刑事事件の通訳をどう確認するか|接見・取調べ・公判と供述調書の署名を弁護士が解説
2026/10/04
刑事事件の通訳は、弁護人との接見、取調べ、公判で手配する者と位置づけが異なるため、場面ごとに「誰の通訳か」「内容を理解できたか」「供述調書は正確か」を確かめることが、外国人の防御の出発点になる。
(刑事訴訟法198条、175条、39条)
- 弁護人との接見の通訳は弁護人の側が、取調べの通訳は捜査機関が、公判の通訳は裁判所が、それぞれ用意する
- 供述調書は日本語で作られ、読み聞けを受けたうえで署名押印を求められるが、内容に誤りがあれば訂正を求め、署名押印を拒むことができる
- 取調べの通訳が理解できないときは、理解できないと述べ、納得できないまま署名しない
- 通訳の質に疑問があるときは、弁護人に伝えて記録に残し、公判では裁判所に申し出る
- 通訳の援助を受けることは、自由権規約にも定められている
刑事事件の通訳は、場面によって誰が手配するのか?
接見は弁護人の側、取調べは捜査機関、公判は裁判所が通訳人を手配する。
場面ごとに、通訳人の位置づけと確かめる点が異なる。
| 場面 | 通訳人を手配する者 | 確かめる点 |
|---|---|---|
| 弁護人との接見 | 弁護人 | 通訳人が弁護人の管理の下で守秘を求められているか |
| 警察・検察の取調べ | 捜査機関 | 話した内容が通訳で正確に伝わっているか。調書の内容と一致するか |
| 公判(裁判) | 裁判所(刑事訴訟法175条) | 通訳を介して陳述の内容や手続を理解できているか |
弁護人との接見の通訳は、どう確認すればよいのか?
弁護人との接見は立会人なくして行われるため、通訳人が弁護人の側の者であり、守秘の管理の下にあることを確かめる。
身体を拘束された被疑者は、弁護人と立会人なくして接見できる(刑事訴訟法39条1項)。弁護士は、職務上知り得た秘密を保持する義務を負い(弁護士法23条)、自らの職務に関与させた者が秘密を漏らさないよう指導・監督する(弁護士職務基本規程19条)。接見に通訳人を同席させる場合の手続は、施設によって運用が異なることがあるため、弁護人が事前に確認する。中国語の場合の体制は中国語で相談できる刑事弁護士の選び方で説明している。
取調べの通訳に不安があるとき、どうすればよいのか?
通訳の内容が理解できないときは、理解できないとその場で述べ、分からないまま答えたり署名したりしない。
取調べに際しては、被疑者に対し、自己の意思に反して供述する必要がない旨が告げられる(刑事訴訟法198条2項)。通訳が早すぎる、言葉の意味が違うように聞こえる、通訳人の説明と自分の話が食い違うと感じたときは、その旨を述べてよい。取調べの後は、弁護人に、どの点が理解しにくかったかを伝える。日本語での取調べへの備えは日本語での取調べと弁護士への確認で説明している。
供述調書の読み聞けと署名押印では、何に注意すればよいのか?
調書は日本語で作られるため、通訳を介した読み聞けで内容を確かめ、誤りがあれば訂正を求め、納得できなければ署名押印を拒む。
被疑者の供述は調書に録取することができ、調書は、被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤りがないかどうかを問うものとされる。被疑者が増減変更を申し立てたときは、その供述を調書に記載しなければならない(刑事訴訟法198条3項・4項)。被疑者が誤りのないことを申し立てたときは署名押印を求められるが、これを拒絶することもできる(同条5項)。被告人の署名又は押印のある供述録取書は、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするときなどに、証拠とすることができるとされている(同法322条1項)。そのため、通訳を介して内容を一文ずつ確かめ、少しでも違うと感じたら、署名をしなくてよい。
公判の通訳は、どのように行われるのか?
国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。
刑事訴訟法175条は、国語に通じない者に陳述をさせる場合に通訳人を用いることを定めている。通訳に関する規定は、鑑定の規定が準用される(同法178条)。市民的及び政治的権利に関する国際規約14条3項(f)も、裁判所で使用される言語を理解できない場合に、通訳の援助を受けることを定めている。公判では、証人の証言や裁判官の説明が自分に正確に伝わっているかを、弁護人と事前に確認しておく。
通訳の質に疑問があるとき、どのように伝えればよいのか?
疑問は、その場で言い、弁護人に伝えて記録に残し、公判では裁判所に申し出る。
疑問を感じた日時、場面、どの言葉が問題だったかを、できるだけ具体的に弁護人に伝える。弁護人は、取調べの通訳については、調書の内容の訂正や、取調べの方法についての申入れを検討する。公判では、通訳の訂正を求めるなど、裁判所に申し出ることができる。どの方法をとるかは、事件の段階と内容によって異なるため、弁護人と相談して決める。
当事務所では、通訳についてどのように対応しているのか?
中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。
当事務所は、中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からの相談を受けている。外国人の刑事事件では、取調べへの弁護人の立会いを求める方針をとっており、立会いが認められることは現状ほとんどないが、取調べの前に警察官と協議することがある。最初の接見では、入管法上の在留資格を失うおそれについて、本人に正確に理解してもらうことを重視している。微信ID:matsumura1119。通訳の体制を含め、お問い合わせから相談を受けている。
よくある質問
取調べの通訳人は、自分の味方なのか?
取調べの通訳人は捜査機関が手配する者であり、本人の側に立つ者ではない。通訳が正確に行われているかを、本人が注意して確かめる必要がある。本人の側に立つのは弁護人であり、接見の通訳は弁護人の側で用意する。
調書の内容が違うと思っても、署名を求められたらしなければならないのか?
署名押印を求められても、拒絶することができる(刑事訴訟法198条5項)。内容に誤りがあれば、増減変更を申し立てることができ、その供述は調書に記載される(同条4項)。
日本語がまったく分からないとき、調書はどのように読み聞けられるのか?
通訳人を介して、調書の内容が本人の言葉に訳されて伝えられるのが通常である。訳された内容が自分の話と一致しているかを、一文ずつ確かめる。確かめきれないときは、その場で署名せず、弁護人に相談する。
取調べで黙秘したいときも、通訳は付くのか?
取調べの前には、自己の意思に反して供述する必要がない旨が告げられる(刑事訴訟法198条2項)。この告知の意味を、通訳を介して理解できているかが大切である。黙秘するかどうかは、弁護人と相談して決める。
通訳が間違っていたと後で気づいた場合、どうなるのか?
後で気づいた場合も、弁護人に伝えて対応を検討できる。署名押印のある調書は証拠となりうるため(刑事訴訟法322条1項)、気づいた時点で、できるだけ早く伝えるのがよい。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
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