逮捕後に早く釈放されるには|勾留請求却下・準抗告・満期前釈放・保釈と弁護士の動き方
2026/10/16
最終更新:2026年10月16日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
逮捕された人が早く釈放されるかどうかは、勾留の判断が出る前の数日間に、弁護士が勾留の理由も必要もないことを資料で示せるかに大きく左右されます。勾留が決まった後も、準抗告、勾留取消し、示談成立による満期前の釈放、起訴後の保釈と、釈放を求める手段は残っています。
この記事の要点
- 警察は逮捕から48時間以内、検察官はその後24時間以内(逮捕から72時間以内)に、身柄を送るか釈放するかを決めます(刑事訴訟法203条1項・205条)。
- 勾留を防ぐには、裁判官の判断前に意見書・身元引受書・住居や勤務の資料を届けることが中心になります。
- 勾留が決まっても準抗告(同法429条1項2号)で争うことができ、認められれば釈放されます。
- 示談が成立したら直ちに検察官へ報告することで、勾留満期を待たずに釈放されることがあります。
- 外国人の事件では、身体拘束の長期化が仕事や在留に響くため、通訳を伴う早期の接見と資料準備が欠かせません。
逮捕後に釈放されるタイミングはいつですか
釈放の機会は、警察の送致前、検察官の勾留請求前、裁判官の勾留判断、準抗告、勾留期間中、処分決定時、起訴後の保釈と、手続の段階ごとに何度もあります。
逮捕されると、警察は逮捕から48時間以内に、事件と身柄を検察官に送致するか、釈放するかを決めます(刑事訴訟法203条1項)。送致を受けた検察官は、受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、裁判官に勾留を請求するか、釈放するかを決めます(同法205条1項・2項)。
勾留請求を受けた裁判官は、住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかがあるか、そのうえで勾留する必要があるかを判断します(同法207条1項・60条1項)。勾留が認められると期間は原則10日で、やむを得ない事由があれば最大10日延長されます(同法208条)。
つまり、逮捕から起訴・不起訴の判断までには長ければ20日を超える身体拘束が続きますが、その途中にも釈放につながる場面がいくつもあります。どの段階で、誰に、何を示すかによって打つ手が変わるため、下の表で整理します。
| 段階 | 釈放の形 | 主な根拠 | 弁護士の主な動き |
|---|---|---|---|
| 送致前(逮捕から48時間以内) | 警察が送致せずに釈放 | 刑事訴訟法203条1項 | 不当な逮捕への抗議、身元引受の申出 |
| 勾留請求前(送致から24時間以内) | 検察官が勾留請求せずに釈放 | 同法205条1項・2項 | 検察官への意見書と資料の提出 |
| 勾留請求却下 | 裁判官が勾留を認めず釈放 | 同法207条1項、60条1項 | 裁判官への意見書、面談の申入れ |
| 準抗告認容 | 勾留の裁判が取り消されて釈放 | 同法429条1項2号 | 準抗告申立書の提出 |
| 勾留取消し | 勾留の理由・必要がなくなり釈放 | 同法87条 | 示談成立など事情の変化を示して請求 |
| 処分保留・不起訴 | 満期前又は満期での釈放 | 同法208条、248条 | 示談成立の報告、不起訴を求める意見書 |
| 起訴後 | 保釈による釈放 | 同法89条・90条 | 保釈請求、身元引受人と保釈金の準備 |
勾留されないために弁護士は何をしますか
検察官が勾留請求をする前、又は裁判官が勾留を判断する前に、勾留の理由も必要もないことを示す意見書と裏付け資料を届けることが中心です。
勾留の判断は逮捕から数日のうちに進み、裁判官の判断は勾留請求があったその日のうちに出ることが多いため、資料は判断の前に届かなければ意味がありません。依頼を受けたら、まず接見して事情を聴き、同時に家族や勤務先と連絡を取って資料を集めます。
