普通帰化とは|6つの条件と2026年からの運用、配偶者の在留特別許可への効果を弁護士が解説
2026/10/11
普通帰化とは、日本人の配偶者や日本で生まれた人などに認められる特例によらず、国籍法5条1項に定める6つの条件をすべて備えた外国人が、法務大臣の許可を受けて日本の国籍を取得することをいいます(国籍法4条・5条)。夫(妻)が刑事事件を起こし、退去強制の手続が見えてきた外国人家庭では、もう一方の配偶者が普通帰化で日本人になることが、在留特別許可の判断を大きく変える選択肢になります。
本記事の要点
- 普通帰化には、住所、年齢・能力、素行、生計、国籍、憲法遵守の6つの条件があります(国籍法5条1項)。
- 法律上の住所要件は「引き続き五年以上」ですが、2026年4月1日から、運用上は原則として10年以上の在留が求められています。
- 配偶者が帰化して日本人になると、本人の婚姻は在留特別許可ガイドラインの「特に考慮する積極要素」(第2の2(1)ウ)に当たり得ます。
- 刑事判決による退去強制事由は判決の確定で生じるため、確定までの期間に配偶者の帰化を進める余地があります。
- 帰化が間に合わない見込みなら、永住許可を並行して検討します。
普通帰化とは何ですか。簡易帰化とはどう違いますか。
普通帰化は、国籍法5条1項の条件をすべて満たすことを前提にした、もっとも基本的な帰化です。これに対し簡易帰化は、日本と特別な結びつきのある人について、条件の一部を備えなくても許可できるようにしたものです(国籍法6条から8条)。
帰化はいずれも法務大臣の許可によって効力を持ちます。
「帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。」(国籍法4条2項)
外国人同士の夫婦の場合、日本人の配偶者を対象とする国籍法7条の簡易帰化は使えません。夫婦のどちらかを日本人にするには、原則として普通帰化によることになります。違いの詳細は簡易帰化とはで整理しています。
普通帰化の6つの条件は何ですか。
国籍法5条1項は、次の6つの条件を備えた外国人でなければ帰化を許可できないと定めています。条件は申請する本人について一つずつ確認されます。
「法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。」(国籍法5条1項)
| 号 | 条件(条文の要旨) | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|
| 1号 | 引き続き5年以上日本に住所を有すること | 2026年4月から運用上は原則10年以上の在留 |
| 2号 | 18歳以上で本国法によって行為能力を有すること | 年齢と本国法上の能力 |
| 3号 | 素行が善良であること | 税金・社会保険料の納付状況の確認期間が延長 |
| 4号 | 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること | 世帯単位で生計が見られる |
| 5号 | 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと | 原則として元の国籍を失う |
| 6号 | 日本国憲法やその下の政府を暴力で破壊することを企てるなどしたことがないこと | 該当する団体への加入歴がないこと |
4号が「生計を一にする配偶者その他の親族」の資産・技能も含めているように、帰化は申請者一人だけでなく、家族の生活の全体を視野に入れて審査される制度です。
2026年4月から、帰化の審査は何が変わりましたか。
法律の条文は変わっていませんが、運用上、原則として10年以上の在留が求められるようになりました。あわせて、税金や社会保険料の納付状況を確認する期間も延びています。
法務大臣は、令和8年3月27日の閣議後記者会見で次のように述べています。
「本年4月1日から、帰化の審査において、「日本社会に融和していること」の要件につき、原則として10年以上在留し、日本社会に融和していることを必要とするとともに、素行の善良性・生計条件につき、税金や社会保険料の納付状況を確認する期間を延ばす旨の厳格化を実施します。」(法務大臣閣議後記者会見の概要・令和8年3月27日)
国籍法5条1項1号の「引き続き五年以上」という文言はそのままですが、実際に申請を考えるときは、10年を目安にしなければなりません。永住許可も原則10年在留が目安ですから、帰化と永住の到達時期は以前より近くなりました。配偶者の在留歴によって、どちらが早く届くかを個別に比べる必要があります。
配偶者が帰化すると、在留特別許可の判断はどう変わりますか。
