簡易帰化とは|国籍法6条〜8条の対象と、外国人同士の夫婦で使えない理由を弁護士が解説
2026/10/11
簡易帰化とは、日本人の配偶者や日本で生まれた人など、日本と特別な結びつきのある外国人について、国籍法5条1項の条件の一部を備えなくても法務大臣が帰化を許可できる仕組みをいいます(国籍法6条から8条)。よく知られているのは日本人の配偶者を対象とする国籍法7条ですが、夫婦がともに外国人である場合にはこの規定は使えません。在留特別許可のために配偶者を日本人にしようと考えるときは、どの条文が使えるのかを最初に確かめる必要があります。
本記事の要点
- 簡易帰化は国籍法6条・7条・8条に定められ、条文ごとに緩和される条件が異なります。
- 国籍法7条は「日本国民の配偶者たる外国人」が対象で、住所要件と能力要件が緩和されます。
- 外国人同士の夫婦では7条は使えず、配偶者を日本人にするには普通帰化か、該当すれば6条によります。
- 素行要件(5条1項3号)はどの簡易帰化でも緩和されません。
- 配偶者の地位を引き上げる手段としては、永住許可とあわせて比較することが大切です。
簡易帰化とは何ですか。どの条文に定められていますか。
簡易帰化は、国籍法6条、7条、8条に定められた帰化の特例です。それぞれ対象となる人と、備えなくてよい条件が違います。
| 条文 | 主な対象 | 備えなくてよい条件(5条1項) |
|---|---|---|
| 6条 | 日本国民であった者の子、日本で生まれた者、引き続き10年以上日本に居所を有する者など | 1号(住所5年) |
| 7条 | 日本国民の配偶者たる外国人 | 1号(住所5年)、2号(年齢・能力) |
| 8条 | 日本国民の子、日本国民の養子、日本の国籍を失った者、日本で生まれ出生時から無国籍の者など | 1号、2号、4号(生計) |
反対に、すべての条件を満たして申請するのが普通帰化です。普通帰化の条件と2026年4月からの運用については普通帰化とはで整理しています。
日本人の配偶者の簡易帰化(国籍法7条)はどのような制度ですか。
日本人と結婚している外国人について、日本での住所・居所の期間が短くても、また年齢・能力の条件を備えなくても、帰化を許可できるとする制度です。
「日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。」(国籍法7条前段)
同条後段は、婚姻の日から3年を経過し、かつ引き続き1年以上日本に住所を有する日本国民の配偶者にも同じ扱いを認めています。7条は法律上、5条1項1号の住所要件とは別の要件を定めた規定です。
前段は日本での住所又は居所が引き続き3年以上あれば足り、婚姻期間の長さは問いません。後段は婚姻期間3年と住所1年の組合せです。どちらに当たるかによって、そろえる資料も変わります。
外国人同士の夫婦は、国籍法7条を使えますか。
使えません。7条の対象は「日本国民の配偶者たる外国人」であり、夫婦のどちらかがすでに日本人であることが前提だからです。
夫が「技術・人文知識・国際業務」、妻が「家族滞在」というように夫婦がともに外国人である場合、どちらかを日本人にするには、原則として5条1項の条件をすべて満たす普通帰化によることになります。「結婚しているから簡易帰化で早く日本人になれる」と考えて準備を進めると、時間を無駄にしかねません。刑事事件の判決が確定するまでの限られた期間を使うのですから、最初の見立てが重要です。
なお、夫婦の一方が普通帰化によって日本人になれば、もう一方はその時点から「日本国民の配偶者」になります。ただ、刑事事件の当事者である本人については、次に述べる素行要件の問題が残ります。
外国人同士の夫婦でも使える簡易帰化はありますか。
配偶者自身が日本で生まれた人であるなど、国籍法6条に当たる場合には、住所要件が緩和されることがあります。ただし緩和されるのは5条1項1号だけです。
「日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの」(国籍法6条2号)
たとえば、日本で生まれ育った外国籍の配偶者は、6条2号に当たる可能性があります。また6条3号は「引き続き十年以上日本に居所を有する者」を挙げています。いずれも年齢・能力、素行、生計などの条件は普通帰化と同じく求められます。6条に当たるかどうかは、出生地や居所の経歴を書類で確認したうえで判断します。配偶者が日本生まれかどうかで使える条文と必要な在留年数が変わりますので、出生地は最初に確認してください。
