外国人の刑事事件はいつ弁護士に相談すべきか|呼出し・逮捕・勾留・起訴後の段階別に解説
2026/10/04
外国人の刑事事件では、警察から呼出しを受けた段階から弁護士に相談でき、逮捕から勾留請求の判断までは最長72時間、勾留は最長20日と時間が限られるため、相談が早いほど取れる手段が多い。(刑事訴訟法30条1項・203条・205条・208条)
- 逮捕されていない段階でも、弁護人は選任できる(刑事訴訟法30条1項)
- 逮捕から検察官の勾留請求までは最長72時間、勾留は延長を含めて最長20日である
- 勾留中は、示談や不起訴を目指す活動と、在留への影響の整理を並行して進める
- 起訴された後は、保釈の請求ができる(刑事訴訟法88条)
- 判決に不服があるときの控訴の期間は14日と短い(刑事訴訟法373条)
外国人の刑事事件で、弁護士に相談するタイミングはいつがよいのか?
相談の時期に早すぎるということはなく、段階ごとに弁護士ができることが異なる。次の表は、各段階の主な内容である。
| 段階 | 状況 | 弁護士ができること | 外国人の場合に確認すること |
|---|---|---|---|
| 警察からの呼出し | 逮捕されていない任意の取調べ | 出頭の前に、取調べの受け方(黙秘権、署名押印、通訳)を助言する。立会いの要求や、取調べ前の警察官との協議を検討する | 罪名、在留資格、在留期限 |
| 逮捕前 | 逮捕はされていないが、捜査を受けている | 被害者との示談の準備、身柄拘束の必要がないことを示す資料の整理 | 住居、勤務先、在留期限 |
| 逮捕直後(最長72時間) | 警察署に留置され、勾留請求の判断の前 | 接見、取調べへの助言、勾留に反対する意見の提出 | 在留カードと旅券の所在、通訳の言語、領事機関への通報の希望 |
| 勾留中(最長20日) | 起訴か不起訴かの判断の前 | 示談、勾留に対する準抗告、検察官への意見提出 | 在留期限、勤務先との関係、入管への通報の有無 |
| 起訴後 | 公判の前。保釈の請求ができる | 保釈の請求、公判の準備、情状の立証 | 保釈の際の住居、在留期限が近い場合の手続 |
| 判決後 | 判決の言渡しの後 | 控訴の検討、在留手続(在留特別許可・更新・変更)への対応 | 刑の種類による退去強制事由の該当性 |
警察から呼出しを受けた段階で、弁護士に相談する意味はあるのか?
意味がある。任意の取調べでも、作られた供述調書は後の処分や裁判の資料になり、在留にも影響し得るためである。
逮捕・勾留されていない被疑者は、出頭を拒み、出頭後もいつでも退去できる(刑事訴訟法198条1項ただし書)。出頭する場合も、取調べの前に黙秘権が告げられ(同条2項)、供述調書への署名押印は拒める(同条5項ただし書)。こうした権利を理解したうえで出頭するかどうかを決めるために、呼出しの段階で弁護人を選任できる。詳しくは警察から出頭を求められた外国人は弁護士に相談すべきかで説明している。
逮捕された直後は、何が起きるのか?
逮捕後は、警察が48時間以内に事件を検察官に送り、検察官が24時間以内(逮捕から通算で72時間まで)に勾留を請求するかどうかを判断する(刑事訴訟法203条・205条)。
勾留が認められると、原則10日、やむを得ない事由があれば通算で最長20日、身体拘束が続き、この間に起訴か不起訴かが決まる(同法208条)。通常は、逮捕から最長23日である。外国人の場合は、国又は地方公共団体の職員が、職務上、退去強制事由に該当すると思料する外国人を知ったときに入管へ通報する義務を負うため(入管法62条2項)、罪名によっては入管の手続も並行して動くことがある。弁護人は逮捕直後から立会人なしで接見できる(刑事訴訟法39条1項)。当事務所は、最初の接見で、入管法上のリスクを本人に正確に理解してもらうことを重視している。
勾留中は、弁護士に何を頼めるのか?
