逮捕から在留特別許可の判断までのタイムライン|刑事手続と入管手続の流れと期限を弁護士が解説
2026/10/11
刑事事件を理由に退去強制となる場合、在留特別許可の判断に至るまでには、捜査、刑事裁判、判決の確定、入管の違反調査、収容又は監理措置、在留特別許可の申請、違反審査、口頭審理、法務大臣の裁決という長い道のりがあり、各段階に結論を左右する期限と分岐点があります。
全体の流れを最初に把握しておけば、いつ何をすべきかが見えてきます。とくに、判決確定までの時間をどう使うかが、配偶者の在留資格を整えるうえで決定的に重要です。
本記事の要点
- 刑事処分を理由とする退去強制事由は、判決が確定してはじめて生じます。
- 控訴の提起期間は14日で(刑事訴訟法373条)、上告にも準用されます(同法414条)。
- 在留特別許可の申請ができるのは、収容令書により収容されたか、監理措置決定を受けた後です(入管法50条2項)。
- 認定に服した場合は3日以内に申請しないと退去強制令書が発付され、口頭審理の請求や異議の申出も、それぞれ通知から3日以内です。
- 判決確定までの期間に、配偶者の永住許可や帰化の準備を進めることが大切です。
逮捕から在留特別許可の判断まで、どんな順序で進みますか。
大きく分けて、刑事手続(捜査・公判・判決確定)と入管手続(違反調査・収容又は監理措置・申請・審査・判断)の二つの段階を順に進みます。
| 段階 | 主な根拠 | 在留上のポイント |
|---|---|---|
| 逮捕・勾留・起訴の判断 | 刑事訴訟法 | 不起訴や罰金なら24条4号の2に当たらない(薬物事件は罰金でも4号チ) |
| 第1審判決 | 刑事訴訟法 | 実刑か執行猶予か、刑期が1年を超えるか |
| 控訴・上告 | 刑事訴訟法373条・414条 | 提起期間は14日 |
| 判決確定 | 刑事訴訟法471条 | 刑事処分を理由とする退去強制事由が生じる |
| 違反調査 | 入管法39条 | 主任審査官が監理措置か収容かを審査 |
| 収容又は監理措置 | 入管法44条の2 | 在留特別許可を申請できるようになる |
| 違反審査・認定 | 入管法45条・47条 | 認定に服したら3日以内に申請 |
| 口頭審理・異議の申出 | 入管法48条・49条 | いずれも通知から3日以内 |
| 在留特別許可の判断 | 入管法50条4項 | 認定・判定に服した後、又は異議に理由がないと裁決された後 |
捜査段階では、在留について何が決まりますか。
退去強制事由そのものが生じるかどうかが、この段階で大きく決まります。起訴されなければ判決はなく、刑事処分を理由とする退去強制事由は生じません。
別表第一の在留資格の人の場合、24条4号の2は「拘禁刑に処せられた」ことを要件としているため、罰金にとどまれば同号には当たりません。罪名や罪数によって同号の対象になるかどうかも変わります。一方、薬物事件は罰金でも24条4号チに当たります。捜査段階の弁護は、在留を守るための最初で、かつ最も効果の大きい機会です。
判決はいつ確定し、退去強制事由はいつ生じますか。
上訴期間が過ぎたとき、又は上訴審の判断が確定したときです。条文の「処せられた」「有罪の判決を受けた」は、判決の確定を指すものとして運用されています。
「控訴の提起期間は、十四日とする。」(刑事訴訟法373条)
上告にもこの規定が準用されます(同法414条)。裁判は確定した後に執行されるのが原則です(同法471条)。控訴・上告は被告人の正当な権利であり、事実や量刑に争う点があれば、より良い判決を求めることができます。その結果として、判決確定までの期間も延びます。
注意したいのは、上訴の放棄や取下げをすると、その事件について更に上訴することはできなくなる点です(同法359条・361条)。判決直後に結論を急がず、在留への影響も含めて弁護人と検討してください。
判決確定後、入管の手続はどう始まりますか。
入国警備官の違反調査から始まり、主任審査官が、本人を監理措置に付すか収容するかを審査します(入管法39条)。
監理措置は、逃亡や証拠隠滅のおそれの程度、収容により受ける不利益の程度などを考慮して、収容しないで退去強制の手続を進める制度です(同法44条の2第1項)。配偶者などが監理人となることもあります。執行猶予判決であれば社会内で、実刑判決であれば刑の執行との関係で、入管の手続が始まる時期や場所が異なります。服役中の手続は刑務所からの監理措置で説明しています。
