今の弁護人に不安があるとき|弁護人の変更・追加の方法と注意点を弁護士が解説
2026/10/04
今の弁護人に不安があるときは、まず不安の中身を弁護人に伝えたうえで、私選弁護人は追加や委任契約の解除で、国選弁護人は裁判所・裁判官による解任で、それぞれ交代・追加でき、引継ぎと在留手続の期限を切らさないことに注意する。
(刑事訴訟法30条、38条の3、民法651条)
- 私選弁護人は、本人や家族がいつでも追加でき、委任契約の解除によって交代できる
- 国選弁護人は、裁判所(起訴前は裁判官)が、条文に定める事由があると認めたときに解任し、本人が自分で解任できるわけではない
- 弁護人が代わるときは、記録・接見の状況・示談の進み具合・期日の予定の引継ぎを、空白なく行う
- 弁護人の変更そのものが、在留資格に影響するわけではない
- 在留期限が近いときは、更新の申請の時期を、刑事手続とあわせて確認する
今の弁護人に不安があるとき、まず何をすればよいのか?
まず、不安に感じている点を、そのまま弁護人に伝える。
接見の回数が少ない、通訳が通じない、見通しの説明が分からない、費用の説明が不十分だと感じるなど、不安の理由はさまざまである。弁護士は、事件の経過や結果に影響する事項を報告し、依頼者と協議しながら事件を進める(弁護士職務基本規程36条)。また、依頼者との信頼関係が失われ、その回復が困難なときは、その旨を説明し、辞任その他の適切な措置をとらなければならない(同規程43条)。不安を伝えることで、説明の不足が解消されることもある。外国人の場合は、通訳を介して、理解できなかった点を具体的に伝えるとよい。
弁護人の変更・追加には、どのような方法があるのか?
私選弁護人の追加・解除と、国選弁護人の解任とで、手続の主体が異なる。
| 状況 | 手続 | 根拠・注意 |
|---|---|---|
| 私選弁護人を追加する | 追加する弁護士と委任契約を結ぶ | 被疑者・被告人はいつでも弁護人を選任できる(刑事訴訟法30条1項)。弁護人の数は、被告人については特別の事情があるときに限り制限される(同法35条) |
| 私選弁護人を交代する | 現在の弁護人との委任契約を解除し、新たな弁護士に依頼する | 委任は各当事者がいつでも解除できる(民法651条1項)。相手方に不利な時期の解除は、損害賠償の問題が生じることがある(同条2項) |
| 国選弁護人を解任する | 裁判所(起訴前は裁判官)が判断する | 解任は条文に定める事由があると認められるときに行う(刑事訴訟法38条の3) |
| 国選弁護人から私選弁護人に替える | 私選弁護人を選任し、国選弁護人の解任を受ける | 弁護人が選任されたことなどで付する必要がなくなったときは解任できる(同条1項1号) |
私選弁護人を追加するときは、何に注意すればよいのか?
追加する弁護士と今の弁護人との役割分担を確認し、費用の内訳と総額の見込みを、契約の前に書面で説明してもらう。
私選弁護人は、被疑者・被告人本人のほか、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹も、独立して選任できる(刑事訴訟法30条)。追加するときは、刑事弁護を担当する弁護士と、示談や入管手続を担当する弁護士の役割が重ならないよう、あらかじめ整理しておく。自分で探せないときは、弁護士会に紹介を求めることができる(同法31条の2)。弁護士は、受任に当たり、見通し、処理の方法、費用を説明し(弁護士職務基本規程29条)、委任契約書を作成する(同規程30条)。
私選弁護人を解任するときは、何に注意すればよいのか?
委任契約の解除は、いつでもできるが、取調べや勾留の期限、公判期日の直前に弁護人の空白が生じないよう、次の弁護士を決めてから行うのがよい。
私選弁護人との委任契約は、いつでも解除できる(民法651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に解除すると、損害賠償の問題が生じることがある(同条2項)。弁護士は、委任の終了に当たり、事件処理の状況を依頼者に説明し(弁護士職務基本規程44条)、契約に従って金銭を清算し、預り金・預り品を返還する(同規程45条)。何をどこまで清算するかは、契約書の内容で決まるため、解除の前に契約書を確認しておく。
国選弁護人を解任したいときは、どうすればよいのか?
