白タク(道路運送法違反)で逮捕されたらどうなるか|罰則・罰金と、罰金でも在留が無事で済まない理由
2026/10/11
最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
白タクとは、国土交通大臣の許可(道路運送法4条1項)を受けずに、自家用車で他人を有償で運ぶ行為をいい、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科の対象になります(同法96条1号)。中国籍の方の場合、罰金で終わっても、収入目的の運送が資格外活動と評価されて在留期間の更新や永住許可に影響するおそれがあるため、刑事と入管の両面から対応する必要があります。
この記事の要点
- 旅客の運送を業として行うには一般旅客自動車運送事業の許可が必要で、自家用自動車による有償運送は原則として禁止されています(道路運送法4条1項・78条)。
- 無許可で旅客運送事業を行った場合の法定刑は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科です(同法96条1号)。
- 白タクは道路交通法違反ではなく道路運送法違反であり、運転免許の点数とは別の問題です。
- 運転した人だけでなく、車や名義を貸した人、アプリで客を集めた人も共犯として責任を問われ得ます。
- 道路運送法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではありませんが、収入目的の運送は資格外活動(入管法19条)に当たり得るため、在留期間の更新や永住許可の審査で不利になるおそれがあります。
報道された事案の概要
報道によれば、2025年11月、神奈川県鎌倉市の観光地で、許可を受けずに自家用車で外国人観光客を有償で運送した疑い(道路運送法違反)で、中国籍の20代の会社員が現行犯逮捕されたとされています。中国系の配車アプリを通じて客を集める白タクの摘発は、空港周辺や観光地を中心に各地で続いていると報じられています。報道は捜査機関の発表に基づくものであり、本記事では個々の事実関係の当否には立ち入らず、白タク事件一般について解説します。
白タクとは何ですか。どの法律に違反するのですか
白タクとは、許可を受けずに自家用車(白いナンバープレートの車)で他人を有償で運ぶ行為で、道路運送法4条1項と78条に違反します。
日本では、他人の需要に応じて有償で旅客を自動車で運送する事業(タクシーやバスなど)を営むには、国土交通大臣の許可を受けなければなりません(道路運送法4条1項)。許可を受けた事業用の車は緑色のナンバープレートを付けており、自家用車は白いナンバープレートであることから、無許可で営業する行為を白タクと呼びます。さらに同法78条は、自家用自動車を有償で運送の用に供することを、災害時や市町村等が行う一定の運送など限られた例外を除いて禁止しています。つまり、白タクは、営業の許可がないという点と、自家用車を有償運送に使ってはならないという点の二つの規制に同時に触れる行為です。ここでいう有償とは、運送の対価として金銭その他の利益を受け取ることをいい、現金のほか、アプリを通じた電子決済や、後日まとめて受け取る報酬も含まれます。
白タクは道路交通法違反ではないのですか
白タクは道路交通法ではなく道路運送法の違反であり、運転免許の違反点数の問題とは別に、事業の許可の有無が問題になります。
よく混同されますが、道路交通法は、信号や速度制限、飲酒運転や無免許運転など、道路上の交通ルールを定める法律です。これに対し道路運送法は、人や物を運ぶ事業を誰がどのような条件で行えるかを定める法律で、タクシー事業の許可制もここに規定されています。白タクの運転手が交通ルールを守って安全に運転していたとしても、許可なく有償で人を運んだこと自体が道路運送法違反となります。したがって、運転免許の点数に関わる話ではなく、刑事事件として警察が捜査し、検察官が起訴するかどうかを判断する事件になります。もちろん、運転中に速度超過や飲酒運転があれば、道路交通法違反が別途成立します。
白タクの罰則はどのくらいですか
無許可で旅客自動車運送事業を行った者は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処せられ、又はこれを併科されます(道路運送法96条1号)。
道路運送法96条1号は、4条1項の許可を受けないで一般旅客自動車運送事業を経営した者を、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。罰金の上限が300万円と高く、拘禁刑との併科も可能であることから、道路交通法上の多くの違反よりも重い法定刑です。実務では、初めての摘発で、運送の回数や得た金額が限られ、本人が事実を認めている場合には、略式命令による罰金で終わることが多くみられます。他方で、長期間にわたり多数の客を運んで多額の売上を得ていた場合、同種の摘発を受けたことがある場合、複数の運転手を束ねて組織的に行っていた場合などには、正式に起訴されて公判が開かれ、拘禁刑(執行猶予付きを含む)が求刑されることもあります。また、犯罪で得た売上に相当する金銭の没収・追徴が問題になることもあります。
