舟渡国際法律事務所

上告とは|最高裁に上告できる場合と上告受理申立ての使い分け(民事・刑事の上告理由と外国人の留意点)

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上告とは|最高裁に上告できる場合と上告受理申立ての使い分け(民事・刑事の上告理由と外国人の留意点)

上告とは|最高裁に上告できる場合と上告受理申立ての使い分け(民事・刑事の上告理由と外国人の留意点)

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

上告とは、控訴審(第二審)の判決に不服がある当事者が、最高裁判所などの上告裁判所に判決の破棄を求める不服申立てをいいます。控訴と違って理由が法律で限定されており、民事では上告(民訴法312条)と上告受理申立て(民訴法318条)を使い分け、刑事では憲法違反・判例違反(刑訴法405条)を主張しつつ職権破棄(刑訴法411条)を求めるのが実務です。

この記事の要点

  • 民事の上告期間は控訴と同じく判決書送達から2週間(民訴法313条・285条)、刑事の上告期間は14日(刑訴法414条・373条)です。
  • 民事の上告理由は憲法違反と絶対的上告理由(民訴法312条)に限られ、判例違反や法令解釈の重要事項は上告受理申立て(民訴法318条)で主張します。
  • 刑事の上告理由は憲法違反と判例違反(刑訴法405条)ですが、著しい量刑不当や重大な事実誤認は職権破棄事由(刑訴法411条)として主張します。
  • 上告中も判決は確定しないため、刑事判決の確定を前提とする退去強制事由(入管法24条4号リなど)は上告審の係属中は該当しません。

こんな場面で問題になります

  • 中国籍の被告人が控訴審でも実刑判決を維持され、量刑が重すぎると考えているが、上告の理由になるのか分からない。
  • 在留資格に関わる刑事判決について、憲法上の権利や通訳の保障の侵害を争いたい。
  • 中国系企業が民事の控訴審で敗訴し、契約の解釈について判例と異なる判断がされたと考えている。
  • 入管の処分を争った行政訴訟で高裁が請求を認めず、法令解釈の問題として最高裁の判断を求めたい。

上告は控訴と何が違いますか

控訴は事実認定も含めて判決の誤り全般を争えるのに対し、上告は法律問題の審査に限られ、理由が法律で定められた事由に限定されています。

最高裁判所は法律審であり、控訴審で確定した事実を前提に、憲法や法令の解釈適用に誤りがないかを審査します。このため、控訴審の事実認定が不当だと述べるだけでは、法定の上告理由に当たらないとして排斥されます。上告を成功させるには、事実認定の問題を、憲法上の権利の侵害、判例との抵触、法令解釈の重要な問題という法律問題の形に組み立て直すことが必要で、これが上告審の弁護の核心です。なお、上告を提起しても判決は確定せず、刑の執行や強制執行は原則として始まりません。

区分手続理由根拠
民事上告憲法の解釈の誤りその他憲法違反、法律に従って判決裁判所を構成しなかった等の絶対的上告理由民訴法312条
民事上告受理申立て最高裁判例と相反する判断、法令の解釈に関する重要な事項を含む場合(最高裁が受理を決定)民訴法318条
刑事上告憲法違反・憲法解釈の誤り、最高裁判例(なければ高裁判例等)と相反する判断刑訴法405条
刑事職権破棄の申出法令違反、著しい量刑不当、重大な事実誤認、再審事由、刑の廃止・変更・大赦で、破棄しなければ著しく正義に反するとき刑訴法411条
民事・刑事期間民事は判決書送達から2週間、刑事は14日民訴法313条・285条、刑訴法414条・373条

民事の上告と上告受理申立てはどう使い分けますか

憲法違反や絶対的上告理由があるときは上告(民訴法312条)、判例違反や法令解釈の重要事項を主張するときは上告受理申立て(民訴法318条)を使い、実務では両方を同時に提起することが多いです。

民訴法312条の上告理由は、憲法違反と、判決裁判所の構成の違法、代理権の欠缺、理由不備・理由齟齬といった絶対的上告理由に限られます。一方、判決が最高裁判例と相反する判断をしている場合や、法令の解釈に関する重要な事項を含む場合は上告受理の申立てをし、最高裁が受理を決定したときに上告があったものとみなされます(民訴法318条)。両者の境界が明確でない事件が多いため、上告状兼上告受理申立書として両方を提起し、それぞれの理由書を提出します。理由書の提出期間は規則で定められ、記録受付通知を基準に計算されるため、期限管理は弁護士に委ねることが重要です。法定の事由に当たらないことが明らかな場合、最高裁は口頭弁論を開かずに上告を棄却でき(民訴法319条)、上告受理申立てについては不受理の決定がされます。

刑事の上告理由はどのように組み立てますか

刑訴法405条の憲法違反・判例違反を柱に据えたうえで、量刑不当や事実誤認は、破棄しなければ著しく正義に反する職権破棄事由(刑訴法411条)として主張します。

刑事の上告理由は、憲法違反・憲法解釈の誤りと、最高裁判例(ない場合は大審院・高裁の判例)に相反する判断の二つです(刑訴法405条)。しかし実際の上告趣意書では、量刑が著しく不当、重大な事実誤認がある、法令違反があるという主張が中心になることが多く、これらは405条の理由ではないため、最高裁が職権で原判決を破棄できる事由(刑訴法411条)として構成します。最高裁はこうした主張について411条を適用すべきものとは認められないとして棄却するのが通常ですが、量刑が著しく不当な場合や事実認定に重大な誤りがある場合に破棄される例もあります。外国人の事件では、通訳の不備による防御権の侵害や手続の告知の欠如などを憲法31条・37条の問題として構成する余地があります。上告趣意書の提出期限は最高裁が指定し、期限後の提出は原則として受け付けられません。

