配偶者の帰化申請のタイミング|2026年4月からの原則10年と刑事事件を弁護士が解説
2026/10/11
配偶者の帰化申請は、帰化の条件を満たした時点で、夫(妻)の刑事判決が確定するより前に出しておくのが基本です。配偶者が日本人になれば、婚姻は在留特別許可に係るガイドラインの「特に考慮する積極要素」に当たるからです。
ただし、2026年4月1日から帰化の審査は厳格化され、運用上、原則として10年以上の在留が求められるようになりました。法律の「五年」だけを見て計画を立てると、時期を見誤ります。
本記事の要点
- 配偶者が帰化して日本人になれば、婚姻はガイドライン第2の2(1)ウの「特に考慮する積極要素」に当たります。
- 国籍法5条1項1号の住所要件は「引き続き五年以上」ですが、2026年4月1日から運用上、原則10年以上の在留が必要になりました。
- 簡易帰化(国籍法7条)は日本国民の配偶者のための制度で、外国人夫婦の一方を日本人にする手段にはなりません。
- 帰化の審査は長期化する傾向にあり、税金や社会保険料の納付状況も確認されるため、刑事事件の初動から準備を始める必要があります。
配偶者が帰化すると、在留特別許可の評価はどう変わりますか。
夫(妻)にとって、日本人との婚姻としてガイドライン第2の2(1)ウの「特に考慮する積極要素」に当たるようになります。配偶者が別表第一の在留資格のままでは、この要素には当たりません。
「当該外国人が、日本人又は特別永住者と法的に婚姻している場合(退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって、夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助しており、かつ、夫婦の間に子がいるなど婚姻が安定かつ成熟していること」(在留特別許可に係るガイドライン第2の2(1)ウ)
令和7年分(2025年)・配偶者が日本人の場合・ただし書該当許可第1事例は、窃盗により懲役1年2月(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)の実刑判決を受けながら、婚姻約33年4月の日本人配偶者がいる事案で、「日本人の配偶者等(1年)」として許可されました。他方、当事務所が平成26年分から令和7年分までの公表事例を原典で精査したところ、配偶者が別表第一の在留資格で、本人に刑事処分(執行猶予を含みます)がある事例は8件あり、すべて不許可でした。
もっとも、配偶者が日本人であれば足りるわけではありません。同じ令和7年分の不許可第3事例は、傷害で懲役5年の実刑判決を受け、配偶者に婚姻継続の意思がない事案でした。
帰化には、どのような条件がありますか。
国籍法5条1項が定める住所、能力、素行、生計、国籍などの条件をすべて備える必要があります。許可するのは法務大臣です(国籍法4条2項)。
| 条件 | 国籍法の規定 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 住所 | 「引き続き五年以上日本に住所を有すること。」(5条1項1号) | 2026年4月から運用上は原則10年以上 |
| 能力 | 18歳以上で本国法によって行為能力を有すること(同項2号) | 年齢 |
| 素行 | 「素行が善良であること。」(同項3号) | 配偶者本人の処罰歴、納税状況 |
| 生計 | 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営めること(同項4号) | 夫(妻)の収入が途絶えた場合の家計 |
| 国籍 | 国籍を有せず、又は日本国籍の取得によって元の国籍を失うこと(同項5号) | 元の国籍を失うことへの覚悟 |
4号の生計は、本人だけでなく「生計を一にする配偶者その他の親族」の資産や技能も含めて見る規定です。夫(妻)が逮捕されて収入が途絶えた場合、家計の見通しをどう示すかを考えておく必要があります。普通帰化の全体像は普通帰化とはをご覧ください。
2026年4月から、帰化の審査は何が変わりましたか。
法律の条文は変わっていませんが、審査の運用として、原則10年以上の在留が求められるようになり、税金や社会保険料の納付状況を確認する期間も延びました。
