逮捕された夫(妻)を永住者の配偶者が守るには|在留特別許可への備えを弁護士が解説
2026/10/11
配偶者であるあなたが永住者であれば、逮捕された夫(妻)が在留特別許可を求めるとき、婚姻はガイドラインの「特に考慮する積極要素」に当たる土台がすでにあります。あとは、その婚姻が「安定かつ成熟」していることを、共同生活と生計の実態で示せるかどうかです。
公表事例では、配偶者が永住者でも、婚姻期間が短い事案や重い実刑の事案は不許可になっています。逮捕の直後から、家族として準備できることがあります。
本記事の要点
- 配偶者が永住者(入管法別表第二)であれば、婚姻はガイドライン第2の2(2)ウの「特に考慮する積極要素」に当たり得ます。
- その前提は、相当期間の共同生活と相互の扶助があり、婚姻が安定かつ成熟していることです。
- 公表事例には、配偶者が永住者でも、婚姻期間が短い事案や婚姻継続の意思がない事案、重い実刑の事案で不許可となった例があります。
- 夫(妻)の在留資格が別表第一か別表第二かで、どの刑事処分が退去強制事由になるかが変わります。
- 判決確定までの期間に、同居・家計・子の監護の記録を整えておくことが申請の準備になります。
配偶者が永住者であることは、在留特別許可でどう評価されますか。
婚姻がガイドラインの「特に考慮する積極要素」に当たり得ます。ただし、永住者と結婚しているという事実だけでは足りず、婚姻の実質が問われます。
「当該外国人が、入管法別表第二に掲げる在留資格で在留している者と法的に婚姻している場合(退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること」(在留特別許可に係るガイドライン第2の2(2)ウ)
永住者は入管法別表第二の在留資格なので、この項目の対象です。別表第一の在留資格の配偶者との婚姻はこの項目に挙げられておらず、出発点が大きく違います。詳しくは在留特別許可は配偶者の在留資格で決まるで説明しています。
夫(妻)の在留資格によって、退去強制事由は変わりますか。
変わります。夫(妻)が別表第一の在留資格であれば、一定の罪で拘禁刑に処せられると執行猶予付きでも退去強制事由になりますが、「永住者の配偶者等」であれば、その規定は適用されません。
| 夫(妻)の在留上の地位 | 主に問題となる退去強制事由 | 執行猶予・罰金の扱い |
|---|---|---|
| 永住者の配偶者等(別表第二) | 入管法24条4号チ(薬物)、4号リ(1年を超える拘禁刑) | 4号リは刑の全部の執行猶予なら当たらない。薬物は罰金・執行猶予でも4号チに当たる |
| 技術・人文知識・国際業務など(別表第一) | 入管法24条4号の2、4号チ、4号リ | 窃盗・詐欺・傷害など一定の罪で拘禁刑なら、執行猶予付きでも4号の2に当たる。罰金のみなら4号の2は当たらない |
| 在留期間が切れている | 不法残留 | 判決を待たずに退去強制事由になる |
条文の「処せられた」「有罪の判決を受けた」は、判決の確定を指すものとして運用されています。在留期間の更新への影響は別に検討が必要で、刑事処分と在留期間の更新で触れています。
配偶者が永住者でも、不許可になった公表事例はありますか。
あります。配偶者が永住者であっても、婚姻期間が短い、婚姻を続ける意思がない、退去強制歴がある、重い実刑がある、といった事案では不許可になっています。
- 令和3年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第2事例:窃盗未遂により懲役1年(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)の判決。特記事項に「配偶者に婚姻継続の意思なし。」とあります。
- 令和3年分・同類型・不許可第3事例:詐欺により懲役2年6月、執行猶予4年の判決。婚姻期間は約7月でした。
- 令和6年分(6月10日以降)・同類型・不許可第1事例:組織的犯罪処罰法違反・詐欺により懲役4年6月の実刑判決、ほか前科1件、在留特別許可歴あり。
- 令和7年分(2025年)・同類型・不許可第2事例:売春防止法違反・入管法違反(不法就労助長)により懲役2年・罰金80万円の実刑判決、退去強制歴あり。
他方、令和7年分・同類型・許可第1事例(不法残留により懲役1年・執行猶予3年、婚姻約3年8月)は、配偶者が永住者で「永住者の配偶者等(1年)」が許可されています。婚姻の実質と刑事処分の重さの組合せで結論が分かれています。
「婚姻の実体」は、何によって示すのですか。
同居の事実、家計の共同、子の監護養育の状況など、夫婦として暮らしてきたことを裏付ける記録で示します。これまでの生活を記録として拾い上げる作業です。
