舟渡国際法律事務所

中国語での交渉対応とは|通訳・翻訳と弁護士の役割、相手方が中国語話者のときの進め方

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中国語での交渉対応とは|通訳・翻訳と弁護士の役割、相手方が中国語話者のときの進め方

中国語での交渉対応とは|通訳・翻訳と弁護士の役割、相手方が中国語話者のときの進め方

2026/10/11

最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所

中国語での交渉対応とは、依頼者または相手方が中国語話者である紛争について、弁護士が通訳・翻訳を介して意思を正確に確認しながら交渉し、日本法に基づく合意にまとめる活動をいいます。交渉の主体はあくまで弁護士であり、通訳は意思疎通を支える役割、翻訳文は参考訳であって、日本語の原本が合意の内容を決めます。

この記事の要点

  • 報酬を得て他人の紛争を交渉できるのは弁護士だけで(弁護士法72条)、中国語ができる知人や仲介業者に交渉を任せることは非弁行為の問題を生みます。
  • 相手方への受任通知・内容証明・合意書は日本語を原本とし、中国語訳を添えるときは日本語版が優先する旨の言語条項を入れます。
  • 「和解」「谅解」「保证」「违约金」などは日中で意味がずれる用語であり、翻訳の誤りが和解契約(民法695条・696条)の効力をめぐる紛争の原因になります。
  • 相手方が中国にいるときは、準拠法(法の適用に関する通則法7条)・管轄・言語の条項を入れたうえで、日本国内での履行や担保を優先します。
  • 刑事事件の示談では、被害者・加害者のどちらが中国語話者であっても、示談の成否が不起訴や在留資格(入管法24条4号リ・4号の2)に直結します。

こんな場面で問題になります

  • 日本語が十分でない依頼者が、相手方の弁護士から届いた日本語の和解案の意味を理解できないまま回答を迫られている。
  • 相手方が中国人の個人事業主で、日本語の内容証明を送っても読めないと言って応じない。
  • 中国本土の取引先と微信で中国語のやり取りを続けてきたが、合意内容を日本で執行できる形にしたい。
  • 刑事事件の被害者が中国人観光客で、帰国前に示談を成立させたい。
  • 同郷の知人に交渉を任せたところ、本人の知らない条件で合意書が作られていた。

中国語での交渉対応とは何ですか。通訳に交渉を任せるのと何が違いますか

弁護士が交渉の主体となり、通訳は弁護士と依頼者または相手方のあいだの意思疎通を支えるという役割分担が原則です。通訳や中国語ができる知人が報酬を得て交渉を代行すれば、弁護士法72条が禁止する非弁行為の問題が生じます。

中国語圏の方の紛争では、日本語ができる同郷の知人、留学生仲間、ビザ手続を依頼している業者が、相手方との交渉まで引き受けてしまうことがあります。しかし、報酬を得る目的で他人の法律事件について交渉を代理することは弁護士にしか認められておらず(弁護士法72条)、こうした人物が作った合意書は、清算条項や支払条件が不正確で、後から相手方に効力を争われることが少なくありません。弁護士が中国語での交渉対応を行う場合、法的な判断と相手方への主張は弁護士が行い、通訳は依頼者の意思と弁護士の説明を正確に橋渡しします。依頼者は、交渉の各段階で中国語で説明を受け、納得したうえで方針を決められます。

依頼者が中国語話者のとき、弁護士はどのように意思を確認しますか

相談・方針決定・合意の各段階で、専属通訳を介して中国語で説明し、重要な書面には中国語訳を添えて、依頼者が内容を理解したことを確認してから署名してもらいます。

最初の相談では、依頼者が何を望んでいるか(金銭の回収か、関係の修復か、刑事処分の回避か)を中国語で丁寧に聞き取ります。弁護士が相手方に送る受任通知や内容証明は日本語で作成しますが、発送前に依頼者へ中国語訳を示し、請求の内容と金額に誤りがないかを確認します。相手方からの提案が届いたときも同様に翻訳して伝え、受け入れるか、どこまで譲るかを依頼者が判断します。合意書への署名は、依頼者が中国語訳で各条項の意味、特に清算条項と守秘条項、違約金の額を理解したことを確認したうえで行います。微信での連絡は便利ですが、方針の決定や合意の確認は、後から振り返れるよう書面またはメールでも残します。