配偶者が日本人になると、本人の婚姻は在留特別許可に係るガイドラインの「特に考慮する積極要素」に当たり得ます。配偶者が「技術・人文知識・国際業務」などの別表第一の在留資格のままでは、婚姻はこの要素に挙げられていません。
「当該外国人が、日本人又は特別永住者と法的に婚姻している場合(退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること」(ガイドライン第2の2(1)ウ)
当事務所が平成26年分から令和7年分までの公表事例を原典で精査したところ、配偶者が別表第一の在留資格で、本人に刑事処分(執行猶予付き判決を含みます)がある事例は8件あり、すべて不許可でした。配偶者の在留上の地位は、それほど結論を左右します。もっとも、積極要素があれば許可されるというものではなく、ガイドライン第3のとおり、積極要素と消極要素を総合して判断されます。
夫(妻)の刑事事件が続いている間に、帰化は間に合いますか。
間に合う可能性はありますが、早く動き出すことが前提です。刑事判決を理由とする退去強制事由は判決の確定によって生じるため、捜査・公判に適切に対応し、上訴の権利も行使すれば、確定までに数年の時間が生まれることがあります。
一方で、帰化の審査は長期化する傾向にあります。判決が確定してから準備を始めたのでは、入管の手続に間に合わないおそれがあります。逮捕・起訴の段階で、配偶者の在留歴が運用上の原則10年に届いているか、届いていないならいつ届くかを確認し、帰化と永住のどちらを申請するかを決めておくことが大切です。全体の考え方は在留特別許可と配偶者の在留資格で説明しています。
夫(妻)の刑事事件は、配偶者の帰化審査に影響しますか。
帰化の条件は申請する本人について審査されますが、家族の状況も含めて確認されることがあり、影響の有無を一律に言い切ることはできません。弁護士と相談しながら、申請の時期と説明の仕方を決めるのが安全です。
国籍法5条1項4号が生計を世帯単位で見ていることからも分かるように、家族の生活状況は審査の視野に入ります。刑事事件の内容、家計への影響、配偶者自身の納税・社会保険料の納付状況などを整理し、事実に即して説明できるよう準備しておくべきです。申請の取下げや先送りを含め、判断は事案ごとに慎重に行います。
帰化と永住許可は、どちらを目指すべきですか。
どちらでも構いません。配偶者が日本人になれば第2の2(1)ウに、永住者になれば別表第二の在留資格者との婚姻として第2の2(2)ウに当たり得るからです。到達までの期間と要件の充足状況を比べ、早く届く方を選ぶのが現実的です。
帰化は元の国籍を失うのが原則で(国籍法5条1項5号)、配偶者本人にとって重い決断です。永住許可であれば国籍はそのままです。比較は配偶者は永住と帰化どちらを目指すべきかで詳しく扱っています。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間に家族の在留上の地位を整え、在留特別許可を得た実績があります。結果は事案ごとに異なりますが、諦める前に一度ご相談ください。
よくある質問
Q1. 普通帰化の住所要件は5年ですか、10年ですか。
国籍法5条1項1号の文言は「引き続き五年以上」のままです。ただし2026年4月1日から、運用上は原則として10年以上の在留が求められています。申請の目安は10年と考えてください。
Q2. 外国人同士の夫婦でも、配偶者は帰化できますか。
できます。その場合は原則として国籍法5条1項の条件をすべて満たす普通帰化によります。日本人の配偶者を対象とする国籍法7条の簡易帰化は使えません。
Q3. 配偶者が帰化すれば、在留特別許可は認められますか。
許可が約束されるわけではありません。日本人との婚姻はガイドライン第2の2(1)ウの特に考慮する積極要素に当たり得ますが、婚姻の安定・成熟が求められ、消極要素との総合判断になります。
Q4. 帰化申請の準備はいつから始めればよいですか。
夫(妻)が逮捕・起訴された段階で始めるのが望ましいです。刑事判決による退去強制事由は確定で生じますが、帰化の審査は長期化する傾向にあるため、確定後に動いたのでは間に合わないおそれがあります。
Q5. 帰化すると元の国籍はどうなりますか。
国籍法5条1項5号は、国籍を有しないか、日本国籍の取得によって元の国籍を失うことを条件としています。原則として元の国籍を失うことを前提に、永住許可と比べて判断してください。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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