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証券口座の乗っ取り・相場操縦で逮捕された報道事例とは|不正アクセス禁止法・金融商品取引法と在留への影響

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証券口座の乗っ取り・相場操縦で逮捕された報道事例とは|不正アクセス禁止法・金融商品取引法と在留への影響

証券口座の乗っ取り・相場操縦で逮捕された報道事例とは|不正アクセス禁止法・金融商品取引法と在留への影響

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

証券口座の乗っ取りとは、フィッシングなどで入手した他人のID・パスワードで証券会社の口座にログインし、勝手に株式を売買する行為をいい、不正アクセス禁止法違反(3条・11条)のほか、乗っ取った口座で特定の株を買い上げて自分の口座で売り抜ければ金融商品取引法の相場操縦(159条・197条1項)として10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科の対象になります。中国籍の方は、どの罪で起訴されるかによって在留への影響が大きく異なります。

この記事の要点

  • 他人のID・パスワードで証券口座にログインする行為は不正アクセス禁止法3条違反で、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(同法11条)。
  • 乗っ取った口座で特定の株を大量に買い付けて価格を動かし、自分の口座で売り抜ける行為は相場操縦に当たり得て、10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科です(金融商品取引法159条・197条1項)。
  • 乗っ取った口座で勝手に売買をする行為は電子計算機使用詐欺(刑法246条の2)にも当たり得て、得た利益は犯罪収益として没収・追徴の対象になります(組織的犯罪処罰法)。
  • 同じ事件で逮捕されても、関与の程度や証拠の状況により、起訴される人と不起訴になる人に分かれます。
  • 金融商品取引法違反と不正アクセス禁止法違反は1年を超える実刑が退去強制事由の基準ですが(入管法24条4号リ)、電子計算機使用詐欺は刑法第37章の罪であるため、別表第一の在留資格の方は執行猶予付きでも退去強制事由に該当します(同条4号の2)。

報道された事案の概要

報道によれば、2025年12月、他人の証券口座に不正にログインして株式を売買し、相場を操縦したとして、中国籍の30代の男性が金融商品取引法違反(相場操縦)などの罪で起訴され、証券取引等監視委員会が検察官に告発したとされています。同じ事件で共に逮捕された別の男性は不起訴になったと報じられています。証券口座の乗っ取りをめぐって刑事事件として起訴に至った初めての事案として注目されているとのことです。報道は捜査機関等の発表に基づくものであり、本記事では個々の事実関係の当否には立ち入らず、証券口座の乗っ取り事件一般について解説します。

証券口座の乗っ取りとは、どのような手口ですか

フィッシングで盗んだID・パスワードで他人の口座にログインし、保有株を売却した資金で特定の低位株を大量に買い付けて価格をつり上げ、あらかじめ自分の口座で保有していた同じ株を高値で売り抜けるという手口が典型です。

一般に報道されている手口は次のようなものです。まず、証券会社を装った偽のメールやSMSで利用者を偽サイトに誘導し、ログインID・パスワードや取引パスワードを入力させて盗み取ります。次に、盗んだ情報で本人になりすまして証券口座にログインし、本人が保有している株式や投資信託を無断で売却して現金化します。その資金で、取引量が少なく株価の低い特定の銘柄(低位株)を大量に買い付けると、買い注文が集中して株価が急騰します。犯人グループは、あらかじめ自分たちの口座でその銘柄を安く仕込んでおき、乗っ取り口座からの買い注文で上がった高値で売り抜けて利益を得ます。乗っ取られた被害者の口座には、売却された本来の資産の代わりに、急騰後に値下がりした低位株が残ることになります。被害者は資産を失い、株式市場は人為的に価格をゆがめられるという二重の被害が生じる点で、単なる不正ログインより悪質な行為とされています。

証券口座の乗っ取りは何罪になりますか

不正アクセス禁止法違反、金融商品取引法の相場操縦、電子計算機使用詐欺が中心で、得た利益は犯罪収益として没収・追徴の対象になります。

第1に、他人のID・パスワードを入力して証券会社のシステムにログインする行為は、不正アクセス禁止法3条が禁止する不正アクセス行為に当たり、同法11条により3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます。ログインした回数ごとに罪が成立し得ます。第2に、乗っ取った口座で特定の銘柄を大量に買い付けて価格を変動させ、自分の口座で売り抜ける行為は、金融商品取引法159条が禁止する相場操縦(他人に誤解を生じさせる目的での一連の売買や、相場を変動させる目的での取引など)に当たり得て、同法197条1項により10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処せられ、又はこれを併科されます。法定刑の重さは、市場の公正を害する犯罪として重く扱われていることの表れです。第3に、乗っ取った口座で本人の意思に反して売買の注文を入力する行為は、コンピュータに虚偽の情報を与えて財産上の利益を得る電子計算機使用詐欺(刑法246条の2)として立件されることがあります。さらに、これらの犯罪で得た利益は犯罪収益として、組織的犯罪処罰法に基づく没収・追徴の対象となり、利益が共犯者の口座や海外に移されていても追徴が命じられ得ます。どの罪で起訴するかは検察官が判断しますが、後述のとおり、中国籍の方にとっては罪名の違いが在留に直結します。

