控訴とは|民事・刑事の控訴期間と控訴理由の組み立て方(2週間・14日の数え方と外国人の留意点)
2026/10/11
最終更新:2026年10月11日 執筆:弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)/舟渡国際法律事務所
控訴とは、第一審の判決に不服がある当事者が、上級の裁判所に判決の取消しや変更を求める不服申立てをいいます。民事では判決書の送達を受けた日から2週間以内(民訴法285条)、刑事では判決宣告の翌日から数えて14日以内(刑訴法373条)に控訴状を提出しなければならず、この期間を過ぎると判決が確定します。
この記事の要点
- 民事の控訴期間は判決書の送達から2週間(民訴法285条)、刑事の控訴期間は14日(刑訴法373条)で、いずれも延長されません。
- 民事の控訴審は第一審を引き継ぐ続審で、新たな主張や証拠を出せますが、時機に後れた提出は却下されることがあります(民訴法157条)。
- 刑事の控訴審は第一審判決の当否を事後的に審査する手続で、控訴趣意書に法令違反・事実誤認・量刑不当などの理由(刑訴法379条〜382条)を具体的に書きます。
- 刑事判決は控訴期間中および控訴審の係属中は確定しないため、有罪判決を前提とする退去強制事由(入管法24条4号リなど)はその間は該当しません。
こんな場面で問題になります
- 中国籍の被告人が実刑判決を受けたが、控訴すべきか家族と相談する時間がないまま日数が過ぎていく。
- 執行猶予は付いたが、拘禁刑の有罪判決であるため在留資格を失うおそれがあり、無罪や罰金を求めて争いたい。
- 中国系企業が民事の第一審で敗訴し、日本語の判決理由を読み解く間に2週間が迫っている。
- 相手方(検察官や原告)が控訴してきたため、こちらも対応を迫られている。
控訴期間はいつから数え、いつまでですか
民事は判決書の送達を受けた日から2週間(民訴法285条)、刑事は判決の宣告があった日の翌日から14日(刑訴法373条)が期限で、期限内に控訴状が裁判所に届いていなければなりません。
民事の控訴期間は判決の言渡しではなく判決書の送達から起算するため(民訴法285条)、判決書が届いた日を弁護士に正確に伝えることが大切です。勾留中の被告人は、刑事施設の長に控訴申立書を差し出せば、その時に提出したものとみなされます(刑訴法366条)。民事・刑事とも控訴状の提出先は第一審の裁判所です。控訴は後から取り下げることができるため、迷っているときは期限内に控訴状だけ提出し、その後に方針を固める対応が実務では一般的です。
| 項目 | 民事の控訴 | 刑事の控訴 |
|---|---|---|
| 期間 | 判決書送達から2週間(民訴法285条) | 判決宣告の翌日から14日(刑訴法373条) |
| 提出先 | 第一審裁判所(民訴法286条) | 第一審裁判所(刑訴法374条) |
| 審理の性格 | 続審(第一審の資料に新たな主張・証拠を加えて審理) | 事後審(第一審判決の当否を控訴趣意書の範囲で審査) |
| 理由の書き方 | 控訴状には理由の記載がなくてもよく、後に控訴理由書を提出 | 控訴趣意書に法令違反・事実誤認・量刑不当等を具体的に記載(刑訴法376条) |
| 不利益変更 | 相手方の控訴・附帯控訴がなければ不利に変更されない(民訴法304条) | 被告人側のみの控訴では原判決より重い刑にできない(刑訴法402条) |
民事の控訴理由はどう組み立てますか
第一審判決の事実認定の誤りと法律判断の誤りを判決理由に沿って特定し、必要な新しい主張・証拠を加えて、控訴理由書で判決の取消し・変更を求めます。
民事の控訴審は続審であり、第一審の主張と証拠に控訴審で追加したものを合わせて審理します(民訴法296条・298条)。控訴状には不服の範囲を記載すれば足り、具体的な理由は控訴理由書として後から提出します。理由の組み立てでは、判決書の認定事実と証拠の評価を一つずつ検証し、証拠の読み違い、契約解釈の誤り、法律適用の誤りを区別して指摘します。新しい証拠は提出できますが、第一審で出せたのに出さなかった証拠は時機に後れたものとして却下されることがあります(民訴法157条)。中国語の証拠を追加するときは訳文を添付します(民訴規則138条)。相手方だけが控訴した場合でも、附帯控訴(民訴法293条)により自分に有利な変更を求めることができます。
刑事の控訴理由にはどのようなものがありますか
刑事の控訴理由は法律で定められており、訴訟手続の法令違反(刑訴法379条)、法令適用の誤り(380条)、量刑不当(381条)、事実誤認(382条)が中心で、控訴趣意書に判決への影響とともに具体的に書きます。
刑事の控訴審は第一審をやり直すのではなく、第一審判決に誤りがあるかを控訴趣意書に書かれた理由の範囲で審査するため、控訴趣意書の出来が結果を左右します。事実誤認を主張するときは、第一審の証拠評価のどこに論理的・経験則上の誤りがあるかを示す必要があり、単に納得できないというだけでは足りません。量刑不当では、同種事案との比較、被害弁償や示談の成立、本人の反省と再犯防止の環境を具体的に示します。新たな証拠の取調べは、第一審の弁論終結後に生じた事情や、やむを得ない事由で提出できなかった事情に限られ(刑訴法382条の2)、判決後に示談が成立した場合がその典型です。通訳の誤りが判決に影響した場合は、訴訟手続の法令違反や事実誤認として争います。
控訴すると判決の効力や身柄はどうなりますか
控訴があると判決は確定せず、刑事では刑の執行が始まらず、民事では仮執行宣言がない限り強制執行されません。ただし勾留中の被告人は控訴審でも身柄拘束が続くため、保釈を改めて請求する必要があります。
