国選弁護人と私選弁護人の違い(外国人の場合の注意)|要件・選べる範囲・切替えを弁護士が解説
2026/10/04
国選弁護人は、貧困などの事由で弁護人を選任できない被疑者・被告人のために裁判所や裁判官が付す弁護人で、私選弁護人は、本人や家族が自分で選んで委任する弁護人であり、外国人の場合も要件に国籍や在留資格は含まれていないが、通訳と在留への影響を確かめられるかを併せて確認する必要がある。
(刑事訴訟法30条、36条、37条の2)
- 被疑者の国選弁護人は、勾留状が発せられた後に請求でき、逮捕されただけの段階では付かない
- 被告人の国選弁護人は、起訴後に、貧困その他の事由で弁護人を選任できないときに請求できる
- 資力が基準額以上の場合は、国選弁護人を請求する前に、弁護士会へ弁護人の選任を申し出る必要がある
- 私選弁護人を選任すれば、国選弁護人は解任されることがある
- 国籍や在留資格は、条文上、国選弁護人の要件になっていない
国選弁護人と私選弁護人は、何が違うのか?
弁護人を選ぶ主体、付く時期、要件、費用の考え方が異なる。
| 比べる点 | 国選弁護人 | 私選弁護人 |
|---|---|---|
| 選ぶ主体 | 裁判所・裁判官が付す。候補は法テラスが契約弁護士の中から指名する(総合法律支援法38条) | 本人が選ぶ。配偶者・直系の親族・兄弟姉妹も独立して選任できる(刑事訴訟法30条) |
| 弁護士を選べるか | 本人が特定の弁護士を指定する仕組みは、条文上定められていない | 弁護士を指定して依頼できる。弁護士会に紹介を求めることもできる(同法31条の2) |
| 付く時期 | 被疑者は勾留後(同法37条の2)、被告人は起訴後(同法36条) | いつでも選任できる(同法30条1項)。逮捕の直後からでもよい |
| 要件 | 貧困その他の事由で弁護人を選任できないこと。資力申告書の提出が必要(同法36条の2、37条の3) | 要件はない。弁護士の中から選任する(同法31条1項) |
| 費用の考え方 | 弁護士は、国選弁護人に選任された事件で、被告人らから報酬等を受領してはならない(弁護士職務基本規程49条)。訴訟費用として被告人に負担が命じられることはある(刑事訴訟法181条1項) | 委任契約で定める。内訳と総額の見込みを、契約の前に書面で説明してもらう |
被疑者の国選弁護人は、どのような場合に付くのか?
勾留状が発せられている場合に、貧困その他の事由で弁護人を選任できない被疑者の請求により、裁判官が付す。
被疑者に対して勾留状が発せられている場合に、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合や、釈放された場合は付かない。勾留を請求された被疑者も、この請求ができる(刑事訴訟法37条の2)。請求には資力申告書の提出が必要で、資力が基準額以上の場合は、あらかじめ弁護士会に弁護人の選任を申し出ておかなければならない(同法37条の3)。虚偽の記載のある資力申告書を提出すると、過料に処せられることがある(同法38条の4)。
逮捕されただけの段階では、国選弁護人は付かない。この段階で弁護人を求めるときは、私選の弁護人を選任するか、弁護士会に申出をする。勾留の流れは勾留とはで説明している。
被告人の国選弁護人は、どのような場合に付くのか?
起訴された被告人が、貧困その他の事由で弁護人を選任できないときに請求でき、重い罪の事件では弁護人がなければ開廷できない。
被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により弁護人を付さなければならない(刑事訴訟法36条)。未成年者、70歳以上の者、耳の聞こえない者・口のきけない者など、一定の場合には、裁判所が職権で付すこともできる(同法37条)。死刑又は無期若しくは長期3年を超える拘禁刑に当たる事件は、弁護人がなければ開廷できない(同法289条)。
弁護人を選任できる旨の告知は、いつ、誰から受けるのか?
逮捕後の弁解録取、勾留の際、起訴後と、手続の節目ごとに、弁護人を選任できる旨と、国選弁護人を請求できる旨を告げられる。
司法警察員と検察官は、逮捕した被疑者に、犯罪事実の要旨と弁護人を選任できる旨を告げ、弁護士や弁護士会を指定して選任を申し出ることができる旨も教示する(刑事訴訟法203条・204条)。勾留を請求された被疑者には、裁判官が、弁護人を選任できる旨と、貧困などで選任できないときは請求できる旨を告げる(同法207条)。起訴されると、裁判所が被告人に同様の事項を知らせる(同法272条)。外国人の場合は、これらの告知が通訳を介して行われても、内容を理解できたかを、本人が弁護人に確かめることが大切である。
弁護士会への申出とは何か、国選でも弁護人を選べるのか?