罪名法定刑入管法24条4号の2の列挙中国籍の方の在留への影響
不正アクセス禁止法違反(3条・11条)3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金列挙外1年を超える実刑で退去強制事由(4号リ)
相場操縦(金融商品取引法159条・197条1項)10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又は併科列挙外1年を超える実刑で退去強制事由(4号リ)。実刑となる例が少なくない
電子計算機使用詐欺(刑法246条の2)条文を確認のうえ(刑法第37章の罪)列挙(第37章)別表第一の在留資格は執行猶予付きでも退去強制事由(4号の2)

一緒に逮捕された人が不起訴になるのはなぜですか

共犯とされた人の処分は、共謀の有無、関与の程度、取引の仕組みの理解、証拠の状況によって分かれ、関与が周辺的で立証が難しい人は不起訴になることがあります。

相場操縦のような事件では、複数の人物がそれぞれ異なる役割(ID・パスワードの入手、ログインと注文の入力、売り抜け用口座の提供、利益の送金)を担うことが通常です。検察官は、一人ひとりについて、全体の計画を知って加担したといえるか(共謀)、どの行為を実際に行ったか、その行為が犯罪の成立にどの程度寄与したかを検討し、起訴するかどうかを決めます。たとえば、口座を貸しただけで取引の内容を知らされていなかった人、指示されるままに画面操作をしただけで株価をつり上げる目的を理解していなかった人については、相場操縦の目的や共謀を証拠上認定することが難しく、不起訴(嫌疑不十分)となることがあります。不起訴は無罪と同じではなく、検察官が現時点で起訴しないと判断した処分にすぎませんが、刑事裁判にかけられず前科も付かないため、本人にとっての意味は大きく異なります。逮捕の段階から弁護人を通じて、自分の関与がどの範囲にとどまるかを整理し、必要な範囲で供述し、不利な供述調書を作らせないことが、処分の分かれ目になります。

証券取引等監視委員会の告発と刑事手続の関係はどうなっていますか

相場操縦などの金融商品取引法違反は証券取引等監視委員会が犯則事件として調査し、検察官に告発し、告発を受けた検察官が起訴するかどうかを判断します。

証券取引等監視委員会は、金融庁に置かれた機関で、市場の公正を確保するために取引の監視や検査を行っています。相場操縦やインサイダー取引などの重大な違反については、犯則事件として調査する権限を持ち、刑事訴追が相当と判断すれば検察官に告発します。証券口座の乗っ取りでは、まず被害者からの届出や証券会社からの通報を受けて警察が不正アクセス禁止法違反などで捜査を始め、取引記録の分析を通じて相場操縦の疑いが固まった段階で監視委員会が告発するという流れがみられます。告発は検察官の起訴を促す手続であり、告発があったからといって自動的に有罪となるわけではありませんが、専門機関が取引データを分析した上で告発に至った事件は、起訴後に争うことが容易ではない場合が多いのが実情です。身体拘束の流れは一般の刑事事件と同じで、逮捕後48時間以内に送致、24時間以内に勾留請求、勾留は10日で最大10日延長されます(刑事訴訟法203条・205条・208条)。共犯者が複数いる事件では、口裏合わせを防ぐために接見等禁止が付き、家族とも面会できない期間が続くことが少なくありません。

外国人(中国籍の方)の在留資格への影響

相場操縦と不正アクセス禁止法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではないため1年を超える実刑が退去強制事由の基準になりますが(同条4号リ)、電子計算機使用詐欺は刑法第37章の罪として列挙されているため、別表第一の在留資格の方は執行猶予付きでも拘禁刑に処せられれば退去強制事由に該当します(同条4号の2)。

入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、経営・管理、高度専門職、留学、家族滞在など)の方が、刑法の特定の章の罪で拘禁刑に処せられた場合を、執行猶予の有無を問わず退去強制事由としています。金融商品取引法と不正アクセス禁止法はこの列挙に含まれていません。したがって、相場操縦と不正アクセスだけで起訴された場合は、在留資格の種類を問わず、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられたかどうか(同条4号リ。刑の全部の執行猶予は除かれます)が基準になります。ただし、相場操縦の法定刑は重く、被害額や得た利益が大きい事案では初犯でも実刑となることがあるため、この基準を満たしてしまうおそれは現実にあります。

