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執行猶予中に逮捕されたらどうなるか|無免許運転・飲酒運転の報道事例と執行猶予の取消し・退去強制

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執行猶予中に逮捕されたらどうなるか|無免許運転・飲酒運転の報道事例と執行猶予の取消し・退去強制

執行猶予中に逮捕されたらどうなるか|無免許運転・飲酒運転の報道事例と執行猶予の取消し・退去強制

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

執行猶予中に逮捕され、新しい事件で拘禁刑の実刑判決が確定すると、前の執行猶予は取り消され(刑法26条)、前の刑と新しい刑の両方を服役することになります。罰金刑で終わった場合の取消しは裁判所の裁量です(同法26条の2)。中国籍の方は、取消しによって退去強制事由に該当するかどうかが同時に問題になります。

この記事の要点

  • 執行猶予中に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑に全部執行猶予が付かないときは、前の執行猶予は取り消されます(刑法26条)。
  • 執行猶予中に罪を犯して罰金に処せられたときは、裁判所の裁量で取り消されることがあります(刑法26条の2)。
  • 再度の執行猶予は、1年以下の拘禁刑で情状に特に酌量すべきものがあるときに限られ、保護観察中の再犯には認められません(刑法25条2項)。
  • 無免許運転・酒気帯び運転は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、酒酔い運転は5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(道路交通法117条の2の2第1項1号・117条の2)。
  • 道路交通法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではなく、1年を超える実刑かどうか(同条4号リ)で退去強制事由該当性が判断されます。

報道された事案の概要

報道によれば、2026年9月、さいたま地方裁判所越谷支部で、執行猶予中に無免許で自動車を運転したとして道路交通法違反の罪に問われた中国籍の40代の男性の初公判が開かれました。男性は過去に飲酒運転で小学生4人をはねて逃走した事故を起こし、有罪判決を受けていたと報じられています。公判での認否や判決の内容は本記事では取り上げず、執行猶予中の再犯一般について解説します。

執行猶予中に逮捕されたらどうなりますか

逮捕の時点で執行猶予が取り消されるわけではありませんが、勾留や起訴の判断では不利に働き、新しい事件の判決の内容によって取消しが決まります。

執行猶予中であっても、逮捕後の流れは通常の事件と同じで、48時間以内の送致、24時間以内の勾留請求、10日から20日の勾留という手続を経て、起訴するかどうかが決まります(刑事訴訟法203条・205条・208条)。ただし、執行猶予中の再犯は、実刑になれば前の刑も執行されるという事情から逃亡のおそれが高いと見られやすく、勾留が認められやすい傾向があります。また、検察官は前の事件の判決内容を把握したうえで処分を決めるため、同種の再犯であれば公判請求される可能性が高まります。起訴後の保釈は請求できますが(刑事訴訟法89条・90条)、同じ理由で慎重に判断されます。身元引受人の確保、車両の処分、住居の安定などを具体的に示すことが保釈の判断に影響します。

執行猶予はどのような場合に取り消されますか

猶予期間内に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑に全部執行猶予が付かないときは取り消され(必要的取消し)、罰金に処せられたときは裁判所の裁量で取り消されることがあります(裁量的取消し)。

刑法26条は、猶予期間内に更に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときなどには、執行猶予を取り消さなければならないと定めています。これが必要的取消しで、新しい事件で実刑判決が確定すれば、裁判所に取消しを拒む余地はありません。これに対し、刑法26条の2は、猶予期間内に更に罪を犯して罰金に処せられたとき、保護観察の遵守事項を守らず情状が重いときなどに、裁判所が取り消すことができると定めています。こちらは裁量的取消しで、罰金で終わった場合には取り消されないこともあります。取消しは検察官の請求を受けて裁判所が決定し、本人には意見を述べる機会があります。新しい事件で不起訴となれば、いずれの取消事由も生じません。

