繁華街ビルの一斉摘発に居合わせたら|職務質問・所持品検査・在留カード提示義務と外国人の権利
2026/07/23
報道によれば、大阪の繁華街の雑居ビルに違法薬物への関与の疑いで家宅捜索が入り、その場に多数の外国人が居合わせ、逮捕者も出たと報じられています。飲食店やバー、友人の集まりに顔を出しただけの人が、摘発の現場に偶然居合わせてしまうことは誰にでも起こり得ます。この記事では、警察官から声をかけられた場面で外国人の方が知っておくべきルールと、疑いをかけられてしまった場合の対応を解説いたします。
1 職務質問と所持品検査の法的な位置づけ
職務質問(警察官職務執行法2条)は、あくまで任意の手続であり、答えたくない質問に答える義務はありません。所持品検査も原則として承諾に基づいて行われるものです。もっとも、現場で強く拒絶して押し問答になると、かえって嫌疑を深める資料とされかねないのが実情であり、「答えない自由があること」と「その場でどう振る舞うのが得策か」は分けて考える必要があります。
2 在留カードの携帯義務・提示義務
外国人の方に特有のルールとして、中長期在留者は在留カードを常時携帯する義務があり、警察官等から提示を求められた場合には提示する義務があります(入管法23条)。携帯していなかったこと自体に罰則があるため、職務質問への対応とは区別して、在留カードの提示には応じるのが原則です。パスポートやカードを他人に預けている状態は、それ自体が大きなリスクになります。
3 「居合わせただけ」でも疑われる構造:共同所持と故意
薬物事犯では、その場に薬物があった場合に、同席者全員が共同所持の疑いをかけられることがあります。しかし、所持とは物への実力支配をいい、単にその場にいたことや、薬物の存在をうすうす感じていたことと、刑事責任を負うべき所持・故意とは本来別の問題です。捜査段階で「知っていたでしょう」という誘導に安易に迎合した調書が作られると、後から覆すことは容易ではありません。薬物事犯は、入管法24条4号チにより、刑の重さを問わず有罪となれば退去強制事由に該当し得る類型であるため、認識・故意を争うべき事案では初動から徹底して争う必要があります。当事務所では、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と反対尋問により無罪判決を獲得した事例がございます。
4 不起訴処分の重要性
薬物事犯で有罪となれば、執行猶予が付いても退去強制の対象となり得ます。「執行猶予なら日本に居られる」という理解は、この類型では通用しません。だからこそ、起訴前段階で嫌疑の薄さを示し、不起訴処分(嫌疑不十分)を獲得することが、在留を守る上で決定的に重要です。弁護活動としては、現場の状況の客観的再現、同席者の供述の吟味、違法な所持品検査・採尿手続があればその主張などを尽くします。
5 初動で押さえるべき3つのポイント
第1に、黙秘権の行使です。特に「知っていたか」という認識に関する質問には、弁護士と相談するまで供述を留保することが重要です。第2に、早期の弁護人選任です。当番弁護士制度により、逮捕直後から無料で弁護士を呼ぶことができます。第3に、経験ある通訳の確保です。「知っていた」「気づいていたかもしれない」といった微妙な認識の言い回しは、通訳の質により調書上の意味が大きく変わります。
6 当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護に注力し、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決のほか、国際刑事事件・裁判員裁判対象事件・世間的に報道された重大事件への対応実績を多数有しています。在留の場面でも、国籍国の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下で、過去の許可事例の分析により1回の手続で在留特別許可を獲得した事例があり、さらに退去強制事由の判断に故意・過失の考慮を求める訴訟を係争中で、不法就労助長罪の認定事件では前例のない在留特別許可を獲得した実績もございます。松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。刑事手続終了後の在留資格の更新等は、提携の行政書士と連携して対応いたします。
7 むすびに
摘発の現場に居合わせてしまったこと自体は罪ではありません。しかし、その後の数日間の受け答えが、その後の人生と在留を大きく左右します。ご本人やご家族が不安を抱えている場合は、できる限り早い段階でご相談ください(2026年7月時点の情報です)。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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