相手方が中国語話者のとき、通知や交渉はどの言語で行いますか

相手方への書面は日本語を原本とし、相手方の理解を促すために中国語訳を添えることがあります。その場合も、日本語版が正本であり相違があれば日本語版が優先することを書面に明記します。

相手方が日本語を読めないことを理由に受任通知や内容証明を無視することがあります。相手方に内容を正確に理解させることは交渉を進めるうえで依頼者の利益にもなるため、中国語の参考訳を添付して送ることがあります。ただし、中国語訳を正本と誤解されると、翻訳の表現をめぐって争われるおそれがあるため、「本書は日本語で作成され、中国語訳は参考訳である」と明記します。相手方と電話や面談で交渉する際は、弁護士の専属通訳が介在し、相手方の発言を正確に記録します。相手方の発言のうち、債務を認める内容や支払いの約束は、後に証拠となるため、日本語の書面で確認を求めます。

翻訳の誤りはどんなトラブルを生みますか

日中で意味のずれる法律用語を直訳すると、合意の内容そのものが争われます。和解には確定効があるため(民法696条)、署名後に「訳が違った」と主張しても覆すのは容易ではありません。

用語日本法での意味中国語でよく使われる訳注意点
和解・示談互譲により争いをやめる契約(民法695条)。刑事では被害者の宥恕を含む示談書和解、示谈、谅解中国語の「谅解」は刑事の宥恕に近いが、民事の清算を含むとは限らない
宥恕被害者が加害者を許し処罰を望まない意思谅解、原谅、不追究「不追究刑事责任」は日本では被害者が決められないため、「処罰を望まない」の趣旨で訳す
清算条項書面に定める以外に債権債務がないことの確認清算条款、一次性了结「一次性了结」だけでは範囲が曖昧。本件に限るか一切かを明記
保証主債務者が履行しないときに保証人が履行する債務(民法446条)保证、担保中国語の「保证」は単なる「約束する」の意味でも使われるため、法的な保証契約か確認
違約金損害賠償額の予定(民法420条)违约金中国では実損との比較で裁判所が調整する運用が知られており、前提が異なる
期限の利益喪失分けて支払う約束の一回の不履行で残額を一括請求できること丧失期限利益、加速到期直訳では伝わりにくいため、効果を具体的に説明する
金額・通貨円建てが通常万日元、万元「万元」と「万円」の混同、人民元か円かの明示

このほか、日付の表記、個人名の簡体字と日本の漢字の違い、会社名の正式名称など、形式的な部分の誤りも、相手方から本人性や当事者の特定を争われる原因になります。弁護士は、翻訳を単語の置き換えではなく法的効果の対応として確認し、必要なら訳注を付けます。

相手方が中国にいるときの交渉と合意はどうしますか

微信やメールでの交渉自体は可能ですが、合意書には準拠法・管轄・言語の条項を入れ、日本の判決や和解を中国で執行することの実務上の困難を踏まえて、支払いの先履行や担保、日本国内の財産の特定を条件にします。

相手方が中国本土にいる場合、日本からの正式な送達には時間がかかり、裁判をしても相手方の中国国内の財産に対する執行には実務上の困難があります。そのため、交渉段階で、相手方が日本国内に持つ預金・売掛金・不動産を把握し、合意の履行をそれらに結び付けることが現実的です。合意書には、日本法を準拠法とすること(法の適用に関する通則法7条)、日本の裁判所を専属的合意管轄とすること、日本語版を正本とし中国語版は参考訳とすることを定めます。中国側の当事者が中国法を準拠法とすることを求める場合もあり、その場合は中国の弁護士(律師)の意見を得たうえで判断します。合意の成立を示す証拠として、署名済みの書面の交換に加え、微信でのやり取りの保存も重要です。

刑事事件の示談で中国語が必要なときはどうしますか

被害者が中国語話者なら、弁護人が通訳を介して謝罪と賠償の申入れを行い、示談書に中国語訳を添えて宥恕の意味を確認してもらいます。加害者が中国語話者なら、示談の成否が不起訴や在留資格に直結することを本人と家族に中国語で説明し、資金の準備と帰国予定の調整を急ぎます。

