民泊投資のトラブルから監禁・集団暴行へ|同胞間の金銭トラブルが逮捕監禁罪・傷害罪になるとき
2026/10/11
最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
貸したお金や投資した資金を取り戻すためであっても、相手を連れ出して出られない状態に置けば逮捕・監禁罪(刑法220条・3月以上7年以下の拘禁刑)、殴ってけがをさせれば傷害罪(同法204条・15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)が成立し、目的の正当性は犯罪の成立を否定しません。中国籍の方の場合、これらの罪は入管法24条4号の2の列挙罪であるため、別表第一の在留資格の方は執行猶予付きでも退去強制事由に該当します。
この記事の要点
- 人を一定の場所から出られないようにすれば監禁罪、身体を直接拘束すれば逮捕罪で、法定刑は3月以上7年以下の拘禁刑です(刑法220条)。
- 監禁中に暴行してけがをさせれば傷害罪(同法204条)のほか、逮捕等致傷(同法221条)が問題になり、より重く処罰されます。
- 金銭の返還を求める正当な目的があっても、自分の力で相手を拘束して返済を迫ること(自力救済)は許されず、犯罪の成立を否定する理由になりません。
- 殴っていなくても、車を出した、現場で見張った、逃げないよう立ちふさがったという関与があれば共犯として処罰され得ます。
- 逮捕監禁罪(第31章)と傷害罪(第27章)は入管法24条4号の2の列挙罪で、別表第一の在留資格の方は執行猶予付きでも退去強制事由に該当します。
報道された事案の概要
報道によれば、2026年9月、大阪府警が、民泊施設の投資・購入をめぐるトラブルをきっかけに、男性を監禁して複数人で暴行したとして、中国籍の30代の男性を含む30代から60代の男6人を逮捕監禁や傷害などの疑いで逮捕したとされています。投資をめぐる金銭の返還や責任の所在について当事者間で争いがあり、その過程で被害者が連れ出され、暴行を受けたと報じられています。報道は捜査機関の発表に基づくものであり、本記事では個々の事実関係の当否には立ち入らず、金銭トラブルから監禁・暴行に発展する事件一般について解説します。
監禁罪とは何ですか。どのような行為が当たりますか
監禁罪とは、人を一定の場所から出られないようにして身体の自由を奪う罪であり、鍵をかけて閉じ込める場合だけでなく、取り囲んで出られなくする、車から降ろさない、脅して退去を断念させる方法でも成立します。
刑法220条は、不法に人を逮捕し、又は監禁した者を3月以上7年以下の拘禁刑に処すると定めています。逮捕とは、縄で縛る、羽交い締めにするなど人の身体を直接拘束することをいい、監禁とは、部屋や車の中など一定の区域から脱出することを困難にして、場所的な移動の自由を奪うことをいいます。監禁の方法は物理的なものに限られません。複数の人物が出入口を塞いで取り囲む、走行中の車に乗せて降りられないようにする、出て行こうとすれば危害を加えると脅して部屋にとどまらせる、携帯電話やパスポートを取り上げて外部との連絡や移動を断つといった方法も、総合的にみて脱出が著しく困難であれば監禁に当たります。時間の長短は問われず、数十分であっても成立します。本人が自分の意思でついて来たようにみえても、途中から帰ることを許されなくなった時点以降は監禁となります。民泊投資のトラブルで、話し合いと称して相手を事務所や施設に呼び出し、返済の約束をするまで帰さないという行為は、その典型です。
監禁中に暴行してけがをさせると、どのような罪になりますか
監禁中の暴行でけがをさせれば傷害罪(刑法204条)が成立し、監禁行為によって傷害の結果が生じたものとして逮捕等致傷(同法221条)が適用されると、傷害罪と比較してより重い刑で処断されます。
傷害罪(刑法204条)の法定刑は15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金であり、けがの程度が軽くても成立します。複数人で殴る蹴るの暴行を加えた場合、誰の暴行でどのけがが生じたか特定できなくても、共同して暴行した者は全員が傷害の責任を負う扱いになります。さらに、監禁の手段として暴行が加えられてけがをさせた場合には、逮捕等致傷(同法221条)として、傷害の罪と比較して重い刑により処断されることになります。けがをさせたうえで、返済を約束する書面に署名させた、ATMで現金を引き出させた、送金させたといった事実があれば、強要罪や恐喝罪(条文名のみ)が別途成立し得ます。恐喝によって金銭を交付させた場合には、たとえそれが本来返してもらうべき金銭であったとしても、恐喝罪の成立が否定されるわけではありません。
| 罪名 | 法定刑 | 入管法24条4号の2の列挙 | 中国籍の方の在留への影響 |
|---|---|---|---|
| 逮捕・監禁(刑法220条・第31章) | 3月以上7年以下の拘禁刑 | 列挙(第31章) | 別表第一の在留資格は執行猶予付きでも退去強制事由(4号の2)。別表第二は1年を超える実刑で該当(4号リ) |
| 傷害(刑法204条・第27章) | 15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 | 列挙(第27章) | 同上 |
