電車内の痴漢で逮捕されたら|迷惑防止条例違反と不同意わいせつ罪の違い、外国人の方が知っておくべきこと
2026/07/22
通勤電車内での痴漢事案は、日本で生活する外国人の方にとっても決して他人事ではありません。首都圏の鉄道各線では痴漢事案の摘発が継続的に行われており、駅係員への引き渡しから、そのまま現行犯逮捕に至る経過をたどることが少なくありません。ご本人にとってもご家族にとっても、ある日突然、生活が一変する出来事となります。本記事では、在日中国人の方やそのご家族に向けて、痴漢事案で問題となる2つの罪名の違いと、在留資格を守るための初動対応を解説いたします。
痴漢で問題となる2つの罪名
日本で「痴漢」と呼ばれる行為には、法律上、大きく分けて2つの罪名が想定されます。第1に、各都道府県の迷惑防止条例違反です。東京都の条例では、公共の場所・乗物における卑わいな言動が禁止されており、衣服の上から身体に触れる態様が典型とされています。法定刑は6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(常習の場合は加重)です。第2に、刑法176条の不同意わいせつ罪です。衣服の内側に手を入れて直接触れるなど、より悪質な態様の場合はこちらが適用され、法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑と格段に重くなります。なお、令和5年の刑法改正により、従来の「強制わいせつ罪」は「不同意わいせつ罪」に改められました。どちらの罪名が適用されるかは態様の評価に左右され、その後の手続と在留資格への影響を大きく分けます。
逮捕後の刑事手続の流れ
現行犯逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかを判断します。勾留が認められると原則10日間、延長でさらに最大10日間、身柄拘束が続きます。逮捕から勾留決定までの最初の72時間の対応が、その後の流れを大きく左右します。この間に弁護人が付き、身柄解放と不起訴に向けた活動を直ちに始められるかが分水嶺となります。
外国人事件特有のリスク
外国人の方の場合、刑事処分に加えて在留への影響を必ず併せて検討する必要があります。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由と定めています(刑の全部の執行猶予が付された場合には除外の定めがあり、号ごとの構造の精査が必要です)。不同意わいせつ罪で実刑となれば、この事由に該当しうる重大な局面となります。また、迷惑防止条例違反の罰金にとどまった場合でも、在留期間更新の審査では素行が考慮されるため、「罰金で済んだから安心」とは言えません。刑事手続の初期段階から、入管法の構造を踏まえた見通しを立てることが重要です。
不起訴処分の重要性と示談
上記の構造からすれば、外国人事件の弁護活動は、起訴前段階での不起訴処分の獲得を最優先目標として組み立てるべきです。痴漢事案では、被害者の方への真摯な謝罪と示談の成立が、不起訴判断において重要な考慮要素となります。もっとも、被害者の方の心情に配慮した示談交渉は、弁護人を通じてのみ可能となる場合がほとんどです。捜査機関は被疑者本人に被害者の連絡先を教えないため、弁護人の早期選任が事実上の前提条件となります。
初動対応の3つのポイント
- 不用意な供述をしないこと。事実と異なる調書が作成されると、後から訂正することは容易ではありません。黙秘権は憲法上の権利です。
- 一刻も早く弁護人を選任すること。当番弁護士制度の利用も含め、勾留決定前に弁護活動を開始することが重要です。
- 信頼できる通訳を確保すること。捜査機関が手配する通訳のみに頼ると、微妙な言い分の違いが調書に反映されない危険があります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護に豊富な実績を有しています。性的事案との関わりでは、深夜盗撮被害事件において刑事告訴と示談交渉を担当し、300万円の慰謝料支払による示談を成立させた事例があり、被害者側・加害者側双方の視点から示談実務の勘所を踏まえた交渉が可能です。また、過去の逮捕報道・前科報道の削除に成功した事例もあり、事件後の社会復帰までを見据えた対応を行っています。特殊詐欺事案で不起訴処分を獲得した実績など、不起訴獲得に向けた弁護活動の経験も豊富です。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から事件終結まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く通訳を刑事手続全般でご利用いただけます。万一退去強制手続に進んだ場合も、不法就労助長罪の認定事件で前例のない在留特別許可を獲得した実績を含め、入管手続まで一貫して対応いたします。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携の行政書士によるサポートも可能です。
結語
痴漢事案は、罪名の評価と初動対応のいかんによって、その後の人生と在留への影響が大きく変わる類型です。ご本人やご家族が対応に迷われている時間そのものが、貴重な72時間を削っていきます。まずは落ち着いて、専門家に状況を整理してもらうことから始めていただければと思います。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。(本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。)
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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