勾留中は、不起訴を目指す活動(示談、証拠の整理、検察官への意見提出)と、勾留に対する不服申立てを進めながら、在留への影響を整理する。
勾留の裁判に不服があるときは、準抗告を申し立てることができる(刑事訴訟法429条1項2号)。被害者がいる事件では、弁護人が間に入って示談を進める。不起訴には、犯罪の嫌疑が認められない場合のほか、嫌疑はあるが諸事情を考慮して起訴しない起訴猶予(同法248条)がある。外国人の事件では、不起訴か、罰金か、執行猶予付きか、実刑かによって在留への影響が変わるため、勾留中から見通しを立てておく。勾留とはも参照してほしい。
起訴された後でも、弁護士に相談する意味はあるのか?
起訴された後も、保釈の請求、公判の準備、在留への影響の整理など、弁護士が取り組むことは多い。
勾留されている被告人は、本人のほか、弁護人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹が保釈を請求できる(刑事訴訟法88条)。保釈を許すかどうかは裁判所が判断するため、請求すれば許されるとは限らない。公判では、事実関係を争うのか、情状を主張するのかによって準備の内容が変わる。費用の確認の観点は外国人の刑事事件で弁護士費用を確認するときの観点にまとめている。
判決後は、何のために弁護士に相談するのか?
判決後は、控訴するかどうかの判断と、判決の内容が在留に及ぼす影響の整理が必要になる。控訴の期間は14日である(刑事訴訟法373条)。
在留への影響は、「退去強制事由に該当するか」と「在留期間の更新・変更が許可されるか」を分けて考える。別表第一の在留資格(留学・技能・経営・管理・家族滞在など)の方は、窃盗・傷害・詐欺などの罪で拘禁刑(執行猶予付きを含む)に処せられると、退去強制事由に当たる(入管法24条4号の2)。別表第二の在留資格(永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者)の方は、これには当たらないが、1年を超える実刑(24条4号リ)や薬物事件の有罪(同号チ)は、いずれの在留資格でも該当する。罰金は退去強制事由に当たらないが、更新・変更の審査で素行が考慮される。退去強制事由に当たる場合にも、在留特別許可を求める手続がある(入管法50条)。
弁護士に相談するとき、何を伝えればよいのか?
本人の氏名・国籍、在留資格と在留期限(在留カードの写し)、逮捕された警察署と日時、罪名、通訳が必要な言語を伝えると、相談が円滑に進む。
当事務所は中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からのご相談を受けている。微信ID:matsumura1119 からも連絡できる。外国人の刑事事件の全体像は外国人の刑事事件 総合ガイド、相談前の準備は外国人の刑事事件で相談する前の準備を参照してほしい。
よくある質問
まだ逮捕されていませんが、警察から電話がありました。弁護士に相談してよいですか?
逮捕される前でも相談でき、弁護人も選任できる(刑事訴訟法30条1項)。出頭する前に、取調べの受け方と在留への影響を確認しておくことを勧める。
逮捕されてから何日以内に弁護士を頼めばよいですか?
弁護人はいつでも選任できるため(刑事訴訟法30条1項)、期限はない。ただし、逮捕から勾留請求の判断までは最長72時間、勾留は最長20日と時間が限られており、この間に起訴か不起訴かが決まるため、早い相談が望ましい。
勾留された後でも、不起訴を目指せますか?
勾留中は、まだ起訴か不起訴かが決まる前の段階であり、示談や証拠の整理を進める。不起訴になるかどうかは事案による。見通しは、事件の内容と本人の状況を聞いたうえで説明する。
在留期限が近づいています。刑事事件の最中でも、在留の手続は必要ですか?
在留期間を経過して残留すると、不法残留として刑事罰と退去強制の対象になり得る(入管法70条1項5号、24条4号ロ)。期限が近いときは、刑事事件の相談の際に、在留期限もあわせて伝えてほしい。
家族が逮捕されました。家族は何ができますか?
配偶者、直系の親族、兄弟姉妹は、本人とは別に弁護人を選任できる(刑事訴訟法30条2項)。最初にすべきことは外国人の家族が逮捕されたとき、家族が最初にすべきことで説明している。
関連ページ
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119 電話:050-7587-4639