新しい事件の結果前の執行猶予の扱い根拠条文服役の内容
不起訴取り消されない刑法26条・26条の2の事由なしなし(前の猶予期間は続く)
罰金裁判所の裁量で取り消されることがある刑法26条の2取り消されれば前の刑を服役
拘禁刑に再度の執行猶予取り消されない刑法25条2項・26条なし(保護観察が付く)
拘禁刑の実刑取り消される(必要的取消し)刑法26条前の刑と新しい刑の両方を服役

取り消されると前の刑も服役するのですか

取り消されると前の刑は全部執行され、新しい事件の刑と合わせて服役することになります。

執行猶予は、猶予期間を無事に過ごせば刑の言渡しが効力を失う制度です。取り消されると猶予は最初からなかったことになり、前の判決で言い渡された刑期がそのまま執行されます。例えば前の刑が拘禁刑2年(執行猶予4年)で、新しい事件で拘禁刑8月の実刑となった場合、合計2年8月を服役することになります。取消しの決定に対しては即時抗告ができますが、必要的取消しの場合に争える点は限られます。したがって、執行猶予中の方の弁護では、新しい事件で実刑を避けることが前の刑の執行を避けることに直結します。

再度の執行猶予が付くことはありますか

新しい事件の刑が1年以下の拘禁刑で、情状に特に酌量すべきものがある場合に限り認められ、保護観察中の再犯には認められません。

刑法25条2項は、前に拘禁刑に処せられてその刑の全部の執行を猶予された者が、1年以下の拘禁刑の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときは、再び執行を猶予できると定めています。ただし、前の執行猶予に保護観察が付され、その保護観察の期間内に更に罪を犯した場合は除かれます。再度の執行猶予には保護観察が付されます(刑法25条の2)。実務上、再度の執行猶予は例外的な扱いであり、再犯までの期間が長いこと、動機に同情すべき点があること、被害が生じていないこと、治療や家族の監督などの更生環境が整ったことなどを、具体的な資料で示す必要があります。

無免許運転・飲酒運転の罰則はどうなっていますか

無免許運転と酒気帯び運転は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、酒酔い運転は5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。

道路交通法117条の2の2第1項1号は無免許運転を3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とし、酒気帯び運転も同条で同じ法定刑です。酒酔い運転は同法117条の2により5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。初犯の無免許運転は罰金で終わることが多いものの、免許取消し後の運転や、同種の前科がある場合、飲酒を伴う場合には公判請求されて拘禁刑が言い渡されることがあります。なお、人をはねて逃げた場合は、自動車運転死傷処罰法の過失運転致死傷や危険運転致死傷のほか、道路交通法の救護義務違反が別に問題になります。中国の運転免許は日本で有効ではなく、国際運転免許証も中国の免許に基づくものは日本で使えないため、日本で運転するには日本の免許への切替えや取得が必要です。この点を知らずに運転して無免許運転に問われる例もあります。

外国人(中国籍の方)の在留資格への影響

道路交通法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではないため、新しい事件の刑が1年を超える実刑かどうか(同条4号リ)で判断され、執行猶予が取り消されて前の刑を服役する場合は前の刑の内容が問題になります。

別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能、経営・管理、留学、家族滞在など)の方は、刑法の窃盗・詐欺・傷害などの特定の章の罪や、自動車運転死傷処罰法2条(危険運転致死傷)・6条1項(無免許運転による加重)の罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予でも退去強制事由に該当します(入管法24条4号の2)。しかし、道路交通法違反はこの列挙に含まれておらず、過失運転致死傷(同法5条)も含まれていません。したがって、無免許運転や飲酒運転そのものについては、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられたかどうか(同条4号リ)が基準になります。執行猶予が取り消された場合、前の刑が1年を超える拘禁刑であれば、刑の全部の執行猶予を受けた者という除外事由がなくなり、4号リに該当するとされています。前の刑が列挙罪によるものであれば、もともと4号の2に該当していることになります。退去強制事由に当たらない場合でも、在留期間の更新や変更の審査では素行が考慮され、執行猶予中の再犯は不許可の方向に働きます。また、1年以上の拘禁刑に処せられた方は、入管法5条1項4号により期間の定めなく上陸拒否事由に該当します。退去強制手続に進んだ場合には、在留特別許可(同法50条)の審査で家族関係や在留期間が考慮されます。

