離婚後の在留資格とは|日本人の配偶者等から定住者等への変更と在留資格取消しへの備えを弁護士が解説
2026/10/11
最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
離婚後の在留資格とは、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」など配偶者の身分に基づいて在留していた外国人が、離婚によりその身分を失った後に、どの在留資格で日本に残るかという問題をいいます。離婚した日に在留資格が直ちになくなるわけではありませんが、配偶者としての活動を一定期間行わないままでいると在留資格取消し(入管法22条の4)の対象になるため、離婚届を出す前から次の在留資格を準備しておく必要があります。
この記事の要点
- 配偶者の身分に基づく在留資格は離婚で前提を失い、その活動を継続して一定期間行わないで在留していると、正当な理由がない限り在留資格取消しの事由になります(入管法22条の4第1項6号・7号)。
- 離婚は入管への届出事項であり(入管法19条の16)、届出を怠ることも不利に扱われます。
- 日本に残る主な方法は、定住者への在留資格変更(入管法20条、告示外の定住者)と就労資格への変更で、永住者は離婚の影響を受けません。
- 在留資格取消しの前には意見聴取(入管法22条の4第3項)があり、別居や離婚に至った事情や子の養育の実態を主張できます。
- 取消しや変更不許可は争うことができ、取消処分には取消訴訟(行政事件訴訟法14条1項、処分を知った日から6か月以内)と執行停止(同25条)が使えます。
こんな場面で問題になります
- 日本人の夫と離婚することになった中国籍の妻が、日本で働き続けたいが「日本人の配偶者等」の在留期限まで残り少ない。
- 日本人の夫との間に子がいて離婚後は自分が親権者として育てるが、どの在留資格を申請すればよいか分からない。
- 夫の暴力から逃れて別居しているが離婚が成立しておらず、入管から在留資格取消しの意見聴取の通知が届いた。
- 中国籍の夫の「家族滞在」で在留していた妻が離婚し、自分で働ける在留資格に変えたい。
- 離婚調停の途中で在留期限が来るため、更新できるのか、不許可になったらどうなるのかを知りたい。
離婚すると在留資格はすぐになくなりますか
離婚した日に在留資格が失われるわけではなく在留期限までは在留できますが、配偶者としての活動を一定期間行わないでいると在留資格取消しの対象になります。
在留資格は在留期限まで有効で、離婚の翌日から不法滞在になることはありません。しかし入管法22条の4第1項は、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の身分での活動を継続して一定期間行わないで在留している場合(7号)、「家族滞在」など別表第一の在留資格でその活動を継続して一定期間行わないで在留している場合(6号)を取消事由としています。いずれも正当な理由がある場合は除かれます。また、配偶者としての在留資格を持つ人は、離婚や死別を入管に届け出なければなりません(入管法19条の16)。離婚届を出す時期と次の在留資格の申請の時期を合わせて計画することが、離婚後も日本に残るための出発点です。
定住者への変更はどのような場合に認められますか
定住者告示に定めのない「告示外定住」として法務大臣の裁量で判断され、婚姻の実態と期間、日本での生活基盤、生計の見通し、素行、離婚に至った経緯などが総合的に考慮されます。
定住者の在留資格は、法務大臣が特別な理由を考慮して居住を認めるもので、定住者告示に列挙された類型のほか、告示にない事情でも個別に認められることがあります。離婚後の定住者はこの告示外の類型で、実務では、婚姻が形式的なものでなく相当の期間続いていたこと、日本で独立して生計を立てられること、日本語で日常生活を送れること、納税や法令遵守に問題がないこと、離婚の原因が自分だけにあるとはいえないことなどが見られます。数値の基準は公表されておらず総合判断ですので、婚姻生活の実態を示す資料(同居の記録、写真、親族との交流)、収入や日本語能力の資料を体系的にそろえて申請することが重要です。配偶者からの暴力が離婚の原因である場合は、その事情を示す診断書や保護命令の記録が有利に考慮されます。
日本人との間の子を育てる場合はどうなりますか
