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国家賠償請求とは|入管・警察・自治体の違法な対応を外国人が争う方法(要件・相互保証・時効)を弁護士が解説

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国家賠償請求とは|入管・警察・自治体の違法な対応を外国人が争う方法(要件・相互保証・時効)を弁護士が解説

国家賠償請求とは|入管・警察・自治体の違法な対応を外国人が争う方法(要件・相互保証・時効)を弁護士が解説

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

国家賠償請求とは、国や自治体の公務員が職務を行うについて、故意または過失によって違法に損害を与えたときに、公務員個人ではなく国または公共団体に損害の賠償を求める制度です(国家賠償法1条1項)。入管の収容や処遇、警察の逮捕・取調べ、自治体の違法な処分によって損害を受けた中国籍の方も、相互の保証がある国の国民として請求することができます(同法6条)。

この記事の要点

  • 要件は、公権力の行使に当たる公務員が、職務を行うについて、故意または過失により、違法に、他人に損害を加えたことです(国家賠償法1条1項)。
  • 被告は国または公共団体で、公務員個人を訴えることは判例上できません。国は故意・重過失のある公務員に求償できます(同法1条2項)。
  • 外国人が被害者のときは、その国との間に相互の保証があるときに限り適用され(同法6条)、中国籍の方は実務上この要件を満たすものとして扱われています。
  • 時効は損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で、生命・身体の侵害は5年です(同法4条、民法724条・724条の2)。
  • 処分の取消訴訟と国家賠償請求は別の手続で、取消判決を得ていなくても賠償を請求できますが、処分が違法でも直ちに賠償が認められるわけではありません。

こんな場面で問題になります

  • 入管の収容施設で体調不良を訴えたのに適切な医療を受けられず、症状が悪化した。
  • 警察の取調べで通訳が不十分なまま調書に署名させられ、暴言や長時間の取調べを受けた。
  • 留置施設で弁護人宛ての手紙の発信を拒否され、または弁護人との接見を妨げられた。
  • 自治体の誤った処分で営業ができなくなり、後に処分が取り消されたが損害は残った。
  • 行政機関が本人の個人情報を第三者に漏らし、職場や家族関係に被害が生じた。

国家賠償が認められる要件は何ですか

公権力の行使に当たる公務員の行為であること、職務を行うについての行為であること、故意または過失があること、違法であること、損害と因果関係があることの五つで、いずれも原告が主張立証します(国家賠償法1条1項)。

「公権力の行使」は広く解され、逮捕や収容のような強制的な行為だけでなく、行政指導や学校教育も含まれます。「違法」とは、公務員が職務上尽くすべき法的義務に違反したことをいい、結果として処分が取り消されたことと、その公務員に賠償責任を生じさせる違法があったこととは区別されます。裁判所は、公務員が通常要求される注意を払って職務を行ったかを基準に判断するため、処分の取消しが認められた事案でも賠償は否定されることがあります。当時の記録を基に、公務員が何を知り得たか、何をすべきだったかを具体的に示す必要があります。

外国人でも国家賠償を請求できますか

外国人が被害者である場合は、その国との間に相互の保証があるときに限り国家賠償法が適用されますが(同法6条)、中国については中国の法制度上日本人も国家賠償を受けられるため、相互の保証があるものとして扱われています。

相互保証とは、相手国で日本人が同様の国家賠償を受けられる仕組みがあることをいいます。中国の国家賠償法は外国人や外国の組織にも適用される仕組みをとっており、日本の裁判でも中国籍の原告の請求が実体的に審理されています。訴状では相互保証の存在を主張しておくのが通常です。在留資格の有無は請求の可否に影響せず、不法残留中に受けた収容中の処遇や、退去強制で中国に帰国した後の請求も可能です。帰国後に提訴する場合は、委任状と本人確認書類を中国の公証機関で認証して送付し、代理人弁護士が日本で手続を進めます。

入管の収容や処遇はどのように争いますか

収容そのものの違法、収容中の医療・処遇の違法、仮放免や監理措置の判断の違法が争点になり、被告は国です。

退去強制令書による収容(入管法52条5項)は法律上の根拠がありますが、収容の必要性を欠く場合や、健康状態の悪化を認識しながら適切な医療を受けさせなかった場合には、処遇に当たる職員の義務違反として違法と判断される余地があります。収容中の診療記録、申出書、面会記録、弁護人の接見記録が重要な証拠になるため、収容中から弁護士が記録を残しておくことが後の請求を左右します。仮放免の許否は入管の裁量が広く、不許可自体の違法を認めさせることは容易ではありません。なお、収容や退去強制令書そのものを止めるには、取消訴訟と執行停止(行政事件訴訟法25条)を別途使います。

警察の逮捕や取調べはどのように争いますか

逮捕・勾留が合理的な嫌疑を欠いていた場合、取調べで暴行・脅迫や通訳の不備により供述を強いられた場合、接見や信書のやり取りを不当に制限された場合などに、都道府県(警察)または国(検察・拘置所)に対して請求します。

不起訴や無罪になったからといって、逮捕が直ちに違法になるわけではなく、逮捕時点で合理的な嫌疑があったかが基準になります。無罪判決が確定した場合には、国家賠償とは別に刑事補償法による補償の請求があり、不起訴の場合には被疑者補償規程による補償の制度があります。取調べについては、通訳を介さずに作成された調書への署名を求めることや、黙秘権の告知(刑事訴訟法198条2項)を欠く取調べが争点になります。留置施設での弁護人宛て信書の発信拒否や接見の制限は、接見交通権(同法39条1項)の侵害として国家賠償の対象になった例があります。当事務所は外国人の刑事事件で取調べへの弁護人の立会いを求める方針をとっており(認められることは現状ほとんどありません)、その要求と記録は後の請求の資料にもなります。