上告が認められるとどうなりますか

上告に理由があれば、上告裁判所は原判決を破棄し、自ら判決するか、事件を控訴審に差し戻します。

民事では、上告に理由があるときは原判決を破棄し、事件を原裁判所に差し戻すか、自ら判決します(民訴法325条・326条)。差戻しを受けた裁判所は、最高裁の判断に拘束されて審理をやり直します。刑事でも、原判決を破棄したうえで差戻し・移送するか、自判します(刑訴法413条)。上告が棄却されると判決は確定し、刑事では刑の執行が始まり、民事では強制執行が可能になります。刑事の上告審でも被告人の身柄拘束は続き、保釈の請求は上告審の裁判所に対して行います。

行政訴訟や入管事件でも上告できますか

できます。入管の処分の取消訴訟などの行政訴訟は民事訴訟法の手続によるため、上告(民訴法312条)と上告受理申立て(民訴法318条)の両方を利用できます。

退去強制令書や在留資格に関する処分の取消訴訟(行政事件訴訟法3条2項)は、行政事件訴訟法に特別の定めがない限り民事訴訟の例によるため、控訴審判決に対しては民事と同じ上告・上告受理申立てが可能です。入管法の解釈、裁量権の範囲、比例原則や平等原則の適用などは法令解釈の重要事項として上告受理申立ての理由になり得ますし、憲法上の権利に関わる主張は上告理由になります。当事務所は外国人の行政事件の上告審にも取り組んでおり、行政事件の取扱いは複数の学術誌に掲載され研究の対象となっています。

中国籍の方に特有の留意点

  • 在留資格との関係:刑事判決は上告審の係属中は確定しないため、1年を超える拘禁刑の実刑(入管法24条4号リ)や別表第一の在留資格者の拘禁刑(同4号の2)を理由とする退去強制手続は、上告棄却により判決が確定した後に動き出します。
  • 上告審と入管手続の連動:上告棄却の決定は突然届くことがあり、確定と同時に刑の執行や入管の手続が始まります。上告中に在留特別許可(入管法50条)に向けた準備や家族の生活の整理を並行して進める必要があります。
  • 言語:上告理由書・上告趣意書は日本語で作成し(裁判所法74条)、本人が内容を確認するには中国語での説明が必要です。中国語の資料を添付するときは訳文を付けます(民訴規則138条)。
  • 帰国との関係:民事で上告中に帰国しても、代理人がいれば手続は続きます。刑事で保釈中の被告人は、裁判所の許可なく出国できません。

弁護士に相談すべき場面

  • 控訴審の判決を受け、最高裁で争えるかどうか判断したいとき。
  • 上告と上告受理申立てのどちらを出すべきか、理由書に何を書くべきか分からないとき。
  • 控訴審までの弁護士とは別の弁護士に、上告審の記録の精査と理由書の作成を依頼したいとき。
  • 入管の処分を争う行政訴訟で高裁の判断に不服があるとき。
  • 上告審の進行と並行して、在留資格や家族の生活への影響に備えたいとき。

舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、上告審では記録を精査して法律問題として争点を再構成します。刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があり、行政事件の取扱いは複数の学術誌に掲載され研究の対象となっています。

よくある質問

量刑が重すぎるという理由だけで上告できますか

刑訴法405条の上告理由には当たりませんが、刑の量定が著しく不当で破棄しなければ著しく正義に反する場合は職権破棄事由(刑訴法411条)として主張できます。認められる例は多くないため、記録に基づいた具体的な主張が必要です。

上告と上告受理申立てを両方出せますか

出せます。民事の実務では、憲法違反等を理由とする上告(民訴法312条)と、判例違反・法令解釈の重要事項を理由とする上告受理申立て(民訴法318条)を同時に提起することが一般的です。

上告中は判決が確定しないのですか

確定しません。刑事では刑の執行は始まらず、退去強制事由の該当も判決確定後の問題になります。上告が棄却されると確定し、その時点から手続が進みます。

上告審では法廷に行く必要がありますか

上告審は書面審理が中心で、口頭弁論が開かれることは例外的です。本人が出頭する機会はほとんどなく、弁護士が理由書を提出して進めます。

入管の裁決を争う裁判でも最高裁に上告できますか

できます。行政訴訟は民事訴訟の例によるため、上告と上告受理申立ての両方を利用でき、入管法の解釈や裁量の範囲は法令解釈の重要事項として主張します。

根拠条文・出典

  • 民事訴訟法285条・313条(上告期間)、312条(上告の理由)、318条(上告受理の申立て)、319条(口頭弁論を経ない上告の棄却)、325条・326条(破棄差戻し・破棄自判)
  • 刑事訴訟法373条・414条(上告の提起期間)、405条(上告の理由)、411条(職権による原判決の破棄)、413条(破棄差戻し・移送・自判)
  • 行政事件訴訟法3条2項(取消訴訟)、7条(民事訴訟の例による)
  • 裁判所法74条(裁判所では日本語を用いる)、民事訴訟規則138条(訳文の添付)
  • 日本国憲法31条(法定手続の保障)、37条(刑事被告人の権利)
  • 出入国管理及び難民認定法24条4号リ・4号の2(退去強制事由)、50条(在留特別許可)

関連する解説

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