| 逮捕等致傷(刑法221条・第31章) | 傷害の罪と比較して重い刑(条文を確認のうえ) | 列挙(第31章) | 同上。実刑となる例が多い |
| 強要・恐喝(刑法223条・249条) | 条文を確認のうえ | 恐喝は列挙(第37章) | 恐喝は同上 |
お金を返してもらうためなら正当化されませんか
貸金や投資資金を取り戻す正当な目的があっても、相手を拘束して返済を迫る行為は自力救済として禁止されており、犯罪の成立を否定する理由にはなりません。
民泊投資をめぐるトラブルでは、出資したのに施設の権利が移転されない、運営利益が分配されない、物件の購入資金を預けたのに契約が進まないといった事情から、相手に対する強い不信や怒りが生じます。しかし日本の法制度では、権利があると考える人であっても、その実現は裁判所の手続を通じて行うのが原則であり、自分の力で相手の身体や財産を押さえて権利を実現すること(自力救済)は、緊急やむを得ない例外的な場合を除いて認められていません。したがって、相手が約束を破った、相手に非があるという事情は、犯罪の成立を否定する理由にはならず、せいぜい量刑において動機として考慮されるにとどまります。しかも、複数人で相手を呼び出して拘束し暴行を加えたという事案では、動機に同情の余地があっても、計画性や集団性が重くみられ、初犯でも実刑となることがあります。金銭トラブルの正しい解決手段は、内容証明による請求、民事調停、民事訴訟、相手の財産を保全する仮差押えなどの裁判所の手続であり、これらは外国籍の方でも通訳を介して利用できます。
現場にいただけ、車を出しただけでも逮捕されますか
監禁や暴行が行われることを知りながら、車を運転した、見張りをした、逃げ道を塞いだという関与があれば、殴っていなくても共同正犯又は幇助犯として逮捕・起訴され得ます。
集団での監禁・暴行事件では、実際に手を出した人だけでなく、相手を車で連れて来た人、部屋の入口に立っていた人、その場で返済を迫る言葉を発した人、暴行を止めずに見ていた人まで、全員がまとめて逮捕されることが珍しくありません。捜査機関は、事前にどのような相談があったか、誰が誰を呼んだか、現場で各人がどのような役割を果たしたかを、チャットの履歴や防犯カメラ、関係者の供述から再構成し、共謀の範囲を広く認定しようとします。しかし、法的には、監禁や暴行をするという共通の認識のもとで役割を分担した人(共同正犯)と、そこまでの認識はなく結果的に手助けをしたにとどまる人(幇助犯)、さらには犯罪が行われるとは知らずにその場に居合わせただけの人とでは、責任の有無や重さが大きく異なります。たとえば、話し合いに同席してほしいと頼まれただけで、監禁や暴行の計画を知らなかった、暴行が始まったのを見てすぐに止めに入った、その場を離れたという事情があれば、共謀を否定し、あるいは関与の範囲を限定する余地があります。逮捕後の取調べでは、全員が同じ計画の下に動いたという前提で供述を求められがちですので、自分が何を知り、何をしたかを正確に整理し、弁護人と相談のうえで供述することが重要です。身体拘束の流れは、逮捕後48時間以内の送致、24時間以内の勾留請求、10日間の勾留と最大10日間の延長(刑事訴訟法203条・205条・208条)であり、共犯者が多数の事件では口裏合わせを防ぐための接見等禁止が付くのが通常です。
被害に遭った側はどうすればよいですか
監禁や暴行を受けた側は、被害届・告訴によって刑事手続を求めるとともに、もともとの金銭トラブルは民事訴訟や調停、仮差押えなど裁判所の手続で解決を図ることができます。
同胞間の投資トラブルでは、被害者の側にも投資の経緯について説明しにくい事情があったり、相手との関係を考えて警察への届出をためらったりすることがあります。しかし、身体の自由を奪われ暴行を受けたことは、金銭トラブルの経緯とは別に、刑事事件として扱われるべき被害です。けがの診断書、監禁された場所や時間を示す記録、やり取りのメッセージなどを保全し、通訳を介して警察に被害届や告訴状を提出することができます。他方で、金銭の返還そのものは刑事手続では解決しないため、相手の財産に対する仮差押えや民事訴訟を並行して進める必要があります。民泊の投資・購入をめぐる契約では、住宅宿泊事業法の届出や旅館業法の許可の名義が誰にあるか、物件の所有権や賃借権が誰に帰属するかが争点になりやすく、契約書や送金記録を整理したうえで弁護士に相談することが解決への近道です。
外国人(中国籍の方)の在留資格への影響
逮捕監禁罪は刑法第31章、傷害罪は第27章、恐喝罪は第37章の罪で、いずれも入管法24条4号の2が列挙する罪であるため、別表第一の在留資格の方は執行猶予付きであっても拘禁刑に処せられれば退去強制事由に該当し、別表第二の方は1年を超える実刑かどうか(同条4号リ)で判断されます。
入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、経営・管理、高度専門職、技能、留学、家族滞在など)の方が、刑法第2編第27章(傷害)、第31章(逮捕及び監禁)、第37章(詐欺及び恐喝)などの特定の章の罪により拘禁刑に処せられた場合を、執行猶予の有無を問わず退去強制事由としています。民泊投資をめぐる監禁・傷害事件で問われる罪は、その中心がこの列挙に含まれているため、経営・管理の在留資格で民泊事業を営んでいる方や、就労の在留資格で会社に勤めている方が有罪となり拘禁刑に処せられれば、執行猶予が付いても退去強制手続に進むことになります。罰金刑で終わった場合には4号の2には該当しませんが、監禁や集団での傷害が罰金で終わる例は多くありません。