被害者が中国人観光客や留学生であるときは、帰国や進学で連絡が取れなくなる前に示談を成立させる必要があります。弁護人は検察官・警察官を通じて被害者の意向を確認し、被害者が承諾した場合に、通訳を介して連絡を取ります。示談書は日本語を原本とし、宥恕条項(処罰を望まない旨)、清算条項、接触禁止条項を中国語訳とともに示し、署名してもらいます。加害者が中国籍の方であれば、拘禁刑(執行猶予付きを含む)になれば別表第一の在留資格者は入管法24条4号の2の退去強制事由に該当し得るため、示談で不起訴または罰金にとどめることが在留を守る手段になります。中国の家族が被害者に直接連絡することは、証拠隠滅や威迫と疑われるため止めてください。

中国籍の方に特有の留意点

  • 交渉の主体:中国語ができる知人や業者に交渉を任せず、弁護士に依頼してください。知人には通訳や連絡の補助をお願いする形にします(弁護士法72条)。
  • 書面の言語:日本語の原本に署名する前に、中国語訳で内容を確認し、日本語版が優先する旨の言語条項があることを理解してください。
  • 連絡手段:微信での連絡は便利ですが、重要な提案や合意は書面・メールでも残します。相手方との微信のやり取りは削除せず保存してください。
  • 準拠法・管轄・執行:相手方が中国にいるときは、日本法・日本の裁判所を定めても執行に困難が残るため、日本国内での履行と担保を優先します。
  • 在留資格との関係:民事の交渉は在留資格に影響しませんが、刑事事件の示談は不起訴・罰金・執行猶予のどれで終わるかを通じて在留に影響します(入管法24条4号リ・4号の2、5条1項4号)。帰国予定や在留期限の更新時期を弁護士に伝えてください。

弁護士に相談すべき場面

  • 相手方や保険会社から日本語の書面が届き、内容を理解できないまま回答や署名を求められているとき。
  • 相手方が中国語話者で、日本語の通知に応じない、または中国語で交渉を求めてくるとき。
  • 中国本土の取引先との紛争で、合意を日本で執行できる形にしたいとき。
  • 刑事事件で被害者または加害者が中国語話者であり、帰国前に示談を成立させたいとき。
  • 知人や業者に交渉を任せた結果、合意内容に納得できないとき。

舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針で(立会いが認められることは現状ほとんどありません)、刑事弁護と入管事件を一体で扱い、刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があります。

よくある質問

日本語ができないので、中国語ができる友人に相手と交渉してもらってもよいですか

報酬を得て交渉を代理することは弁護士法72条で禁止される非弁行為に当たり得ます。無報酬でも、法律知識のないまま合意すると不利な内容になりがちです。交渉は弁護士が行い、友人には通訳や連絡の補助をお願いする形をお勧めします。

相手方に送る内容証明を中国語で書いてもらえますか

原本は日本語で作成します。相手方の理解を促すために中国語の参考訳を添付することはあり、その場合は日本語版が正本である旨を明記します。

中国語の合意書に署名してしまいました。日本語版と内容が違う場合はどうなりますか

言語の優先条項があればそれに従います。なければどちらが真の合意かが争いになり、和解の確定効(民法696条)との関係で簡単には覆せません。早めに弁護士に両方の書面を見せてください。

相手が中国にいて、微信でしか連絡が取れません。合意は有効ですか

微信でのやり取りでも合意は成立し得ますが、証明と執行の問題が残ります。署名済みの合意書を交換し、準拠法・管轄・言語の条項を入れ、日本国内の財産や先払いを条件にすることをお勧めします。

刑事事件の被害者が中国人で、もうすぐ帰国します。示談は間に合いますか

弁護人が検察官・警察官を通じて被害者の意向を確認し、通訳を介して連絡を取れば、帰国前に示談を成立させられることがあります。時間が限られるため、すぐに弁護人を選任してください。

根拠条文・出典

  • 弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
  • 民法695条(和解)、696条(和解の効力)、420条(賠償額の予定)、446条(保証人の責任等)
  • 法の適用に関する通則法7条(当事者による準拠法の選択)
  • 民事訴訟法267条(和解調書等の効力)、275条(訴え提起前の和解)
  • 民事調停法
  • 刑事訴訟法248条(起訴便宜主義)
  • 出入国管理及び難民認定法24条4号リ・4号の2(退去強制事由)、5条1項4号(上陸拒否)

関連する解説

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