意見書では、罪証隠滅のおそれがないこと(証拠はすでに押収されている、関係者に働きかける立場にないなど)、逃亡のおそれがないこと(定まった住居と仕事がある、家族と同居しているなど)を具体的に書きます。あわせて、勾留されれば職を失う、家族の生活が立ち行かなくなるといった不利益の大きさも、勾留の必要性を否定する事情として伝えます。
被害者がいる事件では、示談が成立していれば、あるいは示談交渉が進んでいれば、被害者に働きかけて証拠をゆがめるおそれが小さいことを説明しやすくなります。限られた時間で示談をまとめられた事例もあります(後述のE事例)。
否認事件でも勾留を防ぐ余地はあります。勾留には罪を犯したと疑うに足りる相当な理由が前提として必要なので、証拠が乏しく被疑事実の立証ができていないことを具体的に指摘して、勾留請求の却下を求めることもあります(後述のD事例)。
- 検察官・裁判官あての意見書
- 家族や勤務先の上司による身元引受書
- 住居の資料(賃貸借契約書、住民票など)
- 勤務の資料(在職証明書、給与明細など)
- 示談書、謝罪文、被害弁償の記録
勾留が決まった後でも釈放を求める方法はありますか
あります。勾留の裁判に対しては準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)を申し立てることができ、認められれば勾留が取り消されて釈放されます。
準抗告は、勾留を決めた裁判官とは別の裁判官たちが、勾留の理由と必要性をあらためて審査する手続です。最初の勾留判断で考慮されなかった事情や、勾留決定の後に生じた事情(示談の成立、身元引受人の確保など)も主張できます。勾留延長の決定に対しても準抗告を申し立てることができます。
準抗告では、勾留状に書かれた理由のどこが具体的な証拠に裏付けられていないのかを一つずつ指摘します。抽象的に罪証隠滅のおそれがあるとされている場合には、どの証拠を、誰に対して、どのように隠滅できるというのかを問い、その現実的な可能性がないことを資料で示します。
また、勾留の理由や必要がなくなったときは、勾留取消しを請求できます(同法87条)。勾留されている理由を公開の法廷で明らかにさせる勾留理由開示の手続(憲法34条)を使い、裁判所の判断の根拠を確認することもあります。
勾留満期を待たずに釈放されることはありますか
あります。示談の成立などで勾留を続ける必要がなくなったと検察官が判断すれば、満期前に釈放されることがあります。
勾留期間は上限であり、検察官は期間の途中でも被疑者を釈放できます。被害者のいる事件で示談が成立し、被害者が処罰を望まない意思(宥恕)を示した場合には、その示談書を直ちに検察官に届け、釈放と不起訴を求める意見を伝えます。報告が遅れれば、その分だけ身体拘束が続くことになります。
示談書には、謝罪と解決金の支払、宥恕と不起訴を求める旨のほか、事件の性質に応じて守秘義務や接触禁止の条項を入れます。被害者にとっても、身柄が拘束されている間に関係を清算し、今後接触されないことを約束させることには利益があるため、その点を丁寧に説明して交渉します(後述のH事例)。
示談が整わない場合や被害者のいない事件でも、捜査の進み具合や証拠の状況を踏まえて、これ以上の勾留は不要であると意見を述べます。満期までに起訴・不起訴が決まらず、処分を保留したまま釈放されて在宅で捜査が続くこともあります。
釈放されるのは何時ごろで、迎えや身元引受人は必要ですか
釈放の時刻は事件や手続の進み方によって異なり、決まった時間はありません。家族による迎えと身元引受人の確保を、あらかじめ弁護士と準備しておくと安心です。
勾留請求が却下された場合でも、裁判所の判断が出た後、検察庁や警察署で手続をして所持品を返してもらってから釈放されるため、判断から実際に外に出るまでには一定の時間がかかります。釈放の場所も、裁判所、検察庁、警察署など場合によって異なります。弁護士は判断が出た時点で家族に連絡し、迎えの段取りを伝えます。
身元引受人は、釈放の法律上の要件ではありません。ただ、勾留や保釈の判断では、本人の生活を監督し、呼出しに応じさせる人がいることが有利な事情として扱われます。家族のほか、勤務先の上司などが身元引受人になることもあります。身元引受書には、本人を出頭させること、被害者や関係者に接触させないことなどを約束する内容を書きます。
