経営・管理の在留資格の更新とは|中国人経営者が審査で問われる点・準備する資料・不許可時の対応を弁護士が解説
2026/10/11
最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
経営・管理の在留資格の更新とは、日本で事業の経営または管理に従事する外国人が在留を続けるために、入管法21条に基づいて受ける審査をいいます。審査では、事業が実際に行われ継続する見込みがあること、本人がその経営・管理に実際に従事していること、納税や社会保険などの義務を果たしていることが問われ、これらを客観資料で示せるかどうかが結果を分けます。
この記事の要点
- 更新は「相当の理由」があるときに限り許可され(入管法21条3項)、入管庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」が考慮事項を示しています。
- 経営・管理は、事業所の確保や事業規模などを定める上陸許可基準省令の要件に引き続き適合していることが求められ、2025年10月の改正で要件が厳格化されました(具体的な数値は改正後の省令と入管庁の公表資料で確認してください)。
- 決算の赤字・債務超過、事業所の実体の欠如、本人の長期不在、納税・社会保険の未納、従業員の不法就労は、不許可の典型的な理由です。
- 不許可になっても特例期間(入管法21条4項)内は在留でき、理由を聴取して再申請するのが基本で、取消訴訟・義務付け訴訟は事案により検討します。
- 会社に実体がない、本人が中国に長期滞在しているといった事情は、在留資格取消し(入管法22条の4)の対象にもなります。
こんな場面で問題になります
- 貿易会社を設立して経営・管理を取得したが、初年度の決算が赤字で、次の更新が不安である。
- 飲食店の経営者で、本人は中国の仕事が忙しく、日本の店は親族に任せて年の半分以上を中国で過ごしている。
- 役員報酬を出しておらず、社会保険にも加入していないまま更新時期を迎えた。
- 設立時に用意した事務所は解約し、現在は自宅の一室を事務所としている。
- 従業員として雇った留学生の労働時間が資格外活動の許可の範囲を超えていた。
経営・管理の更新では何が審査されますか
在留資格該当性(実際に経営・管理に従事しているか)、基準省令への適合(事業所・事業規模など)、事業の継続性・安定性、公的義務の履行、素行の五つが柱です。
在留資格該当性は、本人が事業の経営または管理を実際に行っているかで判断されます。名義だけの代表者で、実際の経営を他人が行っている場合は該当しません。基準省令は、事業所の確保、資本金や常勤職員などの事業規模、管理者の場合の経験等を定めており、2025年10月の改正により、資本金等の額、常勤職員の雇用、経営の経験や学位、日本語能力などの面で要件が引き上げられました。更新時には改正後の省令の内容と経過措置を踏まえた準備が必要です。事業の継続性は決算書と事業計画で判断され、公的義務の履行は納税証明と社会保険の記録で確認されます。素行は、刑事事件や過去の届出義務違反の有無です。
| 審査の柱 | 主な確認資料 | 問題になりやすい点 |
|---|---|---|
| 在留資格該当性 | 役員登記、役員報酬、業務日誌、契約書 | 名義だけの代表者、本人の長期不在 |
| 基準省令への適合 | 事業所の賃貸借契約・写真、資本金の証明、雇用契約 | 自宅兼用で区分がない、従業員の実体がない |
| 事業の継続性 | 決算書、確定申告書、事業計画、取引資料 | 連続赤字、債務超過、売上の裏付けがない |
| 公的義務の履行 | 法人税・住民税・源泉所得税の納税証明、社会保険の加入記録 | 未納、未加入、納付の遅れ |
| 素行・法令遵守 | 許認可証、従業員の在留カード確認記録 | 無許可営業、不法就労助長(入管法73条の2) |
決算が赤字・債務超過のときはどうすればよいですか
赤字だけで不許可と決まるわけではなく、事業が継続する合理的な見通しを、数字の裏付けのある資料で説明できるかが問われます。
入管は、単年度の赤字と、債務超過が続いて事業の継続が見込めない状態を区別して審査します。設立当初の投資による赤字であれば、売上の推移、受注や契約の見込み、資金繰りの計画を示して継続性を説明します。債務超過の場合は、増資や役員借入金の資本化、経費の削減など改善の具体策と、それを裏付ける専門家の評価書を添えるのが実務です。帳簿と申告が整っていないと説明自体が信用されないため、税理士と連携して決算書・申告書・納税証明の整合をとることが先決です。
本人が中国に長く滞在していると更新に影響しますか
影響します。経営・管理は本人が日本で経営・管理に従事する在留資格であり、長期の不在は活動の不実施として更新不許可や在留資格取消しの理由になります。
中国との取引のために出張が多いこと自体は事業上の必要として説明できますが、出入国記録で日本にいる期間が短いと、日本で経営・管理を行っていないとみられます。在留資格取消し(入管法22条の4第1項)は、別表第一の在留資格で在留する人が正当な理由なく活動を継続して行っていない場合を取消事由としており、更新の前に取消しの意見聴取通知が届くこともあります。出張の目的・期間・成果を記録し、日本での業務(従業員の管理、取引先との面談、金融機関や行政との手続)を具体的に示せるようにしておくことが対策になります。
納税・社会保険・従業員の雇用で注意すべき点は何ですか
法人と本人の税の納付、社会保険の加入と納付、従業員の在留資格と労働時間の確認は、更新審査で直接問われる義務であり、未履行は不許可の理由になります。