在留特別許可は、どの時点で申請し、いつ判断されますか。
収容又は監理措置の決定を受けた後に申請でき、判断は違反審査・口頭審理・異議の申出のいずれかの段階を経た後に示されます。
在留特別許可の申請は「収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が、法務省令で定める手続により、法務大臣に対して行うものとする。」(入管法50条2項)
退去強制令書が発付された後は申請できません(同条3項)。入国審査官が退去強制対象者に該当すると認定したときは、口頭審理を請求できること、在留特別許可を申請できることが本人に知らされます(同法47条4項)。認定に服した場合の期限は、次のとおりです。
「第三項の認定に服した日から三日以内に第五十条第一項の規定による許可の申請をしなかつたとき。」(入管法47条5項2号)
認定に異議があれば、通知を受けた日から3日以内に口頭審理を請求でき(同法48条1項)、その判定にも異議があれば、通知から3日以内に法務大臣に異議を申し出ることができます(同法49条1項)。いずれの期限も短いため、判決確定前から申請書類を準備しておく必要があります。
刑事手続の途中で在留期間が切れたら、どうなりますか。
在留期間の更新をしないまま期間が過ぎれば、判決とは別に不法残留が退去強制事由になります。刑事手続の間も、更新の手続を切らさないことが前提です。
在留期間の満了前に更新を申請していれば、処分がされるまで、又は従前の在留期間の満了から2月を経過するまでのいずれか早い時までは、引き続き在留できます(入管法21条4項・20条6項)。ただし、身体拘束中は手続そのものが難しくなるため、家族や弁護人が早めに動く必要があります。詳しくは刑事事件中の在留期間更新をご覧ください。
各段階で、家族は何を準備すべきですか。
捜査段階から、配偶者の在留上の地位を引き上げる準備と、婚姻の実質を示す資料の収集を並行して進めることです。
- 捜査段階:刑事と入管の両方を見通せる弁護人を選び、配偶者が永住許可や帰化の要件を満たすかを確認する
- 公判から確定まで:配偶者の永住許可申請や帰化申請を進め、同居・家計・子の監護の記録を整える
- 入管手続:監理措置の請求、申請期限の管理、公表事例と照らし合わせた主張の準備
永住許可・帰化とも、審査は長期化する傾向にあり、刑事事件が終わってから動き出したのでは間に合わないおそれがあります。当事務所には、判決確定までの時間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。結論は事案によって異なりますが、早く動くほど選択肢は広がります。全体の考え方は在留特別許可と配偶者の在留資格にまとめています。
よくある質問
Q1. 逮捕されたら、すぐに入管の手続が始まりますか。
刑事処分を理由とする退去強制事由は判決の確定によって生じるため、原則として刑事事件が終わった後に入管の手続が本格化します。ただし、不法残留など判決を待たずに生じる退去強制事由がある場合は別です。
Q2. 在留特別許可の申請は、判決が出たらすぐできますか。
できません。申請できるのは、収容令書により収容されたか、監理措置決定を受けた後です(入管法50条2項)。判決確定前は申請書類の準備に充てるのが現実的です。
Q3. 入国審査官の認定に服すると、どうなりますか。
認定に服した日から3日以内に在留特別許可を申請しなければ、退去強制令書が発付されます(入管法47条5項2号)。服するかどうか、申請をどうするかは、通知を受ける前から弁護士と決めておくべきです。
Q4. 控訴をやめると、すぐに判決が確定しますか。
上訴の放棄や取下げをすると、更に上訴することはできなくなります(刑事訴訟法359条・361条)。在留への影響を考えずに放棄すると、準備の時間を失うことがあります。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
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