていました。現行法では、1年を超える実刑に処せられた人は、入管法50条1項ただし書により、人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がなければ許可されません。改正法施行後にただし書で許可された公表事例にも、配偶者が別表第一の事案は見当たりません。
本人が家族滞在で在留していた事案では、資格外活動や不法就労のあっせんで懲役10月・執行猶予2年・罰金30万円の判決を受けた事例(令和5年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第2事例)、稼働目的で偽造在留カードを行使し懲役1年6月・執行猶予3年の判決を受けた事例(令和4年分・その他・不許可第6事例)も、いずれも不許可でした。
本人が家族滞在のとき、どのような判決で退去強制事由になりますか。
家族滞在は別表第一の在留資格なので、窃盗・詐欺・傷害など所定の罪で拘禁刑に処せられれば、執行猶予付きでも退去強制事由になります。罰金のみなら、この規定には当たりません。
「別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者で、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪」(入管法24条4号の2・抜粋)
| 判決の内容 | 家族滞在の本人への影響 |
|---|---|
| 不起訴 | 退去強制事由は生じない |
| 罰金のみ(薬物事件を除く) | 24条4号の2には当たらない |
| 拘禁刑・執行猶予付き | 所定の罪なら24条4号の2に当たる |
| 薬物事件の有罪判決 | 罰金・執行猶予でも24条4号チに当たる |
| 1年を超える拘禁刑の実刑 | 24条4号リに当たり、50条1項ただし書の対象 |
条文の「処せられた」は判決の確定を指すものとして運用されています。不起訴や罰金を目指す意味は不起訴・罰金を目指す意味で詳しく説明しています。
留学生の配偶者は、どうすれば永住許可や帰化に近づけますか。
卒業後に就職して就労資格に変更し、そこから年数を重ねていくのが基本的な道筋です。ただし、刑事裁判の数年の間に届くことは通常は難しいと考えておくべきです。
永住許可に関するガイドラインは、原則として引き続き10年以上の在留、そのうち5年以上は就労資格又は居住資格での在留を目安としています。留学の期間だけでは、この5年には数えられません。帰化は、法律上は引き続き5年以上の住所が条件ですが(国籍法5条1項1号)、2026年4月1日から運用で原則10年以上の在留が求められています。簡易帰化(国籍法7条)は日本国民の配偶者のための制度で、外国人同士の夫婦には使えません。
また、卒業後に技術・人文知識・国際業務などに変わっても、それ自体は別表第一の在留資格です。その場合の見通しは配偶者が技術・人文知識・国際業務のときで扱っています。
判決確定までの時間は、この類型でも意味がありますか。
あります。配偶者の地位を引き上げるには足りなくても、刑事裁判で争うべき点を争い、より軽い判決を得ることは、在留にとって直接の意味を持ちます。
控訴の提起期間は14日で(刑事訴訟法373条)、上告にも準用されます(同法414条)。被告人だけが控訴した事件では原判決より重い刑は言い渡せません(同法402条)。上訴は被告人の正当な権利であり、結果として確定までの時間も延びます。その間に、本人の在留期間の更新を切らさないこと、夫婦の同居や家計の共同、子の養育の記録を残しておくことも欠かせません。在留期間の更新は、法務大臣が「相当の理由があるときに限り」許可するもので(入管法21条3項)、刑事事件中の更新も油断はできません。
弁護士に相談するのは、いつがよいですか。
逮捕された直後です。この類型では、入管の手続に入ってからできることが限られるため、捜査段階の弁護が結論をほぼ左右します。
当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。公表事例上は厳しい類型でも、初動の対応と事情の整理で見通しが変わることはあります。もっとも、結果をお約束できるものではありません。留学中の配偶者の在留も含め、家族全体の見通しを早めに確認しておきましょう。
よくある質問
Q1. 罰金で済めば、家族滞在の在留を続けられますか。
薬物事件を除き、罰金のみであれば入管法24条4号の2の退去強制事由には当たりません。ただし、在留期間の更新は相当の理由があるときに限り許可されるため(入管法21条3項)、更新の審査で事件の内容が問われることはあり得ます。
Q2. 夫婦に子どもがいないと不利ですか。
令和4年分の許可第4事例は、夫婦間に子がない事案で家族滞在が付与されています。子の有無よりも、刑事処分がないこと、出頭申告であること、不法残留期間が短いことが大きく働いたと考えられます。
Q3. 配偶者が卒業して就職すれば、在留特別許可で有利になりますか。
就職によって技術・人文知識・国際業務などに変わっても、別表第一の在留資格であることは変わらず、ガイドラインの特に考慮する積極要素には当たりません。ただし、将来の永住許可に向けた年数を積み始める意味はあります。
Q4. 在留特別許可の申請は、いつできますか。
収容令書により収容されたか、監理措置決定を受けた後です(入管法50条2項)。退去強制令書の発付後は申請できず(同条3項)、入国審査官の認定に服した場合は3日以内に申請しないと退去強制令書が発付されます(同法47条5項2号)。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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