法人税・消費税・法人住民税の申告納付、役員報酬にかかる源泉所得税の納付、本人の住民税の納付は納税証明で確認されます。社会保険は法人が適用事業所であるため、本人と常勤従業員の加入と保険料の納付が必要です。従業員については、採用時に在留カードで就労の可否と資格外活動の範囲を確認し、記録を残してください。資格外活動の範囲を超えて留学生を働かせた場合、経営者は不法就労助長(入管法73条の2)の刑事責任を問われ、在留資格の更新にも素行として影響します。消費税の不正な免脱は消費税法64条1項により10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金(又は併科)の対象で、税の不正は刑事事件と在留の両方に及びます。
更新が不許可になったらどう対応しますか
特例期間内に不許可理由を聴取し、理由に対応する資料を揃えて再申請するのが基本で、取消訴訟・義務付け訴訟は事実誤認や裁量の逸脱が明らかな場合に事案を選んで検討します。
不許可の通知後も、在留期限または特例期間(入管法21条4項)が終わるまでは従前の在留資格で在留できます。まず入管の窓口で理由の説明を受け、事業の継続性なのか、本人の関与なのか、公的義務なのかを特定します。再申請では、弁護士名の理由書と、改善を裏付ける客観資料(増資の登記、社会保険の加入記録、納税証明、事業所の契約)を揃えます。外国人の出入国に関する処分は行政不服審査法の審査請求の対象外(同法7条1項10号)であり、取消訴訟は処分を知った日から6か月以内(行訴法14条1項)に提起する必要があります。不許可という消極的な処分には執行停止がなじまないとされ、出国すると訴えの利益が問題になるため、訴訟は再申請と並行して慎重に判断します。行政事件の取扱いは複数の学術誌に掲載され研究の対象となっています。
中国籍の方に特有の留意点
- 中国本社との関係:中国の会社の日本子会社として設立した場合でも、審査されるのは日本法人の事業の実体と本人の関与です。中国本社の資金や実績だけでは継続性の説明になりません。
- 資金の出所:資本金や増資の資金が中国から送金されたときは、送金記録と出所の説明を保存してください。出所が説明できない資金は審査で不利になります。
- 家族の在留:配偶者・子の家族滞在は本人の在留資格に連動します。本人の更新不許可は家族の在留にも直結します。
- 代行業者と書類:業者が作成した事業計画や雇用の資料が実態と異なると、虚偽文書として在留資格取消しや刑事事件の問題になります。内容は本人が把握してください。
- 刑事事件との関係:不法就労助長や税の不正は、執行猶予や罰金でも更新審査で素行として考慮され、拘禁刑であれば退去強制事由(入管法24条4号リ・4号の2)に当たる場合があります。
弁護士に相談すべき場面
- 決算が赤字・債務超過で、次の更新に向けて継続性をどう説明するか整理したいとき。
- 本人の不在期間が長く、在留資格取消しの意見聴取通知が届いたとき。
- 従業員の不法就労や税の問題で捜査を受け、在留への影響も含めて対応したいとき。
- 更新が不許可になり、再申請と訴訟のどちらを選ぶか判断したいとき。
舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。入管事件と刑事弁護を一体で扱い、外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針です(立会いが認められることは現状ほとんどありません)。行政事件の取扱いは複数の学術誌に掲載され研究の対象となっています。
よくある質問
決算が赤字でも更新できますか
赤字だけで直ちに不許可になるわけではなく、事業の継続性が問われます。債務超過の場合は、改善の見通しを示す資料(事業計画、専門家の評価書など)で継続性を説明する必要があります。
自分は中国にいることが多く、日本の会社は従業員に任せています。問題になりますか
本人が経営・管理に実際に従事していることが在留資格の前提です。長期の不在は活動の不実施として更新不許可や在留資格取消し(入管法22条の4)の理由になり得ます。
社会保険に加入していないと更新できませんか
法人は社会保険の適用事業所であり、未加入や未納は更新審査で不利に考慮されます。更新前に加入手続と納付を済ませ、その記録を提出してください。
更新が不許可になったらどうすればよいですか
特例期間内に不許可理由を聴取し、理由に対応する資料を揃えて再申請するのが基本です。事実誤認があると考えるときは、取消訴訟・義務付け訴訟の可能性も事案によって検討します。
2025年の要件の厳格化は、すでに在留している人にも適用されますか
改正後の基準省令の内容と経過措置の扱いは、入管庁の公表資料で確認する必要があります。更新の審査では従前から事業の継続性と安定性が問われており、改正によって資料の準備がより重要になっています。
根拠条文・出典
- 出入国管理及び難民認定法 別表第一の二(経営・管理)、21条(在留期間の更新。3項「相当の理由」、4項 特例期間)、22条の4(在留資格の取消し)、73条の2(不法就労助長)、24条4号リ・4号の2(退去強制事由)
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(上陸許可基準省令)経営・管理の項(2025年10月改正)
- 消費税法64条1項(不正免脱)
- 行政事件訴訟法3条2項・6項2号、14条1項、25条、30条、37条の3/行政不服審査法7条1項10号
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」
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