在留から見た控訴の実益|判決確定までの時間・不利益変更禁止・保釈を弁護士が解説
2026/10/11
外国人の刑事事件で控訴することには、在留の面から見て二つの実益があります。一つは、罰金か拘禁刑か、刑期が1年を超えるかといった入管法上の境界を越えない判決を求められること、もう一つは、判決が確定するまでの時間に、配偶者の永住許可や帰化など家族の状況を整えられることです。
控訴は被告人の正当な権利です。被告人だけが控訴した事件では原判決より重い刑にはならないため、争うべき点があるなら、在留への影響も含めて検討する価値があります。
本記事の要点
- 刑事処分を理由とする退去強制事由は判決の確定によって生じるため、控訴すれば、結果として確定までの期間が延びます。
- 被告人だけが控訴した事件では、原判決より重い刑を言い渡すことはできません(刑事訴訟法402条)。
- 控訴審で罰金になる、刑期が1年以下になる、執行猶予が付くといった変化は、入管法上の結論を大きく変えます。
- 控訴期間は14日で(同法373条)、上訴を放棄・取下げすると更に上訴することはできません(同法361条)。
- 控訴審の間も保釈を請求でき、その期間を家族の準備に充てられます。
在留の面から見て、控訴にはどんな実益がありますか。
判決の内容を変えられる可能性と、判決確定までの時間です。どちらも、入管で在留特別許可が認められるかどうかに直結します。
入管法24条4号の2・4号チ・4号リの「処せられた」「有罪の判決を受けた」は、判決の確定を指すものとして運用されています。控訴すれば1審判決は確定しないため、刑事処分を理由とする退去強制事由もまだ生じません。その間に、配偶者を永住者や日本人に引き上げる準備を進めることができます。
当事務所が平成26年分から令和7年分までの公表事例を原典で精査したところ、配偶者が別表第一の在留資格で本人に刑事処分(執行猶予を含みます)がある事例は8件あり、すべて不許可でした。確定までの時間に配偶者の地位を変えられるかどうかは、それほど大きな意味を持ちます。控訴手続の基本は刑事事件の控訴をご覧ください。
控訴すると、かえって刑が重くなることはありませんか。
被告人だけが控訴した場合は、重くなりません。刑事訴訟法402条が、これを明確に禁じています。
「被告人が控訴をし、又は被告人のため控訴をした事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。」(刑事訴訟法402条)
ただし、検察官も控訴した場合には、この制限は及びません。また、控訴審の判断によっては1審判決が維持されることも当然あります。控訴するかどうかは、争うべき点の有無を弁護人と具体的に検討したうえで決めてください。
控訴で在留上の結論が変わり得るのは、どんな場合ですか。
判決の内容が、入管法の定める境界の内側に入る場合です。代表的なものは次のとおりです。
| 1審判決 | 控訴審で得られれば | 入管法上の違い |
|---|---|---|
| 拘禁刑(執行猶予付きを含む) | 罰金 | 別表第一の在留資格の人は24条4号の2に当たらなくなる(薬物事件は罰金でも4号チ) |
| 1年を超える実刑 | 1年以下の刑、又は全部執行猶予 | 24条4号リと50条1項ただし書に当たらなくなる |
| 1年を超える実刑 | 一部執行猶予で実刑部分1年以下 | 同上 |
| 2年以上の実刑 | 1年台の実刑 | ただし書に当たるが、公表事例上の許可例の範囲に近づく |
改正法施行後、ただし書に当たりながら許可された公表事例6件の量刑は、いずれも1年2月から1年6月でした(当時の刑名は懲役。現行法の拘禁刑に相当)。他方、令和7年分・その他・不許可第2事例は、日本人実子の監護・養育を主張しながら、懲役2年6月の実刑などを理由に不許可となっています。1年を超える実刑の中でも、刑期の差は軽視できません。
控訴するかどうかは、いつまでに決めなければなりませんか。
判決の言渡しから14日以内です。この期間を過ぎれば判決は確定します。
「控訴の提起期間は、十四日とする。」(刑事訴訟法373条)
注意したいのは、上訴の放棄や取下げです。いったん放棄・取下げをすると、取り返しがつきません。
「上訴の放棄又は取下をした者は、その事件について更に上訴をすることができない。」(刑事訴訟法361条)
判決に納得したつもりでも、在留への影響を知らないまま放棄してしまえば、確定までの時間を失います。判決の直後に結論を急がず、入管法の観点からも検討してください。
控訴審の間に、在留のために何を進めるべきですか。
配偶者の永住許可や帰化の申請、婚姻の実質を示す資料の整理、そして本人の在留期間の管理です。
永住許可のガイドラインは、原則として引き続き10年以上の在留を求めています。帰化も、2026年4月1日から運用上、原則10年以上の在留が求められるようになりました。審査は長期化する傾向にあるため、控訴審の段階で申請を済ませておくことが望まれます。配偶者自身の申請は本人の要件で審査されますが、家族の状況も含めて確認されることがあるため、弁護士と相談しながら進めてください。
本人の在留期間が控訴審の途中で切れれば、判決とは別に不法残留が退去強制事由になります。更新手続を切らさないことも、時間を確保するための前提です。
控訴中に保釈は認められますか。
控訴審の間も、保釈を請求することはできます。ただし、実刑判決の後は、保釈が認められるかどうかの判断が1審の前より厳しくなるのが一般的です。
保釈が認められれば、家族と一緒に永住許可や帰化の申請準備、同居や家計の記録の整理を進めることができ、入管手続に入った後の主張にも生かせます。身体拘束が続くと、本人の在留期間の更新手続も難しくなります。保釈の詳細は刑事事件の保釈で説明しています。
控訴を考えるときに、注意すべき点は何ですか。
控訴は、事実や量刑に争うべき点があるときに、被告人がより良い判決を求めるための正当な権利です。在留への影響は、その判断をするうえで欠かせない事情の一つです。
控訴審で結論が変わらなかった場合でも、上告によってさらに確定までの時間が延びることがあります(刑事訴訟法414条)。上告の位置づけは在留から見た上告の意味で扱っています。
当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、確定までの期間に家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。もちろん許可をお約束できるものではありませんが、1審で厳しい判決を受けても、そこで終わりではありません。判決を受けたら、控訴期間のうちにご相談ください。
よくある質問
Q1. 控訴すると、入管の手続はどうなりますか。
刑事処分を理由とする退去強制事由は判決の確定によって生じるため、控訴審の間は、その事由に基づく入管の手続は本格化しません。ただし、不法残留など判決と関係なく生じる事由がある場合は別です。
Q2. 検察官も控訴した場合、刑が重くなることはありますか。
あります。刑事訴訟法402条が重い刑を禁じるのは、被告人が控訴し、又は被告人のために控訴した事件です。検察官控訴がある場合の見通しは、弁護人とよく相談してください。
Q3. 執行猶予判決でも、控訴する意味はありますか。
別表第一の在留資格の人は、一定の罪で拘禁刑に処せられれば執行猶予付きでも24条4号の2に当たります。控訴審で罰金となれば同号に当たらなくなります。争う点があるかを含め、在留の観点から検討する意味はあります。
Q4. 控訴期間の14日はいつから数えますか。
判決が言い渡された日から進行します。期間は短いため、判決の前から控訴するかどうかの方針を弁護人と話し合っておくことをお勧めします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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