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中国系企業の労務トラブルとは|解雇・残業代・外国人雇用で会社が問われる点を弁護士が解説

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中国系企業の労務トラブルとは|解雇・残業代・外国人雇用で会社が問われる点を弁護士が解説

中国系企業の労務トラブルとは|解雇・残業代・外国人雇用で会社が問われる点を弁護士が解説

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

中国系企業の労務トラブルとは、中国企業の日本法人や中国人経営者の会社で、解雇・残業代・退職・ハラスメント・外国人従業員の在留資格をめぐって従業員との間に生じる紛争をいい、会社側が日本の労働法を中国の感覚で運用していることが原因になる例が目立ちます。

この記事の要点

  • 日本では、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法16条)。本社の指示や業績不振だけでは足りません。
  • 時間外労働には割増賃金の支払義務があり(労働基準法37条)、未払賃金の請求権の消滅時効は当分の間3年です(労働基準法115条・附則143条)。
  • 従業員の側から労働審判を申し立てられると、特別の事情がない限り3回以内の期日で審理が終わります(労働審判法15条2項)。会社の準備期間は短いです。
  • 外国人従業員を在留資格の範囲外の業務に就かせると、会社と経営者が不法就労助長(入管法73条の2)に問われます。
  • 雇用契約書・就業規則・労働条件通知書(労働基準法15条・89条)が中国語の社内慣行と食い違っていると、会社側の主張の根拠がなくなります。

こんな場面で問題になります

  • 本社の方針で日本法人の人員を減らすため、中国人従業員に口頭で辞めるよう告げたところ、解雇の無効と賃金の支払を求める内容証明が届いた。
  • 中国人スタッフが店舗で長時間働いていたが、タイムカードがなく、退職後に残業代を請求された。
  • 技術・人文知識・国際業務の在留資格の社員を、人手不足のため倉庫の仕分け作業に回していたことが入管の調査でわかった。
  • 中国語で行われた上司の叱責が録音され、パワーハラスメントとして損害賠償を求められた。
  • 日本人従業員から、中国本社の就業規則をそのまま訳した規程は日本の法律に反すると指摘された。

日本では従業員を自由に解雇できますか

できません。客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がない解雇は無効で(労働契約法16条)、解雇が無効になると解雇後の賃金もさかのぼって支払うことになります。

中国では労働契約の終了について経済補償金を支払って整理する実務がありますが、日本では、能力不足や業績不振を理由にする場合でも、指導や配置転換などの手段を尽くしたか、人選が合理的か、手続が適切かが厳しく問われます。解雇には解雇予告または予告手当の支払も必要です(労働基準法20条)。期間を定めた契約の途中解雇は、やむを得ない事由がなければできず(労働契約法17条)、更新を繰り返した契約の雇止めも制限されます(同法19条)。従業員に辞めてもらうなら、解雇ではなく、合意による退職を条件を示して協議することが現実的です。退職合意書は日本語と中国語で作り、内容を確認したうえで署名してもらってください。

残業代はどのように計算され、いつまで請求されますか

時間外・休日・深夜労働には割増賃金の支払が必要で(労働基準法37条)、請求権の消滅時効は当分の間3年ですから、退職後に数年分をまとめて請求されることがあります。

残業代の紛争で会社側が最も困るのは、労働時間の記録がないことです。記録がないと、従業員のメモやスマートフォンの位置情報などをもとに労働時間が認定され、会社側がそれを覆すのは容易ではありません。固定残業代(みなし残業代)を払っているつもりでも、基本給と区別して金額と時間数が明示されていなければ、残業代を払ったとは認められません。店長や管理職だから残業代は不要という扱いも、労働基準法上の管理監督者(同法41条)に当たるかは職務の実態で判断され、名称だけでは認められません。時間外労働をさせるには労使協定(同法36条)の締結と届出も必要です。