日本人の実子を親権者として監護・養育している場合は、定住者への変更が認められやすい代表的な類型です。
離婚後に日本国籍の子の親権者となり、日本で実際に監護・養育している外国人の親は、子の利益の観点から定住者への変更が認められる扱いが定着しています。審査では、親権者であること(民法819条)だけでなく、現に子と同居して養育している実態、養育費を含めた生計の見通しが問われます。共同親権を選んだ場合は、どちらが監護者として日常の世話をしているかが重要になります。子を中国の親族に預けて自分だけ日本で働くという形は、養育の実態がないと評価されやすいため注意が必要です。親権者でない親が面会交流のために在留を希望する場合は事案により、別の在留資格も含めて検討します。
就労できる在留資格へ変更することはできますか
学歴や職務内容が要件を満たせば「技術・人文知識・国際業務」など就労資格への変更(入管法20条)が可能ですが、配偶者資格と違って活動の範囲が限定されます。
配偶者の身分に基づく在留資格には就労の制限がありませんが、就労資格では許可された活動しか行えず、それ以外の活動には資格外活動の許可が必要です(入管法19条)。「技術・人文知識・国際業務」は大学等の学歴や実務経験と職務内容の関連性、「経営・管理」は事業の実態と規模、「特定技能」は技能試験と日本語試験の合格が問われます。現在の仕事が単純労働に当たる場合は就労資格への変更は難しく、定住者の可否を先に検討することになります。永住者はこれらの影響を受けませんが、離婚後に永住許可(入管法22条)を申請する場合は、配偶者としての在留歴の扱いが変わる点に注意が必要です。
| 離婚前の在留資格 | 離婚後の主な選択肢 | 根拠 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 日本人の配偶者等 | 定住者(告示外)、就労資格、日本人実子を養育する場合の定住者 | 入管法20条・22条の4第1項7号 | 一定期間活動を行わないと取消対象 |
| 永住者の配偶者等 | 定住者(告示外)、就労資格 | 入管法20条・22条の4第1項7号 | 日本人の配偶者等と同様に扱われる |
| 家族滞在 | 就労資格、留学、定住者(事案による) | 入管法20条・22条の4第1項6号 | 扶養者との関係が切れるため早期の変更が必要 |
| 永住者 | 変更不要 | 入管法22条 | 離婚の影響なし |
| 定住者(告示) | 原則そのまま、更新時に事情を説明 | 入管法21条 | 配偶者として認められた定住者は見直されることがある |
在留資格取消しの手続はどのように進みますか
入管は取消しの前に意見聴取(入管法22条の4第3項)を行い、ここで「正当な理由」や次の在留資格の見通しを主張することが結果を左右します。
在留資格の取消しをしようとするときは、入国審査官が本人から意見を聴取しなければならず、本人は代理人とともに出席し、資料を提出して意見を述べることができます。別居や離婚後に配偶者としての活動を行っていないことには、配偶者の暴力から避難していた、相手が離婚に応じないまま調停や訴訟が係属している、子の養育のため日本にとどまる必要があるといった事情が「正当な理由」として主張できます。取消しが決定されると出国のための期間が指定されますが、取消処分は行政処分として取消訴訟(行政事件訴訟法14条1項、処分を知った日から6か月以内)の対象になり、執行停止(同25条)の申立ても可能です。取消しの通知が届いた段階で弁護士が入り、意見聴取の前に主張と資料を整えておくことが最も効果的です。
離婚調停や訴訟の途中で在留期限が来たらどうなりますか
婚姻が続いている間は「日本人の配偶者等」での更新(入管法21条)を申請できますが、別居の事情と調停・訴訟の係属を資料で示す必要があります。
離婚が成立するまでは法律上の婚姻は続いていますので、在留期間の更新を申請することができます。ただし入管は婚姻の実態を審査するため、別居中であれば、別居に至った事情、調停や訴訟が係属していることを示す書類、離婚後の生活の見通しを添えて説明します。実務では短い在留期間で許可されることや、審査が長引くことがあります。不許可となった場合も、定住者や特定活動への変更を申請する余地があり、争い方は事案に応じて組み立てます。退去強制の手続に入った場合には在留特別許可(入管法50条)の判断で子の養育や婚姻歴が考慮されますが、そこまで至る前に在留資格を確保することが本来の道筋です。
