配偶者の永住申請中に夫(妻)が逮捕されたら|申請への影響と取下げの判断を弁護士が解説
2026/10/11
配偶者の永住許可申請中に夫(妻)が逮捕されても、慌てて申請を取り下げるべきだとは限りません。永住許可は申請者である配偶者本人の要件で審査されるのが基本であり、配偶者が永住者になれば、夫(妻)の在留特別許可でも婚姻が「特に考慮する積極要素」に当たるからです。
ただし、家族の状況も含めて確認されることがあり、逮捕によって家計や納税・保険料の状況が変わることもあります。申請を続けるか、どう説明するかは、刑事事件の見通しとあわせて弁護士と相談して決めてください。
本記事の要点
- 永住許可の要件である素行善良と独立生計は、申請者である配偶者本人について審査されます(入管法22条2項)。
- 夫(妻)の逮捕が審査にどう影響するかは一概にいえず、取下げを急いで決めるべきではありません。
- 夫(妻)の収入が途絶えると、生計や納税・保険料の納付に影響が出るおそれがあるため、期限内の納付を続けることが大切です。
- 配偶者が永住者になれば、夫(妻)の在留特別許可でガイドライン第2の2(2)ウの「特に考慮する積極要素」に当たります。
夫(妻)が逮捕されたら、配偶者の永住申請はどうなりますか。
取り下げない限り、申請は審査中のまま続きます。審査は申請者である配偶者本人の要件で行われるのが基本ですが、家族の状況も含めて確認されることがあるため、影響がないと言い切ることもできません。
大切なのは、二つのことを分けて考えることです。一つは配偶者自身の永住審査、もう一つは夫(妻)の刑事事件とその後の入管手続です。この二つは別々の手続ですが、配偶者の永住が認められるかどうかは、夫(妻)の在留特別許可の見込みに直結します。どちらか一方だけを見て判断しないことが重要です。
永住の審査では、誰の事情が見られますか。
法律上の要件は、申請者本人について定められています。夫(妻)が逮捕されたことは、配偶者本人の処罰歴ではありません。
「法務大臣は、その者が次の各号のいずれにも適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。」(入管法22条2項)
| 要件 | 審査の対象 | 夫(妻)の逮捕との関係で考えられる点 |
|---|---|---|
| 素行善良(22条2項1号) | 配偶者本人 | 夫(妻)の事件は本人の処罰歴ではない |
| 独立生計(22条2項2号) | 配偶者本人の資産又は技能 | 世帯の収入が減ったときの見通し |
| 罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと | 配偶者本人 | 本人について変化はない |
| 公的義務の履行 | 配偶者本人 | 逮捕後も期限内に納めているか |
| 在留期間(原則10年など) | 配偶者本人 | 変化はない |
このように、要件の多くは逮捕によって直接変わるものではありません。ただ、家族の状況も含めて確認されることがあるため、個別の事情に応じた説明の準備が必要になる場合があります。
家族の生計は、どのように影響しますか。
夫(妻)の収入で家計を支えていた場合、逮捕によって収入が途絶え、独立生計の要件の見通しが変わるおそれがあります。
入管法22条2項2号は「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。」を求めています。配偶者本人の収入や資産、今後の就労の見込みを整理し、家計がどう維持されるかを示せるようにしておくことが大切です。配偶者の在留資格が夫(妻)の扶養を前提とするものである場合には、配偶者自身の在留への影響にも目を配る必要があります。
夫(妻)が保釈されれば、仕事や家計を立て直す余地も生まれます。保釈の考え方は保釈の解説をご覧ください。
納税や保険料の支払いで、気をつけることは何ですか。
納期限を一日も遅らせないことです。永住許可のガイドラインは、公的義務の履行を求め、期限に遅れた場合を原則として消極的に評価するとしています。
ガイドラインは、納税、公的年金・公的医療保険料の納付、入管法上の届出などの公的義務を適正に履行していることを求め、「当初の納税(納付)期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されます。」としています。夫(妻)の口座から引き落とされていた支払いが、逮捕で止まってしまうことがあります。世帯の支払いの名義と方法を早めに確認し、配偶者本人の分は必ず期限内に納めてください。