簡易帰化でも緩和されない条件は何ですか。
素行が善良であること(5条1項3号)は、6条・7条・8条のいずれでも緩和されません。国籍に関する5号、憲法遵守に関する6号も同様です。8条は日本国民の子などについて生計要件(4号)まで緩和していますが、それでも素行要件は求められます。
このため、刑事事件の当事者である本人が、日本人と結婚しているからといって7条の簡易帰化で在留を守ることは、素行要件との関係で通常は検討の対象になりにくいでしょう。本人の在留は、退去強制手続の中の在留特別許可の枠組みで考えることになります。簡易帰化が意味を持つのは、主として本人ではなく、家族の地位の問題です。
在留特別許可との関係で、簡易帰化はどう考えればよいですか。
配偶者がすでに日本人であれば、本人の婚姻は在留特別許可に係るガイドラインの第2の2(1)ウに当たり得ます。夫婦がともに外国人であれば、配偶者を普通帰化か永住許可で引き上げることを検討します。
「当該外国人が、日本人又は特別永住者と法的に婚姻している場合」(ガイドライン第2の2(1)ウ。以下、婚姻の安定・成熟等の要件が続きます)
配偶者が日本人の場合に問われるのは、婚姻が「安定かつ成熟」しているかどうかです。同居や家計の共同、子の監護の状況を記録しておくことが欠かせません。夫婦がともに別表第一の在留資格である場合は、ガイドラインの特に考慮する積極要素に乗らないため、配偶者の地位をどう引き上げるかが中心の課題になります。当事務所が平成26年分から令和7年分までの公表事例を原典で精査したところ、配偶者が別表第一の在留資格で、本人に刑事処分(執行猶予付き判決を含みます)がある事例は8件あり、すべて不許可でした。全体像は在留特別許可と配偶者の在留資格をご覧ください。
配偶者の帰化について、いつ弁護士に相談すべきですか。
夫(妻)が逮捕された直後、遅くとも起訴の段階です。刑事判決による退去強制事由は判決の確定で生じるため、その前に配偶者の帰化や永住の準備を進めることができます。
どの条文で帰化できるのか、それとも永住許可の方が早いのかは、配偶者の出生地、在留歴、在留資格の履歴によって変わります。永住許可については永住許可とは(配偶者の地位を引き上げる観点)で説明しています。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの時間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。見通しは事案ごとに異なりますので、早めにご相談ください。
よくある質問
Q1. 簡易帰化にも、2026年4月からの原則10年の運用は及びますか。
法務大臣の会見は、帰化の審査で原則として10年以上の在留を求めると述べていますが、国籍法6条から8条の各特例との関係までは明らかにしていません。7条などは法律上、住所要件を緩和する別の規定ですので、申請前に個別に確認することをお勧めします。
Q2. 日本人と結婚すれば、すぐに帰化できますか。
国籍法7条は住所と能力の条件を緩和しますが、引き続き3年以上の住所又は居所、又は婚姻3年かつ1年以上の住所が必要です。素行や生計などの条件は残ります。
Q3. 夫婦とも中国籍です。妻だけ簡易帰化できますか。
7条は日本国民の配偶者が対象なので使えません。妻が日本で生まれたなど国籍法6条に当たれば住所要件が緩和されますが、そうでなければ普通帰化によることになります。
Q4. 刑事事件を起こした本人が、日本人配偶者を理由に簡易帰化できますか。
7条でも素行が善良であること(5条1項3号)は緩和されません。本人の在留は、通常、退去強制手続の中の在留特別許可の枠組みで検討することになります。
Q5. 簡易帰化と永住許可では、どちらが在留特別許可に有利ですか。
配偶者が日本人になればガイドライン第2の2(1)ウ、永住者になれば第2の2(2)ウに当たり得ます。どちらが早く到達できるかで選ぶのが現実的です。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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