場面被告主な争点根拠
入管収容中の医療・処遇国職員が健康悪化を認識し得たか、必要な措置を怠ったか国家賠償法1条1項、入管法52条5項
警察の逮捕・取調べ都道府県合理的嫌疑の有無、暴行・脅迫、通訳の不備、黙秘権告知国家賠償法1条1項、刑事訴訟法198条2項
接見・信書の制限都道府県または国弁護人との接見交通権の侵害国家賠償法1条1項、刑事訴訟法39条1項
自治体の違法な処分当該自治体処分の違法と職務上の注意義務違反の有無国家賠償法1条1項、行政事件訴訟法3条2項
施設・道路の欠陥設置管理者設置または管理の瑕疵国家賠償法2条

自治体の違法な処分による損害はどうしますか

処分の取消訴訟とは別に、または併せて国家賠償を請求でき、取消判決を得ていなくても提訴できますが、処分の違法に加えて担当職員の注意義務違反を立証する必要があります。

営業停止や許可取消しが後に取り消されても、営業できなかった期間の損失は戻りません。この損失は国家賠償で請求しますが、裁判所は、職員が処分時に通常の注意を払っていれば違法と分かったかを審査します。取消訴訟と国家賠償請求は、関連請求として同じ裁判所に併合して提起することができます(行政事件訴訟法16条)。証拠の収集には、行政機関への情報公開請求や自己の個人情報の開示請求、訴訟での文書提出命令の申立てを用います。

中国籍の方に特有の留意点

  • 在留への影響:国家賠償請求をしたことが在留審査で不利に扱われることはありません。ただし請求の前提となる刑事事件や退去強制事由(入管法24条4号チ・4号リ・4号の2など)とは切り離して判断されます。
  • 帰国後の請求:退去強制や出国後も時効(3年)の範囲内で提訴できます。中国からの委任状には公証・認証が必要で、尋問が必要な場合の来日の可否を早めに検討します。
  • 言語と証拠:取調べや収容中の出来事は本人の記憶が中心になりやすいため、中国語でよいので時系列のメモを早く作成し、家族とのチャット記録や面会記録を保存してください。訳文を付けて証拠にします。
  • 刑事補償との関係:無罪判決の後は刑事補償法による補償請求があり、国家賠償と要件が異なります。両方の可能性を刑事弁護の段階から検討します。

弁護士に相談すべき場面

  • 入管の収容中に医療を受けられない、処遇に問題があると家族から聞いたとき。収容中から記録を残すことが重要です。
  • 取調べで通訳の不備や暴言があり、調書の内容が自分の供述と違うとき。
  • 留置施設で弁護人宛ての手紙や接見を制限されたとき。
  • 自治体の処分が取り消されたが、営業できなかった期間の損害が残っているとき。
  • 帰国後に日本での出来事について賠償を求めたいが、手続の進め方が分からないとき。

舟渡国際法律事務所は、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、収容中・勾留中の処遇の記録から国家賠償請求までを見据えて対応します。刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があり、行政事件の取扱いは複数の学術誌に掲載され研究の対象となっています。

よくある質問

不法残留中に受けた入管での処遇についても国家賠償を請求できますか

できます。在留資格の有無は国家賠償法の適用に影響しません。中国籍の方は相互の保証の要件(国家賠償法6条)を満たすものとして扱われており、収容中の医療や処遇の違法を争うことができます。

警察官個人を訴えることはできますか

判例上、公務員個人は被告になりません。被告は国または公共団体で、警察なら都道府県、入管や検察・拘置所なら国です。国や自治体は、故意または重大な過失のある公務員に求償できます(国家賠償法1条2項)。

無罪になれば逮捕について賠償が認められますか

無罪だけで逮捕が違法になるわけではなく、逮捕時に合理的な嫌疑があったかが基準です。無罪判決が確定した場合は、国家賠償とは別に刑事補償法による補償を請求できます。

国家賠償請求の時効はいつまでですか

損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年です(国家賠償法4条、民法724条)。生命・身体を害された場合は知った時から5年です(民法724条の2)。帰国後も期間内なら提訴できます。

処分の取消訴訟に勝たないと国家賠償は請求できませんか

取消判決を得ていなくても請求できます。ただし処分が違法であることと、担当職員に職務上の注意義務違反があることは別に判断されるため、処分が取り消されても賠償が否定されることがあります。

根拠条文・出典

  • 国家賠償法1条1項(公権力の行使に当たる公務員の違法行為による賠償責任)、1条2項(求償)、2条(公の営造物の設置管理の瑕疵)、3条(費用負担者の責任)、4条(民法の適用)、6条(相互保証)
  • 民法709条(不法行為)、724条(損害賠償請求権の消滅時効)、724条の2(人の生命・身体の侵害)
  • 刑事訴訟法39条1項(接見交通権)、198条2項(黙秘権の告知)
  • 刑事補償法、被疑者補償規程
  • 行政事件訴訟法3条2項(取消訴訟)、16条(関連請求の併合)、25条(執行停止)
  • 出入国管理及び難民認定法52条5項(収容)、54条(仮放免)、24条4号チ・4号リ・4号の2(退去強制事由)

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