| 関与の形 | 問われ得る罪 | 法定刑 | 中国籍の方の在留への影響 |
|---|---|---|---|
| 自分で運転して客を運ぶ | 道路運送法4条1項・78条違反(同法96条1号) | 3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又は併科 | 退去強制事由は1年を超える実刑のとき(入管法24条4号リ)。罰金でも資格外活動として更新・永住審査に影響し得る |
| 車や名義を貸して報酬を得る | 同上の共犯(幇助・共同正犯) | 同上(幇助は減軽され得る) | 同上 |
| アプリ等で客を集めて運転手に割り振る | 同上の共犯(組織的な場合は中心的立場) | 同上 | 同上。実刑となれば退去強制事由 |
運転した人以外も罪に問われますか
運転した本人だけでなく、車や名義を提供した人、アプリやチャットで客を集めて運転手に割り振った人も、事情を知って協力していれば共犯として責任を問われ得ます。
白タクの摘発では、関与の形として大きく三つの類型がみられます。第1は、自分の車や借りた車を運転して客を運ぶ人です。この人が道路運送法違反の実行者になります。第2は、自分の車を貸し、あるいは自分の名義でレンタカーや保険を契約して、運転手に使わせて分け前を受け取る人です。白タクに使われることを知りながら車や名義を提供していれば、実行を容易にしたものとして幇助犯に当たり、分け前の割合や関与の深さによっては共同正犯とされることもあります。第3は、中国語のアプリやチャットグループで観光客から予約を受け、運転手に配車して手数料を受け取る人です。客を集める役割は事業の中核であり、運転していなくても共同正犯として、むしろ運転手より重く処罰される可能性があります。報道されている摘発の多くは、まず運転手が現行犯で逮捕され、その携帯電話の解析から配車役や車の提供者へ捜査が広がる流れをたどっています。自分は運転していないから大丈夫という考えは通用しません。
逮捕されたらどのような流れになりますか
現行犯逮捕の後、48時間以内に検察官へ送致され、勾留されれば10日(最大20日)の身体拘束の後に、略式命令による罰金か正式起訴かが決まります。
空港や観光地での白タクは、客を乗せて走り出した場面や料金を受け取った場面を警察官が確認して現行犯逮捕されることが多く、車両と携帯電話が押収されます。逮捕後は48時間以内に検察官に送致され、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します(刑事訴訟法203条・205条)。勾留されると原則10日、延長されれば最大20日の身体拘束が続きます(同法208条)。住居が定まっており、事実を認め、証拠隠滅のおそれが低いと判断されれば、勾留されずに釈放されて在宅で捜査が続くこともあります。捜査の中心は、アプリの決済履歴や送金記録、乗客とのやり取り、走行記録などから、どのくらいの期間に何回、いくら受け取って運んだかを特定することです。本人が全体像を把握しないまま取調べで回数や金額を曖昧に認めると、実際より広い範囲で処罰される原因になるため、黙秘権を含めた対応を弁護人と相談することが重要です。取調べには通訳が付きますが、供述調書の内容を十分に確認せずに署名押印しないよう注意が必要です。
外国人(中国籍の方)の在留資格への影響
道路運送法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではないため、罰金や執行猶予では退去強制事由に当たりませんが、収入目的で運送をしていたこと自体が資格外活動(入管法19条)と評価され、在留期間の更新・永住許可の審査で不利に働くおそれがあります。
退去強制事由との関係では、道路運送法は入管法24条4号の2が列挙する刑法の特定の章の罪や特別法には含まれていません。したがって、別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、経営・管理、高度専門職、留学、家族滞在など)の方であっても、罰金や執行猶予付きの拘禁刑では退去強制事由に該当せず、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合に初めて該当します(同条4号リ)。白タク単独で1年を超える実刑となる例は多くないため、この点だけをみれば在留は守られるように見えます。
しかし、白タク事件で本当に重要なのは、刑罰の重さよりも、許可された活動の範囲を超えて収入を得ていたという事実です。入管法は、就労系の在留資格の方が、許可された活動以外の収入を伴う事業や報酬を受ける活動を行うことを禁じています(同法19条)。会社員として技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ方が、休日に自家用車で客を運んで報酬を得ていれば、それは許可された業務とは無関係の収入活動であり、資格外活動に当たります。留学や家族滞在の方が資格外活動許可を得ていても、その許可は週28時間以内の一般的なアルバイトを念頭に置いたもので、法律に違反する白タク営業が許可の範囲に入ることはありません。資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる場合は、それ自体が退去強制事由になり得るほか(同法24条4号イ)、資格外活動罪(同法70条)として別途処罰の対象にもなり得ます。