国選弁護人の解任は、裁判所または裁判官が、条文に定める事由があると認めるときに行うものであり、本人が自分で解任するのではなく、事情を伝えて判断を求める形になる。
裁判所は、次の場合に国選弁護人を解任することができる。弁護人が選任されたことなどにより付する必要がなくなったとき、被告人と弁護人との利益が相反する状況にあるとき、心身の故障などで弁護人が職務を行えないとき、弁護人が任務に著しく反したことで職務を継続させることが相当でないとき、被告人の責めに帰すべき事由で弁護人に職務を継続させることが相当でないときである(刑事訴訟法38条の3第1項)。解任するには、あらかじめ意見を聴かなければならず、被告人の権利を不当に制限しないようにしなければならない(同条2項・3項)。起訴前は、裁判官が解任する(同条4項)。不満の内容を、日時や具体的な出来事とあわせて整理し、裁判所に伝える。
弁護人が代わるとき、引継ぎはどのように進むのか?
これまでの接見の内容、示談の進み具合、証拠の状況、期日の予定を、新しい弁護人が把握できるようにしたうえで、本人の同意のもとに進める。
弁護士は、職務上知り得た秘密を保持する義務を負う(弁護士法23条)。前の弁護人から新しい弁護人へ事件の情報を渡すには、本人の意向を確認するのが通常である。本人が勾留中のときは、新しい弁護人が早く接見し、これまでの経過と、取調べで話した内容を本人から確認する。取調べを控えた時期の交代は、記録の把握が間に合うかを、新旧の弁護人で確認する。
弁護人を変えることは、在留手続に影響するのか?
弁護人の変更そのものは、在留資格に影響しないが、在留期間の満了日と刑事手続の進行を、あわせて確認する必要がある。
在留期間の更新は、法務大臣が、「相当の理由があるときに限り」許可する(入管法21条3項)。更新を申請した場合、期間の満了までに処分がされないときは、満了後2か月を経過する日が終了する時(処分がされればその時)まで、引き続き在留できる。ただし、30日以下の在留期間を決定されている場合は除かれる(同条4項、20条6項)。また、別表第一の在留資格の人が、その活動を正当な理由なく継続して3か月以上行わないでいると、在留資格が取り消されることがある(同法22条の4第1項6号)。勾留や公判のために働けない事情を、記録しておく。刑事の弁護人としての選任と、入管手続の依頼は別の問題であるため、入管手続を誰に依頼するかも、あわせて確認する。刑事事件と入管事件を一貫して依頼する意味も参照されたい。
当事務所では、弁護人の変更・追加の相談を受けているのか?
弁護人の追加や交代の相談も、全国から受けている。
当事務所は、中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からの相談を受けている。外国人の刑事事件では、取調べへの弁護人の立会いを求める方針をとっており、立会いが認められることは現状ほとんどないが、取調べの前に警察官と協議することがある。最初の接見では、入管法上の在留資格を失うおそれについて、本人に正確に理解してもらうことを重視している。微信ID:matsumura1119。相談はお問い合わせから受け付けている。
よくある質問
私選弁護人は、いつでも辞めさせることができるのか?
私選弁護人との委任契約は、いつでも解除できる(民法651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に解除すると損害賠償の問題が生じることがあるため、契約書の内容を確認し、次の弁護士を決めてから行うのがよい。
国選弁護人が気に入らないとき、自分で解任できるのか?
解任の判断をするのは、裁判所(起訴前は裁判官)である。本人は、不満の内容を伝えて、判断を求めることになる。解任の事由は刑事訴訟法38条の3に定められている。
弁護人を追加する場合、今の弁護人にも伝える必要があるのか?
追加する弁護士と今の弁護人とで役割が重なると、対応が混乱することがある。追加することを今の弁護人に伝え、役割分担を相談するのが望ましい。弁護人の選任は、本人の権利であり、今の弁護人の同意は要件ではない(刑事訴訟法30条)。
弁護人を変えたとき、これまでの記録や示談の進み具合は引き継がれるのか?
本人の意向を確認したうえで、前の弁護人から新しい弁護人へ引き継ぐのが通常である。弁護士は、委任の終了に当たり、事件処理の状況を依頼者に説明し(弁護士職務基本規程44条)、預り品を返還する(同規程45条)。
弁護人を変えると、在留資格が不利になるのか?
弁護人を変えること自体は、退去強制事由への該当にも、更新の許否にも、直接の影響はない。影響するのは、刑事処分の結果と、在留期間の満了日までの手続の進み方である。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
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