「本年4月1日から、帰化の審査において、「日本社会に融和していること」の要件につき、原則として10年以上在留し、日本社会に融和していることを必要とするとともに、素行の善良性・生計条件につき、税金や社会保険料の納付状況を確認する期間を延ばす旨の厳格化を実施します。」(法務大臣閣議後記者会見の概要、令和8年3月27日)
これにより、在留5年を過ぎたからすぐ帰化できる、という見通しは成り立たなくなりました。永住許可も原則10年の在留が目安ですから、配偶者にとって帰化と永住のどちらが早く届くかを、在留歴に即して比べる必要があります。
簡易帰化を使うことはできませんか。
外国人同士の夫婦では使えません。国籍法7条の簡易帰化は、日本国民の配偶者である外国人のための制度だからです。
「日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。」(国籍法7条)
夫も妻も外国籍である夫婦の場合、配偶者は国籍法5条の普通帰化によるしかありません。条件の違いは簡易帰化とはで説明しています。
配偶者は、いつ帰化を申請すればよいですか。
条件を満たしたらすぐに、できれば夫(妻)が逮捕・起訴された段階で申請の準備を始めます。判決が確定してからでは、多くの場合間に合いません。
刑事判決を理由とする退去強制事由は判決の確定で生じ、控訴・上告を経ると確定まで数年かかることがあります。上訴は被告人の正当な権利で、被告人だけが控訴した事件では原判決より重い刑を言い渡すことはできません(刑事訴訟法402条)。一方、判決が確定して入管の手続に入ると、在留特別許可の判断までの時間は限られます。退去強制令書の発付後の事情変更は、原則として考慮されません(ガイドライン第3(注4))。
帰化の審査も長期化する傾向にあります。申請の準備にも相応の時間がかかります。刑事事件の期間を帰化審査の期間に重ねる、という発想で逆算してください。
夫(妻)の刑事事件は、配偶者の帰化審査に影響しますか。
一概にはいえません。帰化は配偶者本人の条件で審査されますが、生計の条件は世帯で見る規定になっており、家族の状況も含めて確認されることがあります。申請の時期や説明の仕方は、弁護士と相談しながら決めてください。
配偶者本人については、納税や社会保険料を期限どおりに納め続けることが何より重要です。夫(妻)の逮捕で家計が苦しくなった時期に滞納が生じると、確認期間が延びた新しい運用の下では影響が大きくなるおそれがあります。
帰化と永住は、どちらを目指すべきですか。
配偶者の在留歴と条件の充足状況から見て、早く到達できる方を選びます。最低限、永住許可までは進めておきたいところです。
帰化は元の国籍を失うことが条件になります(国籍法5条1項5号)。永住は国籍を保ったまま別表第二の在留資格を得るもので、ガイドライン第2の2(2)ウの対象になります。詳しい比較は配偶者は永住と帰化どちらを目指すべきかをご覧ください。
当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。結論は事案によって異なり、許可をお約束することはできませんが、早く動くほど選べる道は増えます。全体の考え方は在留特別許可と配偶者の在留資格にまとめています。
よくある質問
Q1. 国籍法では5年なのに、なぜ10年必要なのですか。
国籍法5条1項1号の「引き続き五年以上」は変わっていません。2026年4月1日から、審査の運用として原則10年以上の在留が求められるようになったためです。
Q2. 帰化申請中でも、在留特別許可で日本人の配偶者として評価されますか。
ガイドライン第2の2(1)ウは日本人と法的に婚姻している場合を対象にしています。申請中の配偶者はまだ日本人ではないため、許可が出るまでは当たらないと考えておくべきです。
Q3. 夫(妻)も一緒に帰化を申請できますか。
夫(妻)自身も国籍法5条1項の条件を備える必要があり、素行が善良であること(同項3号)も条件です。刑事事件の最中の申請は、弁護士と慎重に検討してください。
Q4. 退去強制令書が出た後に配偶者が帰化しても、意味はありませんか。
退去強制令書の発付後は在留特別許可の申請ができず(入管法50条3項)、その後の事情変更も原則として考慮されません。別の手段を検討することはありますが、令書の前に間に合わせることが大切です。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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