真実の愛が、在留を守る|刑事事件の判決と在留特別許可を一本の線でつなぐ
2026/10/03
在留特別許可は、配偶者や子供によって救われることが多い。ただし、偽装結婚では救われない。婚姻に実体のある「真実の夫婦」であることが、すべての出発点になる。
最終更新日:2026年10月3日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077) 微信(WeChat)ID:matsumura1119
この記事の要点
- 在留特別許可(入管法50条1項)は法務大臣の裁量で、配偶者や子といった家族の存在が許否の判断で大きな意味を持つ。
- 日本人の配偶者であっても、婚姻に実体がなければ救われない。偽装結婚は許可を遠ざけるだけでなく、刑事責任の問題にもなる。
- 刑事事件で有罪判決を受けると、在留を失うおそれが出る。判決の中身(刑の種類・重さ・執行猶予の有無)が、その後の在留を左右する。
- 弁護は、刑事裁判の段階から在留特別許可までを一本の線として設計する。
- 許可事例・不許可事例の公表事例は、入管自身が示してきた裁量基準である。そこから合理的な理由なく外れた処分は、平等原則・比例原則に反する。
真実の愛は、なぜ在留を守るのか。
結論:実体のある婚姻は、有罪判決を受けた依頼者の在留を守る力になった。実例は次のとおりである。
おとぎ話の姫は、呪いをかけられて眠りにつく。目を覚まさせるのは、真実の愛のキスである。現実の入管の世界にも、同じ場面がある。
依頼者は、有印私文書偽造・同行使の罪で刑事裁判にかけられ、執行猶予付きの判決を受けた。入管法の世界では、刑事事件の有罪判決は、そのまま在留を奪いかねない呪いになる。依頼者は、在留を失うおそれと隣り合わせだった。
だが、依頼者の傍らには、帰化して日本人となった配偶者がいた。二人の婚姻は、書類の上だけのものではない。実体のある、真実の夫婦である。この愛こそが、呪いを解く唯一の鍵だった。
私は、弁護に入る前に確認する。普通の愛ではだめだ。真実の愛でなければならない。二人に私の前で、お互いの気持ちを確認してもらい、それを確かめてから弁護に入る。
そして、その瞬間は訪れた。在留特別許可の申請に対し、「日本人の配偶者」としての許可が下りたのである。運命のキスが、長い眠りを破った。二人の暮らしは、これからも日本で続いていく。
ただし、愛の物語だけで許可が下りるわけではない。私の事務所では、在留特別許可の公表事例をデータベースにまとめている。許可された事例も、許可されなかった事例も、入管自身が示してきた一種の裁量基準である。合理的な理由なくそこから外れた処分は、平等原則と比例原則に反し、違憲・違法である。これが私の立場だ。真実の愛を、データと理論で裏づける。
刑事事件の弁護と、行政法の理論は、別々の分野ではない。刑事の判決の一行が、その後の在留を決める。だから私は、刑事裁判の段階から、在留特別許可までを一本の線として見据えて弁護する。行政法理論と刑事事件を結合させる。それが私の戦い方である。
在留特別許可とは何か。なぜ配偶者や子供が重要なのか。
在留特別許可とは、退去強制の手続の中で、本来は日本から退去させられるべき外国人に対して、法務大臣が特別に在留を許す制度である(入管法50条1項)。許すかどうかは法務大臣の裁量に委ねられている。
裁量といっても、白紙の判断ではない。入管は「在留特別許可に係るガイドライン」と公表事例を示しており、日本人との婚姻関係や、日本人の子を養育している事情は、許可の方向に働く事情として扱われてきた。家族の結びつきを引き裂く処分は、比例原則の面でも重く受け止められるからである。
偽装結婚ではなぜだめなのか。
偽装結婚は、在留特別許可を得るための手段にならない。むしろ許可を遠ざける。
当事者間に婚姻をする意思がない婚姻は無効である(民法742条1号)。さらに、虚偽の届出で戸籍に不実の記載をさせれば、公正証書原本不実記載等の罪(刑法157条1項)に問われうる。入管のガイドラインでも、日本人との婚姻は「偽装婚を除く」ものとして許可の方向の事情に挙げられ、偽装結婚に関わる事案は不許可事例にも現れている。
だから私は、日本人の配偶者の存在を主張する案件では、婚姻の実体を最初に確かめる。出会いの経緯、共同生活の実態、互いへの気持ちを聞き、そのうえで二人に私の前で気持ちを確認してもらう。ここを飛ばして弁護に入ることはしない。
刑事事件で有罪になると、在留はどうなるのか。
有罪判決を受けると、在留資格の更新や変更が認められにくくなり、退去強制の手続に進むおそれがある。判決の内容(罰金か拘禁刑か、実刑か執行猶予か)によって、その後の見通しが大きく変わる。
依頼者のように、執行猶予付きの判決で終わることができれば、在留を守る道は残る。刑事事件の弁護の質が、そのまま在留の結果に響く。刑事の判決と在留特別許可を別々の弁護士に任せると、この線が切れてしまう。
配偶者・子供は、どんな場面で救いになるのか。
結論:婚姻や子の養育に実体があれば、許可の方向に働く事情になる。整理すると次の表のとおり。
| 家族の事情 | 許可の方向に働く事情として見られる点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 日本人の配偶者 | 婚姻が法的に成立し、夫婦として共同生活を送っている実体 | 偽装結婚は許可を遠ざける。刑事責任の問題にもなる |
| 日本人の子(実子) | 子の養育・扶養の実態、子の生活環境 | 養育の実態が資料で示せること |
| 永住者・定住者などの配偶者 | 婚姻の実体と、家族が日本で生活している事実 | 配偶者の在留資格や婚姻期間によって評価が異なる |
※個々の案件の結論は、刑事事件の内容、在留の経緯、家族の状況によって異なる。この表は一般的な整理であり、結果を保証するものではない。
よくある質問
Q.日本人と結婚していれば、在留特別許可は必ず出ますか。
必ずではない。婚姻に実体があることが前提で、そのうえで刑事事件の内容や在留の経緯などが総合的に判断される。
Q.偽装結婚を疑われたとき、どうすればよいですか。
婚姻の実体を示す資料(共同生活の状況、写真、連絡の記録、親族との関係など)を整理し、早い段階で弁護士に相談してください。
Q.子供がいれば、在留特別許可は認められやすくなりますか。
日本人の子の養育は、許可の方向に働く事情として扱われてきた。ただし、養育の実態を資料で示せることが必要である。
Q.執行猶予付きの判決でも、在留特別許可の手続は必要になりますか。
事案による。判決の内容と在留資格の種類によって、手続の進み方が変わる。判決が出る前の段階から相談してほしい。
Q.刑事事件と在留特別許可は、同じ弁護士に頼むべきですか。
刑事の判決の一行が在留を左右するので、同じ弁護士が両方を一本の線として設計するほうが、見通しを立てやすい。
根拠条文・出典
- 入管法50条1項(在留特別許可)
- 民法742条1号(婚姻の無効)
- 刑法157条1項(公正証書原本不実記載等)
- 法務省出入国在留管理庁「在留特別許可に係るガイドライン」および「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」
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