ストーカー規制法の警告とは|4条1項の要件・手続・効果と、警告を受けたときの対応
2026/09/10
ストーカー規制法の警告とは、つきまとい等または位置情報無承諾取得等をして相手方に不安を覚えさせる行為があり、その者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときに、警察本部長等が、相手方の申出により、または職権で、更に反復して当該行為をしてはならない旨を告げるものをいう。(ストーカー規制法4条1項)
- 警告をするのは警視総監、道府県警察本部長または警察署長である
- 相手方の申出だけでなく職権でも行われる
- 警告の内容と日時は申出をした相手方に通知される
- 警告に違反したこと自体を処罰する規定はない
- 警告を受けると3年間は銃刀法の許可を受けられない
警告はどのような場合に行われるのか
要件は、同法3条に違反する行為、すなわち、つきまとい等または位置情報無承諾取得等をして、相手方に身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる行為があったことと、その者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認められることである。
つきまとい等は、恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるものに限られる(2条1項)。この目的の認定が、実務上の大きな争点となる。
警告の手続はどのように進むのか
警告は、相手方の申出により、または職権で、国家公安委員会規則で定めるところにより行われる(4条1項)。警察本部長等は、警告をしたときは、速やかに、警告の内容と日時を相手方に通知しなければならない(同条3項)。
申出を受けたのに警告をしなかったときは、その旨と理由を申出人に書面で通知しなければならない(同条4項)。一の警察本部長等が警告をした場合、他の警察本部長等は同じ行為について重ねて警告をすることができない(同条2項)。
警告を受けると、どのような効果があるのか
警告に違反したこと自体を処罰する規定はない。しかし、警告を受けた日から3年を経過していない者は、銃砲刀剣類所持等取締法の許可を受けることができない(同法5条1項15号)。狩猟や有害鳥獣の駆除などで銃を所持する方にとって、警告は直接の不利益をもたらす。
また、警告を受けた者の情報は警察に記録され、その後の申出や禁止命令等の判断で考慮されうる。警告の後に同様の行為があれば、公安委員会による禁止命令等や、ストーカー行為罪による検挙に進むことがある。
警告と禁止命令等はどう違うのか
警告は警察本部長等が行い、事前の聴聞の定めはなく、期間の定めもない。禁止命令等は都道府県公安委員会が発する命令であり、原則として聴聞を経て、効力は1年(延長可)、違反には刑事罰がある。禁止命令等は警告を経ずに発することもできる。
| 項目 | 警告 | 禁止命令等 |
|---|---|---|
| 行う機関 | 警察本部長等 | 都道府県公安委員会 |
| 事前の手続 | 定めなし | 原則として聴聞 |
| 期間 | 定めなし | 1年(延長可) |
| 違反の罰則 | なし | あり |
| 銃刀法の許可 | 警告の日から3年間は受けられない | 命令の日から3年間は受けられない |
警告を争うことはできるのか
警告は、一般に行政指導と解されており、取消訴訟の対象となる処分に当たるかどうかが争われてきた。事前の聴聞もないまま、警察の認定だけで「ストーカー」と扱われ、法律上の不利益を受けることが問題となる。
大阪高裁令和6年6月26日判決(令和5年(行コ)第137号、判例地方自治521号154頁)は、当事務所が代理人を務めた事件であり、警告の法的効力を認めたものである。当事務所は、同判決が警告に対する司法救済のルートを開いたものと位置づけている。この論点は、興津征雄・法学教室534号124頁、天本哲史・社会志林72巻2号27頁、鈴木崇弘・法政研究93巻1号1頁で取り上げられている。
外国人が警告を受けた場合、在留に影響はあるのか
警告を受けたこと自体は、退去強制事由ではない。もっとも、その後に禁止命令等に違反したり、ストーカー行為罪で刑に処せられたりすれば、在留期間の更新などで素行として考慮される。警告の段階で事実関係を正確に記録しておくことが、後の手続での説明にも役立つ。
よくある質問
警察から警告を受けましたが、身に覚えがありません。どうすればよいですか。
警告の日時、担当者、告げられた内容を記録し、相手方とのやり取りなど客観的な資料を保全してください。警告は相手方の申出だけで行われることがあり、事実関係の確認が不十分なまま行われる場合もあります。早めに弁護士にご相談ください。
警告を受けると前科になりますか。
なりません。警告は刑罰ではありません。ただし、警察には記録が残り、銃刀法の許可を3年間受けられないなどの効果があります。
警告に従わないと逮捕されますか。
警告に違反したこと自体を処罰する規定はありません。ただし、同様の行為を繰り返せば、禁止命令等が発せられたり、ストーカー行為罪として捜査の対象となったりすることがあります。
警告の内容は相手に伝わりますか。
警告の内容と日時は、申出をした相手方に通知されます(ストーカー規制法4条3項)。
関連する用語解説
最終更新日:2026年9月10日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119