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交通事故の加害者になったら|過失運転致傷の刑事手続と在留への影響を中国籍の方向けに解説

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交通事故の加害者になったら|過失運転致傷の刑事手続と在留への影響を中国籍の方向けに解説

交通事故の加害者になったら|過失運転致傷の刑事手続と在留への影響を中国籍の方向けに解説

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

人身事故の加害者になると、過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法5条)として刑事手続の対象になり、あわせて運転免許の行政処分と被害者への民事賠償という三つの責任を負います。外国人の場合、刑事処分の種類によって在留資格への影響が大きく変わるため、刑事手続と在留の両方を見据えた対応が必要です。

この記事の要点

  • 事故を起こした運転者には、負傷者の救護と警察への報告の義務があり(道交法72条)、現場を離れると救護義務違反(ひき逃げ)として別の罪になります。
  • 過失による人身事故は過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法5条)、飲酒や著しい高速度などによる事故は危険運転致死傷罪(同法2条)が問題になります。
  • 過失運転致傷は入管法24条4号の2の列挙から外れていますが、危険運転致死傷(2条)と無免許による加重(6条1項)は列挙されており、別表第一の在留資格者は執行猶予でも退去強制事由に該当します。
  • 1年を超える実刑判決は在留資格を問わず退去強制事由(入管法24条4号リ)、罰金や執行猶予でも在留期間の更新や永住許可の審査で素行として考慮されます。
  • 被害者との示談と任意保険による賠償は、不起訴・罰金にとどめるための中心的な活動です。

こんな場面で問題になります

  • 就労ビザで働く方が通勤中に自転車の歩行者と接触してけがをさせ、警察から後日出頭するよう言われた。
  • 留学生が友人の車を運転中に追突事故を起こし、相手が首の痛みを訴えて診断書を提出した。
  • 飲酒後に運転して事故を起こし、その場で逮捕された家族からどうすればよいか相談された。
  • 中国の運転免許しか持たない短期滞在の親族がレンタカーで事故を起こした。

事故を起こした直後に何をすべきですか

まず車を止めて負傷者を救護し、警察に通報することが法律上の義務であり、これを怠ると事故そのものより重い責任を問われます。

道交法72条は、交通事故があったときは運転者が直ちに運転を停止し、負傷者を救護し、道路上の危険を防止し、警察官に事故の内容を報告しなければならないと定めています。言葉が通じない、在留資格に影響するのが怖い、といった理由で現場を離れると、救護義務違反・報告義務違反として別に処罰され、逮捕・勾留の理由にもなります。警察官が到着したら通訳が必要であることを伝え、その後の取調べは弁護人に相談してから対応してください。

過失運転致傷の刑事手続はどのように進みますか

飲酒や逃走がない通常の事故は在宅で捜査され、被害の程度と示談の有無により、不起訴、略式手続による罰金、公判請求のいずれかで終わります。

段階内容期間・ポイント
現場・初期対応救護・通報、実況見分、事情聴取通訳の要請、理解できない調書に署名しない
逮捕された場合警察の取調べ、検察官送致、勾留請求逮捕から48時間以内に送致(刑訴法203条)、24時間以内に勾留請求(205条)、勾留は10日で最大10日延長(208条)
在宅捜査警察・検察への出頭、被害者の診断書の提出示談交渉と保険会社の対応を並行して進める
処分不起訴、略式命令(罰金)、公判請求示談の成立、宥恕、前科の有無が分かれ目
公判公開の法廷での審理執行猶予か実刑かで在留への影響が変わる

逮捕されるのは、飲酒・無免許・ひき逃げ・重大な結果など、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断される場合が中心です。外国人であることだけを理由に逃亡のおそれがあるとされることもあるため、身元引受人や住居の安定を早期に示すことが身柄解放につながります。

危険運転致死傷とは何が違いますか

過失運転致死傷は不注意による事故を対象とするのに対し、危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条)はアルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態、制御困難な高速度、信号の殊更無視などの悪質な運転行為による死傷を対象とし、法定刑も退去強制への影響も大きく異なります。

6条1項は、2条の罪を犯した者がその時に無免許運転だったときの加重規定です。入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格者がこの2条・6条1項の罪により拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由とし、執行猶予がついても該当します。危険運転として立件されるかどうかの境目にある事案では、アルコールの影響の程度や速度の認定をめぐる弁護活動が在留資格の存続を左右します。

飲酒運転・無免許運転があるとどうなりますか

事故の有無にかかわらず、酒酔い運転は5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(道交法117条の2)、酒気帯び運転・無免許運転は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(道交法117条の2の2)であり、人身事故と併せて処罰されるため、罰金では終わらず公判請求される可能性が高まります。

中国の運転免許証は日本では有効な国際運転免許証として扱われず、日本の免許に切り替えていない状態で運転すると無免許運転になります。短期滞在の親族や来日直後の方が起こしやすい誤りです。

在留資格にはどのように影響しますか

不起訴や罰金で終われば退去強制事由にはなりませんが、危険運転致死傷での拘禁刑(執行猶予を含む)は別表第一の在留資格者の退去強制事由に、1年を超える実刑はすべての在留資格の退去強制事由に該当し、罰金や執行猶予でも更新・永住の審査で考慮されます。