弁護士に相談すべき場面

  • 執行猶予中の家族が逮捕され、前の刑を服役することになるのかどうか分からないとき。
  • 無免許運転や飲酒運転で取調べを受けており、公判請求されるか罰金で終わるか見通しを知りたいとき。
  • 再度の執行猶予を目指すために、更生環境や再犯防止策をどのように整えればよいか相談したいとき。
  • 就労や家族滞在の在留資格があり、判決の内容によって日本に残れるかどうかが変わるとき。
  • 執行猶予の取消しが請求され、裁判所で意見を述べる機会が予定されているとき。

当事務所では中国語での相談に対応しており、専属通訳が常駐しています。外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針で臨んでいますが、立会いが認められることは現状ほとんどありません。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、判決後の在留を見据えた弁護活動を行います。

よくある質問

執行猶予中に逮捕されたら、すぐに執行猶予が取り消されますか。

逮捕された時点では取り消されません。執行猶予の取消しは、新しい事件で拘禁刑以上の判決が確定するなどの事由が生じたときに、検察官の請求に基づき裁判所が決定するものです(刑法26条・26条の2)。ただし、執行猶予中の再犯は勾留や起訴の判断で不利に働きやすく、逮捕直後から弁護人を付けて対応する必要があります。

執行猶予中でも不起訴になることはありますか。

あります。新しい事件の内容が軽微で、被害弁償や示談が済んでいる場合などには、起訴猶予となることがあります。不起訴であれば新たな刑は言い渡されず、刑法26条の必要的取消しの事由は生じません。他方、無免許運転のように被害者がいない事件では、前の執行猶予中であることが起訴の方向に働きやすい点に注意が必要です。

再度の執行猶予が付く可能性はありますか。

新しい事件の刑が1年以下の拘禁刑で、情状に特に酌量すべきものがある場合に限られ、前の執行猶予に保護観察が付いていて保護観察中に再び罪を犯した場合は認められません(刑法25条2項)。実務上は例外的な扱いであり、再犯までの期間、動機、被害の有無、更生環境などを具体的に示す必要があります。

執行猶予が取り消されたら、在留資格はどうなりますか。

前の刑が1年を超える拘禁刑であった場合、取消しによって実際に服役することになるため、退去強制事由(入管法24条4号リ)に該当するとされています。前の刑が別表第一の在留資格の方の列挙罪(窃盗・詐欺・傷害など)であれば、もともと執行猶予でも退去強制事由に当たります。道路交通法違反のみであれば、新しい刑が1年を超える実刑かどうかで判断されます。

無免許運転で執行猶予中の方は、どのような弁護活動が考えられますか。

無免許運転の経緯(失効に気付いていなかったのか、取消し後の運転か)、運転の距離や時間、同乗者の有無、再犯防止策(車両の処分、家族の管理、交通講習の受講)などを整理し、起訴猶予や罰金、再度の執行猶予の可能性を順に検討します。併せて、取消し後の在留資格への影響を見据え、入管手続の準備も進めます。

根拠条文・出典

  • 刑法25条2項・25条の2・26条・26条の2(e-Gov法令検索で確認)
  • 道路交通法117条の2・117条の2の2第1項1号(同上)
  • 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条・5条・6条1項(条文名のみ)
  • 刑事訴訟法89条・90条・203条・205条・208条(同上)
  • 出入国管理及び難民認定法5条1項4号、24条4号リ・4号の2、50条(同上)
  • 2026年9月の各社報道

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