行政訴訟とは|取消訴訟・義務付け訴訟・差止め訴訟の違いと、訴えを起こすための条件
2026/10/11
最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
行政訴訟とは、国や地方公共団体などの行政機関が行った処分などについて、その違法を主張して裁判所に救済を求める訴訟をいい、法律上は行政事件訴訟と呼ばれます。行政事件訴訟法2条は、行政事件訴訟を「抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟」の4種類と定めており、私人が自分の権利を守るために起こすものの中心は、処分の取消しを求める取消訴訟です。
この記事の要点
- 行政訴訟は行政事件訴訟法に定められ、抗告訴訟・当事者訴訟・民衆訴訟・機関訴訟の4種類があります(同法2条)。
- 中心となる取消訴訟は、正当な理由がない限り、処分があったことを知った日から6か月以内に提起しなければなりません(同法14条1項)。
- 取消訴訟を起こしても処分の効力は止まらず、止めるには執行停止の申立てが必要です(同法25条)。
- 行政庁に処分をさせる義務付けの訴え、処分を事前に止める差止めの訴えもあります(同法3条6項・7項)。
- 違法な公権力の行使によって受けた損害の賠償を求めるのは、国家賠償請求訴訟です(国家賠償法1条)。
行政訴訟には、どのような種類がありますか
私人が利用する主なものは、処分の効力などを争う抗告訴訟と、公法上の法律関係を争う当事者訴訟です。
| 種類 | 内容 | 根拠条文 | 例 |
|---|---|---|---|
| 処分の取消しの訴え | 処分の取消しを求める | 行政事件訴訟法3条2項 | 退去強制令書発付処分、在留期間更新不許可処分、営業停止処分の取消し |
| 裁決の取消しの訴え | 審査請求に対する裁決の取消しを求める | 同条3項 | 審査請求を棄却した裁決の取消し |
| 無効等確認の訴え | 処分の無効などの確認を求める | 同条4項・36条 | 重大な違法があり無効といえる処分の無効確認 |
| 不作為の違法確認の訴え | 申請に応答しないことの違法の確認を求める | 同条5項 | 長期間放置されている許可の申請 |
| 義務付けの訴え | 処分をすべき旨を命ずることを求める | 同条6項・37条の2・37条の3 | 許可の申請を拒否された場合の許可処分の義務付け |
| 差止めの訴え | 処分をしてはならない旨を命ずることを求める | 同条7項・37条の4 | 予定されている不利益処分の差止め |
| 当事者訴訟 | 公法上の法律関係の確認などを求める | 同法4条 | 公法上の地位の確認、日本国籍の確認 |
取消訴訟を起こすには、どのような条件がありますか
争う対象が「処分」に当たること、取消しを求める「法律上の利益」があること、出訴期間内であることなどが必要です。
第1に、対象は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」でなければなりません(行政事件訴訟法3条2項)。これを処分性といい、行政指導や内部的な通知などは処分に当たらないとして、訴えが却下されることがあります。第2に、原告は処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に限られます(同法9条1項)。処分の相手方以外の人については、根拠となる法令の趣旨・目的や、害される利益の内容・性質などを考慮して判断されます(同条2項)。第3に、処分があったことを知った日から6か月、又は処分の日から1年を経過すると、正当な理由がない限り提起できません(同法14条1項・2項)。
被告は、処分をした行政庁が所属する国又は公共団体です(同法11条1項)。例えば、地方出入国在留管理局長がした処分であれば、国が被告になります。法律で審査請求を経なければ訴えを起こせないと定めている場合を除き、審査請求をせずに直ちに取消訴訟を提起することもできます(同法8条1項)。
訴えを起こせば、処分の効力は止まるのですか
止まりません。処分の効力や執行を止めるには、裁判所に執行停止を申し立て、認められる必要があります。
行政事件訴訟法25条1項は、処分の取消しの訴えの提起は「処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない」と定めています。執行停止は、処分などにより生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに認められ(同条2項)、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときや、本案について理由がないとみえるときは認められません(同条4項)。退去強制令書による送還や営業停止など、時間がたつと取り返しがつかなくなる処分では、取消訴訟と同時に執行停止を申し立てることが重要です。
行政の裁量が広い処分でも、争うことはできますか
争うことはできます。裁量処分であっても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合には取り消されます(行政事件訴訟法30条)。