- 住民票の世帯の記載、賃貸借契約や公共料金の名義など、同居を示すもの
- 生活費の負担や送金、共同の口座など、家計の共同を示すもの
- 子の学校や保育園の書類、通院の記録など、子の監護養育を示すもの
- 面会の記録や手紙など、逮捕後も夫婦の関係が続いていることを示すもの
公表事例には、逮捕された後に婚姻したことが特記された事案がいくつもあり、ほぼ例外なく不許可です。婚姻届がまだであれば、その時期と経緯も含めて弁護士と検討してください。立証の工夫は婚姻の実体をどう立証するかにまとめています。
生計については、何を準備しておけばよいですか。
夫婦が相互に協力して扶助し、生活の基盤が安定していることを示す資料です。夫(妻)が身柄を拘束されている間、家計を支えるのは永住者である配偶者であることが多く、その収入と生活の見通しが、そのまま「扶助」の裏付けになります。
配偶者の課税証明書や給与明細、住居の契約、子の養育の支出などを時期をそろえて整理しておくと、婚姻の実体と生計を一体として説明できます。また、ガイドラインは、日本で就労していたのに適正に納税義務を果たしていないことを、本人の素行の消極要素として挙げています(ガイドライン第2の3)。夫(妻)の納税の状況も、この機会に確認しておいてください。
刑事事件の段階で、配偶者にできることは何ですか。
できるだけ早く弁護人を付け、刑事処分の結果が在留にどう響くかを前提に、弁護の方針を立ててもらうことです。入管法50条1項ただし書は、無期又は1年を超える実刑(刑の全部の執行猶予などを除きます)に処せられた人について、「特別の事情」がなければ在留特別許可をしないとしています。
不起訴や罰金か、全部執行猶予か、実刑ならその期間はどれくらいか。この違いが分かれ目になります。控訴・上告は被告人の正当な権利であり、被告人だけが控訴した事件では原判決より重い刑を言い渡すことはできません(刑事訴訟法402条)。上訴すれば、結果として判決確定までの時間も延びます。
初動の考え方は夫が逮捕された妻へもあわせてご覧ください。
入管の手続に入ったら、配偶者はどう動けばよいですか。
申請の期限を守り、監理措置を求め、配偶者として陳述書を準備することです。在留特別許可の申請ができるのは、収容されたか、監理措置決定を受けた後です。
「前項の規定による許可(以下この条において「在留特別許可」という。)の申請は、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が、法務省令で定める手続により、法務大臣に対して行うものとする。」(入管法50条2項)
入国審査官の認定に服した場合、その日から3日以内に申請しなければ退去強制令書が発付されます(入管法47条5項2号)。永住者である配偶者が監理人を引き受け、収容に代わる監理措置を求めることも考えられます。陳述書には、共同生活、家計の分担、子の養育、事件後の支え方を具体的に書いてください。
当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間に家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。ただし、結果は事案ごとの事情によって異なり、許可を約束できるものではありません。
よくある質問
Q1. 配偶者が永住者なら、夫(妻)は必ず在留特別許可を受けられますか。
いいえ。婚姻が「特に考慮する積極要素」に当たり得るにとどまります。公表事例には、配偶者が永住者でも、婚姻期間が短い事案や重い実刑の事案で不許可となった例があります。
Q2. 夫(妻)が永住者の配偶者等で、執行猶予付きの判決を受けたら退去強制になりますか。
薬物事件でなければ、全部執行猶予の判決で入管法24条4号リには当たりません。別表第一の在留資格を対象とする4号の2も適用されません。ただし、薬物事件は罰金や執行猶予でも4号チに当たります。
Q3. 別居している場合、婚姻は評価されませんか。
ガイドラインは「夫婦として相当期間共同生活をし」ていることを求めているため、別居は不利に働きやすい事情です。仕事や介護など別居にやむを得ない理由があるなら、その事情と、別居中も交流や扶助が続いていたことを資料で示す必要があります。
Q4. 永住者の配偶者が帰化して日本人になった方が有利ですか。
ガイドラインは、日本人・特別永住者との婚姻(第2の2(1)ウ)と、別表第二の在留資格者との婚姻(同(2)ウ)を、同じ内容の積極要素として定めています。すでに永住者であれば、婚姻の実体と生計を整えることを優先するのが現実的です。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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