釈放されても事件が終わったわけではありません。多くの場合は在宅のまま捜査が続くため、呼出しには誠実に応じ、取調べへの対応を弁護士と打ち合わせておくことが、その後の不起訴に向けた活動につながります。
接見等禁止が付いたときはどうすればよいですか
接見等禁止が付いても弁護人は自由に接見でき(刑事訴訟法39条1項)、禁止の決定や勾留そのものを準抗告で争うことができます。
接見等禁止が付くと、家族や友人であっても面会や手紙のやり取りができなくなります。共犯者がいる事件や否認事件で付されることが多く、本人にも家族にも精神的な負担が大きい処分です。
この場合でも、弁護人は立会人なしで接見でき、事件の内容に関わらない家族の近況などを伝えることができます。そのうえで、接見等禁止の全部又は一部(たとえば家族との面会だけ)の解除を求めて、準抗告や解除の申立てを行います。
接見等禁止の解除にとどまらず、準抗告によって身柄そのものの解放を求めることもあります。税務調査中の公務執行妨害で逮捕された税理士について、準抗告で身柄を解放した事例があります(後述のK事例)。
外国人が逮捕された場合、釈放と在留はどう関係しますか
身体拘束が長引くほど仕事や在留手続への影響が大きくなるため、外国人の事件では早い段階で釈放を求める必要性が特に高くなります。
勾留されている間は働くことも在留期間の更新手続を進めることもできず、勤務先を失えば在留の基盤そのものが揺らぎます。最終的な処分によっては在留資格に影響することもあるため、初回の接見で在留への影響を正しく理解してもらい、そのうえで方針を立てます。
外国籍であることだけを理由に逃亡のおそれがあると扱われてはなりません。そのことを裁判官に納得してもらうには、住居、勤務先、日本での家族関係などを示す資料を、日本人の事件以上に具体的にそろえることが役に立ちます。また、母国の習慣や来日直後の生活事情など、捜査機関が知らない事情を説明することで、被疑事実の見方が変わることもあります(後述のD事例)。
当事務所には中国語の専属通訳と中国律師(中国の弁護士資格者)が在籍しており、接見に同行します。全国の警察署へ出張接見しています。外国人の事件では取調べへの弁護人の立会いも積極的に求めています。立会いが認められることは現状ほとんどありませんが、取調べの直前に警察官と協議して牽制したことが、有利な処分につながった例が多くあります。
松村大介弁護士の解決事例
万引きで逮捕、夜中の接見から翌日昼前に勾留請求却下(E事例)
外国籍の依頼者が万引きで逮捕され、検察官が勾留請求をしました。裁判所の判断は昼過ぎに出る可能性がありました。依頼を受けたのは夜中です。その夜のうちに接見し、朝までに被害者との示談交渉を完了させました。午前11時頃に釈放を求める意見書を裁判所に提出し、午前11時30分頃、裁判所が勾留請求を却下して依頼者は釈放されました。その後、不起訴となりました。
暴行の疑いで出頭直後に逮捕、勾留請求却下から不起訴(D事例)
全く身に覚えのない暴行事件で出頭を求められた依頼者が、出頭直後に逮捕されました。証拠は、犯行現場に残された携帯電話番号が依頼者名義と一致することだけでした。来日初期の外国人同士では携帯電話番号を貸し借りする慣習があることを裁判所に伝え、被疑事実の立証ができていないと主張した結果、勾留請求は却下され釈放されました。その後は取調べもなく不起訴となりました。
持続化給付金詐欺の疑い、不当逮捕への抗議で釈放(C事例)
依頼者は、第三者に無理やり申請させられ犯罪の認識はなかったと一貫して主張していました。取調べへの対処法を助言し、任意出頭に応じる姿勢を示していたにもかかわらず、突然逮捕されました。直ちに不当逮捕であると抗議して釈放を実現し、その後の検察の取調べでも一貫した主張を貫いて不起訴となりました。
監禁の疑いで勾留、示談成立の報告で満期前に釈放(H事例)
