警察から出頭を求められた外国人は弁護士に相談すべきか|任意の取調べの権利と注意点
2026/10/04
警察から出頭を求められた外国人は、逮捕・勾留されていなければ出頭を拒み、出頭後もいつでも退去でき、取調べの前に黙秘権が告げられ、供述調書への署名押印も拒めるため、出頭する前に弁護士に相談して取調べの受け方を確認することが望ましい。(刑事訴訟法198条1項ただし書・2項・5項ただし書)
- 逮捕・勾留されていなければ、出頭は義務ではなく、出頭後もいつでも退去できる
- 取調べの前に、自分の意思に反して供述をする必要がない旨が告げられる
- 供述調書は日本語で作られる。誤りがあれば訂正を求め、納得できなければ署名押印を拒める
- 日本語に通じない外国人の取調べは、通訳人を介して行うものとされている
- 在留カードの提示を求められたら応じる義務があるが、取調べに応じて供述する義務とは別である
警察から出頭を求められた外国人は、弁護士に相談すべきか?
相談すべきである。任意の取調べで作られる供述調書は、後の処分や裁判の資料になるうえ、在留にも影響し得るためである。
弁護人は、逮捕される前の段階でも、被疑者がいつでも選任できる(刑事訴訟法30条1項)。呼出しの電話や書面を受けたときは、罪名、出頭の日時、担当者の名前を控えたうえで、弁護士に相談してほしい。出頭の前であれば、出頭するか、いつどのように出頭するかを含めて、選べる対応が多い。
任意の取調べとは、どのようなものか?
逮捕・勾留されていない被疑者に出頭を求めて行う取調べであり、被疑者は出頭を拒み、出頭後もいつでも退去できる(刑事訴訟法198条1項)。
出頭を求めて取調べができるのは、検察官、検察事務官、司法警察職員であり、犯罪の捜査に必要があるときに限られる。「話を聞くだけ」と言われて出頭しても、帰ってよいか、いつまで続くのかを尋ねることはできる。出頭を拒むことができることと、拒んだ場合に捜査機関がどう判断するかは別の問題であり、拒否が逮捕の判断に影響する可能性もあるため、事案ごとの判断が必要になる。
取調べでは、どのような権利が保障されているのか?
取調べに関する主な権利は、出頭の拒否と退去、黙秘権の告知、調書の訂正の申立て、署名押印の拒否であり、いずれも刑事訴訟法198条に定められている。
| 権利 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 出頭の拒否・退去 | 逮捕・勾留されていなければ、出頭を拒み、出頭後もいつでも退去できる | 198条1項ただし書 |
| 黙秘権の告知 | 取調べの前に、自己の意思に反して供述をする必要がない旨が告げられる | 198条2項 |
| 調書の閲覧・訂正の申立て | 供述調書を閲覧し、又は読み聞かせを受け、誤りがあれば増減変更を申し立てられる | 198条4項 |
| 署名押印の拒否 | 署名押印を求められても、拒絶することができる | 198条5項ただし書 |
これらは、自己に不利益な供述を強要されないという憲法38条1項の権利を、捜査の場面で具体化したものである。
通訳を介した取調べでは、何に気をつければよいのか?
日本語に通じない外国人の取調べは、通訳人を介して行うものとされているが(犯罪捜査規範233条1項)、供述調書は日本語で作られるため、読み聞かせの内容を理解できないまま署名押印しないことが大切である。
犯罪捜査規範は、日本語に通じない外国人については日本語の供述調書を作成するものとし(235条1項)、通訳人を介して取調べを行ったときは、その旨と、通訳人を介して読み聞かせた旨を調書に記載するものとしている(182条1項)。通訳人の言語や方言が自分の言葉と合っているか、通訳が分かりにくいときは、その場で伝えることができる。分からない部分は、理解できるまで説明を求め、納得できなければ署名押印を拒める。通訳の確認点は通訳人の確認に関する記事、日本語での取調べについては日本語で取調べを受けるときの確認点で述べている。
在留カードの提示を求められたら、応じなければならないのか?
中長期在留者は在留カードを常に携帯し、警察官などが職務の執行に当たって提示を求めたときは応じなければならず(入管法23条2項・3項)、拒むと罰則がある(75条の2第2号)。
ただし、これは身分を確認するための義務であり、取調べに応じて供述する義務とは別である。在留期間を過ぎている場合や、在留カードを持っていない場合は、国又は地方公共団体の職員が職務上これを知ったときに、入管へ通報する義務を負う(62条2項)。在留期間を過ぎている心当たりがあるときは、出頭する前に弁護士に相談し、刑事手続と入管手続の両方への影響を確認してほしい。オーバーステイが関係する刑事事件で相談先を選ぶときも参照してほしい。
弁護人の立会いを求めることはできるのか?
求めることはできるが、現状ではほとんど認められていない。刑事訴訟法には被疑者の取調べへの弁護人の立会いを定める規定がなく、認めるかどうかは捜査機関の判断による。
当事務所は、外国人の刑事事件では、取調べへの弁護人の立会いを積極的に要求する方針をとっている。認められないことが多いが、取調べの直前に担当の警察官と協議することがある。立会いが認められなくても、取調べの前後に本人と打合せをして、調書の確認の仕方や、答えるかどうかの考え方を伝えることができる。
出頭を求められたとき、実際にはどう動けばよいのか?
呼出しの内容を記録し、在留カードと旅券を確認し、出頭の前に弁護士に相談する、という順に進める。
- 呼出しを受けた日時、担当者の氏名と所属、伝えられた罪名や用件を書き留める
- 在留カード、旅券、在留期限を確認する
- 出頭する前に弁護士に相談し、出頭するか、いつ、どのような形で出頭するかを決める
- 出頭した場合は、調書を読み聞かされたときに、分からない箇所を確認する
当事務所は中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からのご相談を受けている。微信ID:matsumura1119 からも連絡できる。
よくある質問
警察から電話で「話を聞きたい」と言われました。行かなければ逮捕されますか?
逮捕・勾留されていなければ、出頭を拒むことができる(刑事訴訟法198条1項ただし書)。ただし、拒んだことが逮捕の判断に影響する可能性は否定できず、罪名や証拠、住居や在留の状況などを総合して判断される。拒否するか出頭するかは、弁護士に相談して決めてほしい。
取調べで日本語がよく分からないまま署名してしまいました。どうなりますか?
署名押印した供述調書は、後の手続で証拠として扱われ得る。調書の内容が実際の話と違うときは、できるだけ早く弁護士に伝えてほしい。内容を争えるかどうかは、事案や調書の記載によって異なる。
在留期間が切れているのですが、出頭して大丈夫ですか?
不法残留は刑罰の対象であり(入管法70条1項5号)、退去強制事由にも当たる(24条4号ロ)。公務員は職務上知ったときに入管へ通報する義務を負う(62条2項)。出頭の前に、弁護士に相談してほしい。
通訳を断って、日本語で話してもよいですか?
日本語で話すことも可能だが、細かな表現の行き違いが供述調書の内容に影響することがある。日本語に不安がある場合は、通訳人を介した取調べを求めることができる。
弁護士に警察署まで同行してもらえますか?
警察署への同行を依頼することはできる。取調べ室への立会いは、現状ほとんど認められていないため、立会いの要求とあわせて、取調べの前後の打合せを組み合わせて対応する。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119 電話:050-7587-4639