実際の影響は、在留期間の更新や在留資格の変更、永住許可の申請の場面で現れます。更新の審査では、刑罰を受けたことに加えて、在留資格に応じた活動を行っていたか、法令を遵守していたかが考慮されるため、罰金で終わった事件であっても不許可となるおそれがあります。経営・管理や高度専門職の方は、事業や職務の実態が問われやすく、白タクでの収入が明らかになれば、本来の活動の実態についても疑問を持たれかねません。永住許可の申請では素行が善良であることが要件とされており、罰金刑を受けたことは一定期間、許可を妨げる事情として扱われます。退去強制手続に進んだ場合には在留特別許可(同法50条)の審査がありますが、まずは更新や永住の審査でどのように説明するかを、刑事手続の段階から見据えておく必要があります。なお、白タクの売上を申告していなければ、所得税や住民税の無申告についても税務上の問題が別途生じ得ます。
弁護士に相談すべき場面
- 家族が空港や観光地で白タクの疑いで現行犯逮捕されたと連絡を受け、勾留されるかどうか、いつ釈放されるかを知りたいとき。
- 取調べで運送の回数や受け取った金額について、記憶と異なる内容を認めるよう求められているとき。
- 車や名義を貸しただけ、アプリで予約を受けただけで、自分がどこまで責任を問われるのかを知りたいとき。
- 就労や留学、経営・管理などの在留資格があり、罰金で終わった後の在留期間の更新や永住許可への影響が心配なとき。
- 警察から任意の出頭を求められており、出頭前に対応を整理したいとき。
当事務所では中国語での相談に対応しており、専属通訳が常駐しています。外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針で臨んでいますが、立会いが認められることは現状ほとんどありません。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があります。
よくある質問
白タクで逮捕されると、どのくらいの罰金になりますか。
道路運送法4条1項の許可を受けずに旅客の運送を業として行った場合の法定刑は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科です(同法96条1号)。初めての摘発で回数や売上が限られていれば、略式命令による罰金で終わることが多いものの、金額は事案により異なり、繰り返していた場合や組織的な事案では正式起訴されることもあります。
白タクは道路交通法違反ですか。
白タクは、道路交通法ではなく道路運送法の違反です。道路交通法は信号や速度など道路上の交通ルールを定める法律で、無免許運転や飲酒運転がこれに当たります。白タクは、運転そのものに問題がなくても、許可なく有償で人を運ぶ事業を行ったことが道路運送法4条1項・78条に触れるという問題であり、免許の点数とは別の次元の話です。
配車アプリに登録して客を運んだだけですが、罪になりますか。
アプリを通じて客を集めたとしても、許可のない自家用車で、運賃に当たる報酬を受け取って人を運べば、運転した人自身が道路運送法違反の実行者になります。アプリの運営者や、車や名義を提供した人も、事情を知って協力していれば共犯として扱われ得ます。アプリに登録したから適法になるわけではありません。
罰金で終われば、在留資格には影響しませんか。
道路運送法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではないため、罰金や執行猶予付き判決では退去強制事由には当たりません。しかし、就労系や留学などの在留資格の方が収入目的で運送をしていた場合、許可された活動の範囲外の活動(資格外活動)として、在留期間の更新や永住許可の審査で不利に扱われるおそれがあります。罰金で終わったからといって在留が安全とはいえません。
報酬は受け取らず、ガソリン代だけもらった場合はどうなりますか。
有償運送に当たるかどうかは、受け取った金銭が実費の範囲内か、それを超えて運送の対価といえるかによって判断されます。実際に要したガソリン代や高速代の分担にとどまるのであれば有償運送には当たらないと説明される一方、相場に近い金額を定期的に受け取っていれば、名目がどうであれ対価と評価されやすくなります。送金記録やアプリの決済履歴が重要な証拠になります。
根拠条文・出典
- 道路運送法4条1項・78条・96条1号(e-Gov法令検索で確認)
- 刑事訴訟法203条・205条・208条・198条2項(同上)
- 出入国管理及び難民認定法19条・70条(条文名のみ)、24条4号イ・4号リ・4号の2、50条(同上)
- 2025年11月の各社報道
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