永住許可とは|要件と、配偶者が永住者になると在留特別許可がどう変わるかを弁護士が解説
2026/10/11
永住許可とは、在留資格を変更しようとする外国人が「永住者」の在留資格への変更を申請し、法務大臣が、素行や生計の要件に適合し、その永住が日本国の利益に合すると認めたときに与える許可をいいます(入管法22条)。夫(妻)が刑事事件を起こし、退去強制の手続が見えてきた家庭では、もう一方の配偶者が永住許可を受けておくことが、在留特別許可の判断の出発点を変えることになります。
本記事の要点
- 永住許可の法律上の要件は、素行善良、独立生計、日本国の利益に合することの3つです(入管法22条2項)。
- 永住許可ガイドラインは、原則として引き続き10年以上の在留、うち5年以上の就労資格又は居住資格での在留を目安としています。
- 配偶者が永住者になると、本人の婚姻は在留特別許可ガイドラインの「特に考慮する積極要素」(第2の2(2)ウ)に当たり得ます。
- 刑事判決による退去強制事由は確定で生じるため、確定までの期間に配偶者の永住申請を進めることが大切です。
- 夫(妻)の刑事事件が配偶者の永住審査にどう影響するかは一律に言えないため、弁護士と相談しながら進めます。
永住許可とは何ですか。
永住許可は、在留期間の制限なく日本で暮らせる「永住者」の在留資格を得るための許可です。他の在留資格からの変更ですが、通常の在留資格変更とは別に、入管法22条の手続によります。
「法務大臣は、その者が次の各号のいずれにも適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。」(入管法22条2項)
各号とは、「素行が善良であること。」(1号)と「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。」(2号)です。永住者は入管法別表第二の在留資格であり、在留特別許可の判断ではこの点が大きな意味を持ちます。
永住許可の要件は何ですか。
法律上の要件は3つです。このうち日本国の利益に合することについて、永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)が具体的な目安を示しています。
| 要件 | 根拠と主な内容 |
|---|---|
| 素行善良 | 入管法22条2項1号。日本人・永住者・特別永住者の配偶者又は子は、適合することを要しない(同項ただし書) |
| 独立生計 | 同項2号。資産又は技能の要件で、ただし書の扱いは1号と同じ |
| 日本国の利益に合すること | 同項柱書。ガイドラインの目安として、原則として引き続き10年以上在留し、うち5年以上は就労資格(技能実習・特定技能1号を除く)又は居住資格で在留していること。罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと。納税、公的年金・公的医療保険料の納付、入管法上の届出などの公的義務を適正に果たしていること |
公的義務について、ガイドラインは「当初の納税(納付)期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されます。」としています。後から納めればよいというものではない点に注意が必要です。原則10年の特例については永住許可の「原則10年」と特例とはで説明しています。
配偶者が永住者になると、在留特別許可の判断はどう変わりますか。
本人の婚姻が、在留特別許可に係るガイドラインの「特に考慮する積極要素」に当たり得るようになります。配偶者が別表第一の在留資格のままでは、婚姻はこの要素に挙げられていません。
「当該外国人が、入管法別表第二に掲げる在留資格で在留している者と法的に婚姻している場合(退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること」(ガイドライン第2の2(2)ウ)
公表事例にも、その差は表れています。
| 公表事例 | 本人の刑事処分 | 配偶者 | 結論 |
|---|---|---|---|
| 令和7年分(2025年)・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第1事例 | 入管法違反(不法残留)で執行猶予付き判決 | 永住者 | 許可(永住者の配偶者等・1年) |
| 令和6年分(6月9日まで)・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第3事例 | 詐欺・電子計算機使用詐欺等で執行猶予付き判決 | 技術・人文知識・国際業務 | 不許可 |
罪名も事情も異なるため単純な比較はできませんが、当事務所が平成26年分から令和7年分までの公表事例を原典で精査したところ、配偶者が別表第一の在留資格で本人に刑事処分(執行猶予付き判決を含みます)がある事例は8件あり、すべて不許可でした。