これに対し、乗っ取った口座で勝手に売買をしたことが電子計算機使用詐欺(刑法246条の2)として起訴され、有罪となった場合は事情が異なります。同条は刑法第2編第37章(詐欺及び恐喝の罪)に置かれているため、別表第一の在留資格の方は、執行猶予付きの判決であっても拘禁刑に処せられれば、それだけで退去強制事由に該当します(入管法24条4号の2)。日本人の配偶者等や永住者などの別表第二の在留資格の方には4号の2は適用されず、4号リの基準で判断されます。どの罪名で起訴されるか、起訴された罪名のうちどれが有罪となるかは、刑事裁判の結果であると同時に、在留できるかどうかを決める要素でもあるため、弁護人は刑事と入管の両面から訴因の選択や認否の方針を検討する必要があります。

加えて、1年以上の拘禁刑に処せられた方は、入管法5条1項4号により、期間の定めなく上陸拒否事由に該当し、一度出国すると再入国が困難になります。退去強制された方は5年間(再度は10年間)上陸が拒否されます(同項9号)。退去強制事由に当たらない場合でも、在留期間の更新や永住許可の審査では素行が考慮され、罰金や執行猶予であっても不許可となるおそれがあります。退去強制手続に進んだ場合には、在留特別許可(同法50条)の審査で家族関係や在留期間などが考慮されます。

弁護士に相談すべき場面

  • 家族が不正アクセス禁止法違反や金融商品取引法違反の疑いで逮捕され、接見等禁止で面会できないと連絡を受けたとき。
  • 口座を貸しただけ、頼まれて操作しただけなのに、取調べで全体の計画を知っていたと認めるよう求められているとき。
  • 証券取引等監視委員会や警察から任意の事情聴取を求められ、出頭前に対応を整理したいとき。
  • 就労や経営・管理などの在留資格があり、起訴される罪名によって退去強制事由に当たるかどうかが変わる状況にあるとき。
  • 起訴後の保釈や、没収・追徴の範囲、被害者への弁償の方法について見通しを知りたいとき。

当事務所では中国語での相談に対応しており、専属通訳が常駐しています。外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針で臨んでいますが、立会いが認められることは現状ほとんどありません。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があります。

よくある質問

証券口座の乗っ取りは、どのような罪になりますか。

他人のID・パスワードで証券会社のシステムにログインする行為は不正アクセス禁止法3条違反(同法11条で3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)です。乗っ取った口座で特定の株を大量に買い付けて価格を動かし、自分の口座で売り抜ける行為は、金融商品取引法159条が禁じる相場操縦に当たり得て、同法197条1項により10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科が定められています。乗っ取った口座で勝手に売買をする行為については、電子計算機使用詐欺(刑法246条の2)も検討されます。

一緒に逮捕された人が不起訴になるのはなぜですか。

共犯者とされた人が不起訴になる理由は、関与の程度が低く共謀が認められなかった場合、取引の仕組みを理解していなかったと判断された場合、証拠が不十分な場合などさまざまです。不起訴は無罪の認定ではなく、検察官が起訴しないと判断した処分にすぎません。他方で、主導的に取引をした人や利益の大半を得た人は起訴される傾向があり、同じ事件でも処分が分かれることは珍しくありません。

口座を貸しただけ、頼まれて操作しただけでも処罰されますか。

自分の口座を他人に使わせ、そこに乗っ取り口座からの売り抜けによる利益が入っていれば、相場操縦や犯罪収益の受け皿になった責任が問われ得ます。何のための取引か知らなかったという主張は、報酬の有無、指示の内容、取引の不自然さなどから、犯罪である可能性を認識していたかどうかを検討して判断されます。口座を貸した対価を受け取っていた場合には、認識があったと推認されやすくなります。

証券取引等監視委員会の告発とは何ですか。

証券取引等監視委員会は、金融商品取引法違反のうち相場操縦やインサイダー取引などの犯則事件を調査し、刑事訴追が相当と判断したときに検察官に告発する機関です。告発を受けた検察官が起訴するかどうかを判断します。警察が捜査する事件であっても、金融商品取引法の罪については監視委員会が告発を行うことが多く、報道事案でも監視委員会の告発が報じられています。

中国籍で就労の在留資格があります。有罪になると強制送還されますか。

金融商品取引法違反と不正アクセス禁止法違反は入管法24条4号の2の列挙罪ではなく、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合に退去強制事由となります(同条4号リ)。これに対し、電子計算機使用詐欺は刑法第37章の罪であるため、別表第一の在留資格の方は執行猶予付きでも拘禁刑に処せられれば退去強制事由に該当します(同条4号の2)。どの罪で起訴されるかが在留の帰趨を大きく左右します。

根拠条文・出典

  • 不正アクセス行為の禁止等に関する法律3条・11条(e-Gov法令検索で確認)
  • 金融商品取引法159条・197条1項(同上)
  • 刑法246条の2(条文名のみ)、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(没収・追徴。条文名のみ)
  • 刑事訴訟法203条・205条・208条(同上)
  • 出入国管理及び難民認定法5条1項4号・9号、24条4号リ・4号の2、50条(同上)
  • 2025年12月の各社報道

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