依頼者と相手方の言い分が食い違い、満期を迎えれば起訴される危険がありました。私選弁護人として受任し、直ちに弁護人選任届を出して接見を重ね、勾留期間内の示談成立を最優先にしました。主張すべき点は主張しつつ、身柄拘束中に関係を清算することが被害者にも利益になると説明し、家族と連絡を取って示談金を準備しました。謝罪と解決金の支払、宥恕と不起訴を求める旨、守秘義務と接触禁止、紛争の原因に今後関与しないことを定めた示談書を取り交わし、直ちに検察官に報告しました。勾留満期を待たずに釈放され、不起訴となりました。
公務執行妨害で逮捕された税理士、準抗告で身柄を解放(K事例)
税務調査中の公務執行妨害で逮捕された税理士について、準抗告を申し立てて身柄を解放しました。押収された携帯電話については還付を求めて最高裁に特別抗告を申し立て、憲法論を展開したところ、係属中に検察官が任意に還付しました。
ほかの解決事例は解決事例の一覧をご覧ください。
こんなときは弁護士に相談を
- 家族が逮捕され、勾留請求の前に釈放に向けて動いてほしいとき
- 任意出頭を求められていて、出頭すれば逮捕されるのではないかと心配なとき
- 勾留が決まってしまい、準抗告で争えるか知りたいとき
- 被害者と示談をして、勾留満期前の釈放と不起訴を目指したいとき
- 接見等禁止が付き、家族が面会も手紙もできないとき
- 外国籍の家族が逮捕され、通訳を伴って接見してほしいとき
よくある質問
勾留されたら、釈放まで何日かかりますか?
勾留は原則10日、延長されると最大でさらに10日です(刑事訴訟法208条)。ただしこれは上限で、準抗告が認められた場合や、示談成立などで検察官が勾留の必要がなくなったと判断した場合には、期間の途中でも釈放されます。
釈放に身元引受人は必要ですか?
法律上の要件ではありません。ただ、勾留や保釈の判断では、本人を監督し呼出しに応じさせる人がいることが有利な事情になります。家族や勤務先の上司に身元引受書を書いてもらい、弁護士が意見書とともに提出するのが一般的です。
逮捕から釈放までの流れを教えてください。
警察が48時間以内に送致するか釈放するかを決め、検察官が24時間以内(逮捕から72時間以内)に勾留を請求するか釈放するかを決めます。勾留請求があると裁判官が勾留するかを判断します。却下されれば釈放され、勾留されても準抗告、勾留取消し、満期前の釈放、起訴後の保釈という機会があります。
早期釈放の条件は何ですか?
勾留の理由(住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ)がないか、勾留の必要がないことです(刑事訴訟法60条1項)。定まった住居と仕事があること、身元引受人がいること、示談が成立していることなどを、資料で具体的に示すことが釈放に近づく方法です。結果は事件ごとに異なり、保証できるものではありません。
家族が逮捕されたら、いつ弁護士に連絡すればよいですか?
できるだけ早く、逮捕を知った時点で連絡してください。勾留の判断は逮捕から数日のうちに出るため、意見書や資料はその前に届ける必要があります。当事務所は電話のほか、微信(WeChat)ID matsumura1119 でも相談を受け付けています。
釈放されたら事件は終わりですか?
終わりではありません。釈放は身体拘束が解かれたことを意味し、多くの場合は在宅で捜査が続きます。起訴されるか不起訴になるかはその後の捜査と検察官の判断によるため、釈放後も取調べへの対応や示談を続けることが大切です。
根拠条文・出典
- 日本国憲法34条(抑留・拘禁の理由の告知、拘禁理由の公開法廷での開示)
- 刑事訴訟法39条1項(弁護人との接見交通)
- 刑事訴訟法60条1項(勾留の理由)
- 刑事訴訟法87条(勾留の取消し)
- 刑事訴訟法89条・90条(保釈)
- 刑事訴訟法203条1項(司法警察員による送致・釈放)
- 刑事訴訟法205条1項・2項(検察官による勾留請求・釈放)
- 刑事訴訟法207条1項(勾留請求を受けた裁判官)
- 刑事訴訟法208条(勾留期間と延長)
- 刑事訴訟法248条(起訴便宜主義)
- 刑事訴訟法429条1項2号(勾留に関する裁判に対する準抗告)
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