実刑判決を受けて勾留中の被告人は控訴審でも勾留が続きますが、控訴審の裁判所に保釈を請求することができます。民事では、第一審判決に仮執行宣言(民訴法259条)が付いていると控訴しても強制執行を受けるおそれがあるため、執行停止の申立て(民訴法403条)を検討します。逆転の見込みが薄い場合、民事では控訴審での和解、刑事では控訴の取下げによる早期確定が本人の利益になることもあり、弁護士と見通しを共有したうえで判断します。
控訴審ではどれくらいの期間、どのような審理が行われますか
民事は控訴理由書と答弁書の交換を経て口頭弁論が開かれ、和解の試みを挟んで判決に至ります。刑事は控訴趣意書と答弁書の提出後、公判期日で事実の取調べの要否が判断され、判決が言い渡されます。
民事の控訴審では、一回の期日で弁論が終結することも珍しくなく、第一審より短期間で判決に至ることが多いです。控訴に理由がなければ控訴棄却(民訴法302条)、理由があれば原判決を取り消して自ら判決するか第一審に差し戻します(民訴法307条・308条)。刑事の控訴審では、控訴趣意書の理由ごとに第一審の記録に基づいて審査が行われ、必要に応じて事実の取調べ(刑訴法393条)として被告人質問や証人尋問が行われます。理由がなければ控訴棄却(刑訴法396条)、理由があれば原判決を破棄して自判するか差し戻します(刑訴法397条〜400条)。
中国籍の方に特有の留意点
- 在留資格との関係:1年を超える拘禁刑の実刑(入管法24条4号リ)や、別表第一の在留資格者が一定の罪で拘禁刑に処せられた場合(同4号の2)は退去強制事由になりますが、いずれも判決の確定が前提で、控訴中は該当しません。
- 判決の理解:判決は法廷で口頭で通訳されますが、判決書の中国語訳が渡されるとは限りません。控訴の判断には判決理由の理解が不可欠なので、弁護人に説明を求めてください。
- 家族との連絡:勾留中の被告人が中国の家族と相談して控訴を決めようとすると、連絡に時間がかかり14日を過ぎるおそれがあります。期限内にまず控訴し、取下げは後からできることを前提に動きます。
- 執行猶予判決への控訴:執行猶予が付いても、在留資格を守るには無罪や罰金刑を目指す必要がある場合があります。控訴するかどうかは、刑事の見通しと入管上の効果を合わせて判断します。
弁護士に相談すべき場面
- 第一審の判決を受け、内容に納得できないが、期限までに何をすればよいか分からないとき。
- 判決書が日本語で届き、控訴期間の起算日や判決理由が分からないとき。
- 執行猶予付きの有罪判決で、在留資格への影響を踏まえて控訴の要否を検討したいとき。
- 相手方や検察官が控訴し、控訴審での対応を迫られているとき。
- 第一審の弁護士とは別の弁護士に控訴審を依頼したいとき。
舟渡国際法律事務所では、中国語での相談に対応しています(専属通訳が常駐)。外国人の刑事事件では取調べへの弁護人の立会いを求める方針ですが、立会いが認められることは現状ほとんどありません。刑事弁護と入管事件を一体で扱い、控訴の要否も在留への影響と合わせて検討します。刑事事件では無罪判決(一部無罪)の獲得実績があります。
よくある質問
控訴期間を1日でも過ぎたらどうなりますか
判決が確定し、原則として争えなくなります。民事は判決書送達から2週間(民訴法285条)、刑事は判決宣告の翌日から14日(刑訴法373条)です。迷っている間に期限が来そうなときは、まず控訴状を提出します。
控訴すれば審理をやり直してもらえますか
民事の控訴審は第一審を引き継ぐ続審ですが、刑事の控訴審は第一審判決に誤りがあるかを控訴趣意書の範囲で審査する事後審です。やり直しではなく、具体的な誤りを指摘する必要があります。
控訴したら刑が重くなることはありますか
被告人側だけが控訴した場合、原判決より重い刑を言い渡すことはできません(刑訴法402条)。検察官も控訴した場合はこの制限がありません。
控訴中に在留期間が切れたらどうなりますか
刑事判決が確定するまで、有罪判決を前提とする退去強制事由には該当しません。在留期間の更新(入管法21条)は別途必要で、審査で事件の状況を問われることがあるため、刑事と入管を一体で対応します。
控訴審で新しい証拠を出せますか
民事では出せますが、時機に後れた提出は却下されることがあります(民訴法157条)。刑事では、第一審の弁論終結後に生じた事情ややむを得ない事由で出せなかった証拠に限られます(刑訴法382条の2)。
根拠条文・出典
- 民事訴訟法157条(時機に後れた攻撃防御方法の却下)、259条(仮執行の宣言)、285条(控訴期間)、286条(控訴提起の方式)、293条(附帯控訴)、296条・298条(控訴審の口頭弁論・第一審の訴訟行為の効力)、302条(控訴棄却)、304条(第一審判決の取消し及び変更の範囲)、307条・308条(取消差戻し)、403条(執行停止の裁判)
- 民事訴訟規則138条(訳文の添付)
- 刑事訴訟法366条(在監者の上訴)、373条(控訴提起期間)、374条(控訴申立ての方式)、376条(控訴趣意書)、379条〜382条(控訴理由)、382条の2(やむを得ない事由による新証拠)、393条(事実の取調べ)、396条・397条〜400条(控訴棄却・破棄)、402条(不利益変更の禁止)
- 出入国管理及び難民認定法21条(在留期間の更新)、24条4号リ・4号の2(退去強制事由)
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