配偶者が永住者なら、在留特別許可は認められますか。
認められるとは限りません。ガイドライン第3は、特に考慮する積極要素が存在するからといって在留特別許可がされるとは限らない旨を明記しており、積極要素と消極要素を総合して判断されます。
実際に、令和4年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第1事例は、配偶者が永住者で刑事処分もない事案でしたが、職員による発覚、婚姻期間の短さなどから不許可とされています。配偶者の永住は出発点を変えるものであり、それだけで結論が決まるわけではありません。婚姻が「安定かつ成熟」していることを、同居、家計の共同、子の監護などの具体的な事実で示す準備も欠かせません。
配偶者の永住申請は、いつ始めるべきですか。
夫(妻)が逮捕・起訴された段階で、すぐに検討を始めるべきです。刑事判決を理由とする退去強制事由は判決の確定によって生じ、捜査・公判に適切に対応し上訴の権利も行使すれば、確定までに数年の時間が生まれることがあります。
永住許可の審査は長期化する傾向にあり、判決が確定してから申請したのでは間に合わないおそれがあります。まず配偶者の在留年数、就労資格での在留年数、納税や年金・保険料の納付状況を確認し、要件を満たしているか、満たすのはいつかを見極めます。全体の進め方は在留特別許可と配偶者の在留資格で説明しています。
夫(妻)が刑事事件の被告人でも、配偶者は永住申請できますか。
永住許可の要件は申請者本人について審査されるため、申請すること自体は可能です。ただし、家族の状況も含めて確認されることがあるため、影響の有無を一律に言うことはできません。
ガイドラインの「罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと。」は申請者本人についての要件です。他方、独立生計の要件では世帯の生活状況が見られることがあり、夫(妻)の身柄拘束で収入が途絶えた場合の家計の説明が必要になることもあります。申請の時期や説明の仕方は、刑事事件の見通しと合わせて弁護士と相談しながら決めるのが安全です。
永住と帰化は、どちらを目指すべきですか。
どちらでも構いません。配偶者が永住者になれば第2の2(2)ウに、帰化して日本人になれば第2の2(1)ウに当たり得ます。2026年4月から帰化も運用上原則10年以上の在留が求められるようになったため、配偶者の経歴に応じて早く到達できる方を選びます。
永住許可なら国籍を変える必要がなく、配偶者本人の負担は帰化より小さいといえます。帰化については普通帰化とはをご覧ください。当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの時間を使って配偶者の在留上の地位を整え、在留特別許可を得た実績があります。結果は事案によって異なりますが、早い段階でご相談ください。
よくある質問
Q1. 永住許可を受けるには、何年日本にいる必要がありますか。
永住許可ガイドラインは、原則として引き続き10年以上の在留、うち5年以上は就労資格又は居住資格での在留を目安としています。日本人・永住者・特別永住者の配偶者や定住者には特例があります。
Q2. 配偶者が永住者になれば、夫(妻)の在留特別許可に有利ですか。
永住者との婚姻は、在留特別許可ガイドライン第2の2(2)ウの特に考慮する積極要素に当たり得ます。ただし婚姻の安定・成熟が求められ、消極要素との総合判断ですので、許可が約束されるわけではありません。
Q3. 夫が起訴されています。妻の永住申請は取り下げるべきですか。
一律には言えません。要件は申請者本人について審査されますが、家族の状況も確認されることがあります。刑事事件の見通しと合わせて、弁護士と相談して判断してください。
Q4. 税金を後から納めれば、永住の審査で問題になりませんか。
ガイドラインは、当初の納税(納付)期間内に履行されていない場合は原則として消極的に評価されるとしています。期限内の納付を続けることが大切です。
Q5. 技能実習や特定技能1号の期間は、就労資格5年に数えられますか。
永住許可ガイドラインでは、就労資格から技能実習と特定技能1号が除かれています。配偶者の在留歴にこれらの期間がある場合は、5年に届く時期を計算し直す必要があります。
シリーズの関連記事
- 【柱記事】在留特別許可は配偶者の在留資格で分かれる
- シリーズ総索引(全記事一覧)
- 永住許可の「原則10年」と特例とは|配偶者・定住者の要件と在留特別許可への備え
- 在留特別許可の公表事例とは|入管庁が毎年出す許可・不許可事例の読み方を弁護士が解説
- 在留期間の特例期間とは|刑事事件中に在留期限が来たときの更新申請と2か月を弁護士が解説
本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119