トラブル根拠条文会社側が問われる点準備しておく資料
解雇の無効労働契約法16条・17条・19条、労働基準法20条合理的理由・相当性・手続指導記録、評価資料、解雇理由証明書
残業代の未払労働基準法37条・36条・41条・115条労働時間の記録、固定残業代の明示出退勤記録、賃金規程、労働条件通知書
ハラスメント労働施策総合推進法30条の2、民法709条・715条防止措置・事後対応相談窓口の記録、調査結果
外国人の在留資格入管法19条・73条の2、労働施策総合推進法28条業務内容と在留資格の整合在留カードの写し、業務内容の記録、雇用状況届出
労働審判労働審判法15条2項3回以内の期日で終結答弁書と証拠を第1回期日前に

外国人従業員の雇用で会社が問われる点は何ですか

在留資格の範囲内の業務に就かせること、在留期間の管理、外国人雇用状況の届出が会社の責任で、範囲外の就労は不法就労助長として会社と経営者が処罰されます。

技術・人文知識・国際業務の在留資格は、通訳・翻訳・貿易事務・設計・開発などの業務を前提とし、店舗の接客や工場・倉庫の単純作業を主にさせることはできません。留学生のアルバイトには資格外活動の許可と時間の制限があり(入管法19条)、これを超えて働かせることも不法就労助長(同法73条の2)になります。在留期間が切れた従業員を働かせれば同様です。会社は雇入れと離職のときに外国人雇用状況の届出をしなければならず(労働施策総合推進法28条)、在留カードを確認しないまま雇った場合、知らなかったという弁解は通りません。技能実習や特定技能で受け入れている場合は、それぞれの制度の計画や支援の義務が加わります。

労働審判や労働基準監督署の調査にはどう対応しますか

労働審判は3回以内の期日で終わるため、申立書が届いたらすぐに証拠を整理して答弁書を出し、労基署の調査には記録を示して誠実に対応することが必要です。

従業員が労働審判を申し立てると、裁判所から呼出状と申立書が会社に届き、第1回期日までに答弁書と証拠を提出します。特別の事情がない限り3回以内の期日で審理が終わり(労働審判法15条2項)、多くは第1回期日で心証が固まりますので、最初の答弁書に会社の主張と証拠を出し切ることが重要です。労働基準監督署は、従業員の申告(労働基準法104条)を受けて立入調査を行い、賃金台帳や出勤簿の提出を求めます。資料を出さない、虚偽の説明をするといった対応は、是正勧告にとどまらず刑事事件として送検される原因になります。中国語で社内のやり取りをしている会社では、調査に備えて記録の日本語訳を準備しておく必要があります。

雇用契約書と就業規則はどう整えればよいですか

労働条件は書面で明示し(労働基準法15条)、就業規則は日本法に合わせて作成して届け出(同法89条)、中国語の訳文を添えて従業員に周知することが基本です。

中国系企業で多いのは、中国本社の規程を翻訳してそのまま使っている、あるいは雇用契約書が中国語だけで日本法上の必要事項を欠いているという状態です。賃金・労働時間・休日・退職に関する事項は書面で明示しなければならず、就業規則は従業員に周知されていなければ効力を主張できません。従業員に不利益な方向で規程を変えるには、変更の合理性と周知が必要です(労働契約法10条)。試用期間中の本採用拒否も自由ではなく、解雇に準じて理由が問われます。日本語の正本に中国語の訳文を付け、どちらが優先するかを明記しておくと、従業員との認識の食い違いを減らせます。

ハラスメントの申告を受けたら会社は何をすべきですか

相談窓口で事実関係を調査し、行為者への措置と再発防止を行う義務があり(労働施策総合推進法30条の2)、放置すると会社も損害賠償責任を負います。

中国語での強い口調の指導や、本社の上司からの叱責が、日本ではパワーハラスメントと評価されることがあります。会社には防止のための体制整備と、申告があったときの調査・対応の義務があり、対応を怠ると行為者の不法行為責任(民法709条)に加えて、会社の使用者責任(同法715条)や安全配慮義務違反が問われます。申告を理由に申告者を不利益に扱うことは禁じられています。録音やチャットの記録が証拠として出されることが多く、会社としても事実関係を自ら調査し、記録を残すことが必要です。