在留期間の更新や在留特別許可のように、法律が行政庁に広い裁量を認めている処分では、裁判所が行政庁と同じ立場で判断をやり直すわけではありません。もっとも、判断の基礎とされた重要な事実に誤りがある場合、考慮すべき事情を考慮していない場合、考慮すべきでない事情を考慮した場合、同種の事案と比べて合理的な理由なく異なる取扱いをした場合などには、裁量権の逸脱・濫用として違法とされる余地があります。公表されている許可事例や審査基準と照らし合わせて、処分の不合理さを具体的に示すことが重要です。
国家賠償請求とは、どう違うのですか
行政訴訟は処分の効力などを争う訴訟であり、国家賠償請求は違法な公権力の行使によって受けた損害の賠償を求める訴訟です。
国家賠償法1条1項は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」と定めています。国家賠償請求訴訟は民事訴訟の手続で審理され、取消訴訟のような出訴期間の定めはありませんが、損害賠償請求権の消滅時効にかかります。処分の取消しと損害の賠償の双方を求める場合は、取消訴訟と国家賠償請求を併せて提起することもあります。
審査請求とは、どのような関係にありますか
審査請求は行政機関に対する不服申立てで、訴訟とは別の手続です。法律に特別の定めがない限り、どちらを先に選ぶこともできます。
行政不服審査法に基づく審査請求は、処分の見直しを行政機関に求める手続で、原則として処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内にする必要があります(行政不服審査法18条1項)。審査請求をした場合、取消訴訟の出訴期間は、裁決があったことを知った日から6か月となります(行政事件訴訟法14条3項)。もっとも、外国人の出入国又は帰化に関する処分は審査請求の対象から除かれているため(行政不服審査法7条1項10号)、退去強制令書の発付処分などは、取消訴訟によって争うことになります。
外国人の事件では、どのような行政訴訟がありますか
退去強制令書発付処分の取消訴訟、在留特別許可をしない処分の取消訴訟、在留期間更新不許可処分の取消訴訟、難民不認定処分の取消訴訟などがあります。
退去強制令書が発付されると、送還されてしまえば訴訟を続けることが事実上困難になるため、取消訴訟と同時に送還部分の執行停止を申し立てるのが通常です。また、在留資格の取消しや在留期間の更新の不許可により在留資格を失う場合も、取消訴訟と執行停止によって争うことになります。刑事事件の判決を理由とする処分を争う場合には、刑事事件の記録や判決の内容も重要な資料になります。
弁護士に相談すべき場面
- 行政庁から不利益な処分の通知書を受け取り、出訴期間内に争うべきか検討したいとき。
- 退去強制令書が発付され、送還を止めるために執行停止を申し立てたいとき。
- 許可の申請をしたのに、長期間何の応答もないとき。
- 処分がされる前に、その処分を止める方法があるか知りたいとき。
- 行政の違法な行為によって受けた損害の賠償を求めたいとき。
当事務所では中国語での相談に対応しており、中国語の通訳を完備し、中国律師(中国の弁護士資格者)も在籍しています。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績、入管事件では在留特別許可の獲得実績があります。行政事件では違法な行政処分の撤回を得た例があり、取り扱った事件の一部は法律学の学術誌で取り上げられています。弁護の考え方は「松村大介弁護士の弁護方針」(note)にまとめています。
よくある質問
行政訴訟は、弁護士に依頼しなければ起こせませんか。
本人が訴訟を起こすことも法律上は可能です。もっとも、処分性、原告適格、出訴期間などの訴訟要件を欠くと、内容の審理に入る前に訴えが却下されます。国が被告となる事件では、法務省の訟務部門に所属する指定代理人が対応することが多く、専門的な主張が求められるため、弁護士に相談することをお勧めします。
出訴期間の6か月を過ぎてしまいました。もう争えませんか。
正当な理由があれば、期間の経過後でも提起できる場合があります(行政事件訴訟法14条1項ただし書)。また、処分に重大な違法があって無効といえる場合には、無効等確認の訴えなどの方法も考えられます(同法36条)。いずれもハードルは高いため、早めの相談が重要です。
処分がされる前に、止めることはできますか。
一定の処分がされようとしており、それによって重大な損害を生ずるおそれがある場合には、差止めの訴えを提起することができます(行政事件訴訟法37条の4第1項)。あわせて、仮の差止めを申し立てることも考えられます(同法37条の5第2項)。
行政訴訟には、どのくらいの期間がかかりますか。
事件の内容によりますが、第1審の判決まで1年以上かかることも珍しくありません。執行停止の申立ては、本案の訴訟よりも早く判断されるのが通常です。
審査請求と取消訴訟は、どちらを先にすべきですか。
法律で審査請求を経ることが求められている場合を除き、どちらを選ぶこともできます(行政事件訴訟法8条1項)。審査請求は手続が簡易ですが、行政機関の内部で判断される手続です。早期に裁判所の判断を求めたい場合や、執行停止が必要な場合には、直ちに取消訴訟を提起することを検討します。
根拠条文・出典
- 行政事件訴訟法2条・3条・4条・8条・9条・11条・14条・25条・30条・36条・37条の2から37条の5まで(e-Gov法令検索の現行条文で確認。2026年10月11日)
- 国家賠償法1条、行政不服審査法7条1項10号・18条1項(同上)
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