処分の内容退去強制事由との関係更新・永住への影響
不起訴該当しない原則として影響は限定的
過失運転致傷で罰金該当しない素行として考慮され、申請時に説明が必要
過失運転致傷で執行猶予付き拘禁刑5条は入管法24条4号の2の列挙外のため、これだけでは該当しない素行として重く考慮される
危険運転致死傷(2条・6条1項)で拘禁刑(執行猶予を含む)別表第一の在留資格者は24条4号の2に該当退去強制手続に移行し得る
1年を超える実刑在留資格を問わず24条4号リに該当退去強制、上陸拒否(5条1項4号・9号)

別表第一の在留資格とは、技術・人文知識・国際業務、経営・管理、留学、技能実習、特定技能などの就労・学習系の在留資格です。日本人の配偶者等・永住者・定住者といった別表第二の在留資格は4号の2の対象外ですが、4号リは全員に適用されます。退去強制事由に当たらなくても、在留期間の更新(入管法21条)や永住許可(22条)では素行が審査されるため、事故の内容と賠償の状況を説明する準備が必要です。

被害者との示談や保険はどう関係しますか

任意保険に加入していれば保険会社が賠償交渉を行いますが、刑事処分に影響する被害者の宥恕(処罰を望まない意思)は保険会社の交渉では得られないことが多く、弁護人を通じた謝罪と示談が別途必要です。

検察官の処分では、賠償が済んでいることに加えて、被害者が処罰を望んでいないか、加害者が誠実に謝罪したかが重視されます。弁護人が被害者に謝罪の意向を伝え、保険による賠償とは別に見舞金を支払い、宥恕の意思を示す書面を得ることで、不起訴や罰金にとどまる可能性が高まります。本人や家族が被害者の職場や自宅に直接出向くことは避けてください。

中国籍の方に特有の留意点

  • 取調べと通訳:事故の経緯を日本語で正確に説明できないまま調書が作られると、速度や前方不注意の程度について実際より重い内容になることがあります。通訳を要請し、内容を確認してから署名してください。
  • 捜査中の出国:在宅事件では出国が禁止されるわけではありませんが、呼出しに応じず帰国すると逃亡とみなされ、逮捕状が出たり処分が重くなったりします。帰国の予定がある場合は弁護人を通じて検察官と調整します。
  • 中国の免許と国際免許:中国の免許証では日本で運転できません。来日した家族や親族に車を貸す前に確認してください。
  • 在留期限との関係:事件の係属中に在留期限が来るときは、更新申請の際に事故の経過を説明する必要があり、説明の仕方は弁護人と相談してください。
  • 将来の再入国:退去強制になると上陸拒否期間が定められ(入管法5条1項9号)、1年以上の拘禁刑に処せられた者は期間の定めなく上陸を拒否される(5条1項4号)ことがあります。

弁護士に相談すべき場面

  • 人身事故を起こし、警察から出頭を求められたとき。処分が決まる前の対応が結果を左右します。
  • 飲酒・無免許・ひき逃げなど、公判請求や逮捕の可能性がある事情があるとき。
  • 家族が事故で逮捕され、勾留を争って早期に釈放を求めたいとき。
  • 保険会社とは別に被害者に謝罪し、示談と宥恕を得たいとき。
  • 在留期間の更新や永住申請を控えており、事故が審査に与える影響を知りたいとき。

舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針ですが、立会いが認められることは現状ほとんどありません。それでも、取調べの直前に捜査官と協議することで、通訳の確保や取調べの範囲を確認し、不当な取調べを牽制する効果があります。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があります。

よくある質問

軽いけがをさせただけでも刑事事件になりますか

なります。被害者が診断書を提出して人身事故として処理されると、過失運転致傷罪(自動車運転死傷処罰法5条)の被疑者として捜査されます。けがが軽く示談が成立していれば不起訴となることも多いですが、処分が決まるまでは対応を怠らないでください。

過失運転致傷で罰金になると在留資格を失いますか

罰金だけでは退去強制事由に該当しません。ただし、在留期間の更新や永住許可の審査では素行として考慮されるため、申請時に経緯と賠償の状況を説明できるよう準備してください。

執行猶予がつけば日本に残れますか

過失運転致傷(5条)は入管法24条4号の2の列挙外なので、執行猶予付きの拘禁刑だけでは退去強制事由になりません。一方、危険運転致死傷(2条)や無免許による加重(6条1項)で拘禁刑になると、別表第一の在留資格者は執行猶予でも該当します。

中国の運転免許証で日本の道路を運転できますか

できません。中国の免許証は日本で有効な国際運転免許証として扱われず、日本の免許に切り替える前に運転すると無免許運転(道交法117条の2の2)になります。

捜査中に中国へ帰国してもよいですか

在宅事件では法律上出国が禁止されるわけではありませんが、呼出しに応じずに帰国すると逃亡とみなされ、不利な処分や逮捕状につながります。帰国の必要があるときは弁護人を通じて検察官と調整してください。

根拠条文・出典

  • 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条(危険運転致死傷)、5条(過失運転致死傷)、6条1項(無免許運転による加重)
  • 道路交通法72条(交通事故の場合の措置)、117条の2(酒酔い運転)、117条の2の2(酒気帯び運転・無免許運転)
  • 刑事訴訟法203条、205条、208条(逮捕・勾留の期間)、39条1項(接見交通)
  • 出入国管理及び難民認定法24条4号リ・4号の2(退去強制事由)、5条1項4号・9号(上陸拒否)、21条(在留期間の更新)、22条(永住許可)

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