中国籍の方に特有の留意点
- 帰国との関係:定住者や就労資格への変更は日本に在留している間に申請するものです。離婚後に一度帰国してしまうと、改めて来日するための在留資格を一から取り直すことになり、定住者としての申請は難しくなります。
- 婚姻の実態の立証:中国との往来が多い方は、日本での同居期間が短いと婚姻の実態を疑われることがあります。出入国の記録と整合する説明を準備します。
- 子を中国の親族に預ける場合:中国では祖父母が孫を育てることは一般的ですが、日本の入管は本人が現に養育しているかを見ます。子を帰国させると定住者の根拠が弱くなります。
- 刑事事件との関係:離婚の原因が夫婦間の暴力や傷害であれば、刑事事件として扱われることがあります。有罪判決を受けると退去強制事由(入管法24条4号リ・4号の2)に当たる場合があり、在留資格の問題と刑事弁護を切り離せません。
- 言語:意見聴取や申請書類は日本語で進みます。中国語での聴取を希望する場合は通訳を手配し、提出資料には訳文を付けます。
- 上陸拒否:退去強制となった場合は一定期間上陸が拒否されます(入管法5条1項9号、退去強制は5年、出国命令による出国は1年)。退去強制に至る前の対応が決定的です。
弁護士に相談すべき場面
- 離婚の話が出ていて、在留期限までに次の在留資格を準備しなければならないとき。
- 入管から在留資格取消しの意見聴取の通知が届いたとき。
- 配偶者の暴力から避難して別居しており、離婚と在留資格を同時に進めたいとき。
- 日本人との子を自分が育てることになり、定住者への変更を申請したいとき。
- 在留期間の更新や変更が不許可となり、争うか再申請するかを判断したいとき。
舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。離婚・親権・相続などの家事事件と、それに伴う在留資格の問題を一体で扱い、必要に応じて刑事弁護・行政訴訟にも対応します。行政事件の取扱いは複数の学術誌に掲載され研究の対象となっています。
よくある質問
離婚した後、どのくらいの期間なら今の在留資格のままでいられますか
在留期限までは在留できますが、配偶者としての活動を継続して一定期間行わないでいると、正当な理由がない限り在留資格取消し(入管法22条の4)の対象になります。離婚前から次の在留資格の準備を始めてください。
定住者への変更に婚姻期間の基準はありますか
公表された数値の基準はなく、婚姻の実態と期間、日本での生活基盤、生計、素行、離婚の経緯などを総合して判断されます。資料を体系的にそろえることが結果を左右します。
夫の暴力で別居しています。在留資格は取り消されますか
暴力からの避難は、配偶者としての活動を行っていないことの正当な理由として主張できます。診断書や保護命令の記録を保全し、意見聴取の前に弁護士に相談してください。
離婚後に日本人の子を育てます。親権者でなければ定住者は認められませんか
親権者として現に監護・養育していることが定住者の代表的な類型です。共同親権の場合は監護者として日常の世話をしているかが問われ、親権者でない場合は事案に応じて別の在留資格も含めて検討します。
在留資格の取消しが決まったら争えますか
取消処分は取消訴訟(行政事件訴訟法14条1項、処分を知った日から6か月以内)の対象で、執行停止(同25条)の申立てもできます。ただし意見聴取の段階で主張を尽くすことが最も有効です。
根拠条文・出典
- 出入国管理及び難民認定法19条(活動の範囲)、19条の16(配偶者に関する届出)、20条(在留資格の変更)、21条(在留期間の更新)、22条(永住許可)、22条の4第1項6号・7号・第3項(在留資格の取消し・意見聴取)、24条4号リ・4号の2(退去強制事由)、5条1項9号(上陸拒否)、50条(在留特別許可)
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件(定住者告示)
- 民法819条(離婚後の親権者)、766条(子の監護に関する事項)
- 行政事件訴訟法3条2項(取消訴訟)、14条1項(出訴期間)、25条(執行停止)
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律10条(保護命令)
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