申請は取り下げた方がよいのですか。
一律には決められません。取り下げれば、夫(妻)の在留特別許可に間に合わせるための時間を失うおそれがあり、続ければ、変化した家計などの事情をどう説明するかが課題になります。
| 判断の視点 | 申請を続ける場合 | 取り下げる場合 |
|---|---|---|
| 夫(妻)の在留特別許可との関係 | 許可されれば第2の2(2)ウに当たる | 再申請から審査をやり直すことになる |
| 時間 | 刑事事件の期間を審査に充てられる | 判決確定までに間に合わないおそれ |
| 家計・公的義務 | 変化した事情の説明が必要になり得る | 状況を立て直してから申請できる |
どちらがよいかは、刑事事件の見通し、家計の状況、申請の内容によって異なります。取下げは後から元に戻せないため、自己判断で決めず、弁護士と相談してから判断してください。
刑事事件の弁護では、何を目指すべきですか。
まず、退去強制事由に当たる判決を受けないことです。それが難しい場合でも、判決確定までの時間を確保し、その間に配偶者の永住許可を得ることを目指します。
別表第一の在留資格の人は、窃盗・詐欺・傷害など一定の罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予付きでも退去強制事由に当たりますが(入管法24条4号の2)、不起訴や罰金にとどまれば同号には当たりません。薬物事件は罰金でも4号チに当たります。こうした退去強制事由は判決の確定によって生じるため、控訴・上告を経ると確定まで数年かかることがあります。上訴は被告人の正当な権利であり、被告人だけが控訴した事件では原判決より重い刑を言い渡すことはできません(刑事訴訟法402条)。初動の弁護については外国人の刑事事件で弁護士に相談すべきときで説明しています。
配偶者の永住は、夫(妻)の在留特別許可とどうつながりますか。
配偶者が永住者になれば、夫(妻)の在留特別許可で、婚姻がガイドライン第2の2(2)ウの「特に考慮する積極要素」に当たります。別表第一の在留資格のままでは当たりません。
当事務所が平成26年分から令和7年分(2025年)までの公表事例を原典で精査したところ、配偶者が別表第一の在留資格で、本人に刑事処分(執行猶予を含みます)がある事例は8件あり、すべて不許可でした。永住の審査中に夫(妻)が逮捕されたことは、見方を変えれば、永住許可を得ることの重みが増したということでもあります。詳しくは配偶者の永住申請を急ぐべき理由をご覧ください。
当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。もっとも、結論は個別の事情によって異なり、許可をお約束できるものではありません。逮捕直後に家族が何をすべきかは夫が逮捕された妻へにまとめています。
よくある質問
Q1. 夫(妻)が逮捕されたことで、配偶者の永住は不許可になりますか。
永住許可は申請者本人の要件で審査されるのが基本で、逮捕されたことが直ちに配偶者本人の要件を欠くことにはなりません。ただ、家族の状況も含めて確認されることがあるため、どう影響するかは一概にいえません。弁護士と相談しながら進めてください。
Q2. 夫(妻)が不起訴になれば、心配はなくなりますか。
別表第一の在留資格の人であれば、不起訴になれば入管法24条4号の2の退去強制事由は生じません。ただ、配偶者の永住審査では家計や公的義務の状況が引き続き見られるため、納付などは期限どおり続けてください。
Q3. 夫(妻)の判決確定までに永住許可が出なかった場合は、どうなりますか。
在留特別許可の判断(入管法50条4項)の前に許可が出れば、評価の対象になり得ます。しかし、退去強制令書が発付された後の事情変更は原則として考慮されません。審査の状況と刑事事件の進み具合を、常に突き合わせておく必要があります。
Q4. 配偶者自身の在留期間の更新は、どうすればよいですか。
永住の審査中であっても、現在の在留資格の在留期間を切らさないよう管理してください。配偶者自身が不法残留になってしまうと、永住どころではなくなります。期限が近い場合は、早めに弁護士にご相談ください。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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