弁護士会への申出は、弁護人を選任しようとする被疑者・被告人が、弁護士会に弁護士の紹介を求める制度であり、国選弁護人の候補は法テラスが指名するため、本人が弁護士を指定する形にはならない。
弁護人を選任しようとする被告人又は被疑者は、弁護士会に弁護人の選任の申出をすることができ、弁護士会は、速やかに所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない(刑事訴訟法31条の2)。国選弁護人については、裁判所・裁判官が法テラスに候補の指名と通知を求め、法テラスが国選弁護人契約弁護士の中から候補を指名する(総合法律支援法38条)。各地の弁護士会には、被疑者の求めに応じて弁護士を派遣する当番弁護士の制度があり、利用の方法は、留置施設の担当者や弁護士会に尋ねるとよい。
国選弁護人から私選弁護人に切り替えるには、どうすればよいのか?
私選弁護人を選任し、国選弁護人を付する必要がなくなったときは、裁判所または裁判官が国選弁護人を解任することができる。
私選弁護人は、いつでも選任できる(刑事訴訟法30条1項)。弁護人が選任されたことなどで国選弁護人を付する必要がなくなったときは、裁判所は国選弁護人を解任することができる(同法38条の3第1項1号)。なお、弁護士は、国選弁護人に選任された事件で、その事件の私選弁護人に選任するよう働きかけてはならないとされる(弁護士職務基本規程49条2項。会則に別段の定めがある場合を除く)。切替えを考えるときは、国選弁護人に事情を伝え、私選の弁護人と時期を調整する。起訴前にした弁護人の選任は第一審でも効力を有し、起訴後の選任は審級ごとに行う(刑事訴訟法32条)。途中の変更は今の弁護人に不安があるとき(弁護人の変更・追加)で説明している。
外国人の場合、国選か私選かを選ぶときに何に注意すればよいのか?
国籍や在留資格は国選弁護人の要件ではないが、どちらの場合も、通訳の確保と、在留への影響を確かめられるかを確認する必要がある。
条文は、国選弁護人の請求について、被疑者・被告人の国籍や在留資格を要件としていない。外国人でも、要件を満たせば請求できる。確かめる必要があるのは、通訳を介して本人と十分に話せるか、在留資格と在留期限を伝えて、退去強制事由に当たるか(入管法24条)と、更新・変更が許可されるか(同法20条、21条)を分けて説明してもらえるかである。起訴前の弁護活動の結果が、在留に直接に響くことがあるためである。弁護士選びの観点は外国人の刑事事件で弁護士を選ぶときに確認したい7つのことに、費用の確認点は外国人の刑事事件の弁護士費用の確認点にまとめている。
当事務所では、どのように相談を受けているのか?
全国からの相談を受けている。
当事務所は、中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からの相談を受けている。外国人の刑事事件では、取調べへの弁護人の立会いを求める方針をとっており、立会いが認められることは現状ほとんどないが、取調べの前に警察官と協議することがある。最初の接見では、入管法上の在留資格を失うおそれについて、本人に正確に理解してもらうことを重視している。微信ID:matsumura1119。私選か国選かで迷う場合も、お問い合わせから相談できる。
よくある質問
逮捕された直後に、国選弁護人は付くのか?
逮捕されただけの段階では付かない。被疑者の国選弁護人は、勾留状が発せられている場合に付くものであり、勾留を請求された被疑者も請求できる(刑事訴訟法37条の2)。それ以前に弁護人が必要なときは、私選弁護人を選任するか、弁護士会に選任を申し出る。
在留資格が不安定でも、国選弁護人を請求できるのか?
条文は、被疑者・被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任できないときに請求できると定めており、国籍や在留資格を要件としていない(刑事訴訟法36条、37条の2)。請求の可否は、資力などの要件による。
国選弁護人を頼むと、費用は全くかからないのか?
弁護士は、国選弁護人に選任された事件で、被告人らから報酬等を受領することはできない(弁護士職務基本規程49条1項)。ただし、刑の言渡しがあったときは、訴訟費用の全部又は一部を被告人に負担させることがある。貧困のため納付できないことが明らかなときは除かれる(刑事訴訟法181条1項)。
国選弁護人は、途中で変えてもらえるのか?
国選弁護人の解任は、裁判所又は裁判官が、条文に定める事由があると認めたときに行う(刑事訴訟法38条の3)。私選弁護人を選任した場合も、解任の事由になりうる。手続は今の弁護人に不安があるとき(弁護人の変更・追加)で説明している。
資力が基準額以上のとき、国選弁護人を請求するには何が必要か?
あらかじめ弁護士会に弁護人の選任を申し出ていなければならない(被疑者は刑事訴訟法37条の3第2項、被告人は同法36条の3第1項)。弁護士会は、申出を受けたときは、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を速やかに紹介しなければならない(同法31条の2第2項)。
関連ページ
- 外国人の刑事事件で弁護士を選ぶときに確認したい7つのこと
- 今の弁護人に不安があるとき(弁護人の変更・追加)
- 外国人の刑事事件の弁護士費用の確認点
- 勾留とは
- 外国人・中国人の刑事事件 解決事例の罪名別一覧
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
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