日本人の配偶者等、永住者、定住者などの別表第二の在留資格の方には4号の2は適用されず、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられたかどうか(同条4号リ。刑の全部の執行猶予は除かれます)が基準になります。集団での監禁・傷害事件では、けがの程度や拘束時間、計画性によっては1年を超える実刑となることがあり、その場合は別表第二の方でも退去強制事由に該当します。また、1年以上の拘禁刑に処せられた方は、入管法5条1項4号により期間の定めなく上陸拒否事由に該当し、退去強制された方は5年間(再度は10年間)上陸を拒否されます(同項9号)。退去強制事由に該当した場合でも、在留特別許可(同法50条)の審査において、日本人の配偶者や子の有無、在留期間、生活の基盤などが考慮されますが、暴力を伴う事件では許可のハードルは高くなります。刑事手続の段階から、認否の方針、被害者との示談、罪名や量刑の見通しを、在留への影響とあわせて検討する必要があります。
弁護士に相談すべき場面
- 家族が逮捕監禁や傷害の疑いで逮捕され、接見等禁止で面会できないと連絡を受けたとき。
- 話し合いに同席しただけ、車を出しただけなのに、全員で計画したものとして取調べを受けているとき。
- 被害者との示談を進めたいが、相手と直接連絡を取ることが禁じられているとき。
- 経営・管理や就労の在留資格があり、執行猶予が付いても退去強制事由に当たるのかを知りたいとき。
- 民泊投資をめぐる金銭トラブルの被害に遭い、相手に拘束や暴行を受けた、あるいは資金を取り戻したいとき。
当事務所では中国語での相談に対応しており、専属通訳が常駐しています。外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針で臨んでいますが、立会いが認められることは現状ほとんどありません。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があります。
よくある質問
監禁罪とはどのような罪ですか。部屋に閉じ込めなくても成立しますか。
監禁罪(刑法220条)は、人を一定の場所から出られないようにして身体の自由を奪う罪で、法定刑は3月以上7年以下の拘禁刑です。鍵をかけて閉じ込める場合に限らず、複数人で取り囲んで出られないようにする、走行中の車から降りられなくする、脅して部屋から出ることを断念させるといった方法でも成立します。時間の長短は問いません。
お金を返してもらうために相手を連れてきて話し合っただけです。それでも罪になりますか。
貸したお金や投資した資金を取り戻す正当な目的があっても、相手の意思に反して連れ出し、出られない状態に置けば逮捕・監禁罪が成立します。日本法では、権利の実現は裁判所の手続を通じて行うのが原則で、自分の力で相手を拘束して返済を迫ること(自力救済)は許されていません。目的の正当性は量刑で考慮されることはあっても、犯罪の成立を否定する理由にはなりません。
自分は殴っていません。現場にいて車を運転しただけでも逮捕されますか。
監禁や暴行が行われることを知りながら、相手を連れて行く車を運転した、現場で見張りをした、相手が逃げないよう立ちふさがったという関与があれば、実際に殴っていなくても共同正犯又は幇助犯として逮捕・起訴され得ます。複数人による事件では、全員が共謀したものとして扱われる傾向があるため、自分の関与の範囲を早い段階で弁護人と整理することが重要です。
監禁や暴行の被害に遭いました。相手も同じ中国人なので警察に行きにくいのですが、どうすればよいですか。
身体の自由を奪われ暴行を受けた場合は、被害届や告訴によって捜査を求めることができます。同時に、もともとの金銭トラブルについては、民事訴訟や調停、相手の財産に対する仮差押えなど、裁判所の手続で解決を図ることができます。同じ国籍の相手だからといって日本の法律の保護が及ばないということはなく、通訳を介して警察や弁護士に相談することができます。
中国籍で就労の在留資格があります。執行猶予が付けば日本に残れますか。
逮捕監禁罪は刑法第31章、傷害罪は第27章の罪で、いずれも入管法24条4号の2が列挙する罪です。技術・人文知識・国際業務や経営・管理、留学などの別表第一の在留資格の方は、執行猶予付きであっても拘禁刑に処せられれば退去強制事由に該当します。日本人の配偶者等や永住者などの別表第二の方は、1年を超える実刑かどうか(同条4号リ)で判断されます。執行猶予が付けば安心というわけではありません。
根拠条文・出典
- 刑法204条・220条(e-Gov法令検索で確認)、221条・223条・249条(条文名のみ)
- 住宅宿泊事業法(条文名のみ)
- 刑事訴訟法203条・205条・208条(同上)
- 出入国管理及び難民認定法5条1項4号・9号、24条4号リ・4号の2、50条(同上)
- 2026年9月の各社報道
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