中国籍の方に特有の留意点

第一に、経営者の在留資格です。会社が不法就労助長や労働基準法違反で刑事事件になれば、経営・管理の在留資格の更新や永住許可の審査に直接影響し、1年を超える拘禁刑の実刑を受ければ退去強制事由(入管法24条4号リ)にもなります。第二に、従業員側の在留資格です。解雇した中国人従業員は、次の勤務先が見つからなければ在留資格の更新ができなくなるため、紛争が深刻化しやすく、退職の合意では在留への配慮を含めて条件を整理する必要があります。第三に、言語です。労働条件の説明や指導を中国語で行っていた場合、日本語の書面がなければ会社は説明したことを立証できません。第四に、中国本社との関係です。本社の人事方針をそのまま日本に持ち込むと日本法に反することが多く、本社に日本法の制約を説明して方針を調整する役割を日本側の弁護士が担うことになります。

弁護士に相談すべき場面

  • 従業員に辞めてもらう必要があり、解雇か合意退職かを含めて進め方を決めたいとき。
  • 残業代や解雇無効を主張する内容証明や労働審判の申立書が届いたとき。
  • 外国人従業員の業務内容が在留資格の範囲に収まっているか確認したいとき、または入管・警察の調査を受けたとき。
  • 労働基準監督署の立入調査や是正勧告を受けたとき。
  • 中国本社の規程を日本法人に導入する前に、日本法との整合を確認したいとき。会社側の労務対応と、経営者・従業員の在留資格の問題を一体で扱い、不法就労助長などの刑事事件に発展した場合は、外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針で対応します(立会いが認められることは現状ほとんどありません)。刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があります。

    よくある質問

    中国本社の指示で日本法人の従業員を解雇することはできますか

    本社の指示だけでは解雇の合理的理由になりません(労働契約法16条)。人員削減が必要な場合でも、必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、手続の相当性が問われます。合意退職を協議する方が現実的です。

    残業代は何年分さかのぼって請求されますか

    賃金請求権の消滅時効は当分の間3年です(労働基準法115条・附則143条)。退職後に3年分をまとめて請求されることがあります。

    労働審判の申立書が届きました。期日まで時間がありません

    労働審判は3回以内の期日で終わり、第1回期日で大枠が決まることが多い手続です。申立書を受け取ったらすぐに弁護士に相談し、答弁書と証拠を第1回期日前に提出してください。

    留学生のアルバイトを週の上限を超えて働かせると会社はどうなりますか

    資格外活動の許可の範囲を超える就労をさせたとして、会社と経営者が不法就労助長(入管法73条の2)に問われるおそれがあります。在留カードと資格外活動許可の有無を確認し、勤務時間を管理してください。

    就業規則は中国語だけでもよいですか

    就業規則は日本法に合わせて作成し、労働基準監督署に届け出て、従業員に周知する必要があります(労働基準法89条)。日本語の正本を作り、中国語の訳文を添えて周知するのが安全です。

    根拠条文・出典

    • 労働契約法16条(解雇権濫用)、17条(有期労働契約の期間中の解雇)、19条(雇止め)、10条(就業規則の変更)
    • 労働基準法15条(労働条件の明示)、20条(解雇の予告)、36条(時間外・休日労働の協定)、37条(割増賃金)、41条(管理監督者)、89条(就業規則)、104条(監督機関に対する申告)、115条・附則143条(賃金請求権の消滅時効)
    • 労働審判法15条2項(3回以内の期日)
    • 労働施策総合推進法28条(外国人雇用状況の届出)、30条の2(パワーハラスメント防止措置)
    • 民法709条(不法行為)、715条(使用者責任)
    • 出入国管理及び難民認定法19条(資格外活動)、73条の2(不法就労助長)、24条4号リ(退去強制事由)、技術・人文知識・国際業務および経営・管理の在留資格

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